ロードバイクやMTBは競技用品です。根幹のジャンルは『スポーツ』です。副次的に『アクテビティ』や『フィットネス』や『ヘルスケア』の項目が付きます。
ママチャリや軽快車は生活用品です。根幹のジャンルは『ライフ』です。こちらのサブ項目は『コミューター』や『エコノミー』や『マカイゾー』です。
このスポーツとライフの中間に位置するのがクロスバイクです。
2015年以前には『ロードバイクとMTBの中間的な自転車』という定義がまかりとおりましたが、完全上位系のオールロード系チャリンコの出現で立場がなくなりました。
で、ポスト・オールロード時代のクロスバイクの定義は『スポーツとライフの中間的な自転車』になります。
依然、その勢力は絶大です。5万で買える商品のなかでは最強のコスパを誇ります。
ピュアクロスバイクの定義最新版
2010年初頭からのロードバイクブームの影響で「ほにゃららロード」とか「ロードほにゃらら」とかがむだに増えます。
- フラットバーロード
- ミニベロロード
- ディスクロード
- グラベルロード
などが代表的です。究極、ドロップハンドルの自転車=ロードです。
日本ではバイク=オートバイのイメージがありますし、「ロードって付けときゃ売れるっしょ?」という販売側の温い目論見もありますか。
Vブレーキ、135mmエンド、フロントトリプル
クロスバイクのクロスバイクらしいポイントは3点です。Vブレーキ、135mmエンド、フロントトリプルです。
この3点セットは前世紀のマウンテンバイクの標準規格のなごりです。本家のオフロードマシンにはもうくっつきません。『クロスバイクのためのパーツ』です。
ブレーキが旧式のVブレーキであれば、エンドは運命の導きで135mmになります。130mmエンドのものはピュアではない。
売れ筋のGIANT Escape R3やGIOS Mistralはこの点で邪道です。フレームエンドが130mmです。ロードホイールをポン付けできるクロスバイクは邪道です。
「135mmハブのリムブレーキ用のそこそこのホイールがない! 純正品か補修用の鉄下駄しかない!」
それがピュアクロスバイクです。
フロントトリプルも同様です。ロードは2x、MTBは1xです。3×8の24速や3×9の27速!はクロスバイクの専売特許です。
て、この3点セットを必須条件とすると、ロード系クロスバイクやイマドキスタイリッシュなアーバンコミューターを振るい落とせます。
高級クロスバイク5選
以上の定義を頭に入れて、有名ブランドのクロスバイクをピックアップして、ああだこうだとダメ出しをしましょう。
そして、案の定、ピュアクロスの高価格モデルがレアです。この数年で上位モデルがディスクブレーキ化しちゃいました。
GIANT ESCAPE RX1
クロスバイクの永遠のベストセラーはGIANT ESCAPE R3です。クロスバイクの代名詞的な存在です・・・が、しかし、上記のエンド幅からピュアではない。
そのGIANTの高級クロスバイクがESCAPE RXです。最上位モデルのRX1は105000円です。
- メーカー:GIANT
- モデル:ESCAPE RX 1(2019)
- 価格:105000円
- 重量:9.9kg(465サイズ)
ブレーキはVブレーキです。ホイールはGIANT純正です。ジオメトリやルックスは完全にクロスバイクです。
しかしながら、ESCAPEシリーズのさだめでエンド幅が130mmです。そして、ドライブトレインがロード系のShimano Tiagra 2×10です。ざんねん!
TREK FX3
TREKはアメリカ最大手の総合自転車ブランドです。ロード、MTBのいずれがトップレースと人気ランクの常連です。
コンセプトストアの店舗数はGIANTストアに次ぐ堂々の二番手を快走します。
このTREKのオフィシャルのクロスバイクのページにクレイジーな一台があります。TREK FX Sport 6です。
「じまんのOCLVカーボンでクロスバイクを作っちゃいました!」てものです。
お値段はぶっちぎりの255000円です。ブレーキはディスクブレーキですし、ドライブはシマノ105です。なんで会議室で止まらなかったか・・・
本命はこちらです。TREK FX 3です。これより上位のFX 4はディスクブレーキバイクです。
- メーカー:TREK
- モデル:FX 3
- 価格:72000円
- 重量:11.38kg(Mサイズ)
キービジュアルのクランクは安心と信頼のフロントトリプルです。ドライブはShimano Aceraの3×9です。来た!
ブレーキはテクトロのVブレーキです。エンド幅の記載は公式には見当たりませんが、販売店のログから135mmだとわかります。ビバ・ピュアクロスバイク!
気がかりはボントレガーのホイールです。これがチューブレスイージーです。よこしまなイマドキ感、イマドキッシュ・アトモスフィアがほのかにただよいます。
あと、価格のインパクトがいまいちです。FX Sport 6がリムブレーキであればねえ・・・クロスバイクの上位種にさえディスクブレーキ化の波がおしよせます。
Vブレーキクロスの危機だ!
Khodaabloom RAIL 700SL-LTD
ホダカ自転車のスポーツバイクのプライベートブランドがKhodaabloom、コーダーブルームです。二重母音が北欧系をほうふつさせますが、つづりはHodakaのアナグラムです。
ここの売りは『日本人向け設計』と『クラス最軽量』です。前者はキャッチコピーのレベを出ませんが、後者はほんとの本気です。
とくにクロスバイクやミニベロのような非競技系のチャリの軽量モデルが全国の軽量化ラーの好意的な支持を集めます。ぞくにミニベロロードのRAIL 20は8.4kgしかありません。しかも、62000円です。
そして、コーダーはDB化には消極的です。最上位のDBモデルがありません。ディスクロードは3つだけ、クロスバイクのDモデルは1つだけです。ビバ・リムブレーキ!
で、クロスバイクの最上位モデルが奇跡のVブレーキです。RAIL 700SL-LTDがそうです。
- メーカー:Khodaabloom
- モデル:RAIL 700SL-LTD
- 価格:135000円
- 重量:8.4kg(480)
まずはおはこの重量です。アルミフレームのクロスバイクが驚異の8.4kg!です。国内市販品のクロスバイクのクラス最軽量です。
ブレーキはVブレーキです。しかも、安定と信頼のシマノ製です。そして、最大の目玉がアルミカーボンコンポジットのホイールです。
130mmエンドがたまにきずです。
Colnago Epoca
高い自転車を求めるなら、ブランドを頼りましょう。自転車ブランドのヒエラルキーは欧州 > 北米 > アジアです。コスパの悪さを逆手に取れば、割高クロスバイクに巡り合えます。
いちばん人気のビアンキが日に日にポピュラーになって、良コスパブランドに食い込みます。Sempre Proの公式値引きは衝撃でした。
そのほかのイタリア御三家はロード屋です。クロスバイクの品ぞろえがよろしくありません。本国はそこそこですが、国内は壊滅的です。
その最中、三つ葉のマークのコルナゴに一機の希望が見つかります。Colnago Epocaです。
- メーカー:コルナゴ
- モデル:エポカ
- 価格:84000円
- 重量:9.5kg
サイズ展開が380、440、500のみです。このざっくり感がクロスバイクです。本家colnago.comのラインナップにはありません。アジア向けか日本国内用の無知な初心者課金バイクでしょう。
ブレーキはシマノのVブレーキです。フロント変速はFD M370 Altusのトリプルです。ピュアクロスバイク、リーチ!
しかし、あいにくとエンド幅がN/Aです。ビンゴはおあずけです。
Bianchi Camaleonte E
女子人気ナンバー1の自転車ブランドはチェレステ屋さんのBianchiです。ここのクロスバイクシリーズはCamaleonteとROMAの二枚看板でした。
2019シーズンからCAMALEONTEが一気に縮小して、1モデル展開のC・sport 1に統合されました。サヨナラ、カメレオンテ。
ROMAシリーズは継続しますが、DB化の影響をもろに受けます。4モデル中の3台がDBです。リムブレーキはROMA 4のみです。
このラストイヤーにCAMALEONTEの電動アシストモデルが鳴り物入りで販売されました。
- メーカー:Bianchi
- モデル:CAMALEONTE E
- 価格:169000円
- 重量:17.3kg
なんの作戦かBianchiはこの電動カメレオンテに前輪駆動のハブユニットを採用しました。シマノSTEPSでもBOSCHでもなく、SUNTOUR製です。
高級クロスバイクはもういない
旧来の古き良きクロスバイクは5万円前後の入門用にのみ生き残ります。上位モデルはロード化、カーボン化、ディスクブレーキ化、チューブレス化で純血のDNAを失います。
さらに10万の予算にはフラットバーロード、オールロード入門機、ハードテイルMTBが入ります。
そんなわけでVブレーキ、135mmエンド、フロントトリプルの高級クロスバイクは夢のまた夢です。