ぼくは自転車をハードなスポーツ的には解釈しません。ホビー、フィットネス、アクティビティ、遊びです。
現にジーパン、Tシャツ、スニーカーみたいな普段着スタイルで市内観光からツーリング、都心のサイクルロードから無人島のトレイル、山まで行きます。
サイコン、センサーの類とは無縁です。Stravaなどのアプリさえがわずらわしくなりました。見ない、測らない、あげくにログインしない。
そんな細かいデータは些細なことです。大事なことはその日、その時の気分です。遊びですからね。
輪界の『ゆるい』は世間の『きつい』
このようなスタイルは自他共にゆるいチャリダー、ゆるチャリダーです。あきらかにフォーマルな乗り手ではない。
とくにデータスポーツのロードバイクとはかけ離れます。定点観測や定期記録が無理です。過去の自分を振り返るとかしない。うまいパン屋探しの方が重要です。
しかしながら、業界内の常識は業界外の非常識です。ごりごりの門外漢の初心者の意見ではこのスタイルさえがスポーティのようです。
ときどき友人の誘いを受けて、自転車でとろとろ出かけますと、世間の感覚と自転車乗りの感覚のギャップを思い知らされます。
自転車乗りじゃない完全なる超初心者と自転車で遊びに行くときのあるあるをリストアップしましょう。
超初心者のサイクリングあるある
お誘いは不意にやって決ます。九割九分、発案は友人からです。「明日の休みにチャリでどっかに行かへん?」みたいな連絡がLINEで来ます。
目的地はだいたい地元の大阪の近郊のてきとうな場所です。友人の趣味からしぶい神社仏閣が多めです。
道中はサイクリング一辺倒ではありません。昼飯、買い物、寄り道があいだに入ります。むしろ、そっちがメインです。
チャリはなぞの機体
さて、この友人は自転車乗りではありません。スポーツ好きの一般人成年男子です。
チャリの知識はゼロではありません。クロスバイクとマウンテンバイクとロードバイクのちがいが分かります。
そして、ついに「空気入れの口金には三種類のタイプがある」という秘蔵の知識をゲットしました!
で、そんなステキなチャリ友の愛機はなぞの26インチの機体です。
クロスバイク? しかし、前ブレーキがローラーブレーキです。ライトの台座がフォークにあるし。
全体から強烈な残念感がただよいます。年季もそこそこです。いちばんの問題はサイズです。一般成人男子にはあきらかに寸足らずです。
サイズ、パーツの構成、その他のアレコレからその正体はおそらく中高生向けの通学チャリでしょう。
デフォルトのチューブは英式です。
ルック車? いや、ルック車ほどに見栄えしません。ルック車はもっとはなやかでポップです。
お値段は驚異の5万円です。なんでGIANT EscapeかGIOS Mistralを買わない・・・
ぼくはバラシメンテで以下のことに苦笑しました。
- スターナットが未圧入。なんかへんなプラグで代用
- 磁石がそこかしこにくっつく
- タイヤぼそぼそ
- チェーンさびさび
- カセットでろでろ
- プーリーどろんどろん
- etcetc…
一般人の普段使いのチャリのコンディションはこんなものです。しかし、フレームだけは異常に頑強です。テツノカタマーリ!
タイヤの空気圧がゆるゆる
一般人の自転車は基本的に野ざらしノーメンテです。保管場所が屋根付きの駐輪場であるのは唯一のすくいです。
でも、お出かけ前の空気圧チェックみたいなことはないがしろにされます。一般人はパンクの有無を確認しますが、空気圧まで調べません。
案の定、この日のタイヤの空気圧はゆるゆるでした。上記の写真は出先で空気入れした後の雄姿です。
出発前に固めに入れろとたびたび助言しますが、ことごとく右から左へ抜けます。
タイヤの空気圧のゆるさはそのチャリダーの意識のゆるさと比例します。スポーツの感覚はありません。おでかけです。
サドルが低い
兼用チャリの基準は普段使いです。近所や町中の買い出しでは足つきが肝心です。サドルは低くセッティングされます、ママチャリなみ。
無論、お出かけ前にサドル高を調整するという発想はありません。ひざはずっと曲がりっぱなしです。
ベストな高さまでサドルを上げると、「のりにくい、こぎにくい、しんどい」とぶうぶうゆわれます。
たしかにサイズがへんてこですから、前傾が異様にきつくなります。
時速は10km以下
超初心者のサイクリングでは平均時速は10km以下になります。絶好のサイクリングロードですら速度は上がりません。
ロード、クロス、電動、MTB、ミニベロに負けます。速めのランナーにすら追い抜かれます。年配のママチャリストと互角です。
この日の距離は北大阪発の淀川サイクリングロード経由の京都タッチのとんぼ返りで60km前後でした。正味、9時間のサイクリングです。
休憩、昼飯、寄り道2時間を差し引いても、7時間を下りません。10km以下が常態化です。これがめいっぱいです。
このことからチャリダー以外の世間一般のゆるいサイクリングの速度の目安は時速10km以下(正味の移動速度)になります。
15kmはスポーツ、20kmは拷問です。超初心者をなめない。
ゆめゆめこちらから誘うときには注意しましょう。
- サイクリングを一緒に楽しむ=×
- 引率=〇
つまり、自転車乗りの『ゆるポタ』や『ゆったり』の基準は一般的にはあきらかに高すぎます。
休憩が多い、長い、不規則
初心者のペース配分はざっくばらんです。休憩ポイントは気分次第です。でも、ぼくのおおざっぱな性格上、これには文句を言えません。
とくに大きめのコンビニのベンチは危険です。補給、トイレ、スマホチェックで15分は軽く越えます。相手が喫煙者であれば、3-5分の小休止がさらに増えます。
反面、自転車乗りの定番の休憩スポットではまったく止まりません。関西医科大付属病院のベンチ、さくらであい館はスルーされました。
文句が多い
出発から数時間が過ぎて、疲れがそこそこ溜まると、友の口からとたんにネガティブなセリフが出てきます。
「車のが速い」
「原付ですぐに来れる」
「さっきからおんなじ景色ばっかりや」
「遠いな~」
「遠いわ~」
「遠っ!」
「しょーもないの~」
「おもんない」
「チャリを置いて、電車で帰らん?」
「チャリで来る意味ある?」
半分冗談、半分本音です。チャリへの思い入れ、サイクリングへのこだわりはそんなにありません。
個人的に遠い遠いの連呼がボディブローのようにじわじわ効きます。根っからのチャリ好きにはストレスフルなモチベキラーです。
「言い出しっぺは自分やん!」て怒り出すのは厳禁です。おおらかに聞き流すか、笑い飛ばしましょう。
けど、これは軟弱者の笑止な弱音ではありません。初心者は20kmで、中級者は100kmで、上級者は200kmで同じような気持ちに襲われます。
限度は違えど、本質は変わりません。
「チャリで来る意味ある?」
シンプルな深い言葉です。が、陽気にこう答えましょう。
「意味? あるある~、ありまくる~」
坂を上らない
ヒルクライマーには坂はありがたいものですが、初心者にはつらいものです。上り坂が行く手に現れると、高確率でハンドルが平坦な脇道に曲がります。
結果、やたらと細かい住宅街の生活道路をぐねぐねするはめになります。身体的な消耗度はイーブンです。気持ちの問題でしょう。
もちろん、本格的なとうげは無理ゲーですし、橋や高架のスロープみたいなちょっとした上りさえがNGです。即座に降りて押して進みます。
けがをする
こんなゆるゆるのゆるチャリ、運動不足解消以上スポーツ未満をしても、初心者の体は悲鳴を上げます。
- 肩こり
- ケツ痛
- ひざ不調
肩こりは余分なリュックの荷物と車体のへんなサイズのせいです。ケツ痛は自転車乗りの宿命です。膝は当人のO脚のせいです。
自転車の時間当たりの負荷はそこまで高くありません。バスケやサッカーの方がハードです。
しかし、趣味のサイクリングは長丁場です。小さいストレスの積み重ねが大きなトラブルになります。
超初心者を誘うときの注意
業界内の常識は業界外の非常識です。自転車乗りの『ゆるい』は一般人にはぜんぜんゆるくありません。
話半分が妥当です。時速20km、往復100kmは絶対にむりです。つぎがなくなる。時速10km、往復50kmがいいところです。
チャリ門外漢の友人をチャリダーに誘うときにはくれぐれ注意しましょう。自転車乗り的な『ゆるポタ』は禁物です。