ビンディングペダルはスポーツバイクの専用機材です。シューズとペダルを金具でかちゃっと固定します。シューズ側の金具がクリート、ペダル側の金具がビンディングです。
自転車のビンディングの世間的認知度はマイナーですが、スキーやスノボのビンディングは一般的です。
実際、自転車のビンディングシステムはウィンタースポーツに由来します。
例えです。
- フラットペダル=スケボー=サーフィン
- ビンディングペダル=スノボ=ウェイクボード
フラペ系はプラットフォームとの一体感を欠きますが、自由度に優れます。ビンディング系は自由度を欠きますが、一体感に優れます。
このビンディングペダルの別名が「クリップレスペダル」です。海外ではこちらの呼び方がメジャーです。てか、「ビンディングペダル」はほぼ和製英語です。
クリップレスはcliplessです。クリップなしの~という意味です。
では、この「クリップ」てのはなんでしょう? はい、これはトゥークリップのことです。
プレ・ビンディングペダル時代のスポーツバイクのペダルとシューズの固定方式はこのクリップでした。
ツールやジロから趣味のツーリングまでこのクリップが唯一の固定方法でした。
現在では公営競技のケイリンやインドアのトラック競技のみがこのクリップやストラップを使い続けます。
クリップ=固定ギアバイク用の機材です。一般的ではありません。マイナーアイテムです。
以下でトゥークリップとトゥーストラップの取り付け方をおさらいして、走行時のポイントをまとめます。
トゥークリップの取り付け方
今回の主役はトゥークリップです。はて、トゥ? トー? トウ? トゥー? ツゥー?

ノーブランドの樹脂製のクリップとナイロンのストラップです。
トゥークリップを付けられるのは一部のフラットペダルに限られます。こういうペダルのサイドの穴や隙間にトゥークリップを取り付けます。

リフレクターの取付け穴とおんなじです。しかし、青い樹脂のガードが安っぽいプラッチッキーさをごりごりに醸し出しますねえ。
ラジオペンチでひん剥きましょう。

ここにクリップと裏の座金をボルトとネジで取り付けます。ネジ穴はふつうのプラスドライバーです。トルクはてきとうです。

上記のようにクリップの被せは進行方向の上に来ます。じゃあ、これはL印の左のペダルです。クリップを下につけると、つま先を突っ込めません。
また、クリップ側のネジ穴には横の遊びがあります。好みで外寄り、内寄りを調整しましょう。今回、ぼくはど真ん中にセッティングしました。
ストラップの通し方
クリップの取り付けは直感で分かります。問題はストラップの通し方です。ひもや糸の通しや結びは知識と理論です。蝶々結び、ブラッドノットetcetc…手順を知らないと、ちゃんとできません。
ペダル側からさきに通す
実際にトゥーストラップを通しましょう。と、その前に通し穴を確認しましょう。ペダルのプラットフォームの進行方向後ろ側にストラップガイドがあります。

ストラップを通すときにはペダル側から通します。しかし、なぜかうちのペダルには外側に穴がありませんけど。
とにかく、こんなふうに2、3cmの代を取って、バックルを配置します。バックルのローラーみたいなやつは上に来ます。

この向きをまちがうと、締め緩めに支障を来たします。注意しましょう。
ストラップをひねる
で、ペダルの外穴と内穴のあいだでストラップをひねって、反対方向へ通します。このひねりはバックルのずれ防止です。
しかし、ぼくのぺダルには外穴がありません。あれこれ考えて、外側のブリッジにストラップをきゅっと結びました。それから、通常どおりにクリップのガイドに通します。
で、バックルのぎざぎざとローラーの間に通します。完成!

ポイントは
- ペダルから通す
- バックルの代は2,3cm
- ローラーの向きに注意
- ストラップをひねる
です。ペダルの形状や種類、個人の好みや流儀で通し方は十人十色ですけども、上のポイントが大方の基本です。
シューズで調整
走る前にクリップにシューズをはめて、固定力とストラップの動きの確認をしましょう。

本締め前のバックルの位置の正解はここです。ここからストラップの端を上に引っ張って、本締めにかかります。
本締め前のバックルがシューズの上に来るのは不正解です。最初のバックルの取り代が長すぎます。2、3cmに詰めましょう。
ストラップを緩めるときにはバックルのつまみを指で外側へ押します。これですぐにするっと緩みます。

この緩さが初心者には不安に見えます。
でも、靴ひもの蝶々結びを思い浮かべましょう。ひもの端を引っ張ればスルっとほどけますが、結び目をぎゅうぎゅう引っ張ってもぜんぜんほどけません。
逆にするっと緩まないストラップは公道走行ではものすごい危険です。
なぜなら、停車するには足を着かねばならず、足を着くにはクリップからシューズを外さなければならず、シューズを外すにはストラップを緩めねばなりませんから。
普段使いではトラック競技や競輪のようにストラップの余りをバックルの穴に閉じ込むのは厳禁です。ストラップを手早く緩められないと、ぼてんと立ちごけします。
じゃあ、ストラップのぴろぴろの不格好さには目をつぶりましょう。万が一、ストラップをバックルに折り込むなら、シューズをすぐに脱ぎ履きできるルーズさに留めましょう。
街中では足つきが命です。ほんとに命運を分けますよ。
秘技・左ペダルの球当たりをしぶめにする
さあ、クリップマスターの秘技を伝授します。この写真を見ましょう。トゥークリップとトゥーストラップをクランクに取り付けたショットです。
何か変ですね?

そう、右ペダルはクリップとストラップの重みで月曜日の朝の務め人のように項垂れますが、左ペダルはあおむけをキープします。
これは左ペダルの球当たりだけをしぶめに調整した結果です。クリップとストラップの重みでくるりんしないようなトルクです。
これで停車からのシューズ・イン・クリップをスムーズにこなせます。
クリップが右ペダルみたいにうつぶせになると、再装着に余分な『ペダル返し』の動作が増えます。
でも、なんで左だけだあ? はい、それは左側走行ではおもに左で降りるからです。右足の着脱の頻度はそんなに多くありません。左足の自由度がポイントです。
トゥークリップのメリットとデメリット
トゥークリップで街中を走れば、否応なく長所と短所に気づきます。ぼくの活動エリアの大阪の都心部のチャリダーではデメリットの方が多く出ます。
が、さきに利点を挙げましょう。
靴を選ばない
トゥークリップは靴を選びません。スニーカー、運動靴、革靴、ブーツ、スリッパなどなど、ストラップに突っ込めれば、ふつうに使えます。
ことさらに特殊な足ワイズの持ち主はここに活路を見出します。
ビンディングシューズ及び特定ジャンルの競技用スポーツシューズの展開はD-2Eです。3E以上のラインはぐっと減ります。
ぼくのように25.5cmの5E、26cmの4Eのザ・幅広甲高フットを有するものはジャストサイズのサイクリングシューズにありつけません。
ワイドタイプ、アジアンフィットさえが2Eどまりです。ぼくの場合、2Eのコンフォートサイズは27.5-28cmになります。
安い費用
トゥークリップは安価です。新品を1000円で買えます。
ビンディングシューズとビンディングペダルはそうではありません。それぞれ10000円~、5000円~です。高い備品です。
本体が数十万のロードやMTBであれば、こんな追加の投資額はささいなものです。
しかし、10万のロードや5万のクロスバイクに15000円の備品は割高です。良いタイヤと軽いフラットペダルを買えます。
片足ペダリングを練習できる
フラットペダルでできない引き足をできます。じゃあ、気軽に片足ペダリングを体験できます。
片足走行をすれば、すぐに足つきできますし、理想的な回し方をイメージできます。
でも、河川敷や公園でやりましょう。街中でやるといぶかしい目で見られます。
次は短所です。
ストラップの着脱がめんどい
いちばんのデメリットはストラップの着脱のわずらわしさです。基本的な流れはこうなります。
- 右シューズをクリップに入れる
- ストラップを締める
- 発進
- 左シューズをクリップに入れる
- ストラップを締める
- ごりごり走る
- 停車前の減速中にストラップを緩める
- シューズを外して足を着く
- 4に戻る
です。4567のストラップの締め緩めは走行中の動作です。これを赤信号のたびにやります。
この動作はわりに複雑で理知的です。機械的には身体に入りません。自動化は不可能です。
ビンディングペダルはこうです。
- 右足かっちん
- 発進
- 左足かっちん
- ごりごり走る
- 左足ばっつん
- 足を着く
- 2に戻る
スマートで感覚的です。しかも、ビンディングの着脱はかかとのひとひねりで終わります。動作の自動化が可能です。機械的に身体が覚えます。
フラットペダルです。
- 乗る
- 漕ぐ
- 降りる
- 1に戻る
圧倒的なシンプルさです。漕ぎ出しまでの手順の少なさは特筆です。動物的本能で行けます。手軽さでフラットぺダルの右に出るものはいません。ビバ、フラペダ!
固定力がばらつく
トークリップとストラップの固定は一律ではありません。シューズの入り、クリップの当たり、締め加減でフィット感が変わります。
なんか絶妙にフィットした!→赤信号だあ! はざらです。
締め付けで血行が悪くなる
足をひもで縛りますから、血行を阻害します。それを和らげようとゆるめにしめると、ペダルとの一体感をそこねます。ルーズなクリップは上り坂くらいでしか活きません。
見た目がレトロ
トゥークリップは前時代的な機材です。ヴィンテージ、レトロ、アナクロの域です。
クロモリのロードレーサーみたいなものには合いますが、ディスクロードやエアロロードにはマッチしません。

ここはでっかいピン付きのフラットペダルかCNC屋のCOOLなビンディングペダルの出番でしょう。
クリップは靴を選びませんが、バイクを選びます。イマドキのチャリには合いません。
結論
わずらわしいトゥークリップよりペダルバンドやハーフクリップのがらくちんです。
アーバン系のピスト乗りはこっちを使います。ストラップのピロピロがありませんから、見た目がまだましです。