Sky has announced that 2019 will be the final year of its involvement in cycling, drawing to a close an association spanning more than a decade of unprecedented success.
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— Team Sky (@TeamSky) December 12, 2018
2010年代のロードレースのシーンを象徴するチームがTEAM SKYです。イギリス籍のワールドチームです。
スポンサーはSKY、チームカーはジャガー、エースはイギリス人てオールイギリスをつらぬきます。
創設は2009年、2012年にウィギンスがツールドフランスを制覇し、史上初のイギリス人ツール王者の栄誉を勝ち取ります。
2013、2015、2016、2017にはクリフルさんが飛び石4連覇の偉業をはたします。2018の王者は同チームのゲラント・トーマスです。
とまあ、2010年代のツールドフランス=ツールドスカイの様相を呈します。布陣はザ・盤石です。対ツールシステムが完璧に構築されました。
ほかのチーム、運営側さえがスカイ対策をあれこれ講じますが、特段の成果を果たせません。イギリス嫌いのフランス人的にはこれはおもしろくない。
2018年12月12日、この象徴的なチームが衝撃的な発表をしました。なんと2020年に看板スポンサーのSKYが自転車レースから撤退します。
ときをおなじくしてSKYの株式を持つ21st Century Foxも自転車レースのスポンサーから撤退します。メディア大手の後ろ盾がごっそりなくなります。
結果、2019シーズンがこの対ツールドフランス・カチマクリ・スーパーシステムTEAM SKYのラストシーズンとなります。その繁栄は青天井ではなかった!
TEAM SKYの公式サイトのプレリリースの撤退の理由をざっくり参照しつつ、その裏事情をゲスくかんぐりましょう。
TEAM SKYの時代
2008年、SKYが自転車レースに参戦します。目標は5年以内のツールドフランス出場、そして、イギリス人初のツール王者です。
で、これは2012年に同国のスター選手、ウィギンズ卿の手で果たされます。イギリスの自転車ファンは歓喜にわきました。フランス人はおつやムードです。
SKYのいきおいはとどまらず、ツールの常勝軍団になり、数々の勝利をはたします。直近のほかのチームの勝利は2014です。アスタナのニバリが勝ちました。
なぜかこの年にはSKYは表彰台をすら逃します。2014は例外的に不作の年です。フランス人が留飲をさげました。
「ナポレオン一世時代にはイタリアは実質フランスやったから、実質ツールがフランスに戻ってきたで!」
フランスのロードファンが実質沸いたとか沸かなかったとか、実質。
で、2015-2017はクリフル、2018はゲラトマです。年度別のリザルトはSKYx4…てなります。アームストロングx7以来の快挙です、ははは。
実際問題、最近のロードファンやサイクリストはSKYの活躍しか拝見しません。ツールドフランス=SKYのイメージでしょう。で、バイクはピナレロ! ドグマ!
この数年のもっとも安易なツールのまとめは『SKY、クリフル、ピナレロ、ドグマ』になります。ライトユーザーの率直なイメージはそんなです。
まさに2010年代はTEAM SKYの時代です。
SKY撤退の理由
SKYの撤退の理由はロードレースに定番の模範的回答です、『広告効果がない』と。マイナー競技の宿命です。
英国は自転車の母国のひとつです。自転車競技はさかんです。全ジャンルにスターがいます。ホイ、クリフル、ダニー、レイチェルなどなど。
自転車マイナー、広告効果ビミョー
しかし、英国は近代スポーツ全般の母国です。サッカー、ラグビー、テニス、ゴルフはイギリス発です。
これらはザ・メジャースポーツですし、自転車競技よりクラシカルです。サッカーの競技規則は1863年に確定し、テニスのウィンブルドンは1877年に開催されました。
で、現代型自転車の完成は19世紀末-20世紀初頭です。ツールの第一回は1903年です。英国人的観点にはメジャースポーツより若いスポーツです。
英国プレミアリーグの広告効果は絶大ですが、ロードレースや自転車競技のそれは微々たるものです。てか、おそらく持ち出しの赤字でしょう。
そのおかげでワールドチームの名前はころころころころ変わります。チーム名はスポンサー次第です。
2018シーズンにはBMCレーシングが解散して、CCCチームに転生しました。Quick StepはDeceuninck Quick Stepへ、ロットNLユンボはチームユンボへ。
むしろ、一社提供のTEAM SKYの10年はロードチーム的には異様に長命です。SKYがよくしんぼうしました。
選手の給料が高騰
TEAM SKYはスーパーチームです。クリフル、ゲラトマは単独で優勝をねらえます。それが二人もいます。派閥が・・・いや、給料が高騰します。
最近の実績は横ばい=優勝です。サラリー減少の理由は選手にはありません。この場合、キープか右肩上がりがふつうです。
で、TEAM SKYのチーム運営費はざっと50億円です。平均的なワールドチームが30億前後です。選手の給料がひびきます。
もっとも、サッカーのメッシやクリロナ、おなじレースもののF1のイギリス人スターのハミルトンは一人でこのくらいを稼ぎます。
自転車選手のトップスターの給料は数億です。高くない。
SKYのイメージは下がった?
問題はあくまで費用対効果です。世間への認知度やTEAM SKYのイメージの向上度です。
スカイ的には「自転車チームの広告塔としてのコスパはイマイチだったネ」てとこでしょう。
あと、ウィギンスにもクリフリにもふりかかるスキャンダルのかげです。ロードレース界の風物詩、そう、ドーピングですね。常勝軍団にはこの疑惑は必須です。
これのうらでSKYはしれっとクリケットにスポンサーをはじめました。英国、インド、パキスタンなどでは超絶人気競技です。
チームの解散が濃厚
TEAM SKYは有料放送のSKYの一社提供です。で、このかんむりスポンサーの撤退は50億の予算の消滅を意味します。
で、これをぽんて出す酔狂な企業や金持ちがひょいと現れるかはびみょうなところです。そろばんをはじくと、自転車チームを持てません。
チーム規模はかくじつに縮小しますし、チームの解散が現実的になります。チーム解散て感覚は他スポーツの観点からざんしんなものです。
ロードチームにはホームらしいホームは存在しません。ハイシーズンには世界各地に転戦します。そして、英国にはグランツールがない。
サッカーチームは規模を下げて、二部三部四部五部あたりでもしぶとくながなが存続します。解散消滅てのはよっぽどです。
ロードチームはサッカーチームみたいな地元密着型ではありません。スポンサー撤退=消滅です。金の切れ目が縁の切れ目だ。
SKYファンはどうする?
日本の自転車トレンドはロードバイクです。これのおこりは2010年前後です。弱虫ペダルの連載開始、TEAM SKYの創設とかさなります。
SKYファン、クリフルファン、ピナレロファンはすくなくありません。はて、レプリカージャージをどうしましょう?
2019シーズンまで現役でふつうに着れますが、2020シーズンにはいまやなき懐かしのチームのユニになってしまいます。シャチの背中に哀愁が・・・
他方、フランス人は大歓喜です。イギリスのマイナス=フランスのプラスです。巨人の負け=阪神の勝ちの構図ににます。
「ワールドカップも戻ってきたし、ツールもじきにフランスに戻ってくるで!」