クロスバイクは舗装路用のロードバイクと未舗装路用のマウンテンバイクの中間のような自転車です。
この定説はすでに過去のものです。現在の『ロードバイク x MTB』の答えはクロスバイクにはなりません。
『オンロードとオフロードのクロスオーバー!!!』という長年のキャッチコピーは後発のオールロードバイクにうばわれちゃいました。
現代のクロスバイクはスポーツ用品と日用品のハイブリッド、『スポーツ x ライフ』のクロスオーバー、ごちゃまぜMIXちゃんぽん雑種チャリンコです。
クロスバイクの基本情報
クロスバイクの起源は前世紀末までさかのぼります。ところはアメリカです。この自由の国の天才たちの手で1980年ごろにMTB、マウンテンバイクが誕生します。
その後の10年で一気にブームが過熱化して、ある日にぱんと弾けます。さらに世界的な不況が加わって、自転車の人気が下火になり、在庫があふれかえりました。
で、苦肉の策でオフロードベースのオンロードバイクが作り出されます。これがクロスバイクです。
雑種自転車
その実態は売れ残りの安パーツのちゃんぽん、あまりもののごった煮です。クロスバイクは誕生の経緯からして競技用自転車ではありません。
しかし、これがライトユーザーや一般層に予想外に受けて、ひとつの自転車ジャンルとして世間に定着します。スポーツやレースはむりですが、フィットネスやアクテビティはOKです。
現代のクロスバイクの定義はサンダル以上、運動靴未満、クロッカスやビルケンシュトックのようなものです。まさにスポーツとライフのクロスオーバーバイクです。
クロスバイク=シーラカンス
が、余りもののごった煮の宿命でクロスバイクの進化や変化は微温的です。その基本形式は数十年前から大きく変わりません。
- Vブレーキ
- 135mmエンド
- 3枚リングのフロント変速
これらは30年前のマウンテンバイクの標準装備です。現在のスポーツバイク事情では古風なシステムです。
つまり、クロスバイクは自転車界のシーラカンスです。イマドキなオールロードバイクの登場でそのヴィンテージぶりがさらに加速します。
日本の交通事情にマッチする
このちゃんぽん自転車、クロスバイクは日本の都市部の交通事情に良くマッチングします。
ロードバイクはフォーマルでアカデミックです。パリパリのレーサースタイルは日本の道路事情にマッチしません。
MTBはワイルドです。やはり、街乗りにはオーバースペックだ。ただし、このジャンルにはアーバンフリーライドやストリートトライアルというものがあります。
クロスバイクはそんなふうには特化しません。器用貧乏な自転車です。ゆえに日常の移動手段+αという用途によく合います。
クロスバイクの価格帯
ロードバイクやMTBは本質的には『スポーツ用品』で『競技用機材』です。ロードがフルマラソン用のランニングシューズ、MTBが登山用のトレッキングシューズですか。
この競技用自転車の価格の下限が10万円です。『ピュアスポーツバイク』を求めるなら、10万円を用意しましょう。オールロードの入門機もこの価格に入ります。
で、クロスバイクは例のようにスポーツとライフの間にあります。純粋なスポーツ用品ではない。げんにクロスバイク世界選手権みたいなものはありません。
メーカー物は5万円
この非競技チャリ、セミスポーツ自転車の価格の下限が5万円です。後述のベストセラークロスバイクGiant Escape R3の定価が50000円ですから。
ロードバイクやMTBの下限は10万円、上限は100万円です。限定モデル、記念モデル、特注オーダーは200万、300万にとどきます。10倍越えのインフレはふつうです。
クロスバイクはここまで膨張しません。下限は5万、上限は10万です。で、上限の10万はロード、MTB、オールロードの下限とかぶります。所詮、亜流は本流を超えない。
車体の価格が高くなると、クロスバイクの良さが薄れます。この雑種自転車の持ち味は気軽さです。
5万のバイクは基本的に外置き・野ざらしでしょう。これが10万になると、外置きや野ざらしがNGになります。
気がかりは日光、雨風、盗難、いたずらです。これを危惧して、室内置きやシートカバーをすると、出発前に一手間を取られます。この余分な一手は普段の足には致命的です。
3万以下のクロスバイクはコスプレ
大手自転車企業のメーカー物のクロスバイクの相場はおおむね5万です。値引き、セールで4万にはなりますが、3万や2万にはなりません。
2、3万円の変速機付き、細いタイヤ、ポップなカラーの機体はクロスバイクではなく、クロスバイク風の自転車になります。
amazon、楽天、そのほかの通販の『クロスバイク』カテゴリの売れ筋ベスト10にはこれらのセミクロスバイクが幅を利かせます。
NEXTYLE、GRANDIR、RAYCHELL、ANIMATO、CANOVERや外国の自動車ブランドの名前付きの自転車がこれです。あ、ドッペルも。
これらはルック車です。その本質は競技用機材や日用品でなくて、『ネット通販商材用自転車』です。はたまた、『ホームセンターのチャリコーナー用の商品』です。
ポップなカラー、スポーティ風のデザイン、手ごろな価格、フォトジェニックな商品画像で売るネットショッピング時代の量産自転車です。カラフルな旧ザクですか。
初心者向けのおすすめクロスバイク
クロスバイクは万人向けの気軽な自転車です。日頃の移動手段からサイクリングまでカバーします。
逆にコアユーザー、チャリオタク、熱心な自転車好きには受けがよろしくありません。その中途半端な性質からネット上では侮蔑やヘイトを集めます。
以下では大手自転車企業のオーソドックスなモデルを紹介します。
絶対王者のGIANT Escape R3
GIANTは世界最大の自転車メーカーです。ロード、MTB、ミニベロ、女性用スポーツバイク、子供用バイク、パーツ、ウェア、アクセサリを自前で作れます。
直営のコンセプトストアのGIANTストアは国内で30以上に及びます。もう大手の自転車チェーンです。
さらにパワーメーター、サイクルコンピューター、E-bikeてハイテクスポーツ機器へも進出します。近い将来、シマノ vs GIANTみたいな構図はありえます。
この超大手のベストセラーがGIANT Escape R3です。2020モデルは前年から据え置きの52000円です。
- 標準価格: ¥52,000(税抜価格)
- サイズ : 430 (XS) 465 (S) 500 (M) mm
- 重量 : 10.7kg (465mm)
- カラー :オーシャングリーン, マンゴー, ブルー, ホワイト, ブラックトーン
- 通販 :×
難点は他人とかぶることです。街中でGIANTを見ない日はありません。ママチャリさん、ママチャリさん、一つ飛ばしてGIANTです。そんな出現率です。
ちなみにGIANTは通販NGの自転車ブランドになります。
MTB系本流の流れを汲むTREK
Trekはアメリカの大手自転車屋です。スペシャライズド、キャノンデール、そして、トレックがアメリカ自転車御三家です。ツールドフランスの常連です。
TREKのコンセプトストアも全国各地に点在します。自転車ブランドのコンセプトストアの店舗数は堂々の二位です。
北大阪には大型のTREKショップがひしめきます。アースバイク、一条アルチメイトなどなど。
TREKは総合自転車屋です。自社でカーボンパーツを作れる数少ない自転車ブランドのひとつです。OCLVカーボンフレームですね。
GIANTにないTREKのつよみはハイエンドバイクのパターンオーダーシステムです。”TREK PROJECT ONE”はファンの垂涎の的です。庶民は注文ページで着せ替え感覚であそべます、ははは。
そんなアメリカの雄のクロスバイクはFXシリーズです。FXイニシャル+1~6の数字でグレードが分かれます。最安廉価入門クロスバイクのFX1は55000円です。
- 標準価格: ¥55,000(税抜価格)
- サイズ : S,M,L,XL
- 重量 :12.41 kg(20)
- カラー :Vols,Solid Charcoal
- 通販 :×
2020モデルからFX1はディスクブレーキ化しました! そのせいで価格が大幅にアップします。
TREKもGIANTと同様に国内通販NGのブランドです。日本の自転車小売では店頭訪問、対面販売が基本です。代理店、問屋、メーカーの営業方針、業界の商習慣、ブランド力維持などが理由です。
海外通販、個人取引、並行輸入品、中古は別です。規制は正規小売店の完成車とフレームにかかります。そうゆう商習慣です。
この大人の事情のせいで真・ベストセラーのGiant Escape R3はネット通販では後述のGIOS Mistralに売れ筋王者の名をゆずります。
ビアンキローマとC Sport 1
シアン系の特徴的なおしゃれなカラーの自転車=ビアンキです。このシンボルカラーがCeleste、チェレステです。天空色、空色、神秘的なスカイブルーです。
ヒジョーにチェレってますね~。チェレリまくりマクリスティです。試乗会、街中、イベント会場、いずれで注目を集めます。
なんかこの色の印象がティファニーの箱とかぶります。そのためか女子の人気がぶっちぎりのナンバーワンです。ビアンキ仲間の俗称は『チェレ友』です。
ビアンキのクロスバイクはカメレオンテシリーズとローマシリーズでした。カメレオンテが2019からカタログ落ちして、”C Sport 1″に一本化されました。ローマは継続です。
C Sport1の詳細です。
- 標準価格:¥59,800(税抜価格)
- サイズ :43 47 51 55cm
- 重量 :-
- カラー :C1 – CK16/Black-White Full Matt・KW – Black/ Graph-CK16 Full Matt・UJ – White/Black-CK16 Full Glossy
- 通販 :○
お値段はぐっと上がります。チェレステ代とブランド代です。毎年、このアイコンカラーとブラックからなくなります。それ以外のカラーは売れ残ります。
もうひとつのクロスバイクシリーズがビアンキローマです。2020モデルからディスクブレーキ化しました。
- 標準価格:¥85,000(税抜価格)
- サイズ :43 46 50 54 57cm
- 重量 :-
- カラー :CK16,Black,White,Navy,Matt Dark Grey,Red
- 通販 :△
85000円は最上級クラスのエントリークロスバイクです。
まあ、カメレオンテもローマも本家イタリアビアンキのカタログにはなくて、日本orアジア市場向けのOEM商材ですけど。
がっつり青いGIOS
ビアンキと好対照の濃い青色のクロスバイクがGIOS Mistralです。
- 標準価格:¥51,000(税抜価格)
- サイズ :430 480 520mm
- 重量 :10.8kg
- カラー :GIOS BLUE WHITE BLACK GREY
- 通販 :○
同社はイタリアの自転車ブランドですが、ライバルは同郷のチェレステ屋さんでなく、台湾のGIANTです。現実問題、このGIOS MistralはGIANT ESCAPE R3の代替商材です。
かように大人の事情で『人気ナンバーワン』の定義はあやふやです、ははは。
そんないきさつを抜きに見ても、このGIOS Mistralは優秀なクロスバイクです。定価5万、実売4万台、10kg後半、おしゃれカラー、一応のイタリアンブランドetcetc
折り畳み自転車のTERNが放つクロスバイク RIP
TERNはアメリカの折り畳み自転車屋さんですが、おしゃれなクロスバイクを出します。代表作がTERN RIPです。
Kittdesignという東京のデザイン事務所が設計を手がけます。ここはなかなかマニアックなバイクを仕掛けて、自転車好きをおおと唸らせます。
このRIPは一般的なクロスバイクのホイールの700Cより小ぶりな650Cサイズのホイールを採用します。このため、コントロールがクイックになって、小回りが利きます。
見た目はご覧のとおりです。
- 標準価格:¥79,000(税抜価格)
- サイズ :46 50 54 cm
- 重量 :10.2kg
- カラー :Black,Red,White Silk Polish(83000円)
- 通販 :○
変速数は1×8です。フロント変速がない。これは折り畳み屋らしい仕様です。折り畳みやミニベロはだいたいフロントシングルですから。
KhodaaBloom Rail 700
KhoodaaBloom、コーダーブルームは北欧かオランダの企業みたいに聞こえますが、実際は埼玉のホダカ自転車のスポーツバイクブランドです。HODAKAの”K”を先頭に→KHODAAです。
ここのバイクの売りは『クラス最軽量』です。軽さという分かりやすい要素を前面に押し出して、全国の軽量化主義者の心をつかみます。
実際、ミニベロのRAIL 20はたったの8.4kgしかありません。そして、価格が60000円です。へんな小径車を軽量化カスタムするよりぜんぜん経済的です。
ここのクロスバイクのRAIL 700がまた軽量です。480mmサイズが10kgを大きく切って、9.4kgを達成します。へたなロードより軽量だ。
- 標準価格:¥63,000(税抜価格)
- サイズ :400 440 480 540cm
- 重量 :9.8kg
- カラー :赤、青、黒、白
- 通販 :○
ホダカはGIANTグループでしたが、少し前に再独立しました。しかし、商品の製造元は中国・台湾です。多分、GIANT系の工場でしょう。
FUJI RAIZ
日本発アメリカ籍のバイクブランドがFUJI BIKEです。中堅のしぶい万能スポーツ自転車屋さんです。
2010年台初期の一大自転車トレンド、ピストバイクブームにはここのシングルスピードバイクのFuji Featherが一世を風靡しました。このバイクは根強い人気を誇ります。
FUJIのクロスバイクはPaletteシリーズですが、これは2019モデルでカタログ落ちして、RAIZに生まれ変わりました。
- 標準価格:¥59,000(税抜価格)
- サイズ :15 17 19 21 23
- 重量 :10.8kg
- カラー :赤、緑、白、青、黒
- 通販 :○
タイヤはちょい太の32cですが、フロントフォークとフレームデザインはスマートです。このルックスはクールですね。
ブリジストンORDINA
通学用の自転車のベストセラーはブリジストンアルベルトです。アルミフレーム x ベルトドライブ=アルベルトです。5万のハイエンド生活自転車です。
ブリジストンは日本のタイヤメーカーで、自動車タイヤは国産ですが、自転車関連商品は完成車からチューブまで外注の海外製です。made in 台中。
ブリジストンサイクルのレーベルは3つです。ふつうの無印、ちょいスポーツのグリーンラベル、ピュアスポーツのアンカーです。
クロスバイクはグリーンラベルになります。おしゃれなフロントキャリア付きのマークローザ、スタンダードなCYLVIA、そして、本命のORDINAが三本柱です。
ORDINAはより実用向けの実用的なクロスバイクです。キャッチコピーはメンテフリーです。ポイントは内装ギアとBSおはこのベルトドライブです。
- 標準価格:¥57,800(税抜価格)
- サイズ :420 480
- 重量 :14.5kg(480)
- カラー :E.Xリバーブルー T.Xクロツヤケシ E.Xコバルトグリーン E.Xホワイト
- 通販 :○
重量は堂々の14.5kgです。内装ギア、スタンド、リング錠みたいな後付けのオプションが効きます。そして、ベルトドライブだ!
また、ホイールサイズが”27 1 3/8″です。インチ数+分数のサイズ表記方法はママチャリ系のホイールとタイヤシステムを意味します。ためにチューブは英式バルブです。
で、このORDINAのふんいきは『クロスバイク x ママチャリのクロスオーバーバイク』てものになります。ノーメンテ、トラブルフリーでばりばり使いたおしましょう。
実際、ぼくは最初の本格自転車を買う前にはブリジストンアルベルトを5年間ノーメンテで乗りました。ベルトドライブはチェーンみたいに伸びませんし、錆びません。
おすすめクロスバイクのまとめ
実店舗ではGIANT ESCAPE R3が人気ナンバーワン、ネット通販ではGIOS Mistralが人気ナンバーワンです。
この二つのモデルにはロードバイクのホイールをポン付けできます。基本モードに乗り飽きたら、カスタムで遊べますね。