自転車のメンテナンスの基本の基本はタイヤの空気入れです。自転車屋さんやサイクリストが口を酸っぱくして、「ちゃんと空気を入れろ」と言います。
タイヤの空気圧を保つことはトラブル防止、性能アップに直結します。これは自転車に限りません。自動車、バイクなどの空気入りタイヤで走る乗り物の全般に当てはまります。
究極的にはライダー、ドライバーはタイヤに、その中の空気に乗ります。そして、タイヤには適正・推奨の空気圧があります。過ぎたるは猶及ばざるが如し、その逆も然り。
タイヤの正しい空気圧の見方
一般人は自転車タイヤの空気圧をぜんぜん意識しません。そもそもタイヤをまじまじ観察しない。思いを馳せない。空気を入れろと言われても、まめにシュコシュコしない。
が、自転車を買って、乗って、遊び倒せば、このパーツの重要性を悟り、なぞの記述に気付きます。

左からタイヤ幅=24mm、bar空気圧適正範囲=6.0-12bar、psi空気圧適正範囲=90-175psiです。
これはママチャリのタイヤの空気圧です。単位のkPa=bar x 100=psi x 7です。300 kPaはざっと3bar、50psiになります。

こんなふうに空気圧の表記はばらばらですが、高いタイヤにも安いタイヤにも明記されます。つまり、これは重要なデータです。
ベストの空気圧はタイヤによる
空気圧はタイヤで決まります。車種やジャンルは空気圧の目安になりません。

はい、これはママチャリです。U字型のフェミニンなフレームが出自の証です。MTBやロードバイクに見えますか? 見えません。ママチャリです。
しかし、この改造ママチャリのタイヤの適正空気圧は6-12barです。ホイールがピスト用で、タイヤがチューブラーですから。
車体の形状や大きさは空気圧に無関係です。
空気入れすぎは危険
極端から極端へ、気にしないから気にしすぎへ。
空気圧の大事さに目覚めると、空気の入れすぎにひた走ります。高圧シンドロームです。とくにロードバイク乗りがこれにしばしば罹患します。
発想はシンプルです。
「高圧にすると速く走れる→もっと高圧にするともっと速く走れる!」
※適正・推奨空気圧内で!
という必須の不可欠な条件がなぜかすとんと抜け落ちます。速さの魔物のしわざでしょうか。たしかにスピードは一種の快楽です。
高圧の罠
適正以上の空気圧はリムやタイヤやチューブに過度のストレスを与えます。
仮に適正空気圧以上に高圧化して、即物的なスピードアップに成功しても、全体的なパフォーマンスを落とします。

タイヤが過度にカチカチになると、乗り心地が悪くなって、グリップが激減します。
あげくに空気入りタイヤ以前のフルゴムのタイヤ、それ以前の木や鉄の車輪まで逆行してしまいます。
ライダーの自重や走行の荷重でぜんぜん変形しないカチカチタイヤは馬車の車輪と同じです。クッション性が皆無だ。
金属むき出しのカチカチ車輪の電車が速く走れるのは平らなレールの上を走るからです。それでも、レールのつなぎ目のガッタンゴットンはけっこうな衝撃です。
これが一般道に出たら、まともに走れませんし、曲がれません。車輪の方向を変えても、自重と慣性で上滑りしながら、どこぞかへ突っ込んでいきます。
ロード=公道=不均一な舗装路
以上のことから、自転車タイヤの9bar以上の超高圧域はサーキット、トラック、バンク、ぴっかぴかの新築の路面用です。
これらの超高圧ジャンル的にはロードバイクのタイヤの空気圧はぜんぜん低圧です。ロードバイクはロードバイクであって、サーキットバイクやトラックバイクでありません。
ロード=公道=不均一な一般舗装路です。これがロードバイクの主戦場です。段差、不整備、みぞ、踏切のレール、ノイズ、ゴミetcetcはコンディションの一部です。
6barと9barではこれらから受ける衝撃度があきらかにちがいます。高圧タイヤでは瞬間的な速度は上がっても、全体的なパフォーマンスは落ちます。
ハードな高圧細タイヤ
以前、ぼくはミニベロに20 7/8=451x23cタイヤをつけて、カンカンのカチカチにして、常用しました。

車体サイズ、乗り方の荒さ、そして、高圧タイヤが合わさって、ライド後の疲労度はMAXになります。フロントもリアもちょっとやそっとで暴れます。
一度、小指が朝までビリビリしびれました。大阪-嵐山往復のあとです。
この一事で高圧シンドロームから回復して、適正空気圧を守るようになりました。はてにチューブの意義を根本的に疑って、より低圧なチューブレスに落ち着きます。
空気不足はパンクのもと
オフロードタイヤの主流はチューブレスないしチューブレスイージーです。タイヤとリムで空気を密封します。
リムの穴をふさぐにはテープを使います。穴なしのホールレスリムはさらにシンプルでソリッドです。
チューブがありませんから、チューブのパンクは起こりません。ピンホールや小さなカット傷はパンク防止剤のシーラント液で勝手にふさがります。

タイヤはチューブみたいにビヨビヨ膨張しません。穴や切れ目が入っても、タイヤが形を留めます。チューブみたいに「パーン!」とはならない。
この間にシーラントが穴をふさいで、ねちょっと固まります。このために低圧のやわいタイヤで走っても、リム打ちパンクを起こしません。
チューブラータイヤもめったにリム打ちパンクしません。タイヤとリムのコンタクト面がマイルドです。
問題は旧式のチューブドクリンチャータイヤです。上のイメージの通りにリムの突起がチューブとタイヤに食い込みます。構造的にはややいびつです。
ここに過度の負荷がかかって、タイヤがべしょんとひしゃげると、リムがチューブを噛んで、蛇の牙みたいな二つの楔形の穴をうがちます。
高性能な軽量チューブはほんとにペラペラです。取り付け時の噛みこみパンクは日常茶飯事です。タイヤレバーでざつにこじると、すぐに穴を開けちゃいます。
ママチャリのチューブは分厚いタイプですが、車体の重さ、恒久的なメンテナンス不足、常時歩道走行などがわざわいして、スポーツバイク以上にリムうちパンクをします。
そして、ママチャリのパンク修理はたいへんです。タイヤを引きずり出すのが一苦労です。
一月に一回の空気入れで大部分のトラブルを予防できます。現実は一年に一回です。そもそもタイヤがボソボソのボロボロです。
悩ましいママチャリタイヤの英式バルブ
そんなふうにママチャリのタイヤにさえ適正空気圧の表記があります。しかし、ママチャリや軽快車のタイヤとリムとチューブはたいてい英式バルブです。

はい、このタイプです。これはスポーツバイクや高級自転車には使われません。スタンダードは仏式バルブです。
オフロードもオンロードも仏式です。米式は一部のツーリングバイクやBMXやダートジャンプなどにしか使われません。反面、自動車やオートバイのタイヤのバルブは米式です。
で、空気圧メーター付きの空気入れは米式か仏式ばかりです。最近の自転車用のフロアポンプのヘッドは米仏兼用です。
英式のヘッドの空気入れには空気圧メーターやゲージがありません。米式のゲージ付き空気入れ+英式バルブアダプターがせいぜいです。

この足踏みタイプは高圧タイヤやオフロードの大容量タイヤには力不足です。ママチャリのタイヤのためだけにこれを買うのは歯がゆいところです。
ママチャリの空気圧の目安
ゲージ付きの空気入れが手元になければ、ママチャリの空気圧のチェックは感覚頼みになります。指でつまんで、手ごたえを確かめます。
ぼくの個人的な感覚では2.5-3barの空気圧はくるぶしぐらいの硬さです。指でつまんで、皮の弾力と骨のしなやかさを感じられます。
耳たぶ、もも、手のひら、とかは柔らかすぎです。でも、ももくらいの空気圧のママチャリタイヤがこの世界にはびこります。空気入れでもう一押し二押ししましょう。
重い人は高圧に、軽い人は低圧に
実際の適正空気圧は車体の重量と乗り手の体重によります。空気圧が同じであっても、積載物でタイヤの変形度が変わります。
ロード系の細タイヤの簡易な目安で1bar=10kgの換算があります。60kgの人は6bar、70kgの人は7bar、80kgの人は8barです。
実際には服装やシューズの重量が加わります。体重+気持ちの0.5barにすれば、べらぼうな逸脱を避けられましょう。
世界的に小柄な軽量級の日本人女子にふつうのロードバイクのタイヤは固すぎます。「振動がきつくて、ロードはいやだ~」てのは弱音でなくて、真実です。
日本人の成年女性の平均体重は51kgから53kgです。服装込みで60kgを切ります。6bar前後が適正です。これに23cタイヤの適正値は細すぎ、硬すぎです。
英式の強い味方、パナレーサー
パナレーサーは国内の自転車タイヤメーカーです。パナの名前の通りにもともと門真のパナソニックの関連企業です。
ここは日本企業らしく英式バルブの空気圧を考慮に入れて、商品を展開します。空気入れの楽々ポンプは米、英、仏対応です。





