ニップル交換、振れ取り、スポーク交換、固着ニップル外し、ホイールばらし・・・と来て、本命に参りましょう。ホイールを一から組む、ホイール組みです。
ホイールパーツ
手組ホイールはセミオワコン?
メーカー完組ホイールの登場以前にはスポーツバイクのホイールは手組ばかりでした。自分でパーツを調達してDIYで組むか、ショップに頼んで組ませるか。
しかし、このご時世にはメーカー完組、OEM、中古、中華セミオーダー、通販ストアPBなどのさまざまなパッケージホイールがあふれかえります。手組にわざわざ頼らずとも、よりどりみどりできる。

29erフルカーボンホイールBOOST用
が、この手組文化の衰退はオンロード系のロードレーサーのはなしです。オフロードでは完組が逆にレアです。
この10年で26インチ、29インチ、27.5インチてホイールサイズのトレンドがめまぐるしく変わりますし、さらにこの数年で20mm、30mm、40mmてリム幅が一挙に拡大します。
フロントは29インチのノーマル、リアは27.5のプラス系、みたいな前後異径すらがふつうにありえます。実際にオフロードE-bikeのタイヤトレンドはそうですね。
あと、完組のラインナップが超ハイエンドのプロ仕様か初心者向けのエントリーグレードしかありません。両極端。そこそこのレベルのやつがなかなかない。
そんな複雑な事情からSHIMANOさえがオフロードの完組ホイールから手を引きました。新型XTR M9100シリーズには完組ホイールもXTRリムもありません。回りものはXTRハブだけです。
てことで、今後のオフロードチャリンコライフを考えて、ホイールの手組みをぱぱっとやっつけちゃいましょう。
現実問題、スポーク変形、リム破損はこの一年ですでに現実化しましたし。

リムのけずれ

変形スポーク
こんなささいなことで多忙なのむラボの大将をいちいちわずらわせない。
さいわいこのB4Cにお金はありませんが、時間はたっぷりあります。気分的にはチャリのバラ完もホイール組みもミニ四駆の遠い延長です。
ホイールを組む 下準備編
では、ホイールを組みましょう。工具はこんなです。
- ニップル回し
- 振れ取り台
- スポーク押さえ
- スポークテンションメーター
- センターゲージ
最重要パーツはニップル回しです。かんたんな振れ取り、部分的なスポークやニップルの交換はこれひとつでOKです。

ニップルサイズは15
振れ取り台以下の工具は一気にくろうとぽくなります。使用頻度は数か月に一回か一年に一回でしょう。ホコリカブ率がはねがあります。
が、BBの圧入を月一でこなすこのB4Cはこれらをプラモ感覚で弄り回しましょうから、一切合切を買いそろえても、もちぐされにしますまい。予算は3-5万です。
振れ取り台の売れ筋はミノウラ、パークツール、PWT、GORIXなどです。ミノウラのセンターゲージ付きの振れ取りセットはネットでよく見かけます。
うちのは中華のなぞブランドの3万の振れ取り台です。決め手はダイヤルゲージとホイールの適応サイズです。重さはしっかり4.7kg。ロード用からファットバイクの超ワイドホイールまでOKです。

振れ取り台完成
たしかミノウラの旧型FT-1 COMBOは135mmのハブ幅までしか対応しません。スルーアクスルアダプタは別売りですし。FT-50の評判はビミョーですし、ははは。
ホーザンの旧式の鋳物のやつはさすがにかびくさい骨董品レベルです。やぼったいデザインと色が生理的に受け付けません。
といって、新型のC300は画像から安っぽさがわかります。72900円の商品には見えない。
溶接のあとをもうすこしきれいにできん?!
ピスト用フロントホイールをバラす
ホイール組みはパズルのようなものです。完成形の逆算の土台はリムかハブになります。そこからレイアウトが決まって、さらにスポークのサイズ、ニップルのタイプが確定します。
ことさらに初心者を悩ませるのはスポークのサイズです。リム高、レイアウト、ハブのフランジから適切な長さを計算しますが、最初から最後まで疑心暗鬼にとらわれます。
が、今回は練習です。手持ちの完組ホイールをばらして、それを組み立てましょう。調達の手間がはぶけます。
いけにえはこんなです。Miche Pistard、700cのトラック用のフロントホイールです。

Miche Pistard フロントホイール
1年前にヤフオクで買いました。出品者は芦屋の中古自転車屋のビチアモーレです。状態は未使用の新古品で、振れ取り済み、チューブラータイヤ装着済みです。
現状のコンディションはふつうです。違和感はありません。ノータッチが最良のメンテナンスでしょう。しかし、いけにえは必要です。手持ちのなかで最安のホイールがこれですし。
また、ロードバイクやピストバイクのフロントホイールは自転車ホイールの中でもっともシンプルです。
リムとハブはシンメトリックな左右対称ですし、スポークレイアウトは放射型の『ラジアル』です。スポーク本数は24本です。
対極がディスクブレーキのスルーアクスルのリアホイールです。おまけにうちのは非対称カーボンリムでBOOSTハブです。のむラボにさえこの系統の情報がない。最初の一本にはちと荷重です。

スポーク交換 振れ取り完了
そんなわけでシンプルなピスト用のフロントホイールに白羽の矢が立ちました。健全な健康体にメスを入れるのはつらいものです。

健康ホイールにニップル回し
パーツ重量の実測
完組ホイールの闇の部分が個別のパーツの実測重量です。メーカーやブランドはリムのおもさの公表をいやがります。でも、ユーザーの興味はそこにあります。
で、Miche Pistardのリムの実測です。

Miche Pistard リム390g
はい、390gです。ふつうの平凡なチューブラー用のアルミリムですが、クリンチャー全般にははるかにまさります。
が、最近のMTB用のフックレスのチューブレスカーボンには負けます。

中華カーボンのMTB用フックレスリム 295g
てか、見た目が異常にそっくりです、ははは。
ニップル24個です。

ニップル24個
スポークです。SAPIMのブレードスポークです。

SAPIM スポーク24本
フロントハブです。

MICHEフロントハブ
250gです。おもっ! て、ピストハブはシャフトとナット込みになります。これが約100gです。スルーアクスルもおんなじくらいです。クイックリリースは50gですが、固定力と剛性がざんねんです。
390+12+110+250=663g
セットの重量は平凡な鉄下駄さんです。かんじんのリムのかるさはクリンチャーのレーゼロ、シャマルをかるくしのぎます。ブレーキ面の有無は絶大です。
で、こんなふうに完全にばらしてしまうと、もうあとには引けません。組み立てに参りましょう。
ホイールを組む 作業編
元が完成形です。サイズのミスや規格の失敗はありえません。疑心暗鬼がひとつ減ります。あとは根気と腕次第です。
最初に個別のパーツをふきふきします。ワイプオールがかつやくします。

ワイプオールでそうじ
ちなみにハブのベアリングはぬるぬるのスルスルです。ピストホイールは雨にも風にも屋外駐輪にも負けません。質実剛健です。
スポークをハブに通す
スポークをハブに通します。て、そのまえにチェーンルブをねじやまに塗りましょう。効果は焼き付け防止と増し締めの補助です。

スポークねじにルブをちょろり
このスポークのねじとニップルにはロックタイトやスポークプレップの類はありません。グッジョブです。個人的にゆるみ防止剤やロックタイトてものが性に合いません。ナンセンスだ。
別のホイールのニップルはそれで完全にがっちがちでしたし。ぬりすぎ。

ロックタイトかスポークプレップの粉
で、スポークをハブに通します、外から内に。ヘッドは表を向きます。

ハブとスポーク
ラジアル組のフロントのスポークはぜんぜん交差しません。じつにシンプル&イージーです。
ニップルをセットする
ニップルをリムにセットします。たまたまこのニップルのケツが六角型で、パークツールのインターナルニップル回しのソケットにフィットしました。

ニップル回しでニップル配置
おかげでこのあとのニップル仮締めがおおいにはかどりました。てか、ニップルのヘッドの出代が寸足らずのように思えます。こっちからしか回せません。ビルダーがありあわせのニップルを使った?

ニップルヘッド寸足らず?
別のものはこのくらいまで出っ張ります。

スポークをニップルから外す
リムの穴の振り分けチェック
て、二三個をぼやっと締めた後でだいじなことを思い出しました。リムのニップル穴には左右の振り分けがあります。

リムの穴の振り分け
まんなかの大きい穴がチューブバルブ用のホールです。そのうえが右、そのしたが左です。穴の角度がビミョーにことなります。
横側のビューのが分かります。

リムの穴振り 横から
両端のホールのふちのけずれが手前に見えます。まんなかのものはほとんど見えません。
スポークニップルはテンションで斜めにかたむきます。この穴の振り分けをまちがうと、きっちりしめられないとかへんなテンションをかけるとかします。
そして、ハブの位置決めをぬからない。バルブの穴の延長にハブのロゴをポジショニングしましょう。これがホイール組みのたしなみです。

バルブ穴からハブのロゴをうかがう
振れ取り
いよいよ作業が正念場をむかえます。振れ取りです。個々のニップルを増し締めして、全体のテンションを上げて、ホイールをぴしって張ります。
ニップルの締め方の基本はこうです。

赤・ニップル締め 黄・リムの寄り 青・スポークの縮み
1のニップルが赤方向に回ると、スポークが青方向にちぢんで、リムが黄色方向によります。この視点はリムの内側からの回転方向ですが、外側からのねじ方向は右回しで締まる正ねじになります。
逆の発想で両隣の2と3がゆるむと、それぞれのスポークがたるんで、1のテンションで相対的にリムが黄方向によります。
初期のホイールはほんとにいびつなグニャグニャのわっかです。右へ左へ、外へ内へぐにゃぐにゃ波打ちます。目が回る~。

横ぶれでぐにゃぐにゃ
これを左右対称のきれいなまんまるにするのがホイールの振れ取りの基本で極意です。
この振れ取り台には上記のようなクワガタ式のアナログゲージがありますし、虎の子の3つのデジタルダイヤルゲージがあります。0.01mm単位の追い込みが可能です。
縦振れ3mm、横振れ1mmてのが通常使用の目安です。こだわり派は縦1mm、横0.5mmをOKとします。一部の狂信的なショクニンハダ系の人は縦0.1mm、横0.05mmまで追求します。
ぼくはせっかくのダイヤルゲージを活かして、縦振れ0.5mm、横振れ0.2mm前後までやりました。

ぎりぎり触れない
写真から正味の組み立て時間が分かります。スポークのオイル塗りの場面が2時18分、この写真が4時30分です。2時間ちょいです。けっこうがんばりました。
あと、リムのつなぎ目の数値は局所的にぶれます。このリムでは縦が膨らんで、横がへこみました。ゲージがそのあたりで瞬間的にぶれます。

リムのつなぎ目はぶれる
テンションチェック
センター出しは台の機構で自動的に調整されます。今のところ、センターゲージとテンションメーターがありませんし。
で、スポークの張りの目安は音です。鉄パーツできんきんさせると、音階でおおよそのテンションをチェックできます。『シ』を中心にして、『ド』と『ラ』をもりこみました。
で、音でピンときて、スマホに周波数測定アプリを入れるも、使い方を把握できず。

周波数測定アプリ
そんなこんなで夕飯の買い出し前にホイールを組み立て上げられました。ついでにチューブラータイヤのセンタリングをやっちゃいましょう。

ホイール組み立て完成!
シンプルに台のべんりさが身に沁みます。ぼくはずーっと地べた作業派でしたから、ははは。
あとでスポークテンションメーターを買おうと思います。