ママチャリ改造シリーズがはや7回を数えます。今回は山場中の山場、1インチのヘッドセットの取り付けです。
レストアの土台はパナソニックのUタイプのママチャリフレームです。JIS規格のかたまりです。とくにヘッドチューブがザ・クセモノです。
JIS? ITA? 1インチフォークの怪
フォークはアメリカブランドSurlyの1インチアヘッドフォークです。ISOかITAかBSAかは定かじゃありませんが、フォークコラムの下玉押しの圧入部は26.4mmです。
JISのフォークは27mmです。互換性はありません。げにJISの1インチとITA、ISO、BSAの1インチは別物です。
解決策はJISのヘッドパーツを買って、同モデルのITA用の下玉押しを購入することです。日本ブランドのTANGEのものが手軽で手頃です。
たまたまサイクルベースあさひのネット通販で在庫を見つけて、シングル用のチェーンやアウターケーブルと一緒にカートインします。ワールドサイクルの在庫は欠品でした。
ヘッドパーツ到着
で、それが届きます。
左上がヘッドパーツのセット、右上がその同モデルのITA下玉押しです。
ヘッドパーツの内容です。
モデル名は『タンゲ テリオスTE32TGR』です。1500円のベストチープな1インチアヘッド用ヘッドパーツです。
ごらんのとおりにベアリングはリテーナータイプです。シールドベアリングじゃありません。16球のむき出しボールリテーナーです。
かんじんのITAの下玉押しです。
じゃあ、ようやく悩ましいヘッド周りを始末できます。下玉押しと上下わんの圧入を一気にやっちゃいましょう!
ITAフォークにITA下玉押しを圧入
最近のシールドベアリングのヘッドパーツの下玉押しはだいたい割り入りのタイプです。圧入不要で取り外しがかんたんです。
が、ボールリテーナータイプのヘッドセットの下玉押しはだいたい完全体タイプです。圧入必須です、ぎゃふん。
対照的にカーボンフレームのヘッドセットはシンプルです。上下わんがありません。フレーム自体にベアリングを内蔵します。
ジャンキー・オールド・ママチャリフレームはそんな最新の技術とは無縁です。上下わんを圧入して、下玉押しを圧入して、スターファングルナットを圧入して・・・圧入祭りや!
最初に大物をやっちゃいましょう。下玉押しの圧入です。規格、互換性、パーツの調達、作業、いずれが厄介です。ついに積年のうらみを果たせますぜ!
1インチフォークのコラムの根元にグリスをぬります。鉄フォークに鉄カップです。ここにグリスをしないと、あとでサビに泣かされかねません。入念にぬりぬりします。
で、ITAのクラウンレースをかぽっとセットして、塩ビパイプを上乗せして、体重をかけるとか、ハンマーでどつくとか、全身全霊のゴリ推しをしかけます、ウホ!
が、塩ビが負けて、もろもろ削れます。最終的にハンマーと木切れを持ち出して、もぐら叩きみたいにバンバンやっちゃいました。
はい、100点! 完璧じゃないかあ! 前のスクエアBBのシールドベアリングの圧入よりぜんぜん楽勝です。
神経質なA型さんはゴムベラやプラスチックの棒を使いましょう。ぼくは新聞紙を木切れに当てて、ようじょうしました。
ヘッドセットを自作工具で圧入
お次はヘッドセットのわんの圧入です。JISのカップです。圧入部のサイズは30mmジャストです。1インチのアヘッドの上下はリバーシブルです。カップに上下はない。
ITA、BSA、ISOのカップは30.2mmです。JISだけが仲間はずれです。もっとも、JISの1インチはママチャリや軽快車、競輪用のフレームにしか使われません。JIS=日本工業規格の略称ですから。
じゃあ、おのずと海外ブランドの1インチフレームはITA、ISO、BSA系になります。フォークもそれに準じます。
つまり、海外ブランドのJISの1インチフレームやフォークてものはありえません。特注やサンプルみたいなイレギュラーは別ですが。
作業に戻りましょう。グリスをぬって、わんを手で軽くはめます。
そして、圧入の本番に開幕ゴリ押しハンマーを使わず、自作工具を使います。なんと几帳面なことでしょう、B4C!
実のところ、これは前回のベアリング打ち換えの自作工具の流用です。主役はM6の長ネジです。こんな長ネジはいろいろ活躍します。塩ビパイプ並みの万能グッズです。
ヘッドチューブに長ネジを通して、大小のボルトやワッシャやガラクタで左右から挟みます。右側の近影です。
ヘッドチューブ:下わん:スポークニップル回し:大ワッシャ:中ワッシャ:小ワッシャ:M6ナット、です。
このスポーク回しはスポークの調整には無力でしたが、2年ぶりに圧入で日の目を見ました、ははは。
このナットをレンチで回すと、わんをじりじり圧入できます。が、見事にななめに入って行きやがりました、あらら・・・
しばし頭を抱えますが、えーいと毎度のゴリ押しゴリラに原点回帰して、ハンマーでガンガン叩き込みます。ウホウホウホウホー!
しあげにニップル回しを下げて、ステムを投入します。このステムはほんまにMVPです。工具より工具です。ビバ、ステム!
上わんを同様の手順で圧入します。手、ハンマー、ステムです。圧入がきっかり決まると、余分なグリスがむにゅっと溢れます。これが完成の目安です。
じゃあ、上下の圧入が完了しましたデ!
余分なグリスをふき取って、ベアリングを入れて、フォークを入れましょう。はたして、ちゃんと入るかな~?
はい、スーパーパーフェクト、120点! 本来の位置に鎮座するステムさまがなんと神々しく見えますか! そして、がっちん北米パーツととごっちん日本パーツの夢のコラボです。
今回のカスタムでママチャリ改造の最大の悩みどころが一気に解決しました。事前の調べ物の半分はこの1インチのJISのヘッド周りのことでした。
なんちゃってアヘッドにしよう
たんにママチャリやシティチャリの1インチフォークにアヘッドステムを取り付けるなら、変換コンバーターを使いましょう。ぞくに『なんちゃってアヘッド化』です。
真アヘッド化は極端にめんどくさくなります。1インチのアヘッドフォークがなかなか出てきません、ほんとに。
そして、圧入の連続です。圧入、圧入、昼ごはん、圧入みたいになります、ほんとに。
次回のママチャリ改造はイタリアンなシングルクランクの取り付けです。