少し前まで自転車のカーボン素材は高級品でした。『100gの軽量化/1万円の出費』という定説がもっともらしく通用しました。ロードブームの初期、2010年前後のはなしです。
時代は下って、カーボンは身近な素材になりました。フルカーボンリム、フルカーボンクリンチャーが初心者、ライトユーザーの視野に入ります。
「一台目のバイクがフルカーボン」
「最初のホイールアップデートがカーボンホイール」
「練習用のホイールが安いカボクリ」
特別な工芸品の面影はありません。大量生産の工業製品です。2020年代の軽量化の費用対効果は100g/3000円でしょうか。
このカーボンの一般化、陳腐化の流れの中で従来の金属フレームのスポーツバイクは気軽さと手堅さで根強い人気を持ちます。
ラフなBMXのフレームは頑丈な鉄フレームです。オーダーメイドではクロモリが主役です。チタンフレームは『一生物』商法の急先鋒です。
そして、現代のアルミフレームのロードバイクは競技用機材でこそありませんが、高バランスな完成形の製品です。
また、国内の初期のロードブームの年代から「1台目のスポーツバイクがアルミロードだった」という自転車乗りは潜在的に多くいます。
アルミフレームの特徴
アルミ、アルミ合金、Alloyは硬い金属です。クロモリ、チタン、カーボンよりしなりません。粘りがない。
そのためにクロモリやチタンフレームのように細く仕上げられません。自転車用のアルミチューブは大口径になります。
これはエアロなスペシャライズド・アレースプリントです。
こちらはPanasonicのママチャリALFITのアルミフレームです。トップチューブがないので、ダウンチューブは極太です。根元の溶接のいかつさが際立ちます。
形状と材質の相乗効果です。アルミフレームをクロモリやチタンみたいに細くすると、粘りのなさから耐久性の不安を抱えます。
大きな負荷にアルミはへにょっと変形せず、ばつんと一気に破断します。これはねじを締めすぎたトップキャップの破断です。
「ばつん!」と一気に抜けました。中間がありません。まんまの穴あけパンチの手ごたえです、「ばつん!」
粘りのなさはアルミ合金系の弱点です。このためにアルミフレームはクロモリやチタン、カーボンより太くなります。その形状から乗り心地はおのずとかっちりになります。
対照的に鉄は粘って、しなって、たわみます。細身の形状で剛性を保てますから、MTB系のフレームさえスマートに作れます。
しゃきしゃき高反応
アルミの硬さはデメリットばかりではありません。一般論で硬いフレームの反応は柔らかいフレームよりクイックでダイレクトです。
一例を挙げましょう。スポーツショップのランニングコーナーに行くと、しばしばこんなポップを見かけます。
「高反発、フルマラソン3時間台」
「クッション重視、フルマラソン5時間台」
アルミは前者の高反発の硬いソールのランニングシューズです。スピード、瞬発力、反応の良さに優れますが、クッションや快適性に欠けます。
アルミの修理はむずい
アルミ合金の溶接は溶接の中では上位レベルになります。かりに破損したアルミフレームをそのへんの町工場に持ち込んでも、高確率で断られます。
ぼくの友人の溶接工も
「アルミの溶接はうちではむりだ~。うちは安い鉄しかできん」
と言います。アーク溶接とTIG溶接の違いだそうな。
アルミフレームのロードバイク
カーボンフレームはもう身近なものです。100万円のハイエンドから数十万のミドルグレード、さらに10万台のエントリーモデルまで浸透します。
「かちっとした乗り味」
「完成形のアルミフレーム」
「ちょい乗り2台目」
「お金がありましぇーん」
このようなバックボーンに突き動かされない人は最初から値頃なカーボンフレームを買いましょう。
Cannondale CAAD12
アメリカ自転車御三家のキャノンデールはアルミフレームのロードバイクで一世を風靡しました。
CAADシリーズの初代CAAD8はツールに出場し、ジロで優勝しました。アルミフレームのピークです。
現行のロードレーサーのCAADはCAAD 13ですが、一世代前のCAAD 12が最高傑作です。アルミフレームのロードレーサーの王道。
フレームのホリゾンタルトップチューブ、ダブルトライアングル、ストレートフォークはもはや伝統の域です。ジーパンのリーバイスだ。
Bianchi Via Nirone
100年以上の歴史を誇り、ロードバイクからMTBまで手掛け、さらに時計、かばん、カフェ、ビーチハウスなど手広く商売をするのがイタリアのビアンキです。
アイコンのチェレステカラーを最大限に活かして、一介の自転車ブランド以上の知名度と人気を持ちます。女子のいちばん人気のブランドです。
といって、デローザやコルナゴみたいなCONSな意味での『古豪』にとどまらず、トップレースの実績をきちんと重ねます。
ビアンキのアルミフレームの顔はVia Nironeです。色からなにからアルミロード界のティファニーだ。彼女に、嫁にプレゼントしましょう。決してFELT F95とかを上げないで。
毎年、S以下の小さめのチェレステカラーのVia Nironeは争奪戦になります。
GIANT TCR SLR 1
そこらの溶接屋が音を上げるアルミ溶接を巨大工場の特別マッシーンで万単位で大量生産するのが台湾の自転車大手GIANTです。
実質、世界中のアルミバイクの何割かはGIANTおよびその関連企業・下請け製でしょう。GIANTとメリダの工場は全世界のアルミバイクの供給元です。
GIANTの最軽量アルミロードがTCR SLR1です。スポーツDEPOなどがGIANTの取り扱い店ですが、このクラスのアルミロードは店頭にあったかな?
直営のGIANTストアに行ける人はそちらで買いましょう。
GT GRADE AL
GTはアメリカのバイクブランドです。かつてのオフロードの人気ブランドの一角です。現代のトレンドでは『古参』に属します。
アイコンはフレームのトリプルトライアングル形状です。ステーがシートチューブをスルーして、トップチューブと交差します。
そんな古参のオフロード屋のGTのロードバイクはわりに高評価です。そんなに前衛的なことをしませんが、良いバイクを手堅く作ります。
まあ、ぼくはSpecialized Allez sprintを選びましたが。
かっちかちの乗り味のスパルタンなお買い物最速号です。イオンからライフへ最速ではしごできます。
アルミママチャリロード?
ぼくが以前にやった魔改造ママチャリロードみたいな商品が某所より開発されました。ネタをパクられた?!