町でよく見かけるのがハマーとジープのチャリンコです。とくにハマーの黄色い車体は異常にぴっかり見映えします。
まさにこのザ・イエローなやつを見かけない日はないってくらいです。
ハマーのすべてがルック車ではない
少しチャリをかじった人は
「この手の輸入車メーカーの自転車はぱっと見インパクトだけの集金ぽんこつモデルだ」
て、あしざまに評します。ぞくにルック車です。これはスポーツバイク風の安いチャリンコの卑称です。好意的な意味では使われません。
折りたたみやミニベロはまだしもですが、フルサスのMTB風のやつはまさに堂々のルック車です。サスはサスペンション風のアクセです。コスプレ。
で、最近のHummerの99%はこのルック車ですが、オリジナルはふつうのMTBです。2000年ごろのオフロードバイク、Montague Hummerがそうです。
Montagueはミリタリ系フォールディングバイクのメーカーです。ドンキのハマーとは質感がぜんぜん別次元です。
外車ネームのチャリの例外
こんなふうに自動車メーカーの自転車の全部がルック車じゃありませんし、ハマーのすべてが安チャリではありません。
フランスの国民的自動車メーカーのプジョーの原点は自転車製造です。前世紀までばりばりのロードレーサーブランドでした。
もう自転車を自分ところで作りませんが、ちゃんとしたOEMをします。バーディー系のレプリカPACIFICやミニサイズのコリブリが人気です。
高級スポーツカーの代名詞的なフェラーリの自転車の一部のモデルは同イタリアの老舗自転車メーカーのコルナゴ製です。
ほかにベンツやBMWのチャリはそこそこのものです。価格にはぜんぜん見合いませんが、完全なルック車ではありません。
自動車メーカー自転車≒オオトモ
ホームセンターや通販の輸入車メーカーロゴの自転車をほぼ独占的に扱うのがオオトモて会社です。ここの自転車事業部門のGICとGSジャパンが自動車メーカー自転車の元締めです。
どこの会社でしょう? はい、われらのなにわの住之江の会社です。本業は輸入品販売屋さんです。ここと東大阪のドッペルギャンガーがネットチャリの二強です。
GICの最近のヒット商品はルノーのウルトラライトシリーズです。これはルック車ではありません。ダホンベースの日本規格自転車です。例外中の例外です。
それから、中華カーボン折り畳み自転車のSAVAを日本のネット市場に投入します。国内販売分は”SAVANE”になります。
関連企業はオオトモはオオトモでCANOVAR、RAYCHELL、GRANDIRなどなどのセミスポーツ自転車を販売します。
これらの主戦場はアマゾン、楽天、ヤフー、ドンキ、コーナンなどです。自転車専門店やスポーツショップの店頭はアウェーです。
これらは専門店向けの商材ではありません。基本的にネット商材、通販グッズです。商品画像と手頃な価格とポップなカラーとそれっぽいふんいきが決め手です。
- ドロップハンドル
- セミディープぽいホイール
- 折り畳み機構
- サスペンションらしきもの
これらはチャリ門外漢にはそこそこのインパクトを与えます。組み合わせの妙で購買意欲を誘って、マウスをぽちぽちさせられます。100点のネット商材です。
ルック車の見分け方
ルック車をかんたんに見分ける方法があります。ドンキやホームセンターのチャリコーナーの自動車メーカーの自転車はほルック車です。
黄色いドンキで黄色いフルサスハマーを見かけると、「おっ」と色めき立ちますが、こましなチャリンコ屋に持って行くと、細部の安っぽさにこっぱずかしくなります。
つまり、ドンキやホームセンターの自転車コーナーで「おっ」となるのはなにかの錯覚、気の迷いです。せめて、スポーツデポで「おっ」となりましょう。
まあ、ハマーのミニベロのヤンキーとか学生とかはぜんぜんほほえましいものです。
むしろ、棒一個、歯車一個、鎖一本の数グラムの軽量にうん万円をかける方が世間的には不健全でビョーキです。
この世はあいまい表現だらけ
ハマーやジープの自転車はルック車としては非常にただしいルック車です。第一印象で衝動買いをするのはただしい行為です。性能や品質をあーだこーだいうのはお門違いです。
そして、ルック車もそんなにネガティブなもんじゃありません。走って曲がって止まります。自転車は圧倒的に効率的な乗り物です。その恩恵は十二分にある。
「こんなぱちものを買ってあとから後悔して、本格的なロードバイクをきっとずっと買っちゃうよ」
これはちょっとエクストリームな都市伝説です。か、チャリ業界とチャリダーの巧妙なステマでしょう。世界的にはピュアなロードバイクはじり貧ですし。
「2、3万の自転車にまともなものはない」てのも「サンタクロースは実在する!」級のメルヘンです。
げんにぼくはドッペラーでしたけど、ネガティブな印象を持たなかった。オレンジ、黒、折りたたみ、すごいよ! です。
そのあとで乗ったブリジストンの「まとも」なシティサイクルの印象は最悪でした。5万のアルベルトよりホームセンターの10000円の安ママチャリの方がましです、まじで。
この5万のブリジストンの自転車にさえ一種の誤解があります。「ブリジストンは日本の企業だから、ブリジストンの自転車は日本製だ!」てものです。
しかし、実際は日本ブランド≠日本製です。経営の拠点と本社の所在と商品の工場は別物です。純日本製の自転車は5万にはなりえません。10万~です。
つまり、ブリジストンの自転車の実態は『日本ブランドのアジア製の自転車』になります。ルックジャパンバイク!
この手のあいまいさは商売にはつきものです。
- 生=生ビールとは限らない
- カロリーゼロ飲料=ほんとにゼロとは限らない
- 返品OK!全額返金!=特別送料という名目の異常な実質負担金
- スマホ0円!=のちのちに分割払いがてんこもり
- ウォーターサーバー無料!=どこの水源とも分からん中身は有料
ルック車はかわいいものです。
商材的にはOK
ぱっと見の第一印象は勘違いにすぎませんが、絶対チャリ感的なものがないしろうとやライトユーザーにはそれが最大の指標です
「10万以下の革靴は靴じゃない。ただのつっかけ」
「30万以下の時計は時計じゃない。ただの腕輪」
「スマホのソシャゲはゲームじゃない。ただの情弱課金アプリ」
「軽自動車は車じゃない。ただの車輪付きのハリボテの箱」
アカデミックな価値観では万事がこうなります。一理ですが、常識的ではありません。
無根拠なロードバイク至上主義のアンチテーゼとして、ダークネスなチャリ界の一服の清涼剤として黄色いハマーは暗い夜道の窓辺の明かりのようなものです。
自動車屋のハマーはとっくにもうありませんから、この黄色い自転車こそがこれからの未来のハマースタンダードでしょう。
実際、この手のルック車は商材的には大成功です。マウンテンバイクやロードバイクより世間に根付きます。