自転車のタイヤのシステムは3系統です。チューブラー、クリンチャー、チューブレス。
チューブラーはタイヤ+内蔵チューブの糊付けシステムです。ロードレース、競輪、トラックでは主流です。
クリンチャーは半円のタイヤとチューブの組み合わせです。チューブの内圧でタイヤのふちをリムの返しに引っ掛けて、気密性を保ちます。
ピュアチューブレスはタイヤのみで気密性を保ちます。チューブレス”レディ”はパンク防止剤のシーラントの使用を前提にします。
チューブレスやチューブレスレディはオフロードでは主流ですが、オンロードでは新参のタイヤシステムです。
チューブレスの基本と最近の動向
自転車のチューブレスシステムのメリットは乗り心地とパンク耐性と転がりです。
ラテックスチューブであれ、ブチルチューブであれ、超軽量のポリウレタンチューブであれ、空気入りのチューブはタイヤ的には異物です。まぜもの。
不純物のチューブを取っ払えば、タイヤのピュア度を上げられますし、よりたくさんの空気を入れられます。
結果、クッション性が上がり、転がり抵抗が減ります。
さらにパンク防止剤のシーラントを投入すれば、ピンホールやちょっとしたカットを予防できます。
クリンチャーのロードが先鋭化
ピュアロードレーサーでは低圧の恩恵は些細なものですが、シクロクロス、グラベル、オールロードでは絶大です。
そして、この十年でロードバイクのタイヤが23C→25C→28Cとワイド化します。
25cタイヤの空気量は23cタイヤの空気量の120%、30cの空気量は180%です。太いタイヤと大容量の空気が正義です。
トレンドはDB、エアロ、チューブレス
自転車のトレンドは欧米発です。へんぴな極東の島国のガラパゴス的なチャリ事情は世界の潮流にはなりません。
で、世界的なトレンドでスポーツバイクのタイヤとリムははますます太くなります。
結果、2015年前後までスタンダードだったノーマルタイプのロードバイクが『軽量ヒルクライムタイプ』に先鋭化しました。
今やワイドリムとひろびろクリアランスとディスクブレーキのおかげでエアロロードの方がノーマルロードよりオールラウンドです。
おすすめチューブレスメーカー
2010~2015年ごろがロードクリンチャーの全盛期です。ベストセラーはコンチネンタルS4000 GPIIです。高耐久、耐パンク、ドイツブランドの質実剛健タイヤです。
ほかの人気株はVittoria、Micherin、Schwalbeなどです。日本人には国産のIRCやPanaracerも人気です。
しかし、チューブレスタイヤの陣容はクリンチャーとは異なります。
Hutchinson
Hutchinsonはフランスのゴム屋です。英語読みはハッチンソン、フランス語読みはユッチンソンとかウッチンソンです。
ここはゴム長靴の元祖的メーカーです。傘下のAIGLE、エーグルのシンボルがこれです。日本の販売管理元はワニのマークのラコステです。
このHuthinsonはクリンチャータイヤ部門ではトップ集団ではありません。ファーストチョイスの候補にはなかなか上がらない。
一部のロード乗りはHutchinsonを使いますが、同社の名義でこれを受け取らず、MAVICの完組ホイールのバンドルタイヤYKSIONの名義でこれを手にします。
はたまた、モータースポーツから自転車競技に復活したイタリアのピレリ社の自転車タイヤP ZEROシリーズがHutchinsonのOEMです。
大手の工場が他所のメーカーの製品を作るのは珍しいことではありません。製造業では普通です。
実際、うちの地元の吹田の正雀というところに山崎製パンの大きな工場があります。セブンイレブンやローソンなんかのパンやスイーツがここで作られます。
しかし、国内のHutchinsonの取り扱い店が多くありません。現状、MAVICのYKSIONの入手性の方が上です。
IRC
IRCは名古屋のゴム屋さんです。Inoue Rubber Company、IRCです。パナレーサーと並ぶ貴重な国産自転車関連企業のひとつです。
でも、タイヤへの取り組みは対照的です。
パナには虎の子のR’AIRがあります。チューブが人気だ。これの存在意義を根本的に否定するチューブレスシステムはパナの方針とは相容れません。
ロードよりグラベルキングのチューブレスが好評です。ICANの中華カーボンに付けて、クロスバイクを高速化してみました。
一方のIRCは自転車のチューブレスタイヤの元祖のひとつです。ロードブーム前夜の2007年にはすでにロードのチューブレスタイヤ1号を世に出します。
ためにチューブレスの関連グッズが豊富です。IRCシーラント、IRCフィッティングローション、IRCチューブレス専用レバー、IRCチューブレスバルブなどがあります。
そして、IRCのチューブはパナのR’AIRみたいなステータスを持ちません。ふつうのゴムチューブです。軽量モデルさえがない。チューブレスフレンドリーです。
ぼくはミニベロにBMXチューブレスタイヤのSIREN PROを使いました。
ロードのFormulaシリーズ、シクロクロスのSERACシリーズが人気です。パナとうらはらにシティ系タイヤの印象がぜんぜんありません。
Schwalbe
シュワルベはドイツのタイヤブランドです。得意分野はオンロード、オフロード、オールロード、ミニベロ、シティ系です。
また、それぞれのジャンルに名作があります。
- MTB=Magic mary
- ロード=Schwalbe One
- ツーリング、コミューター=Schwalbe Marathon
- ミニベロ=Schwalbe One 20inch
Schwalbe Oneのバルクが海外サイトで3000円前後です。クロスバイクのアップグレードに使える価格帯です。
ぼくは圧倒的にシュワルベ派です。コンチ信者ではありません。
で、シュワルベはブチルチューブ派で、反ラテックスチューブ派ですが、ロードのチューブレスには積極的です。
ぼくはシュワルベの小径、MTB、グラベル、ロード用のチューブレスをコンプリートしました。
PRO ONEがチューブレスです。
シュワルベのコンパウンドはもちもち系です。グリップが強力です。空気圧を低めに設定すれば、ロングライドや全天型ロードに使えます。
そのほか
チューブレス化はスポーツバイクタイヤの宿命です。しにせメーカー、新興ブランド、ぞくぞくとチューブレスに移行します。
自動車タイヤのグッドイヤーがスポーツ自転車に参入しました。メイン商材はロード系のチューブレスタイヤです。海外の通販ストアに在庫がちょこちょこ出始めます。
シクロクロスのCallange社はハンドメイドチューブラーの雄ですが、時代のながれに応じて、チューブレスモデルを発表します。
アメリカのWTBはしぶいパーツ屋でしたが、オフロードとオールロードのタイヤトレンドをいちはやくキャッチして、新ジャンルタイヤ屋の地位を獲得します。
クリンチャーの覇者のコンチネンタル、クリンチャーの元祖のミシュランのフラッグシップなロードチューブレスタイヤの登場は時間の問題です。GP4000RS TL、Micherin Power TLRですかねー。
Continental GP 5000
と、そのコンチネンタルがついにTL界へなぐりこみをかけました。ベストヒットのGP4000の後継モデルのGP5000にはTLモデルが登場します。
実際、ぼくはこれを買って、フラットバーロードに付けました。
率直な感想はふつうです。いつものコンチのタイヤだ。コンパウンドの硬さがぼくの好みではない。
そして、TLモデルはおでぶさんです。25Cの実測が300gだ。
しかも、ピュアチューブレスではありません。シーラントはメーカー推奨です。ええ?!
ぼくのなかのコンチの評価がまたまた下がりました。名クリンチャー、名チューブレスならず。
チューブレス化の三種の神器
「よーし、今日からチューブレスタイヤにするぞ! うおー!」
その意気はよしです。しかし、チューブレスビギナー、チューブレス入門者には強敵が立ちはだかります。
そう、それはタイヤのビード上げです。時と場合で空気入れが、上腕二頭筋が悲鳴を上げます。
タイヤとリムの精度が上がって、取り付けは格段に良くなりました。じゃないと、マビックのUSTはここまで人気じゃない。
でも、なにかの折にちょっとしたことでビードは機嫌を損ねて、パパン!を拒みます。
完全にクリンチャーを卒業して、チューブレスに移行するなら、エアタンク付きの空気入れを買いましょう。
気密性アップ、パンク防止の魔法の霊液がシーラントです。STANS NOTUBEのものがおすすめです。
より早く硬化するRACE SEALANTがあります。25cタイヤへの注入量の目安は30ccです。ピンホールはほぼ塞がります。
ラテックスシーラントの弱点は乾燥です。水分が蒸発すると、ゴムが硬化して、機能が失われます。
スポークニップルの穴をふさぐチューブレスリムテープのおすすめもSTANSです。STANS YELLOW TAPEですね。
ホイールはマビック、タイヤはHutchinson、関連グッズはSTANS、空気入れはタンク付き、これらがロード用のチューブレスタイヤへの近道です。