自転車のホイール、フロントとリアはニコイチですが、別物です。構造的にフロントのハブの方が圧倒的にシンプルです。軸、ベアリング、ガワで成立します。
そして、こちらは全く鳴りません。フロントホイールに音を発する機構はない。逆に妙な異音は何かのトラブルです。
ホイールの音=ラチェットの音
一方のリアホイールのハブはギアの装着のせいで複雑になります。
ギアの台座=フリーボディですね。これはアメリカSRAM社のXDフリーボディです。
フリーボディの裏側です。
中空のシャフト、シールドベアリング、そして、ギザギザくんが見えます。このギザギザがラチェットです。
フリーボディのフリーは自由、解放て意味です。ペダリングが止まっても、ホイールとハブとフリーは自由に勝手に回ります。
対極がノットフリーボディのハブです。ピスト、競輪なんかのギアはこれです。固定ギア、フィックスギアと呼ばれます。
このフィックスギアにはラチェットがありません。ペダルリング=ギア回転=ホイール回転はつねに連動します。
この固定ギア自転車はラチエット機構を持ちません。必然的にラチェット音を出しません。ラチェット音はホイールの空転時の音ですから。
なんでラチェット音がするか?
上記の写真のようにハブのなかのラチェットはただのギザギザくんです。音の要素は皆無です。
からから鳴るのはこちらです。フリーボディの裏の爪です。
3つの爪が見えます。これは解放状態です。このオープンな爪がギザギザくんの返しにひっかかって、ハブを順回転させます。
逆回転or空回り時にはこの爪はギザギザくんの縁に当たって、内側に収納されます。
左のフリー状態が爪のナチュラルモードです。右が空転時のクローズドの状態です。爪がなかに収まります。
この爪は常にバネの力でそとへ押し出されます。
つまり、爪がギザギザのおさえを越えると、遊びの空隙で瞬間的にぱちっとフリー状態になります。そして、またすぐにつぎのおさえでクローズド状態になります。
このオープン、クローズ、オープン、クローズ・・・の連続がラチエット音の正体です。
ペダリング時の爪はギザギザくんにずっとひっかかります。擬似的、一時的な固定ギア状態です。パタパタ動きませんから、音を出しません。
この爪とギザギザのラチェットの形状は各メーカー、各ブランドでさまざまです。ハブ屋の腕の見せ所のひとつです。
これは台湾製のなぞハブSS35のラチェットです。
で、爪が3段オフセットの6爪です。
さて、ラチェット音はどうなるか? 答えは甲高いリール並みの爆音ハブです。ジッィィィィィイ!!! うるせー!
爆音好きには乗り物好きが多め
ラチェット音はホイールの声みたいなものです。それぞれに個性があります。
えてしてオートバイ好き、自動車好き、ドライブ好きは爆音系を好みます。エンジン音的な感覚でしょう。ウィンウィン、ブンブン、ヒィーヤ!
ぼくの単車乗りの友だちもやっかましいバイクのエンジン音を「この音がええんや~。味があるんや~」とか言います。
爆音系の代表格がカンパニョーロのホイールです。空転時の音はアブラゼミににた甲高い『ジッーーーィィィ!』て音です。
たいていこの音が後ろからすると、フォーマルなルックスの自転車乗りが追い越していきます。
静か系の代表はマビックです。音は大人しめの『シャーーーー!』で、クマゼミみたいな音です。街中ではそのほかの雑音にまぎれますから、カンパほどに目立ちません。
シマノのMTB用のHG+は完全に無音です。おかげで通行人に全く気付かれません。ベル代わりにならんぞ!