ロードバイクのアイコンはドロップハンドルです。
この特徴的なハンドルは自転車の専売特許です。単車やそのほかの乗り物には使われません。ロードやピストのシンボルでアイコンです。
お芝居版の弱虫ペダルの演者はこのドロハンを持って、舞台上でライドのシーンを再現します。まさにドロハンこそがロードバイクのスピリッツです。
もろ刃の剣のドロップハンドル
さて、近年ではこのドロップハンドルはオンロードの枠を飛び越えて、ホビー用途のオールロードへ活躍の場をひろげます。
しかし、ドロハンは本質的には競技用機材です。気楽な汎用アイテムではありません。
ドロハンの長所と短所
ドロハンの長所です。
- 前傾
- マルチポジション
- 本格派のふんいき
短所です。
- 視野の狭さ
- 上半身の疲れ
- 重さ
- バーテープ巻きがだるい
まさに長所と短所は表裏一体です。
視野の狭さと上半身の疲れはドロップハンドルの構造的な弱点です。「ロードの視野の悪さはながらスマホと同じだ」という説すらあります。
上半身の疲れは姿勢に由来します。
人体の構造は見上げる動作には向きません。専門家の意見では「一時間のロードの首の負担は五時間のデスクワークに匹敵する」ということです。
しかも、趣味のサイクリングは長丁場です。手、首、肩、背にストレスが出てしまうと、楽しい自転車が拷問器具に一変します。
「でも、フラットバーのハードテイルやクロスバイクは嫌だな~。やっぱ、自転車はロードでしょ!」
そんなミーハーなわがままを叶えるのがフラットバーロードです。
単純な発想では『ロードバイク-ドロップハンドル+フラットバーハンドル=フラットバーロード』ですが、ことはそうたやすく進行しません。
以下でフラットバー化のパーツ類をピックアップします。
フラットバー化のためのパーツ
一般的なロードバイク、ロードレーサーは外装変速付きのドロップハンドルの中長距離型の高速自転車です。
レバーはシフターとブレーキのハイブリッドです、デュアルレバー。シマノ=STI、SRAM=ダブルタップ、カンパ=エルゴパワー。
このタイプのレバーのブラケットや金具の形状はドロップハンドル用です。カーブのところに縦にくっつきます。
フラットバーにはつきません。具体的にはブラケットの外側がつっかえます。
まあ、金具をぎりぎりまで緩めるとか、ブラケットを削るとかすれば、どうにかこうにかぶちこめます。
ためしに横付けで入れました。
取り付けは可能です。しかし、レバーの引きが意味不明になります。小指で引く?! 機能性が皆無です。そして、ビジュアルが致命的にダサすぎる。
つまり、フラットバー化では元のレバーはハンドルとともにお蔵入りになります。
フラットバーハンドルとサイズ
ロードのフラットバー化の最重要パーツはフラットバーハンドルです。ライザーバー化するなら、ライザーバーを用意しましょう。スワロー化、カマキリ化、いずれが同様です。
注意点はバーの中央のふくらみ、ステムのクランプです。フラットバーやライザーバー、実用車系のハンドル界には25.4mmと31.8mmと35mmが混在します。
上の写真のハンドルのクランプの直径はことごとく25.4mmです。
スタンダードなMTBのハンドルのクランプ径はおおむね31.8mmです。これはロードバイクのドロップハンドルのクランプ径と共通します。
一部のハードなジャンルのハンドルのクランプはより太い35mmです。DHとかFRとかです。
また、Dedaなどが35mmクランプのドロハンを展開します。これはピュアロード用でなく、グラベルやアドベンチャーみたいなオールロード用の製品でしょう。
BMXのハンドルのクランプ径は22.2mmです。これはハンドルのチューブの外径と一致します。つまり、BMXのハンドルは凹凸なしのずんどうパイプです。
一方、ドロハンのパイプ外径は23.8mmです。つまり、このフラットバー用のシフターはドロハンには入りません。ロックオングリップも入りません。
- ドロハンの外径23.8mm-その他のハンドルの外径22.2mm=1.6mm
直径1.6mmのギャップは誤差の範囲ではありません。パイプの外周の差はx3.14=5.024mmまで広がります。
おなじ理屈でクランプ部分の25.4mmと31.8mmは別物です。円周を計算しましょうか。
- 25.4×3.14=79.756
- 31.8×3.14=99.852
2cmのギャップが出ます。
手持ちのステムを使いまわすなら、同サイズのハンドルを選びましょう。最近のロードのハンドルクランプは31.8mmです。
シフター
このようにハンドルのパイプの外径はばらばらです。ドロハンのレバー類はフラットバーには付かず、フラットバーのレバー類はドロハンには付きません。
ロード用のメカやブレーキを使い回すなら、フラットバー用のロード用レバーを用意しましょう。シフトの互換はなかなかやっかいです。
メーカーの公式ホームページに互換性のチャートがあります。それとにらめっこしながら、正解の型番を選びましょう。はたまた、メカとシフターを総とっかえするか。
フラットバー用のロードシフターの一例です。
- シマノSL-RS700、SL-4700
- SRAM APEX
11速以上の選択肢はそれほど多くありません。
個人的にはロード系の2×10かMTB系の1×12がおすすめです。フラットバー用のロード系11速が割高ですので。
ブレーキレバー
ブレーキはシフターほどに神経質ではありません。おすすめはAvid Speed Dial 7です。
赤いダイヤルでインナーワイヤーの引き代をこまかく調整できて、キャリパー、Vブレーキ、機械式ディスクブレーキも引けます。
シックな黒ダイヤル版はレアです。
普通のVブレーキ用のレバーでロード用のキャリパーブレーキを引くと、多少の違和感を覚えます。まあ、手の方で加減すれば使えます。
グリップ
ドロップハンドルの仕上げはバーテープ巻きです。フラットバーのそれはグリップはめです。
シリコングリップ、ウレタングリップ、ゴムグリップ、EVAグリップ、コルクグリップ、本革グリップなどなどがあります。質感と手触りはばらばらです。
このグリップの取り付け、取り外しにはせっけん水が有効です。また、この裏技はドロハンレバーのフード外しにも有効です。
お気に入りのバーテープをフラットーバーに巻くのはぜんぜんありです。ドロハン片側分のテープでフラットバーの左右のグリップを作れます。
二重巻き、三重巻きで厚みやグリップの長さをこまかく調整できます。フラットバーにバーテープは意外とおすすめです。
まとめ
フラットバー化のための必須パーツは以下のとおりです。
- ハンドル
- シフター
- ブレーキレバー
- グリップ
ハンドルはクランプ径、シフターはメカとの互換性、ブレーキは引き代、グリップはせっけん水・・・おのおのポイントはそんなです。
失敗例です。
「ハンドルのクランプが違う!」
「変速がガチャつく!」
「ブレーキのタッチ感が変!」
「グリップの手触りが好みじゃない!」