「バラ完」
自転車を趣味にすると、いつかこのワードを見聞きします。読み方は『ばらかん』です。自転車界の俗語です。「特売バラ肉完売しました!」ではありません。
これは
バラバラのパーツから完成車を組み立てる
の略称でしょう、おそらく。
ママチャリやシティサイクルのような一般自転車は完成車の形で販売され、利用者の足元に届きます。
これらは基本的に移動手段であって、趣味のアイテム、楽しいガジェットではありません。いや、チャリマニアにはママチャリ弄りは面白い遊びですが。
これは例外的です。
一方、趣味の自転車は単純な人力移動システムではありません。スポーツ、アクティビティ、ホビー、コレクションなどなどの要素を含みます。
実用自転車には致命的に欠落するメンテナンス、カスタマイズ、バージョンアップみたいな要素が結構な比重を持ちます。
てか、健全な男子は高確率でメカ好き、パーツ好き、機材好きです。幾何学的に並べて、写真を撮ろうぜ!
ちなみに女子はこれを見ても、???みたいな表情をします。ああ、嘆かわしい感性だ。タピオカ、タピオカですか?
で、自転車好き・機材好きが講じると、模型作り、プラモ、日曜大工の感覚でバラ完が視野に入ります。
ぼく的に自転車のバラ完に最も近い感覚はミニ四駆です。市販の完成車ではマニアな好みを満たせない。デフォルトのゴムタイヤは転がらない!
で、まんまとミニ四駆のタイヤを軽量化にはまったぼくがひさびさにロードバイクのバラ完に挑戦しました。
ただし、バラ完は初めてではありません。直近でジャンクなクロスバイクをレストアしますし、手持ちのMTBの構成をちょくちょく変えますし。
しかし、かっちり一からロードをやるのは一年ぶりです。動画チャンネル開設以降では初の試みだ。
おまけに今回の車体はディスクブレーキのロードバイクです。MTBとは勝手が違います。しかも、シマノのコンポです。
先日、組み立てが終わって、シリーズが完結しました。で、個別パーツの見積をきちっとし直しました。赤字企画です。助けて!
ロードバイクのバラ完費用
さて、バラ完の趣旨はバラ完です。ロードバイクの完成車はすでに手元にあります。アマゾンの激安のやつですが。
それから、リムブレーキの軽量なカーボンフレームが物置にあります。新車の必要性はぜんぜんありません。
てことで、今回のバラ完はバラ完のためのバラ完です。そして、Youtubeのチャンネル開設1周年+登録者10000人の記念です。
フレーム
ぼくはロードレースを見ませんし、どこそこのプロ選手にあこがれませんし、有名ブランドの人気モデルにミーハーしません。
基準の第一位は予算です。これは二十万円です。予算オーバーは自転車組み立てゲーム的には失格となります。
で、有名自転車ブランドのカーボンフレームは一撃でこちらの予算を削ってくれやがります。15万以下はほぼない。
必然的にフレームは中古か中華に落ち着きます。ステータスやブランドは二の次です。ポイントはカラーとサイズだ。
折よくきれいな中古の中華フレームを格安で落札できました。
ROLLINGSTONEは有名ブランドでもありませんが、完全に無名のブランドでもありません。
台湾の人気自転車通販ストアのサイクリングエクスプレスがこれを正式に取り扱います。新品定価は12万円前後です。
サイズ49(51)のフレームセットが29500円+送料3500円でした。小傷はありますが、大きなダメージはありません。
なによりカラーがてっかてかだ! そして、ロゴの文字度フォントがSpecializedにそっくりだあ?!
前の持ち主の身長は173cmです。使用距離は2000kmで、用途はレースと練習用です。「高剛性です。機械式で組めます」ってインプレがあります。
ヤフオクやメリカリで中古部品を買うなら、でこういう細かい情報をしっかり書いてくれる人から買いましょう。
たまにピンボケ写真だけ載せて、「写真で判断してください。NC.NRで」てファンタジックな出品をする方がいます。売れるか!
ブランドとロゴに金を払うと、ほかのパーツを買えません。中古&中華のこいつをベースにしましょう。
実際問題、最近のロードバイクのフレームは『量産型エアロフレーム』の様相を呈します。形状からメーカーやモデルを判別するのは容易ではない。
そして、形状が大差なければ、空力効果も大差ありません。
ホイール
フレームのつぎはホイールです。ポイントは同じです。性能と機能 >>> ブランドとロゴだ。
フレームを安く抑えられまして、すこしこちらにお金を割けます。AliExpressの創業祭を迎えて、新品の中華カーボンホイールをオーダーできました。
セラーはぼくのひいきのところです。実際にぼくがそこで何本かホイールを買いまして、そんなに不満を持ちません。
こちらは送料込み59600円です。ロゴ・ステッカーなしの武骨な50mmディープホイールです。決め手はリムのチューブレス仕様です。
チューブレスはサイコーですが、テープの貼り替えと価格がネックです。この穴なしリムはそれを完璧に克服します。
ハブはNOVATEC、スポークはPillerです。コスパ系手組ホイールの定番選手です。かんじんのリムの工場は不明ですけど。
ホイール4大メーカーのラインナップにはこんな価格帯のカーボンホイールはありません。最安ラインがフルクラムのクワトロカーボンでしょうか。ざっと10万強です。
WIggleとCRCのPBのPrimeのカーボンホイールはいい線を行きます、6-7万。スポークはSAPIMですが、ハブはNOVATECです。で、カーボンリムの出所は分かりません。
一緒じゃねーか!
まあ、カーボン製品を安く大量に作れるところが限られますし、中国か台湾か。特段の製造国の明示がなければ、カーボン製品=中台製です。
変速機
変速機はカーボンパーツのようには行きません。このジャンルは寡占です。シマノ、スラム、カンパニョーロが実質的な支配者です。
2018年以降、マイクロシフト、センサ、BOX、サンレースなどのマイナーメーカーがちょくちょく新製品を発表します。
また、FSAはセミ電動無線、ROTORは13速ユニットみたいな面白い商品を市販化します。はて、ぼくのX-shifterはいつ届く?
で、個人的な優先度ではSRAMがファーストチョイスです。何故ならぼくのMTBのドライブトレインがスラムだから。釣り具はシマノですが、ははは。
が、シマノのディスクブレーキシステムに興味をひかれまして、実習と節約を兼ねて、手堅い105の油圧ディスクブレーキのグループセットを調達します。
で、シマノ製品の国内価格は横一線です。ダンピング? いえいえ、シマノの管理体制のたまものです。格安の海外通販は大人の事情で封印されました。ぎゃふん!
希望小売価格から-20%てのがシマノパーツの実質定価です。グループセットはほぼほぼ取り寄せですね。そんな訳でここを大幅に安く買うのは不可能です。
しかし、正規流通以外の個人売買や中古品は別です。ヤフオクに網を張って、完成車取り外しの格安セットをゲットしました。
これは36100円ですが、フルセットではありません。内容物です。
- レバー
- ブレーキ
- カセット
- フロントディレイラー
- リアディレイラー
- ケーブル類
油圧ブレーキ用の105STIレバーの左右セットが約8万円です。割安な内容ですね。
不足分は
- チェーン
- クランク
- ボトムブラケット
- ディスクローター
です。それぞれ個別に買い足しました。価格は
- チェーン 4000円 バルク
- BB 3000円 中華
- ディスクローター10000円 中古
- クランク 0円 お下がり
です。ディスクローターはデュラエースです。内側プレートの黒塗装の面積が大です。アルテグラや105ローターはこうではありません。
モデル車の例を見て、フロントを160mm、リアを140mmにしました。この前後異形がトレンドぽいです。たしかに140mmの制動力はすこしマイルドだ。
また、取り外し品のブレーキはイージージョイントシステムでした。おそらくこれは一般用でなく、小売店・自転車店用のキットです。
上の画像の右がレバー側のコネクト部分、左がブレーキキャリパー側のインサート部分です。インサート部分は未開通ですね?
イージージョイントのキットはこの状態で店に送られてきます。で、このインサートをコネクタにねじ込めば、オイル充填しなくても、すぐにホースを繋げるよ!
小売店的にはありがたいシステムのように見えます。が、このイージージョイントには大穴があります。
それはシンプルなものです。『コネクタ部分がでかすぎて、はやりのエアロフレームの内装に通らない!』て問題です。
実際、ぼくはハンドル内装でこの壁にぶち当たりました。ホースのコネクタの出っ張りが物理的に穴に通りません。
シマノ、やっちまったな!
解決策は内装を捨てるかホースを新調するかです。え、穴を広げる? 漢ですね。
おまけに初期出荷のホースは実車の取り回しに最適な長さではありません。だいたい初期ホースは長めになります。
で、最適サイズに切り直すと、インサートを再挿入して、余分なオイルを処理しなくちゃならない。二度手間です。しかも、内装はむりだ。
結局、ふつうのブレーキホースの方が現場的には有用です。くしくもぼくがその動画を出したら、サイメンの飯倉さんが同じ内容の動画を出しました。
素人にも玄人にもこのイージージョイントシステムは無用の長物です。まさに「たすきに短し、おびに長し」でしょう。
てことで、ぼくは内装のためにホースを新調しました、1700円。で、ジョイントシステムのキットはお蔵入りです。
十中八九、このイージージョイントは近日中にシマノの黒歴史に連なりましょう。
かように最近のシマノはやらかします。サイレンスハブ、サイクルモードの堆肥巻き事件、そして、イージージョイント・・・
とどめはフラットマウントブレーキキャリパーの専用ボルトです。これは特殊なストッパー付きのボルトでして、500円/1本です。
ふぎゃー!
フロントフォークの二本分は変速セットにありました。フレームの二本はなかった。しかも、こちらはステーの厚みでサイズが異なります。
うちのフレームのフラットマウントのステーの厚みは25mmです。これに適正サイズは38mmです。二本分を買いましたよ、1000円!
何度も言うが、セットで500円にしてくれ~。
ハンドル周り
年内の完成を急いで、パーツをあれこれ発注すると、はやばやゲームオーバーの危機に見舞われます。
ステムは純正の新品の3Tのアルミものですが、ハンドルはお下がりの3T風の中華カーボンです。
- ステム 6500円 新品
- ハンドル 0円 お下がり
本物の3T AERONOVAは数万ですが、そっくり中華は数千円です。形は同じだから、空力は同じですよ!
そして、3Tの読みは『トリプルティー』です! え、スリーティーじゃない?!
とにかくカーボンパーツのコストを抑えることが重要です。
タイヤ
リムがチューブレスですから、タイヤもチューブレスです。コンチネンタルGP5000 TLがいまいちでした。700x25Cは意味不明だ。
お気に入りのシュワルベを使おうかと思いますが、すこしひねってフランス名門のゴム屋さんをチョイスします。HUTCHINSONです。
ぼくはフランス式に『ゆっちんそぉん』と読みます。Made in Franceでした。ここはMAVICの純正タイヤの製造元です。Pirelliの自転車タイヤもたしかここです。
チューブレス選びにはクリンチャーの指標はあてになりません。個人的なおすすめはシュワルベ、IRC、HUTCHINSONです。
シュワルベはついに「チューブラーを止めちゃうぞ」て公式見解を出しました。糊付けタイヤはますますヴィンテージな嗜好品になりますね。
それからチューブレスバルブが1750円です。
おまけのアクセサリ類
おまけのアクセサリ類が豊富です。
- ベル 3000円
- ライト 5000円
- 予備チューブ 2500円
- 工具 1500円
- トルクレンチ 3000円
- バーテープ 2300円
3000円のベルはこのKNOG Oi LUXEです。
ベルの装着は義務、ベルの使用は違法です。ただし、『警笛鳴らせ』を見つければ大っぴらに鳴らしまくれます。
バラ完の費用の総額と性能は?
より細かいリストを一覧にします。
- 中古フレーム 33000円
- 中華カーボンホイール 59600円
- シマノ105変速機セット 取り外し品 36100円
- 中古ディスクローター 10000円
- ステム 6500円
- タイヤ 6000円
- BB 3000円
- チェーン 4300円
- バルブ 1750円
- 油圧ブレーキホース 1700円
- コネクタ 750円
- ブレーキオイル 800円
- 専用ボルト 1000円
- 軽量スルーアクスル 3000円
- ベル 3100円
- テープ 2300円
- ライト 5300円
- 工具 3100円
- おまけもろもろ 4000円
- 備品 1000円
合計186300円!
今までご愛読ありがとうございました、次回のB4C先生のバラ完にご期待ください。
性能は?
ロードバイクで重要視される重量で比較しましょう。今回のROLLINGSTONE PROBING DISCカスタムは最終的に7.6kgになりました。ライト、ベル、ペダルなしの実測です。
で、これに近いのは有名ブランドでは40-50万のミドルグレードの完成車になります。20-30万の車体はカーボンホイールがほぼ載りません。
おまけパーツに予算を割かなければ、クランクとハンドルを新調しても、20万以内でけっこうなロードバイクを組み立てられます。
まあ、趣味の世界には見栄やステータスが否応なく付きまといますけど、学生や若者や初心者がロゴとブランドに金を出すか? はい、出しません!
むしろ、純粋に「ロードバイク乗ってみたい!」て人にはそういうのは蛇足でしょう。はて、これがほんとにダメなチャリでしょうか?
あと、一個一個純正工具を買うと、クロスバイクくらいのお金を消費してしまいます。オールインワンのサード製の安い自転車工具セットを買いましょう。