スポーツバイクの最大の魅力は何でしょう? それは速さです。速いことは良いことだ。しかし、遅いことは悪いことではありません。
むしろ、ゆったりマイペースの乗り方が世間では主流です。かちかちのスポーツスタイルは現代人には敬遠されます。
自転車の速度
速いチャリの代表がロードバイクです。一昔前の呼称は「ロードレーサー」でした。これは文字通りにロードレース用の自転車です。
対照的なスポーツバイクのマウンテンバイクには速いイメージはありません。でも、道のような崖をひゅーんと走るor落ちるDHでは最高速度は60kmを突破します。
で、遅い自転車の代表選手は非スポーツバイクの全般です。ママチャリ、軽快車、シティサイクル、実用車。
これはマジで進みません。車体重量が30kg近くありますから。しかし、この実用自転車さえが長い直線の下り坂では40kmに達し、原付スクーターを抜き去ってしまいます。
自転車・・・車輪付きの乗り物の全ては状況次第で無限に速くなりますし、遅くなります。
つまり、スポーツ的観点では『速度』はそう重要なものではありません。最近の指標は『出力』です。これは乗り手のパワーです。W(ワット)で表されます。
ロードの速さ
ロードバイクはロードレースのためのマシーンです。で、ロードレースの定義は『近代的な舗装路の数十キロ~数百キロの自転車競技』です。
競技の性質は陸上の中長距離走に通じます。ツール系はチーム持久走だ。短距離走ではありません。
短距離型の自転車競技は競輪やトラックレースやBMXレースです。競技時間は数十秒から数分ですね。
とくに競輪の選手はむきむきのゴリマッチョ体系です。スピードスケートに選手にそっくりです。
現実問題、スピードスケートと自転車トラック競技には共通の部分があります。選手の掛け持ちやコンバートは珍しくありません。
速さ=中距離の平均スピード
さて、この単距離系自転車ジャンルの瞬間的な速さは国内のアマチュアライダーやホビーライダーの間では話題になりません。
短距離系自転車はマイナーです。
現在の国内のスポーツチャリンコのトレンドはロードバイクに集中します。話題はこれを中心に展開する。
で、アマのロードレースでは短距離のスピードはそんなに重視されません。ゴール前スプリントは上級者向けのスキルですし。
そんなわけで日本のホビーライダー間の自転車の速さ=中長距離の平均スピードとなります。
速度差の訳
自転車経験者にはロードバイクとクロスバイクのちがいは明々白々です。
- ロード=競技・スポーツ用品
- クロスバイク=日用、フィットネス用品
ロードにはレースがあって、プロがいます。クロスバイクにはレースがないし、プロがいません。
クロスバイクをおもしろおかしくカスタムして、ブログやYoutubeにアップして、ほそぼそと小銭を稼ぐ・・・という人がクロスバイクのプロでしょうか?
ロードバイクとクロスバイクの違いはフレームの設計です。細部の寸法が異なります。ロードはスポーツ向け、クロスは日用向けです。
一部のファンタジックな高級クロスバイクは入門用ロードバイクに勝るとも劣りません。が、基本方針は普段使い、フォットネス、通勤通学です。
フロントフォークの差
ものには相場があります。大手自転車企業のメーカー物の新車価格は以下の通りです。
- クロスバイク=5万~
- 電動アシスト=10万
- ロードバイク、MTB=10万~
- E-bike=20万~
ロードバイクのフレームもクロスバイクのフレームもほぼ同じ素材、同じ工程で製造されます。コストはそんなに変わらない。これに5万の差は出ません。
例外がフロントフォークです。クロスバイクのフォークはアルミ製ですが、ロードバイクのフォークはカーボン製です。
重量、振動吸収、美観のすべてがアルミフォークに勝ります。アルミフォークの乗り味はかっちかちです。
このかっちかちのアルミフォークにロード系の細いタイヤを使うと、エアボリュームを上げられず、路面の振動をうまくいなせません。
で、乗り味の改善を図ろうとすると、タイヤを太くして、空気量を増やし、クッションを稼がないといけません。
しかし、タイヤが太くなると、リムが太くなって、重量がかさみます。クロスバイク系鉄下駄の爆誕です。
変わらない?速度
ロードバイクの脱初心者の目安が30km/1hです。マラソンの10km/50mのようなものですね。
これはそこそこのパフォーマンスです。達成者は全体の7割くらいでしょうか。
一般的なロード乗りの平均速度は25km/1hくらいです。原付よりちょい遅い領域。30kmオーバーでびゅんびゅん行く猛者はまれです。
体力でなんとかする?
自転車の初心者はロードを使っても、30kmをキープできません。1時間はむりゲーです。フィジカルはそんな一瞬で向上しません。
一方、ロードバイクを30km/1hで駆れる中級者はクロスバイクで30km/1hを維持できます。もちろん、疲労や負担は大きくなりますが。
短時間のタイムリミットの中ではロードバイクもクロスバイクもそんなに変わりません。
しかし、趣味のサイクリングは長丁場のアウトドアです。1時間では終わらない。
速度のびみょうなサバ読み
時速29kmと時速30kmの差はたったの1kmです。通常の感覚では誤差の範囲でしょう。とくにソロライドで走ると、速度差を実感できません。
他方、チーム走、集団走では1kmの速度差は歴然です。1時間で1kmの開きは1分で16m、10秒で2.7m、5秒で1.3mになります。ほんの数秒で一馬身差だ。
「ロードもクロスもあんまり変わらん。1、2kmしか変わらん」
2kmの差はすでに別次元です。28kmは30kmの93.33%です。比率では6%強の差です。100点と93点が変わらない?
それぞれをx5しましょう。
- 100×5=500
- 93.3×5=466.5
志望校が変わりますよ。
街乗り速度
ロードバイクは中長距離専用のマシーンです。クロスバイクのようなマルチパーパス万能グッズではありません。
ロードの得意な場所はわりと限定的です。きれいな舗装路、郊外の道路、サイクリングロードです。
そのほかの場所では特性が活きません。オフロードはもちろんですし、都会の道路、駅前の繁華街、狭い細い生活道路などが苦手です。
これらの場所ではロードバイクは大幅な頭打ちを食らいます。信号のストップ&ゴーは典型的ですね。
完全一時停車は本来のロードレースの動きにはありません。イレギュラーです。これが平均速度をごっそり下げます。
結果、正味の移動速度は20km/1h程度に下がり、クロスバイクのラチェット音が後ろから聞こえます。
実は自慢?
一定レベルの自転車の経験者はロードバイク並みの速度でクロスバイクを駆れます、時間を問わなければ。
一部の人間はこれを意図的に「変わらない」とうそぶいて、暗にマウントを取りに行きます。
そもそもスポーツ界は見栄とはったりと嘘の巣窟です。自転車界も例外ではありません。ゆるポタはゆるくなく、坂はすぐに終わらず、貧脚は剛脚です。
「ロードバイクもクロスバイクも変わらない」
こういう発言をする人はたいてい要注意人物です。