輪行は自転車を乗り物に積んで現地まで移動することです。対義語は自走です。
主な輪行です。
ここでは最もポピュラーな電車輪行のやり方、道具、おすすめの自転車を解説します。
電車輪行の基礎知識
自転車を手荷物扱いで電車に積む輪行は日本の独特の文化です。海外では改札から車両まで普通に乗り入れるスタイルの方がメジャーです。
輪行はもともとプロの競輪選手や社会人レーサー向けの特別なサービスでしたが、規制の緩和を重ねて、一般の利用客に解放されました。
輪行のおおまかな歴史です。
- 競輪選手、アマチュアレーサー向け 1960年代
- 日本サイクリング協会会員向けの有料サービス 1970年代
- 一般人向け有料サービス 1980年代
- JRと主な私鉄で無料化 1990年代
JRと市営地下鉄の輪行の無料化は1999年1月1日です。そんなに大昔のはなしではありません。
ちなみに同じ公共交通機関のバスは輪行を公認しません。一部の路線や運航会社は自転車の持ち込みを拒否します。
一方でハワイのTHE BUSのような自転車ラック付きのバスも一部の地域で登場します。
JRの手荷物の規定
国内の鉄道では自転車の乗り入れは基本的に不可です。そもそも走行モードの素の自転車は改札すら通れません。
以下はJR東日本の旅客営業規則の第2編の第10章の308条を引用です。
旅客は、第309条に規定する以外の携帯できる物品であって、列車の状況により、運輸上支障を生ずるおそれがないと認められるときに限り、3辺の最大の和が、250センチメートル以内のもので、その重量が30キログラム以内のものを無料で車内に2個まで持ち込むことができる。ただし、長さ2メートルを超える物品は車内に持ち込むことができない。
JR東日本旅客営業規則 第2編 旅客営業 -第10章 手回り品より
2.旅客は、前項に規定する制限内であっても、自転車及びサーフボードについては、次の各号の1に該当する場合に限り、無料で車内に持ち込むことができる。
1.自転車にあっては、解体して専用の袋に収納したもの又は折りたたみ式自転車であって、折りたたんで専用の袋に収納したもの
2.サーフボードにあっては、専用の袋に収納したもの
自転車、サーフボードのような大きなスポーツ用品、コントラバスやチューバのような大きな楽器は3辺合計と重量の制限を受けません。※車内で立て掛けられるもの
3辺合計=縦横高さの合計です。ゆうパックやヤマト便で自転車やホイールなどを配送するときにもおなじみの指標です。
で、現実的に有料な手荷物はペットや動物入りのケースやケージくらいです。料金は290円です。
JR以外の私鉄の手回り品の規定もほぼ同様です。
自転車の持ち込み条件
自転車を電車に持ち込むための条件を簡潔にまとめます。
- 解体する、折り畳む
- 専用の袋に入れる
- 機材を露出しない
上記の文章には曖昧な部分があります。
- 解体する→どこまでバラすか?
- 専用の袋→専用の定義は?
しかしながら、この部分の定義は明文化されません。つまり、ケースバイケースです。
「ハンドルの端っこが袋の口から少しはみ出る」くらいの些細な機材の露出はとくに注意されません。というか、駅員さんはそんなに暇ではない。
改札の奥の構内で車輪をちょこっと出して、ころころ転がすのも原則的にはアウトですが、現場ではしばしばスルーされます。車掌さんはそんなに暇ではない。
解体は定義なし
解体のレベルは所有者の都合と判断に寄ります。簡単に運べるように前輪やハンドルやペダルをバラすのか、出先で素早く組み立てるために解体を最小限度に留めるか。
ぼくは折り畳み自転車で輪行しますから、このコストを大幅に節約できます。
袋も定義なし
巷には「輪行袋」という商品は無数にあります。しかしながら、鉄道各社の規定に「専用の袋」の形状や材質の定義はありません。
つまり、専用の袋の「専用」の定義が空白です。で、これもメーカーや使用者の裁量に寄ります。
自作輪行袋はアカデミックな輪行ユーザーや輪行袋警察からしばしば非難を浴びますが、鉄道各社の手回り品の規定には全く抵触しません。
- 既製品を使うこと
- メーカー物を使うこと
- 色は黒かグレー
- 派手な装飾を控えること
そんな文章は規定にありません。JRは暇な風紀委員や嫌味な教頭ではない。袋のメーカーや柄をいちいちチェックしません。
ぼくは超軽量のダイニーマ生地を使って、超軽量の輪行袋を自作しました・・・いや、実際には仕上げを知り合いに頼みましたけど。
おかげでどんな既製品より圧倒的に軽い90gのハンドメイドの一点物をゲットできて、「ゴミ袋にしか見えんw」という応援のメッセージを頂けます。
この自作品の専用性は既製品やメーカーものより正統です。なぜなら設計者兼製作者兼使用者のぼくが「これは自転車専用の袋です」と定義するから。
もちろん、正統性やオリジナリティをそんなに重視しない人は凡庸な市販品を使いましょう。
とにかく、「専用の袋」の定義は使用者の申告に基づきます。シートで包む、テープで固定するもリアルな現場ではだいたいOKです。
電車でのチャリポジション
電車でのチャリポジは現場の状況に寄ります。特急か鈍行か、予約席か自由席か、前向き座席か横向き座席かetcetc…でベストの位置取りは変わります。
最もタフな車両は通勤時間帯の普通列車です。朝のラッシュの上りの地下鉄とかは地獄です。
最もイージーな車両は特急列車の予約席です。近鉄のしまかぜみたいなプレミアム車両には大型の荷物置き場やロッカールームさえがあります。超快適。
普通電車では先頭車両か後部車両の運転席の裏のスペースが快適です。
新幹線の特大荷物スペース
2020年5月に新幹線の大型手荷物の規定が変更されて、これまでフリースペースだった指定席車両の最後尾の座席裏の『特大荷物スペース』が事前予約制になりました。
これは幻の2020年東京オリンピック・パラリンピックの訪日外国人のための対策です。結果的に開催は延期されて、観光客も国内客もぜんぜん利用しなかったけど・・・
ちなみに、スポーツ用品、ベビーカー、車いす、楽器等はこの制度の対象から外れます。ただし、指定席の特大荷物スペースの優先権は最後部の座席の予約者にあります。
自由席はこれまで通り
自由席の最後尾スペースはフリーです。ここは特大荷物スペースではありません。優先権はこれまでの通りに早い者勝ちです。
その上、2020年の新幹線の自由席はがらがらで快適でした。
- 予約席→最後部の座席を指定する
- 自由席→実力でスペースを確保する
スペースを確保できなかったら、デッキの荷物置き場に置くか、車掌に相談しましょう。
ちなみに2021年8月の盆休みのピークの東海道新幹線の自由席の乗車率はぎりぎり100%でした。立ち乗り、デッキすし詰めが復活するのはまだ先のようです。
輪行におすすめの自転車
分解と組み立てのしやすさとコンパクトさで折り畳み自転車が圧倒的におすすめです。輪行では重量より質量がネックです。嵩張る車体は向きません。
通常サイズのMTB、ロード、クロスバイクは分解、組み立て、移動の全てで割を食います。とくに1回目の輪行は鬼門です。かなり時間の余裕を取るのが賢明です。
折り畳み自転車と似て非なる折り畳まないミニベロはそこまでコンパクトになりません。むしろ、重量は同価格の通常自転車より重くなります。現地での走行性能も一歩劣る。
総合的なおすすめ度は折り畳み >>> MTB、ロード、クロスバイク > ミニベロですね。
14インチのルノーライトシリーズは近年のヒット商品です。おしゃれ、軽量、コンパクト。
電車輪行まとめ
自転車を電車に積むときには分解or折り畳んで、専用の袋に入れます。分解のレベルや袋の材質や形状の定義はとくにありません。
自転車は特大手荷物の3辺合計の対象には含まれません。駅員や乗客のヘイトを集めないような梱包や携帯を心がけましょう。
新幹線の指定席の特大荷物スペースは予約制になりました。自由席の最後尾やデッキの使用は従来のままです。
輪行には折り畳み自転車がおすすめです。
輪行袋はオーストリッチ系の縦長タイプよりシンプルな巾着型がおすすめです。