一般的な自転車の足回りはノリモノのなかでは例外的なチューブドシステムです。インナーチューブでタイヤを膨らませます。
実用車の一部がノーパンクタイヤを採用します。が、これはパンクをこそ起こしませんが、ふつうに摩耗して、劣化します。今のところ、明白な利点はありません。
オフロードのMTBではチューブレスが主流です。正確には汁入りのチューブレスレディですが。
美人薄命、ゴム短命
チューブドシステムの最多のトラブルがパンクです。インナーチューブは薄手のゴム製です。手応えはちょっと丈夫なゴム風船です。
軽量タイプのものはちょっとやそっとでパンクします。ざつに扱うと、多種多彩なパンクのフルコースを体験できます。
また、1万円の安物チャリの安物チューブはぽんこつです。おなじくちょっとやそっとでパンクします。乗り手の無関心が拍車をかけます。
チューブの原料のゴム自体が高耐久の素材ではありません。経年で劣化します。水分、乾燥、日光が苦手です。
パンクの種類
ぺろぺろの薄手のゴム製品がノーメンテで長く性能を維持できないのは必然です。しかし、熱心なチャリダー以外は取扱いに特段の注意を払いません。
初歩のイージーな空気入れさえが半年に1度、1年に1回です。歯磨きを1か月に1回しかしないで、虫歯を予防できましょうか? 無理です。
歯医者に行くのは虫歯になってからです。チャリ屋に行くのはパンクしてからです。ふだんのお手入れ、予防、ケアはおろそかです。それが世間の感覚です。
摩耗パンク
自転車のチューブは内圧でタイヤにぴったりと張り付きます。しかし、多少のすきまは生じます。その部分がずれると、摩耗が起こります。これは靴擦れに通じます。
で、空気圧が下がると、余計なすきまが増えて、ずれの機会が多くなります。あげくにチューブがあちこちですり減って、パンクが発生します。
摩耗パンクの目印はゴムのカスです。消しゴムのカスみたいな粒々のゴムがわさわさ出て来ます。家のママチャリのタイヤを開けると、だいたいこれを拝めます。
「月一で空気を入れなさい! 空気を! あなたの自転車でしょうが!」
と口を尖らせましょう。
スネークバイト
スネークバイトは厨二風のスタイリッシュな技名のように聞こえますが、パンクの一種です。別名は『リム打ちパンク』です。
段差や障害物でタイヤが局所的にへこんで、ホイールのリムに底打ちします。その際、緩衝材のチューブが板挟みに噛みこまれて、ざくって裂けます。
このゴムの裂け目が蛇の噛み跡のようなハの字型の傷になります。で、スネークバイトです。
ママチャリや軽快車はそんなに速度を出しませんが、おおらかなクロスバイクやロードバイクはえらい速度で歩道の段差を爆走します。はてに毒蛇の餌食になります。
これの原因も空気圧の不足です。オンロード用のきゃしゃなタイヤとへこへこのチューブで段差に突撃すれば、パンクの一つや二つを禁じえません。
度が過ぎると、リムがダメージを受けます。段差に気づかなくて、フロントを上げ忘れるor速度を落とし損ねて、「ボカーン!」てやっちゃうとか。
ピンホールパンク
ピンホールパンク、穿孔パンクは一般イメージのパンクです。なにかがタイヤとチューブに刺さって、小さな穴があいて、空気がぷしゅーと漏れます。
しかし、このパンクは上記二つの例よりマイナーです。パンクの全体の10%前後です。摩耗パンクとリム打ちパンクの二強には全く及びません。
舗装路にはたくさんのノイズやダストが点在します。きれいなさらピカの道路もサーキットではありません。三日でゴミが散らばり始めます。
これはなにかのプラスチック片です。まあ、みごとなカニ爪です。コンチネンタルの街乗り用の高パンクタイヤをぶちぬいて、チューブに穴を開けてくれました。
オンロードでは鉄片、ガラス片、ワイヤー片、ホッチキスの芯、画鋲、釘、ネジ、釣り針などなどがピンホールの常習犯です。
オフロードでは木の枝、砕石、磯辺のウニ、山間の栗、砂漠のサボテンとかです・・・いや、ウニと栗はシャレですが、サボテンパンクは海外の乾燥地帯ではあるあるです。
日本の山間では自生の栗はそんなに見かけません。松、杉、ナラ、ブナ、ヒノキ、竹、笹がメインです。
逆に海外では珍しい人口砕石が国内の林道ではよく使われます。これはタイヤにはそんなによろしくありません。自然砕石よりエッジがシャープですから。
小さなピンホールは目に留まりません。ゴム地の黒さの中に傷がまぎれてしまいます。たよりは空気漏れの音とバケツ&水です。
サイドカット
サイドカットは文字通りのタイヤやチューブの側面の切れ目です。ライン上の傷が連続的に入ります。
こちらはオフロードの定番トラブルです。主犯は木の枝、木の根、岩肌、落石です。タイヤがこれに引っ掛かって、パックリ裂けます。
舗装路ではこのサイドカットはレアケースになります。容疑者が路肩の街路樹やガレージの柵のほつれた金網くらいしかいません。
そして、あまりにすっぱりきれいなサイドカットは多分にヤンチャないたずらです。カッターでさくっと、千枚通しでぶすっと。マンションや団地の駐輪場で多発します。
ドロップハンドルの自転車はその特徴からすぐにイタズラの標的になります。屋外駐輪には注意しましょう。
バーストパンク
チューブはたまに「バーン!」と破裂します。これがバーストパンクです。
要因は熱膨張とか噛み込みとか走行中の脱輪とかです。ちなみにこのバーストパンクは脱輪のたまものです。タイヤが外れて、チューブがでろんとはみ出ました。
自転車のインナーチューブはタイヤの中では高圧に耐えて形を維持しますが、むき出しでは風船みたいに際限なくふくらみます。
これが脱輪で部分的に露出すると、急激な負荷で風船みたいに弾けます。