スポーツバイクは一に規格、二に規格です。天根記念物的な競輪以外のカテゴリのバイクはめまぐるしく変化します。
結局、普遍的な規格や機材てものはついぞ存在しません。存在するのはミクロなインプレとマクロなトレンドばかりです。主観や流行はありますが、永久や絶対はありません。
「昔はメジャー、今はマイナー」
こんなはなしは日常茶飯事です。近年の好例が23cクリンチャーとナローリムです。これにスポットを当てましょう
タイヤとホイールの激動の時代
MTBでは2010年前後にタイヤとホイールの大転換がありました。26インチから29インチ、さらに27.5インチへ。で、ワイドフランジのBoostハブのながれからの29インチのリバイバルが最近のトレンドです。
ロードバイクでは2015年前後にタイヤとホイールの変化が起こります。ホイールのサイズは変わりません。700Cです。しかし、リムの幅が700-23から700-25になりました。ワイドリム化です。
ロードホイールの人気メーカーのカンパニョーロ、フルクラム、マビックはすでにワイドリム化への移行を終えました。25mm以下の推奨タイヤ幅を持つのはひとつかふたつです。
一方のシマノは毎度のマイペースでそこそこの数の15cホイールを継続します。既存のユーザーへの気配りだ! てことは特にありません。むしろ、シマノはドライに旧型を切り捨てます。
で、メーカーのカタログの上では23cクリンチャーはすでにイレギュラーのマイナー品ですが、これはこの10年の主流でしたから、無数のナローホイールとタイヤとチューブがユーザーの手元に残ります。
「タイヤとチューブは消耗品。お、セールだ。まとめがい~」
ローディあるあるです。そして、物置にはContinental Gran Prix 4000S II 700-23Cの小山ができます。
現実問題、コンチのGP4KS2はポストチューブラーの23cクリンチャー時代のベストセラータイヤです。
その筋の専門家の意見では『ユニクロのヒートテックなみの普及率を誇る』てまことしやかにささやかれます、ははは。
23c、昔は太め、今は細め
この10年は23cクリンチャーの時代でしたが、それ以前のうん十年はチューブラータイヤの時代でした。20c前後のタイヤ幅が主流です。当時の感覚では23cクリンチャーは太めになります。
これはそのチューブラー時代のリム幅に近いミニベロのクリンチャーホイールです。モデル名はたしかKINLIN Nb-R 13です。内径12.7mm、外径18.7mmのナロークリンチャーリムです。

内径からのタイヤのベストサイズは21cです。が、20インチETRTO451のタイヤの21mmは市販品に存在しません。最細はパナレーサーのミニッツ系の 20 7/8インチ=23-451になります。

乗り心地はかちかちで、ロード以上にタイトです。が、リム的にこの23mmはぜんぜん太めです。
なんで23mm?
じゃあ、そもそもなんでクリンチャーの標準がチューブラー標準の21cでなく、ちょい太い23cになったか?
ぼくはその時代を知りませんし、具体的な答えはネットから見つかりませんが、おそらくクリンチャーの構造上の問題です。
タイヤとリムのサイズが変わっても、ビードとHOOK部分のサイズはそんなに変わりません。現時点のクリンチャーの形状が最もコンパクトで、これの逆算から作れる最細のタイヤが23cです。
で、最細の下限の23cクリンチャーでなんとなくやってきたけども、科学データと分析技術の普及で最細≠最良が判明して、理屈的によりベターな25cクリンチャーが市場に出てきた・・・そんなところじゃありません?
25cのが優秀だった
実際、25cこそが現代の理論で最も正統派のクリンチャーです。データの裏付けがあります。23cの長所は細さと軽さだけです。
軽さからのパフォーマンス向上はもうトレンドじゃありません。エアロとエンデュランス、空力と疲れにくさからパフォーマンスを向上して、結果につなげるのがトレンドです。
ツール系のトップレースの舞台ではヒルクライムはすでに重要な勝負どころじゃありません。余力を温存して、TTで勝つ。Team Skyがこれを完璧に実践して、ツールドフランスを3連覇しますし。
しかも、軽さの行く手には最大の障害、UCIの規定が立ちはだかります。6.8kgの壁です。1996年発布のThe Lugano charterからのお約束です。20年越しの忌まわしい呪縛です。
もう一つの理不尽な規定のフレーム形状はちょこちょこ手直しされますが、この6.8kgの重量規定はぜんぜん崩れません。ロードレーサーには致命的です。
フルサスの最軽量XCバイクが8kg台、E-bikeが12kg台まで軽量化しました。トライアスロンではDiamondbackのAndeanやCervelo P5Xみたいな最新鋭機が出ます。
これらと比較すると、ロードの進化の物足りなさを感じます。レギュレーションが一気に5kg台まで緩和しませんかね~?
つまり、ロードホイールのワイドリム化は理想的数値へのノーマル化になります。結果的に23cは25cのベータ版、試金石のようなものになってしまいました。
これはデータ的に正しいことであれ、既存のユーザーの目には後出しジャンケンや背反に映りかねません。
「そもそも23cのタイヤとチューブの予備がうちの物置にどっさりあるから! これを使い切るまでおれは23c派を貫く!」
これは多数派の意見です。しかし、23cホルダーが数年分の予備を使い終わるころにはチューブレスの28cが主流になりましょう。ディスクロードがそれを加速させます。
チューブラーとチューブレスのはざまで
タイヤの幅を太くしつつ、重さを軽くするにはどんな方法を使いましょう? はい、チューブレス化が正解です。
PanaracerのR’AIRは700-23cで65gの最軽量級のチューブです。チューブレス化でこれがゼロになります。シーラント込みのチューブレス互換で-30gです。タイヤのワイド化の増量分は相殺されます。
そして、25cの転がり抵抗の軽さ、変形率の少なさ、空気圧のやわらかさはライドをらくちんなものにします。
硬い細いタイヤでストイックに走る、てのは前時代的なロードバイク像です。その象徴的な23cクリンチャーの出番はもうヒルクライムにしかありません。
そして、本気で速く上るなら、クリンチャーにこだわらず、チューブラーを使いましょう。ホイールとタイヤのセットの重量は勝負になりません。チューブラーの圧勝です。
どっちつかずのクリンチャー
最終的にクリンチャーはチューブラーより重め、チューブレスよりきつめのどっちつかずのタイヤになってしまいます。使い勝手の良さからママチャリやシティバイクでは生き残りましょう。
げんにぼくはこの二年で23cクリンチャー、セミファットやグラベルのチューブレス、トラックバイクのチューブラーとあれこれ乗り継ぎますが、クリンチャーの優位性を感じません。
ことさらにチューブが疑問です。軽量系のはぜいじゃくで、耐久系のはおでぶちゃんだ。手軽さはメリットのひとつに数えられますけど、パンクのしやすさはそれを帳消しにします。

細リム、細タイヤの取り付けのときの噛みこみパンクはまあまあ神経質です。個人的には使い勝手のよさを感じません。うちのチューブはチューブレスの緊急用に降格しました。
フルカーボンとディスクブレーキ
タイヤの軽量化のつぎはリムの軽量化です。アルミからカーボンに変えれば、重量を軽くできます。しかし、カーボンには弱点があります。雨と熱が苦手です。
基本的にキャリパー用のカーボンホイールのブレーキシューは専用品です。アルミ用では理想的な制動力が出ません。雨で利くExalithやAC3の構造はドライコンディションではシューをがりがり削ります。
また、長い下りでブレーキをかけつづけると、しばしば摩擦熱でカーボンリムをBANしちゃいます。高熱対策なしのカーボンホイールはじつにナイーブです。
油圧ディスクブレーキがカギ
はやりのディスクロードの油圧ディスクブレーキはこの二つの問題を一気に解決します。

ブレーキパッドはリムにダイレクトにコンタクトせず、ハブのディスローターをきゅっと挟んで止めます。ホイールはストレスフリーです。
で、このブレーキ方式はチューブレスやチューブレスコンパチにすごくマッチします。ブレーキと破損てゆうカーボンホイールにボトムネックが根本から消え差ります。効果は絶大です。
カーボンリム、チューブレスで軽量化、ワイドタイヤでコンフォートに、ディスクブレーキでカーボンの問題を解決、これは1セットです。
さらに油圧ディスク化のさきにはスルーアクスル化があって、スルーアクスル化の先には12速化の13速化があります。
130mmのエンド幅に12速はタイトです。スプロケットの歯とチェーンが細くなりすぎます。変速調整がシビアになります。
ディスクブレーキハブのスルーアクスルの142mm幅はこれを余裕で受け入れます。12速は市販品ですし、13速の試作品は展示会でちらほら出ます。たぶん、14速も可能でしょう。
そんなわけで25cタイヤ、チューブレス、カーボンホイール、油圧ディスクブレーキ、スルーアクスルは1セットです。GIANT PROPEL 2018がお手本です。