ロードバイクはスポーツ用品です。フィットネスグッズやアクテビティアイテムではありません。自転車競技、公道長距離走用の専門の機材です。
競技用機材の本質はパフォーマンスの向上です。そのほかは二の次になります。先鋭化、専門化、本格化は汎用性、実用度、気軽さの犠牲で成り立ちます。
長所と短所はコインの裏表です。
スポーツバイクブームやフィットネスブームのいきおいに任せて高いロードを買ってしまう前にこの競技用機材の短所、欠点、デメリットをさらっとおさらいしましょう。
ここがだめだよ、ロードバイク
ロードバイクの発祥の地はヨーロッパです。仏、英、伊が母国の座を争います。
3大トップレースはフランス開催のツールドフランス、イタリア開催のジロデイタリア、スペイン開催のブエルタエスパーニャです。
ロードバイクの車体的な特徴です。
- ドロップハンドル
- 軽いフレーム
- 外装変速機
- 細いタイヤ
ぱっと見の印象は競輪の車体にそっくりです。むしろ、そちらの方が日本人にはおなじみの自転車競技です。”KEIRIN”はグローバルワードです。
しかし、”KEIRIN BIKE”はドロップハンドルでこそあれ、変速なし、ブレーキなし、単距離瞬発系の車体です。長距離巡行系のロードバイクとは似て非なるものです。
サドルが固い
スポーツバイクの最初の難関がサドルのかたさです。ママチャリからクロスバイクやロードバイクに乗り換えると、サドルのクッション性のなさに困惑します。
この硬いサドル適応性、寛容さがその後のサイクリング人生やスポーツ感を左右します。ダメな人はもうそこで諦めます。
乗りなれた人、ベテランライダー、自転車店のスタッフの「じきに慣れる」は根性論かポジショントークです。硬いもんは硬い。
プロサイクリストの有名な言葉があります。
「速く走れるようにはなるが、楽に走れるようにはならない」
前傾がきつい
ロードバイクのアイコンはドロップハンドルです。
ハンドルバーが下方に大きくカーブします。ここを握れば、体を前に倒せて、スピーディな前傾姿勢を取れます。
が、この前傾姿勢は人体の構造には過酷です。
このように首の向きが不自然になります。一説ではロードバイクの上半身の負担はパソコンや事務作業の数倍です。
実際に肩、首、背中、腰、肘は非常に疲れます。痔と腰痛は自転車乗りの持病です。
個人的には5時間のPC作業より1時間のロードバイクの方が肩、首、背中にはハードです。
視野が狭い
姿勢が前傾になると、視線が低くなって、視野が狭まります。『ロードバイクの視野の悪さはながらスマホに匹敵する』という説さえがあります。
ロード乗りはその劣悪な視界で公道を速く駆け抜けます。必然的に事故の危険性は跳ね上がります。
そして、上半身や首と同じく眼球も見上げる動作には向きません。前傾姿勢は人体には非常に不健全です。
意識が狭い
健全な精神は健全な肉体に宿る、意欲は行動の中で出てくる・・・そんなふうに肉体と精神は表裏一体で、相互に干渉しあいます。
とすれば、視野の狭さが意識の狭さにつながるのは必定です。ロード乗りの排他性、独善性、保守性は偶然ではありません。
さらに日本人の島国根性が加わると、コチコチの頑迷なモンスターが誕生します。あなたの町の自転車屋の大将は気さくな人ですか? うちの近所の大将は四六時中に仏頂面です。
ウェアがださい
フォーマルなロード乗りのサイクリングウェアはピチピチのタイツやショーツです。身体の線があからさまに浮かび上がります。しかも、タイツの下はノーパンです。
少なくとも、スポーツウェアでおしゃれをしようと思って、ロードバイク系のウェアを手にすることはありえません。
成人男子がふつうにそう思います。女子受けは壊滅的です。ピチピチウェアは年頃のお姉さんにはまず受け付けません。「キモイ」の一言でおわります。
「世間は他人のウェアなど気にしない」
それはそうです。世間は自転車乗りには無関心です。ウェアも気にしませんし、コンポのグレードも気にしませんし、パワーメーターの数値も気にしませんし、走行距離も獲得標高も気にしません。
が、意図的に自転車ウェアを判断してもらうと、「ダサい、キモい」という評価をもれなく頂けます。
あと、メーカー物のウェアが高すぎる。
そんなに速くない
ロードバイクは競技用機材ですが、自転車の域を出ません。100km、200kmみたいなむちゃくちゃな速度は夢のまた夢です。
きっちり交通規則を守って、ふつうに信号でストップアンドゴーすると、20-25km前後の平均速度に落ち着きます。
また、下り坂ではロードバイクもクロスバイクもMTBもママチャリもそこそこの速さで駆け降りられます。
結局、公道走行では速度指定とそのほかの通行車両で速度は頭打ちになります。
平坦なサーキットではごちゃごちゃした多段系のロードバイクよりシンプルな競輪やピスト方がパワフルでスピーディです。
タイヤが細い
ロードバイクのもう一つのシンボルが細いタイヤです。
地面との接地面積を少なくして、摩擦を減らして、低抵抗で転がります。軽快で高速だ。
見た目の細さのとおりに脆弱で神経質です。ちょっとやそっとの段差や異物でパンクします。
そのため修理セットは遠出の必須アイテムですし、出先のパンク対応はサイクリストの基礎技術です。
値段が高い
ママチャリの相場は1万、クロスバイクは5万、ロードバイクは10万円です。自転車的にも割高ですし、スポーツ機材的にも最上位クラスの高級品です。
1万円を出せば上等なランニングシューズを買えますが、10万円を出してもプロ仕様のロードバイクを買えません。
ロードバイクの価格は世間にはまったく理解されません。10万の自転車は驚かれますが、50万のチャリは引かれます。
近親者はしばしば最強の敵となります。奥さんの顔色を伺いながらホイールをこそっと買うサラリーマンサイクリストがこの国には溢れかえります。
でも、これはお互いさまです。ブランド好きの嫁さんが100万のエルメスや30万の美顔器をこそっと買ったら、チャリ好きの旦那さんは発狂しません?
ロードレースのイメージが悪い
ロードレースにはドーピングの影が付きまといます。
アメリカの元プロのランス・アームストロングは世界最高峰のツールドフランスを7連覇した後にドーピングで永久追放されました。
この一件で1999-2005のツールドフランスの優勝選手は該当なしのN/Aになります。ロードレース界の黒歴史です。
偶然か必然か一般のスポーツニュースで自転車レースが話題になるのは不祥事か事故のネタばかりです。おかげで世間のスポーツバイクのイメージは芳しくありません。
そもそも自転車選手の知名度がほぼ皆無です。ペーター・サガンやユキヤ・アラシロをほんとにだれも知りません。
元競輪選手の世界の中野浩一や銀メダリストの長塚、われらのアイドル橋本聖子などのOB勢の方がまだ有名です。
また、レース会場では選手同士の先頭争いで罵声が飛び交います。
「どけ!」
「ゆずれ!」
こんな言葉は日常茶飯事です。紳士のスポーツのイメージとはかけはなれます。
そして、プロのレースでは走行中に走りながら談笑をし、食事をし・・・小用を足します。ロードレースにはトイレ休憩はありません!
ロンドン五輪では参加選手がレース中に市街地の植え込みで一斉に立ちションする衝撃の光景が流れました。
あれがロードレースの常識であれば、世間受けは永久にありません。