自転車のタイヤシステムは主に三種類です。
MTBはチューブレス、トラックバイクや競輪はチューブラー、平均的なロードバイクやクロスバイクやママチャリはクリンチャーです。
スタンダードなロードバイクのタイヤは歴史的にチューブラー→クリンチャーと来て、2015年頃から最後発のチューブレスへ移行します。
パンクしないノーパンクタイヤは発展途上です。あと、あれは確かにパンクしませんが、摩耗しますし、破損します。
ノーパンクタイヤ=ノーメンテタイヤではありません。→ノーパンクタイヤが普及しない訳 値段と耐久性と自転車屋の事情が・・・
以下ではオーソドックスなクリンチャーのロードバイクのタイヤ交換を解説します。
タイヤ交換の時期や値段
クリンチャーはほかのタイヤより頻繁にパンクします。おのずと着脱の機会が増えます。主な場面は5つです。
- パンク修理
- チューブ交換
- タイヤ交換
- リムテープ交換
- ニップル交換
チューブのトラブルはさらに多彩です。
- 摩耗パンク
- リム打ちパンク
- 噛みこみパンク
- 穿孔パンク
- スローパンク
ロードバイクの細タイヤ&薄チューブのトラブルはおもにリム打ちパンク、噛みこみパンクです。ママチャリは摩耗パンクの常習犯です。→自転車のパンクの種類
どのくらいで交換する?
ほかの自転車のタイヤより軽量なロードバイクのタイヤは非常に華奢で短命です。後輪のトレッドはスキッドや急ブレーキで簡単に剥げます。
一般的な目安はタイヤの模様が消えたころ、1年、5000kmなどです。
また、ゴムは湿気や紫外線で自然に劣化します。数年単位の長期保管には向きません。
タイヤ交換の値段
タイヤ交換の工賃はまちまちです。町の自転車屋とホームセンターの自転車コーナー、プロショップでは相場が異なります。
これは島忠ホームズの自転車コーナーの工賃表です。
前輪800円、後輪1500円です。後輪の高さは主にママチャリの整備性の悪さのためです。
タイヤ交換 取り外しの部
自転車のタイヤ交換は取り付け、取り外しを含みます。また、手順はチューブ交換、パンク修理、リムテープ交換と重複します。
タイヤやチューブや工具を用意する
タイヤ交換、チューブ交換のセットです。
タイヤレバーと予備チューブはサイクリングのおともです。予備タイヤまで持ち歩く人はまれです。
片やチューブラーユーザーは予備タイヤ、粘着テープ、シーラントを欠かせません。構造上、現場でのチューブの交換が不可能ですから。
自転車からホイールを外す
では、タイヤ交換作業に移ります。はじめにホイールを車体から外します。スポーツバイクのホイールの着脱は簡単です。工具なしでぱかっと外れます。
空気を抜く
バルブキャップを外して、ヘッドをゆるめて、ピンをぷしゅっと押せば、空気を抜けます。
ピンを押さえながら、全体をむぎゅむぎゅして、余分な空気を抜いて、タイヤをべこべこにします。
タイヤのふちを外す
クリンチャーのタイヤのふちはホイールのリムの鉤状の『かえし』にひっかかります。これが”Clincher”の名前の由来です。
で、このふち、ビード外しが最初の山場です。レバーはタイヤやチューブやリムへの負担をかけます。手で外すのが理想的だ。
しかしながら、ロード系の細タイヤのリムはほっそほそ、ビードはかっちかちです。手で外せないなら、タイヤレバーを使いましょう。樹脂系のものがおすすめです。
二本のレバーをタイヤのビードとリムのかえしのすきまに当てて、こじるようにめくりあげます。
このとき、両方を同時に「えいや!」とやらないと、あとからもう一方を差し込めません。
こんな風にとっかかりを作って、片方をリム沿いにびゃーっとやります。ある程度までビードを解放すれば、すきまに指を入れて、びゃーっとできます。
リムナットを外す
スポーツバイクの空気入れの口金は仏式です。実用車は英式です。このバルブの形状がその自転車の由来を暗に示します。
で、この仏式タイプにはねじ切りありとねじ切りなしがあります。これはねじ切りタイプです。
ねじ切りタイプにはこういうナットが付きます。根元の緩み防止の小物です。チューブレスでは必須です。もちろん、これを取らないと、チューブを外せません。
Vittoriaなどのつるぺたタイプはノーナットです。
リムナットを外して、タイヤとチューブをホイールから取っ払いました。
ここまでの流れはチューブ交換、パンク修理、リムテープ交換の序盤と丸被りします。
タイヤ交換 取り付けの部
今回はタイヤ交換です。新しいタイヤを取り付けましょう。
新品タイヤの下ごしらえ
硬いタイヤをすんなり嵌めるための秘策が世に伝わります。
- チューブ入れて空気入れて一晩放置する
- 物干しざおにタイヤを吊るして重しをかける
- タイヤをぐいぐい引っ張る
- ぬるま湯で温める
- ビードをちょっと濡らす
- 滑り止め軍手装備
- やわらかいタイヤを使う
軍手、ビード濡らし、空気入れチューブ一晩放置がおすすめです。ひっぱり系の下ごしらえは諸刃の剣です。チューブレスにはよろしくない。
はなから硬いタイヤを選ばないのも一つの手です。
まあ、タイヤの個体差やホイールのリムの相性がからむと、着脱の手間はほんとに一期一会になりますけど。
進行方向をチェック
一部のタイヤには進行方向、転がり方向の指定があります。矢印や”Rotation”の記載がサイドのどこかにあります。
逆につけてしまうと、せっかくのみぞやブロックパターンの機能をフルに活かせません。セミスリック、ブロックタイヤでは回転方向をミスらない。
ただし、リムブレーキ用のフロントホイールには左右の指定がとくにありません。逆付けで解決します。裏の裏は表です。
ロゴ合わせ
メーカー販売の完組ホイールはだいたいロゴ入り、ステッカー付きです。
これはレイノルズのリムです。ロゴはステッカーです。
で、こんなふうにバルブ、リムロゴ、タイヤロゴを合わせると、見た目をぴしっとコーディネイトできます。
じゃあ、タイヤのロゴを見て、男前な配置を考えましょう。ぼくは左右対称を採用します。
OKです。それから、片側のビードをリムにぐるっとはめます。ここはそんなにたいへんじゃありません。
チューブを入れる
作業は大詰めです。チューブを入れましょう。
事前に空気をすこし入れると、ヨレやネジレを予防できます。が、かんかんに入れすぎると、タイヤのなかにうまく収められません。臨機応変に。
しごく
で、チューブをまるっと納めて、もう片方のタイヤのビードをはめます。
ホイールを両手で押さえつけて、タイヤとチューブのたるみを取りながら、上部から下部へしごくようにムギュムギュします。
このしごきが足りないと、最後の部分がぱつぱつになります。むだな腹肉をこそぎおとすようにしごきまくりましょう。
理想は『太もものセルロースをひざの方へ寄せやる感じ』です。
タイヤとチューブのたるみをしっかりしごけば、大方の細硬クリンチャーを手ですぽっとはめられます。
まくる
グローブやタオルを当てて、摩擦を強くすれば、まくり上げのとっかかりを作れます。ぼくは親指で支えて、ほかの指でまくり上げます。
下記の画像の赤矢印の丸ポイントが未装着のビード部分です。
イメージは『ビードの角をぶりんッ!』です。指の腹でまくり上げるようにはめ込みます。
ほんとの強敵や火急の場合にはタイヤレバーが出動します。
レバーのさきっちょをリムのフックにひっかけて、上にまくり上げます。
このとき、レバーがチューブをかみこむと、薄手のゴムはかんたんに破れます。80g以下の軽量チューブはほんとに一発でやられます。
ミニベロのロード系タイヤの着脱はなおさらです。タイヤが小径ですから、ビードが余りません。パッツパツのギッチギチです。
で、タイヤレバーでむりやり入れて、かみこみパンク! パンク修理、付けなおしのループがしばらく続きます。タイヤレバーこそは諸刃の剣です。
チューブチェック
作業の山場は『しごく』と『まくる』で終わりました。あとはラスボス戦あとのイベントバトルのようなものです。が、油断はしょうもないゲームオーバーを招きます。
空気を少し入れて、外周をチェックします。
チューブがどこかにぴろって垣間見えれば、それは挟み込みパンクの前兆です。タイヤを揉む、挟む、寄せるetcでチューブを完全に非表示にしましょう。
クリンチャーチューブの構造上、バルブの近辺でゴムの偏り、ヨレ、ねじれが多く発生します。
空気をちょろちょろ入れながら、バルブをしっかり押し込むorリムナットを増し締めします。
「おれのパワフル♡ビューティなポンプアップで7barまで一気に行ったるで!! ハッスルハッスル!」
空気入れは筋トレではありません。脳筋ピストンは厳禁です。
理想の空気圧にする
以上のポイントをパスして、ようやく本気でシュコシュコできます。理想の空気圧までポンプアップしましょう。脳筋ハッスルOKです。
ロードバイクの目安は7barです。が、げんみつな空気圧はタイヤ、コンディション、スタイルによります。→自転車タイヤの空気圧は車種によらない
で、最後のとどめにナットを締めて、バルブを締めて、キャップを締めます。
完成や!
一連の作業を出先で20分以内に素手でやれるようになれば、いっぱしの自走チャリダーを自称できましょう。
おすすめのタイヤレバーはパナレーサーのやつです。タイヤレバー界のロングセラーでベストヒットですね。