自転車の四大パーツはフレーム、ドライブ、フィニッシュ、そして、ホイールです。
次点がフィニッシュです。バーテープ、ソフトグリップはわりに短命です。屋外駐輪の安いゴムグリップは1シーズンでべたべたになります。
フィニッシュ系パーツ、仕上げ小物は乗り手の身体とじかにコンタクトしますし、コンディションが外から明白です。仕上げ小物がぼろくなると、みすぼらしさが加速します。
枠組み、骨格、本体のフレームはそうそう痛みません。こまかい消耗の進行度がぱっと分からない。で、不具合は『半壊』や『全壊』の形でどーんとやってきます。
年に一度のホイールのオーバーホール祭り
問題はホイールです。これは回転駆動系の延長です。ハブのなかにはベアリングやシャフトがありますし、これらはくるくるくるくる回転します。
が、この回転系パーツの部分はギアやチェーンのように日の目を見ません。ナットやエンドキャップがふたをします。おのずとこの闇の部分の異常や不具合の発見は先延ばしになります。
かぶせ物のうらの虫歯がいつのまにか進行するようにホイールのハブのなかの不調も水面下でいつのまにか進行します。
で、やっぱり、ホイールには定期検診が必要です。ハブのグリスはダストを吸い込み、ベアリングのパッキンはゆるみ、シャフトやラチェットやスチールボールは摩耗します。
ホイールのメンテナンスやオーバーホールの目安は一年です。たまたまうちのホイールに小トラブルがひんぱつします。結果、ニップル回しや振れ取り台やセンターゲージがあらたに加わりました。
で、ころあいに中華カーボンホイール弐号機がロールアウトから10か月目をむかえます。
ごらんのようにディスクブレーキホイールです。MTBのリアです。でも、リム幅が内22-外27で、本気の山ライドにはちと力不足です。
で、シクロ系タイヤやロード系タイヤをはかせて、舗装路のサイクリングやツーリング用にします。一回の走行距離はメインの山用ホイールより長くなります。
とくに不具合を感じませんし、数日前にリムの振れ取りをちょろってやります。緊急のメンテナンスの必要性はありません。
しかし、デカブツのメンテナンスのポイントは時間よりなによりやる気です。で、現在のぼくにはモチベがあります。ホイール欲しい欲しい病がホイール弄りたい弄りたい病に重症化しました。
てなわけで、夏の終わりにホイールのフルオーバーホールを前倒しでやっちゃいましょう。
リムテープ交換
ホイールの定期健診の第一項目はリムテープのチェックです。
はい、STANSのチューブレスリムテープです。ふつうのリムテープとおなじくこれも経年と内圧でへたります。交換の目安は1年ですね。
べりべりはがします。
ニップルの穴のくぼみがくっきりします。張り始めの位置をずらせば、もうしばらく使えましょう。このテープは2000円/9mの高級品ですし。
このホイールのいちばんの怪我です。
はい、リムが削れました。走行中のタイヤ脱輪の末路です。で、外周がアスファルトでがりがりにおろされました。購入二日目の悲劇です。
でも、チューブレス化はOKです。致命的なクラックはありません。不幸中のラッキーです。でも、リムの縦振れの見方がややこしくなります。
ディスクローターチェック
つぎにディスクブレーキのローターを外します。6ホールのディスクローターのねじは星形ねじです。サイズはT25ですね。
ここのボルトはよくゆるみます。定期チェックのだいじなポイントです。が、接着剤のロックタイトはぼくの好みに合いません。
エンドキャップを外す
おつぎはハブのお手入れです。”SS35″てコードのなぞの台湾製のBOOSTハブです。ボディはXD用です。
フロントは7000円、リアは12000円くらいです。ラチェットは爆音系です。「ジィィーーー!!」て甲高いリールみたい。
出自はなぞです。説明書はありません。が、キャップの形状から外し方はわかります。ハブスパナ用の平面が左右のキャップにあります。
しかしながら、そのハブスパナがうちにはありません。手持ちの工具をぶつけましょう。
はい、板スパナのナメて広がった17mmの部分とBIKE HANDのミッシングリンクツールで左キャップが外れました。
で、キャップの裏のシャフトの六角ソケットにでっかいアーレンをぶちこんで、板スパナの17mm’を右キャップに当てます。
そんなこんなでボディがぱかっと開きました。
海外ではおなじみの青グリスがてろんちょします。にごりはそんなにありません。よごれはふつうです。
ワイプオールでささってふきます。
ぺっかぺかです。そして、青パッキンのベアリングカートリッジの刻印は”ENDURO”です。アメリカABI社製の自転車ホイールの定番ベアリングです。一個1000円くらいです。セラミックではない。
AZ万能グリースを綿棒で薄く塗ります。
ぼくはこの部分にはグリスの量をケチってしまいます。中古のクロスバイクの惨劇が頭からはなれません。
げぼー!
グリスの目的は潤滑と防水防塵です。爆音ラチェットではここに『静音』がくわわります。ぼくは静かハブ派ですが、上記の理由でグリスもりもりにはしりごみします。
こちらはボディの裏と爪とはね板です。
6爪です。そして、爪の先端が3段オフセットです。これがリールみたいな爆音の秘密です。じみにテクニカルなハブです。かかりの良さは分かりませんが、やかましさは分かります。
単純な中華PBハブにしては凝りすぎです。なんかのモデルのロゴなし同等品か廉価版のように思えます。多分、ロゴが付けば、値段が倍に上がります、ははは。
ホイールをばらす
以前のホイールのメンテナンスはこんな具合でした。2018-2019シーズンのB4Cはちがいます。
はい、ひとおもいにホイールをばらしましょう。インターナルニップルをパークツールのインターナルニップル回しでぐりぐりします。ちなみにスポークソケットは3.2mmのスクエアです。
ホイールリムの実測は290gです。ブレーキフェイスなし、フックなしの形状が効きます。
反面、オフロードでガシガシ飛び跳ねるには一抹の不安を覚えます。ために舗装路のツーリングかサイクリング、ゆるいダートやグラベルしか走りません。で、たまにヒルクラ。
スポークです。これのモデルははっきりします。Pillar PSR AERO X TRA 1420のストレートプルです。SAPIM CX-RAYやDT AEROLITEにくりそつのブレードスポークです。
145g/28本です。
ハブのOLDとフランジ幅採寸
正直、ハブの単体の重量は重要ではありません。セラーの説明文に記載がある。かんじんの部分は寸法とフランジ幅です。
ハブの大外のOLD、オーバーロックナットディメンジョンは148mmです。これがBOOSTハブの規格です。
このBOOSTの台頭で142mmハブは旧式のオワコンになりました。いまや142mmはディスクロードやオールロードのものです。
といって、BOOSTユーザーはうかうかできません。157mm SUPER BOOST PLUSて次世代の超ワイドハブがじわじわ来ます。完成車はPIVOTぐらいですが、ハブはちょこちょこ出回ります。
OLDは従来のダウンヒルバイクのハブとかぶりますが、フランジがさらに拡大します。剛性がさらに上がる?!
で、SS35の外-外は68mm、スポークホールの芯-芯は60mmです。どっちが正解でしょう?
ストレートプルタイプのスポークはフランジの外側から出ません。フランジの穴からまっすぐに出ます。てことは、芯-芯の60mmが真フランジ幅のように思えます。
が、大半のハブメーカーの採寸方式はフランジの外-外です。ど、どっちが正解でしょう? 手組のスポーク長の計算がややこしくなります。
OLDの真ん中とフランジの真ん中にボールペンでうっすら線を引きました。
左フランジ41mm、右フランジ27mmです。上述の芯-芯の真正味バージョンでは37mm、23mmになりますか。ぞくにオチョコは(41-27)/2=7mmです。
とにかくBOOSTハブのフランジはノーマルな142mmスルーから+3mmです。ゆえにフロントのチェーンリングのオフセットが6mmから3mmになります。
ロードやオールロードのスルーアクスル142mmハブのフランジ幅はその一世代前の第二世代?の135mmハブとおんなじです。
つまり、142mmディスクロードの剛性アップの理由はスルーアクスルとワイドリムです。ハブのフランジではありません。
ぶらり途中フランジ幅の旅
フランジ幅はホイールの剛性を左右します。
イメージ図です。
スポークが足、フランジが歩幅です。ナローフランジさんの狭い歩幅はちょっとやそっとの横の力でぐらぐらしますが、ワイドフランジさんの広い歩幅はびくともしません。
よりシンプルなイメージです。LV1のペーペーの冒険者向けの『村』の看板です。さて、どっちがしっかりでしょう?
はい、常識的に右がジャスティスです。左はすぐに倒れる。かりに支柱が鉄製の金属ポールであっても、たてつけの悪さを補いきれません。右の木の棒のがあきらかにしっかりです。
よりシンプルに三角コーンで表しましょう。
底辺が広くなれば、安定度が増します。紫 < 水色です。土台付きの黄色と浅緑も同様です。素材の質 < 底辺の長さです。ハブ上ではスポークテンション < フランジ幅です。
注目は浅緑と赤です。幅はおなじですが、土台のかさが異なります。で、結果的に赤の三角形の二つの斜辺がシンメトリックに近づきます。ハブ上ではぞくに『ハイローフランジ』です。
ただ、ディスクブレーキやBOOSTでは逆のローハイフランジはめずらしくありません。実際、うちのメインのBOOSTホイールのハブのNOVATEC 712 SBはローハイフランジです。
BOOSTハブのフランジ3mm拡大はもともと太いセミファットタイヤのチェーンラインの確保のための工夫でした。で、剛性は副産物みたいなものでしたが、いまやこれがBOOSTの真骨頂になりました。
で、BOOST29インチホイールが27.5や26インチの剛性に匹敵するor凌駕しまして、26インチの最後のとりでだったDHバイクさえが2018-2019シーズンにがらっと29erになりました。
てことで、1年半前にBOOSTの29erをチョイスしたぼくはグレートでした。ゲイリー・フィッシャーは天才でした。ビバ・ワイドフランジ! 29er・ウラー! トレンド・イズ・ジャスティス!
スポーク通す
今回のばらしでなぞハブの気がかりを晴らせました。そろそろホイールを組み直しましょう。めんどうなスポーク長の計算やニップルの調達は不要です。組みなおしですから。
ストレートプルのハブのスポークは特定の方向にしか伸びません。入れまちがいが起きない。交差もない。
スポークレイアウトは28本、左右同数、3クロスです。で、ハブはストレートプルのBOOSTです。鬼神のごとき剛性がかいまみえます。
注意点はリムの穴振りくらいです。
バルブ穴の右隣のスポークが奥へ伸びる=正リムです。このスポークは反ドライブ側のフランジにしか入りません。必然的に左隣のスポークはドライブ側に入ります。
あとはひたすらの振れ取りです。
作業時間はざっと二時間です。縦ぶれがすこし残りますけど、気力がつきました、ちーん。あと、バルブの位置が凡ミスだあ?! まあ、えっか。