春はロングライドのベストシーズンです。日中の最高気温が25度未満、最低気温が5度以上の季節です。春先から梅雨まで。
本場のロードレースの本格シーズンはこれ以降になりますが、ヨーロッパの夏は圧倒的にからっとします。アジアのじめっとした夏は長時間のアウトドアにはハードです。
3、4、5月のベストシーズンを楽しく安全に走る切るために遠乗り、長乗り、ロングライド、ツーリングの基本的な装備を見ていきましょう。
ロングライドの装備
ロングライドの装備は自転車のスタイルに寄ります。日帰りか泊りか、ホテル泊かテント泊か、外食か自炊か。
当然、装備の重量と質量は走行には邪魔になります。純粋なパフォーマンスには徒手空拳のレーシングウェア1枚がベストです。
でも、趣味の自転車のだいごみは未知の異邦へ気軽に足を伸ばせることです。プチ冒険、セミアドベンチャー、大人の遠足です。
未知の土地では不測の事態が容易に起こりえます。ペラペラの軽装ではそれに対応しきれません。
アウトドア全般の鉄則はアクシデントやトラブルからリカバリーできることです。自力救済。ソロ活動にはこれが最重要です。
予備のチューブ
サイクリングのアクシデントの一等賞はパンクです。これが不動のナンバーワンです。
とくにロードバイクのクリンチャータイヤは華奢で神経質です。別名パンク神同時多発召喚システム。これはチューブドタイヤの構造的欠陥です。
結果、予備のチューブは不可欠です。これなしで出かけるのは薬草なしでダンジョンに入るようなものです。
で、予備チューブには薄型軽量タイプを選ばず、ノーマルモデルを選びましょう。出先のメンテでは最高のコンディションには回復できません。軽さや速さより安定度と耐パンク性が重要です。
あえて持って行かないなら、緊急の現場で弱音を吐かず、自力でてくてく帰還しましょう。
パンク修理セットは△
パンクの修理セット、ゴムパッチとゴムのりはチューブよりコンパクトで軽量です。ダイソーの100円のものが十分に用途を果たします。
しかしながら、トラブル現場での復旧・修理は想像以上に過酷です。公道や野良や山中はホームではありません。屋外は基本的にアウェーです。
実際に外でパンク修理やチェーン直しをすると、ばくぜんとした焦燥感に駆られます。街中では通りすがりの方々の視線がなんかプレッシャーです。
無人のオフロードでは焦燥感が加速します。
パンク修理は30分、チューブ交換は15分です。夕暮れ時の15分の差は小さくありません。
携帯空気入れ
めでたくチューブをセットしても、ぺこぺこタイヤでは走れません。空気を入れましょう。空気入れは必須です。
そもそも自転車のタイヤの空気圧は一定ではありません。ゴムの分子のすきまから空気がじわじわ抜けて、漸次的に減圧します。
ブチルチューブは1週間で1bar、ラテックスチューブは数日で1bar、SOYOやVREDESTEINの超軽量ラテックスは半日で1bar、おおまかな目安です。
チューブラーの減圧はインナーチューブによります。ブチル > ラテックスの傾向は同じです。チューブレス、チューブレスイージー+シーラントの減圧はまちまちです。
また、オールロード的な使い方をすると、場面で空気圧を適正にします。自走は3bar、山中のトレイルは1.5bar、下山後は2bar(携帯ポンプで3barまで入れるのはたいへんだから)とか。
で、スポーツバイク系のバルブは仏式です。自転車専用規格です。ほかの乗り物のタイヤには使われません。
自転車乗りにはおなじみですが、一般人には未知のものです。ふつうの家庭には仏式対応のポンプはありません。ママチャリは英式です。
自動車やオートバイのタイヤバルブは米式です。サスペンションのバルブはこれです。
必然的にガソリンスタンドのコンプレッサーは米式対応です。ゆえにグレートジャーニー系のツーリングバイクには米式バルブがしばしば使われます。
つまり、持参しないと屋外ではなかなか出会えません。
マルチツール
ロングライドの機材トラブルの80%は足回り系、タイヤとチューブのアクシデントです。あとの20%のうちの10%がチェーン、最後の10%がその他etcteてところです。
チェーン落ちはあれですが、チェーンBANはしんこくです。チェーンカッターが手元になければ、サイクリングが完全に終了して、キックボードの時間が始まります。
ぼくはこれまで自宅から10km前後のところでしかこれに見舞われません。徒歩+キックボード風の片足けんけんステップで帰宅できます。
ほかはステムのガタ、サドルのぐらぐら、シートポストずりおち、クランクのゆるみなどがまれにあります。ボルトの締め付け不足が原因です。
チェーンカッターと複数の六角レンチをそろえると、けっこうなかさばりとジャラジャラに悩まされます。
カッター付きのマルチツールがべんりです。カッターの精度重視で自転車ブランド系のものを選びましょう。
ビニル袋、ビニル手袋
メンテには薄手のビニル手袋が非常に役立ちます。素手やグローブでチェーンやギアを弄ると、オイルでべとべとにしちゃいます。モチベーションが激下がりです。
100円ショップで使い捨てのキッチン用のビニル手袋を買って、何枚かをバッグにぶちこみましょう。作業時には二枚重ねがおすすめです。一枚はすぐに破けます。
この一式でロングライドの機材トラブルにはほぼ対応できます。慎重派は予備チューブを二本にしますし、スピード派はCO2ボンベを投入します。
かばん、リュック
前段の基本セットはツール缶やウェアのポケットに入りきりません。かばんやリュックが必要です。タイヤとタオルを省けば、ウェストバッグにぎりぎり収められます。
しかし、財布、スマホみたいな日常品、おやつ、飲み物、着替え、おくすり、救急セット、カッパ、輪行袋のようなオプションが別途に控えます。
結局、リュックサックがおすすめです。日帰りロングライドからホテル泊のチャリ旅、ラーツーまで行けます。
フルシーズンで使うなら、アウトドア用のやつを買いましょう。ドイター、オルトリーブ、オストリッチ、エルゴンとかが人気です。→ロードやクロスにおすすめの自転車リュック 軽さと通気が決め手
25度以上の日中にふつうのリュックでサイクリングすると、例外なく背中をホカホカにオーバーヒートできます。
排熱が下がると、パフォーマンスが落ちます。パソコンもニンゲンもおんなじです。サイクリングが長丁場のアウトドアであることを忘れない。