自転車のタイヤは靴、空気圧は靴ひものようなものです。空気圧を正しくセットすれば、耐久度、快適さ、走行性能を維持できます。

asics New York GT2000
ノーメンテ、不整備、放置のタイヤはずたぼろのシューズのようなものです。空気圧を管理しないのは靴ひもをきちんとむすばないようなものです。
はて、ゆるゆるのシューズでまともにスポーツできるか? むりです。めんどうに思っても、いちいち靴ひもを結びなおします。それがスポーツマンのたしなみです。
自転車、スポーツバイクの空気はこれに通じます。めんどうに思っても、いちいちチェックして、気圧を調整します。それがサイクリストのたしなみです。
未知との遭遇 仏式バルブ
このようにタイヤやチューブの空気入れは自転車あそびの初歩の初歩、メンテナンスの基本の基本です。
で、スポーツバイクの初心者が空気圧のだいじさにようやく気づいて、黒い小さなキャップをいそいそと外すと、未知の形状にぶちあたります。

キャップ外す
はい、仏式バルブ、フレンチバルブですね。自転車専用の空気入れの口金です。ほかのジャンルではぜんぜん見当たりません。
平凡な一般人は軽快車やママチャリからチャリ遍歴を始めます。これらの空気入れの口金は英式バルブです。

英式バルブ
自転車界のだんご結び的なメジャースタイルです。世間一般の自転車の空気入れの口金はこのタイプです。虫ゴムの破損が付き物だ。
米式バルブはより汎用的な口金です。

米式バルブ破断
自動車のタイヤ、オートバイのタイヤ、一部の自転車のタイヤはこれです。ちなみに上のものは自動車用のチューブレスバルブです。
市販の家庭用の空気入れは米式/英式の兼用タイプです。仏式バルブは家庭用品の範疇に入りません。業務用機材、専門用品です。
こうゆう専門的なもの取り扱いは純粋な知識です。直感や思い付きで対処するのはむりです。ひもの結び方を覚えるように仏式バルブの取り扱い方を習得しましょう。
仏式バルブの取り扱い方
ママチャリの英式バルブ、乗り物の米式バルブは口金はつねにフリーです。空気入れのソケットをセットすると、自動的にバルブコアの弁を解放できます。
仏式バルブはそうじゃありません。ヘッドはねじ式です。左回りでゆるみます。

バルブのねじをゆるめる
このヘッドのねじをゆるめないと、コアの逆流弁を解放できません。空気入れのセットのまえにこういう一手間が加わります。これはフレンチバルブだけの特徴です。
逆にこの構造が極端な高圧を可能にします。ママチャリや自動車やオートバイのタイヤの空気圧はせいぜい3-5barですが、クロスバイクやロードバイクは5-8barです。
ピン押し開通
ここからピンを押し込むと、コアを完全に開通できます。

ピンを押すと空気抜ける
まれにチューブ内のパウダーやゴムのカスや水気がここに詰まります。軽くぷしゅぷしゅして、目詰まりを防止しましょう。
目には目を、仏式には仏式を
上述のように家庭用の空気入れは英式米式です。駅前の駐輪場の空気入れやスーパーのコンプレッサーも英式です。仏式バルブのチャリンコは自転車全体の数パーセントにすぎません。

ダイエーの駐輪場の空気入れ
もちろん、ガソリンスタンドの空気入れは米式バルブ用です。このために長距離旅行用のツーリング自転車の一部は意図的に米式バルブを採用します。
で、この一般家庭用の空気入れで仏式バルブに空気を入れようとするなら、こうんなアダプターをヘッドにかませないと行けません。

仏式バルブアダプター
英式アダプターです。250円くらい。口金は英式になります。
が、家庭用のポンプの口金の大半は米式です。これに英式のアダプターが付属します。

ホームセンターの空気入れ 左が米式の口金 右が英式フック
結果、米式ヘッド|米to英アダプター|英to仏アダプター|仏式バルブ、て連結具だらけのパッチワークが完成します。案の定、空気の入りは最悪です。
そして、上記の写真のように英式のソケットはじつにチープです。空気圧が高くなると、固定が内圧で外れます。応急処置のかなしさです。
たのしい仏式自転車ライフを送るなら、仏式対応の空気入れを買いましょう。

BBBフロアポンプ
ポンプヘッドのON/OFF
最近のスポーツバイク用の空気入れのヘッドは仏式米式兼用です。ヘッドが勝手に判断して、両方のバルブヘッドにポン付けではまります。
ここの注意点はヘッドのロックです。ロックをOFFにして、バルブにセットします。ちなみにこのヘッドのOFFはこんなです。レバーが倒れます。

米仏対応ポンプヘッド
で、これをバルブにまっすぐにふかく挿し込んで、レバーを起こして、ロックをONにします。これで内圧が高くなっても、ヘッドが「ばしゅ!」て吹き飛びません。

ランデブーからレバーロック
かりにONのポンプヘッドをバルブにむりやりねじこむと、口金のなかのゴムパッキンを痛めてしまいます。

ちょいヤバパッキン
ここのダメージは空気漏れと固定外れの原因になります。取り外すときにはロックをOFFにしましょう。
空気を入れる
いよいよポンプアップします。ピストンを目一杯に使って、きゅっきゅっきゅっ!と入れます。ばくぜんとしたイメージの『空気入れ』は実際には最後の山場でしかありません。

空気入れをピストン
タイヤの推奨空気圧の範囲で好ましい数値に調整します。ロードバイクの細タイヤは6-8barです。タイヤのサイドやパッケージに記載があります。→自転車タイヤの空気圧は車種によらない?
先述のつぎはぎアダプター空気入れでは5bar以上のポンプアップがえらいことになります。空気が漏れる、英式ソケットが外れる、あげくにシリンダーが壊れるなどなど。
そして、メーターがなければ、空気圧がわかりません。応急処置を常用するのは禁物です。
ヘッドを取り外す
最後の仕上げです。ヘッドを取り外しましょう。ロックをOFFにして、親指で押し出します。

外側からヘッドを押して外す
引っ張るのはNGです。あと、この握りでレバーを倒すと、人差し指の第一関節を打撲します。レバーのバネはなかなか強力ですから。鉄のしっぺです。

ポンプヘッドのNGな外し方
バルブのねじをしめて、キャップをつけます。リムナットの有無はバルブの形状によります。みぞみぞタイプのものにはナットが付属します。
逆につるぺたタイプにはナットはぜんぜん付きません。

Vittoriaのねじなしのバルブ
決定的な機能差はありません。が、つるぺたタイプはややかちゃかちゃします。個人的にはねじねじタイプがおすすめです。チューブレスにはこれが必須ですし。

ノーブランドチューブレスバルブ
そんなこんなで本日の足元が完成しました。

バルブを上に
球蹴りやランニングのまえに靴ひもを結ぶようにサイクリングのまえには空気入れをしましょう。