リアディレイラーの調整 3つのねじとなぞボルト螺旋迷宮の攻略大全


ディレイラーは自転車の外装変速機の総称です。前のやつがフロントディレイラー、うしろのものがリアディレイラーです。別名はmech、メカです。

 

これは旧式のロードタイプのリアディレイラーです。

 

リアディレイラー名称

リアディレイラー名称

 

  1. ディレイラーハンガー
  2. ケーブル
  3. アジャスタ
  4. ケージ/アーム
  5. プーリー(上がガイドプーリー、下がテンションプーリー)

 

です。ちなみにアルファベットは”Rear Derailleur”です。つづりからややこしさが満開です。フランス語由来の単語です。

 

最近のスポーツバイクのリアの段数は12速となり、旧来の3×8や2×11のギア比をざくっとカバーします。

 

で、クロスバイクやロードレーサー以外の分野ではフロント変速なしの1×11や1×12がトレンディーです。下記の3T STARDAはロードタイプの1x(ワンバイ)マシーンです。

 

3T strada

3T strada

 

こんなふうにフロントメカの需要は衰退の一途をたどりますが、リアメカの立場は不動です。むしろ、その重要性はさらに増します。1x機の変速=リアメカですから。

 

 

リアディレイラーの種類

 

自転車の変速機はおおまかに外装変速と内装変速に分かれます。ハイエンドの内装はすでに14速、驚異の無限変速をすらなしえますが、趣味系の機材の域を出ません。

 

一般的なスポーツバイクの変速機は外装タイプです。鉄線で動かすのが機械式、電気で動かすのが電動です。最新は無線電動のワイヤレス変速ですね。SRAM eTap、FSA K-Force WE、Xshifterなど。

 

新旧のちがい

 

一般的な自転車ユーザー、チャリンコ愛好家が触れられるのは機械式の外装変速機です。ただし、機械式の最高級のグループセットは20-30万円ですが、ははは。

 

ふつうの機械式リアディレイラーはこんなです。

 

リアディレイラー シャドータイプとロードタイプ

リアディレイラー シャドータイプとロードタイプ

 

左がSRAMのGXです。オフロード用の11速のリアディレイラーです。販売開始は2016年です。11速メカのなかでは後発の部類です。

 

右はカンパニョーロのAthenaです。ロード用の11速のリアディレイラーです。多分、2012年前後のモデルです。11速の第一世代か、第二世代かです。ザ・旧式です。

 

大きなちがいはケーブルのアウター受けの位置です。キャップの位置からそれが分かります。GXのアウター受けは手前に向きますが、Athenaのそれは左に向きます。

 

現行のロード用のパーツにはMTBの技術が多く流入します。ロード用のリアメカのアウター受けの位置も上記のGXのようになります。ぞくに『シャドータイプ』ですね。

 

このアウター受けの向きからおおよその世代が分かります。手前=現行、左向き=旧式です。で、現行モデルのメカの方がケーブルの取り回しの自由度にすぐれます。

 

旧式では出入り口のケーブルのゆるやかなカーブが重要です。

 

こぶしひとつのU字

こぶしひとつのU字

 

現行ではここはおおらかです。こんなぱっつぱつがOKです。

 

フレームエンド

フレームエンド

 

ちまたには新旧モデルが混在します。セミスポーツバイクやスポーティな実用車には安価なモデルが加わって、MIXちゃんぽんがえらいことになります。

 

ストロークとインデックス

 

機械式のディレイラーの仕組みはシンプルです。手元のシフターをカチカチして、鉄のワイヤーを引っ張るor緩めるして、メカを左右に動かします。

 

SRAM GX EAGLE トリガーシフターとマウント

SRAM GX EAGLE トリガーシフターとマウント

 

  • シフター=レバー、ボタン
  • アウターケーブル=導線
  • インナーワイヤー=伝線
  • ディレイラー=本体

 

です。

 

ディレイラーの本体の可変域が『ストローク』です。メカはこの範囲で動きます。基準はスプロケットです。

 

カセット装着

カセット装着

 

7、8、9速、10速、11速、12速のスプロケの厚みはばらばらです。土台のフリーボディの幅や形さえがちがいます。7速のメカの可変域は12速のギアには寸足らずです。その逆もしかりです。

 

XDハブ

XDハブ

 

もう一つのキーワードが『インデックス』です。目録、索引、配列を意味します。自転車の変速システムでは個々のギアの厚みないしギア間の距離の仕切りのことです。

 

ピンク・ストローク グリーン・インデックス

ピンク・ストローク グリーン・インデックス

 

この二つの要素は本棚と本の関係性ににます。はたまた、ピアノのキーと鍵盤です。くしくも12速は12音階と重なりますね。

 

12速ギアのインデックスは12、11速ギアは11です。ストロークがおなじであっても、インデックスがことなると、互換性はなくなります。

 

かりに12速シフト・メカの車体に11速カセットを入れると、ローギアがむだになりますし、そのほかの変速で若干のしゃらつきやかちゃつきが出ます。

 

SRAM GX EAGLE RDとXX1 PG1199

SRAM GX EAGLE RDとXX1 PG1199

 

また、メーカー、モデル、世代でインデックスやストロークはばらばらです。個人的経験ではSRAMのMTBの11sシフターにカンパのロードの11sリアメカはなぜか9速の手応えになりました。

 

SRAM x CAMPYママチャリ

SRAM x CAMPYママチャリ

 

インデックスがあやふやになって、5-9速あたりが???になります。でも、ストロークの帳尻はなぜか合って、トップとローはスムーズです。チェーン落ちは起きない。ふしぎ。

 

本棚の幅は変わらず、本の冊数も11から変わらず、でも、一冊一冊の厚みが変わると、それまでのパーティションが役立たない・・・みたいなものです。

 

インデックスはシフターとメカのワイヤーの引きやバネの力などで決まります。これらをぱかって分解すると、その仕組みの一端をのぞけます。

 

バネ

バネ

 

シマノスラムのインナーを使った結果

シマノスラムのインナーを使った結果

 

インデックスは基本的に固定です。これの変更はイレギュラーな上級者向けのカスタムになります。

 

シマノのドライブにカンパニョーロのレバーを使うためのインデックス調整パーツ、『シフトメイト』とかが有名です。

 

また、非インデックスのシフターはフリクション式です。ストロークだけがあって、インデックスがありません。変速は乗り手のさじかげん、マニュアルになります。

 

いざ、変速調整。打倒3本のねじ

 

さて、ディレイラーの変速調整の要点はこのストロークの調整にほかなりません。左右の動きの幅を決める、これです。

 

工具はプラスドライバーか3mmアーレンキーです。シマノ、カンパニョーロの調整ねじはプラスネジ、SRAMのそれは六角ボルトです。

 

例のごとく調整ねじのポジションはメーカー、モデル、世代でばらばらです。カンパのAthenaは横にある。

 

カンパアテナギア調整ボルト

カンパアテナギア調整ボルト

 

シマノとSRAMのネジはメカのうしろに隠れます。これはSRAM GX EAGLEのものです。

 

トップギア調整ボルト

トップギア調整ボルト

 

こうゆう二つ並びのなかよし双子ボルトが調整ボルトです。上のひとつはBテンションアジャスタボルトです。それぞれに別個の機能があります。

 

ディレイラーの可変域の調整は双子ボルトの役目です。作業の比率的にはこっちが8で、Bテンションが2です。

 

ワイヤー張る

 

リアディレイラーの調整の手始めはギアの調整でなく、ワイヤー張りです。チェーンをトップ(最小)ギアに入れて、インナーワイヤーを張ります。

 

インナーワイヤーを手で引っ張る

インナーワイヤーを手で引っ張る

 

現行モデルのインナーのテンションはマイルドになりました。旧式みたいにラジオペンチでぐいぐい引っ張るのは禁物です。手でひゅっと引っ張れば、てきせつなテンションを出せます。

 

指でさわって、若干のたるみを感じられます。これがベストです。ペンチはすでに旧世紀の方式です。

 

ワイヤーの張り

ワイヤーの張り

 

トップギア合わせ

 

実のところ、トップギアの調整はケーブルなしでOKです。素のリアメカは内蔵バネの力でヤドカリみたいにちぢこまります。そのノーテンションの状態がデフォルトです。

 

初心者はテキトーな段数に入れて、テキトーにワイヤーを張って、ぐいぐいしめすぎちゃいます。で、あとからトップにギアチェンジしようとして、「3速からうごかへん!」て大騒ぎします。

 

で、トップギアの調整です。トップ側の調整ボルトをまわして、ギアの軸とガイドプーリーの軸を垂直にします。薄い赤のラインがだいたいOK、濃い赤のラインがメーカー推奨の模範エリアです。

 

垂直か気持ち外め

垂直か気持ち外め

 

先述のように調整ねじの位置はメーカーやモデルでばらばらです。このSRAM GX EAGLE RDのトップギアの調整役は双子ねじの左側です。

 

H=トップ、L=ローの記載はまちまちです。このメカにはありません。カンパにもない。昔のシマノのディレイラーにはあったかな?

 

あ、画像が出てきました。SHIMANO XT M780の10速のリアディレイラーの調整ボルトです。

 

リアディレイラーのギア変速調整ネジとアーム調整ネジ

リアディレイラーのギア変速調整ネジとアーム調整ネジ

 

うーん、今度は縦ですね。統一感がないなー、ははは。HLの表記は見あたりません。ぼくの記憶では上がトップです。

 

そんなわけでねじの位置や方向は場合によります。そして、その回できっちり覚えても、つぎの回には忘れます。一般ユーザーはそんなにひんぱんにリアメカ調整しませんし。

 

実際の動きを見ながら臨機応変に対応しましょう。現物合わせがジャスティスです。

 

そして、この調整ねじの特定(トップかローか)と、ねじ方向の見定め(外に寄るか内に寄るか)がディレイラー調整の最大の山場です。気合の70%をここに注ぎます。

 

で、ねじを特定して、回して、最終的にトップギアとガイドプーリーを垂直に合わせます。これで可変域の外側のリミットが決まります。メカのアームはこれより外には動きません。

 

あと、初歩の初歩を。明るい場所に行って、車体の真後ろに陣取って、作業をはじめましょう。調整ねじの小ささと位置がじみに腰と目をむしばみます。玄関ではむりだ!

 

ローギア調整

 

おつぎがローギアの調整です。シフトかちかち、クランクくるくるを繰り返して、メカをでっかいギアに寄せます。

 

シフトチェンジ

シフトチェンジ

 

シフトを押しても、クランクを回さないと、ギアチェンジできません。外装変速機のセオリーです。もちろん、順回転です。シフト空打ち→クランク逆回転は一大トラブルの元凶です。

 

ローの調整も基本的におんなじです。調整ねじを回して、ギアの軸とプーリーの軸を垂直に合わせます。当然、ローの調整ねじはトップの調整ねじでない方です。

 

プーリーとギアを垂直に

プーリーとギアを垂直に

 

ちなみにこっちの軸ずらしはぜんぜん逆効果です。ホイール側へのちょい寄せはもってのほかです。スプロケットのすきまへのチェーン落ちの第一歩です。

 

オフロードには軍手が役立つ

オフロードには軍手が役立つ

 

この状態からなんかの拍子にチェーンがどこかに挟まると、ホイールの回転が不可になります。押し歩きの移動さえがむりです。担ぎ一直線です。要注意。

 

しかし、これにビビッて、あまく調整すると、チェーンをローギアに上げられません。大内の最大ギアがストロークの範囲外になります。

 

結果、メカがこんなふうに寸止めになります。通称『へたれストローク』です。

 

ローギアから落ちる

ローギアから落ちる

 

逆にMIXコンポやパーツの破損でローギアを完全に捨てるなら、必殺インデックスKILLを有効活用できます。12速の11速化、11速の10速化みたいなダウングレードです。

 

トップ側もKILLすれば、-2段までかんたんにいけます。使いどころは・・・うーん、トップギアの破損とかチェーンの長さ不足とかですか。まあ、イレギュラーなおあそびです。

 

Bテンションボルト

 

以上のトップとローの調整で作業の80%は完成しました。ここからは微調整と最終仕上げになります。

 

さみしいボッチのねじを思い出しましょう。はい、Bテンションボルトです。これはメカのアームを縦に動かして、プーリーをカセットに近づける・遠ざけるします。

 

最初にチェーンを前ギア最小、後ギア最大に入れます。フロントマルチのバイクではこれはたすき掛けですね。

 

で、Bテンションボルトを回して、ガイドプーリーを動かします。この場合、ねじ緩めがプーリー近づけです。シマノもこの連動です。手持ちのカンパのAthenaのボルトはメカの前側にあるし・・・

 

Bテンションボルトとメカ動き

Bテンションボルトとメカ動き

 

ガイドプーリー(の上のチェーン)がスプロケットに近づけば、シフトチェンジがキビキビします。しかし、プーリーが近づきすぎると、チェーンがギアに干渉します。

 

最近のオフロード用の最大ギアは40Tオーバーのべらぼうなギザギザです。EAGLEシリーズのローは50Tです。これまでの方式がちょくちょく通用しません。

 

で、上みたいな調整用のガイドプレートがメカにバンドルします。

 

プレートなしで調整するなら、クランクを順回転・逆回転させつつ、ぎりぎりまでプーリー(チェーン)をギアに近づけます。

 

ガイドプーリーはその名のとおりのガイド役です。チェーンの水先案内人だ。ガイドとゲストの距離感が間延びするのはよろしくありません。

 

前ならえの距離感でなく、小さく前ならえの距離感です。わかります?

 

アジャスタいじり

 

仕上げがアジャスタです。おもにケーブルワイヤー類のはしっこにちょこっとくっつきます。

 

フラットバー用のシフター側のアジャスタです。

 

シフトのアジャスト

シフトのアジャスト

 

旧式のロードのリアディレイラーのアジャスタです。

 

メカ側のアジャスタ

メカ側のアジャスタ

 

後付けのアジャスタです。

 

後付けアジャスタ

後付けアジャスタ

 

いずれがアウターケーブル受けを兼ねます。これはアジャスタの構造上の特徴です。

 

ロード用のメカ付属のアジャストボルトをクリクリてゆるめてみましょう。

 

ディレイラーアジャストバレル 最大緩め

ディレイラーアジャストバレル 最大緩め

 

はい、ねじがせり出します。結果的にこれはアウターケーブルが伸びることと同じ意味です。で、アウターケーブルが伸びれば、インナーワイヤーは張ります。

 

イメージ図です。各部をおおげさにぶっとくしましょう。薄い赤がアウター、濃いグレーがインナーです。

 

上・アジャスタ不使用 下・アジャスタ使用

上・アジャスタ不使用 下・アジャスタ使用

 

インナーケーブルは細い鉄線のより糸です。テンションがかかれば、よりがきつくなって、線がはります。こんなにおおげさじゃありませんけど。

 

つまり、アジャスタは疑似的にアウターを伸縮させて、インナーのテンションを上げ下げする装置です。おのずと機構がアウター受けと一体型になります。アウターの疑似的な延長ですから。

 

で、インナーワイヤーは使用や経過でゆるみこそすれ、しまりません。テンションは自然と下がります。アジャスタの調整はそれに準じて、アウター伸ばし=ねじ緩めになります。

 

ですから、変速調整のほんとの一番目の作業は全部のアジャスタを根元までしっかり締めることです。まあ、そこそこの緩め代があれば、微調整は十分に可能ですが。

 

でも、めんどくさがりや猛者はおうおうにアジャスタでごりごりの調整をしようとします。ストローク調整やワイヤー張りのツケを一気にこのちっこいネジに回す。挙句にごりごりのぐりぐり!

 

アジャストボルトはあくまで最終調整用です。実走で変速のもたつきやチェーンのちゃらちゃらを感じて、様子を見ながらちょっとずつ動かす・・・それが正しい用途です。

 

アジャスタのぐりぐり大回転竜巻旋風脚は禁止です。

 

それでも変速が決まらない場合

 

以上の工程をしっかりやって、なおに違和感をぬぐい切れないなら、パーツの破損や故障をうたがいましょう。

 

ハンガー曲がり、フレームエンド変形、ワイヤーほつれ、キャップ外れ、固定ボルトのルーティングまちがい、なんとケーブルがブレーキ用だったゼ! などのうっかりミスをやらかしませんか?

 

曲がったディレイラーハンガー

曲がったディレイラーハンガー

 

こんなふうにハンガーが曲がると、ハンガーの上のメカも、メカの上のストロークやインデックスものきなみ狂います。そして、このハンガーがちょっとやそっとで曲がる。

 

折れたデイレイラーハンガー

折れたデイレイラーハンガー

 

ぎゃー!

 

て、初心者さんはトップギアの調整ねじの特定に全力をそそぎましょう。そこが正念場です。

 

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