自転車パーツは専用品のオリンピックです。空気入れの口金、バルブの形状さえがトリプルスタンダードです。米式英式仏式。
さらにBB、ヘッドパーツ、コッタレスクランクなどなどの非日常的な部品名がいりみだれます。
「スクエアテーパーをコッタレスリムーバーで抜いて、ヅラグレードのBBをインストールして、クランクをホローシャフト化しちゃいました!」
外界の一般人にはなんのこっちゃです。え、この暗号文を一読で理解できる? そんなあなたは重症です。
汎用の自転車工具がすでに特殊ですが、ほんとのピンポイントの専用工具さえがめずらしいものじゃありません。
実例です。
上の赤いゴムカバー付きのものが汎用のエクスターナルBBカップ外しです。シマノホローテックタイプや一般的な中空BBのカップに対応します。※BB30系には非互換。
その下のグレーのものがE*thirteen TRSのXDボディー用のカセットのローギアユニットの固定リング用の専用工具です。
自転車いじりが持病になると、こういう専用特殊工具がどんどん増えます。裏腹に一般的なプラスマイナスドライバーはめっきり日陰にひっこみます。
自転車工具のおすすめメーカー
日本製のねじと工具は世界一です。中華製、アジア製の製造業は日に日に躍進しますが、これらはMade in Japanaには遠く及びません。品質のばらつきが特大です。
国内のホームセンターのねじのバラ売りには粗悪品はそうそうありませんが、海外のパーツや商品にはやっすいボルトナットはふつうにあります。
ピュア100均時代のダイソーの工具は平均以下のぽんこつだらけでしたが、200、300、400円商品がオープンになると、品質があきらかに底上げされました。
いまやちっこいリューター、ハンダゴテ、パイプカッター、ケーブルカッターさえが並びます。コーナンとの協力関係はだてじゃありません。
が、自転車コーナーのパンク修理セットのタイヤレバーはへにゃへにゃです。ママチャリレベルだ。スポーツバイクのタイヤ交換には力不足です。
HOZAN
HOZAN、ホーザン、宝山は日本の自転車工具の代表的メーカーです。戦後の1946年に自転車工具専門メーカーとして東大阪で生まれました。現本社はなんばにあります。
レンチ、ドライバーみたいな小物から振れ取り台、タッピングツールみたいな大物まで一切合切の自転車工具がラインナップにあります。
日本製、しにせ、専門メーカーの三拍子がそろいます。マイナスの要素はありません。デザインのそっけなさが玉に瑕でしょうか?
しかし、工具の生命線は精度と強度です。ねじをなめちらかしてすぐにへたるおしゃれなドライバーは工具ではありません。
もうひとつのネックは実店舗での取り扱いのすくなさです。わりとでっかい自転車店にさえHOZANのコーナーはありません。特等席を占めるのは海の向こうのメーカーです。
PARKTOOL
HOZANと肩を並べる世界最大の自転車工具メーカーがPARKTOOLです。こちらはアメリカの会社です。青いギアがシンボルアイコンです。
パークツールの日本総代理店及び販売元がホーザンです。で、チャリ屋の店頭の推しはあきらかにパークツールです。
パークツールのコーナーはあっても、ホーザンのコーナーはついぞない。
このことからホーザンの工具=バルクの業務用、パークツールの工具=パッケージの市販品という使い分けがひしひしとします。
実際、ホーザンの製品の梱包は非常に簡易的です。バルク。
海外通販の”TOOL”にも”HOZAN”は出てきません。パークツールが第一位です。HOZANを手軽に買えるのはamazonか楽天かヨドバシくらいです。
BBB
日米の工具メーカーのつぎは自転車の本場の欧のブランドです。自転車天国のオランダにBBB Cyclingがあります。
ここは総合自転車小物屋さんです。ツール、アクセサリ、パーツの販売を手がけます。インナーシフターはGOODです。
以前、ウエムラサイクルの店頭でニップル回しを見比べまして、BBBのしっかりした質感におっとなりました。
全体的に質感がグッドです。BBBはぼくのひそかなお気にいりです。取扱店舗は多くない。
BIKE HAND
HOZANとパークツールは自転車工具界のツートップです。どちらかのツールフルセットを最初に買えば、のちのちの追加補充の手間を節約できます。
しかし、自転車工具の使用頻度はまちまちです。年一回のネンイチ系工具がすくなくない。コッタレスリムーバーやBBツールをツキイチしちゃう人はへんてこさんです。
で、大方はその整備のためにその都度にその工具を買い足します。この場合、二大巨頭の単品は割高になります。で、amazonや楽天の格安ブランドが候補にあがります。
BIKE HANDはその筆頭です。
台紙の表記のようにMADE IN TAIWANです。ベテランのジャパニーズチャリダーの率直な感覚ではCHINAはぎりNGですが、TAIWANはよゆOKです。
台湾のメーカーらしく大手のOEMをしつつも、自分ところのオリジナルブランドを大手より安く提供します。台湾製=通販時代の質実剛健です。
PWT
PWTも台湾の自転車工具メーカー&ブランドです。問屋や代理店を通さず、工場直販でコストをおさえて、より良い品をより安くユーザーに届けます。通販時代の申し子です。
うちにはPWTのチェーンカッターがあります。
使い勝手はブランド品に引けを取りません。パークツールのようです。
実際問題、PWTの振れ取り台やセンターゲージはパークツールの製品にうりふたつです。ロゴ違いの同等品のうわさがまことしやかにささやかれます。
パークの同型のTS2シリーズは3万近くします。ミノウラは純粋な工具屋ではない。ホーザンの旧型の鋳物のやつはごつすぎ、新型はたかすぎ・・・
て、ふつうの人が消去法で行くと、このPWTの振れ取り台とセンターゲージをポちってします。
GORIX
もはや、なにがしかのブランドは『中華工場+テキトーな名前+amazonブース』の方程式でかんたんに成立します。
で、台湾系の割安製品よりさらに格安なアイテムが通販ベースであふれかえります。
amazonのペット用品、アウトドア、自転車ツールはこれらが活況です。最近の中華セラーや中華直販は中華の由来を隠そうとしません。
“Lixada”は中華の超メジャー級のBtoC直販系ブランドです。amazon、楽天のアウトドア、スポーツグッズのおすすめを席巻します。
こんなにすっかりメジャーなブランドですが、”LIXADA”の読みがいまだに分かりません、かつてのASUSのように。
リクサァダ? リサッダ? リーザーダー? これはゆゆしき事態です。
で、このややこしいBtoC系の新世代直販商品のリネームドがごっつプライスのレーベルのGORIXです。こちらは自転車関連用品のみにとどまります。
スポークテンションメーターや振れ取り台はコアな自転車イジラーのあいだでひそかに好評です。
パークツールの国内価格が割高だ、ホーザンの新商品のクオリティがイマイチだ、て二大巨頭の求心力の低下が背景にはあります。
ちなみに自転車整備を日曜大工風の趣味でやるなら、最初にそこそこのセットを買いそろえましょう。工具の個別調達は割高になってしまいますから。