Gravelは2015年前後からの自転車界の重要なキーワードです。Gravel、グラベル=砂利、砂礫のことです。Gravel Roadはこんなです。

ぼくの感触では雨でぬかるむのがダート、ぬかるまないのがグラベルです。河川敷のように車や自転車のわだちのあとがあるのはダート、雨上がりにからっとするのはグラベルだ。
ダート用自転車、ダートバイクてジャンルは昔からあります。シングルギアのハードテイルの小さめのオフロード自転車です。大方は26インチや24インチです、トリック系にも使われます。
一方のグラベル用自転車、グラベルバイクはチャリ業界ではニューカマーです。呼び方はまちまちです。グラベルロード、グラベルバイク、アドベンチャーバイク、ハイブリッド、X系、オールロードなどなど。
ジャンル的にはレースやトレーニングでなく、ホビー、レジャー、フィットネスです。クロスバイクの上位互換、シクロクロスの突然変異みたいなスポチャリです。
とにかく、これはスタイル、流儀、概念です。『グラベルロード』や『グラベルバイク』て指標はとくにありません。UCIみたいな競技団体のかたくるしいレギュレーションはありません。ホビーですから。
が、だいたいのバイクに共通するのは以下の項目です。
- ドロップハンドル
- ディスクブレーキ
- スルーアクスル
- エンデュランス設計
- 太めチューブレスタイヤ
- 1xドライブ
です。ファンライド用のオモシロイマドキスポーツバイクです。トレンディー。
イタリアのパーツ屋3Tのフレーム第一弾Exploroはザ・オールロードです。

ピュアロードは閉塞気味、ピュアMTB(DH)はとんがり過ぎで、ともに縮小の一途を辿ります。未来は明るくありません。チャリ界の命運を握るのはこのオールロード系と電動のE-bikeです。
グラベルバイクの特性
グラベルバイクの最大の魅力は走破性の高さです。旧来のロードバイクやシクロクロスで踏み込めないマイルドな悪路にがつーんと飛び込めます。ラフにだーっと遊べる。これです。
秘密はタイヤです。ロードタイヤは25c前後、シクロタイヤは30c前後ですが、オールロードタイヤは40c前後です。空気圧は4-5barです。柔らかめ。そして、ほぼチューブレスタイヤです。
パナレーサーのグラベルキングSKの最新版の40c、43cはチューブレスモデルです。これ以下の26-35cは旧来のクリンチャーです。

チューブレスタイヤはオールロード系の鍵です。これよりさらに太いWTBの新型の47cとかは『ロードプラス』と称されます。MTBのプラス系セミファットタイヤのグラベル版です。新機軸。
このロードプラスタイヤを650ホイールにつけると、タイヤの大外が従来の700-25とかに近づきます。エアボリュームは上がりますから、乗り心地はマイルドになります。
700cホイールに40cグラベルタイヤのサイズ感はノーマルなクロスバイクに近くなります。が、サイズ感だけです。中身はぜんぜん別物です。

この重い純正ホイール、ぞくに『鉄下駄』とは比較になりません。こいつはリムブレーキだし。
ブレーキがディスクであれば、サイズ違いのホイール交換によるブレーキ位置のずれが難点になりません。ホイールのサイズよりハブのエンド幅のが重要です。
チューブレス化のメリットは絶大です。重さが軽くなる、リム打ちパンクがなくなる、転がり抵抗が減る、乗り心地が楽になる。
短所はタイヤの選択肢の少なさと取り付けの一手間です。しかし、各社がどしどし新作を投入しますし、最近のチューブレスタイヤはユーザーフレンドリーです。クリンチャータイヤの感覚で着脱できます。
ビード上げもらくらくです。こんな携帯ポンプでかんたんにビードを上げられます。

個人的にスポバイにはクリンチャーはもう不要です。今後のクリンチャータイヤ=クロスバイク、小径車てことになります。マビックがロードホイールのチューブレス化を一気に進めましたしねー。
固くて細いクリンチャーはもうアナクロに片足を突っ込みました。タイヤのトレンドは完全に太め柔らかめになります。バイバイ・クリンチャー。
実際、アルテグラみたいなチューブレスレディのオーナーさんはちょっとがんばって、チューブレスタイヤを買ってみましょう。シュワルベプロワンやGワンがおすすめです。
じゃあ、チューブレスのバイクはタイヤの太さと柔らかさを活かして、マイルドな悪路を気兼ねなく走れます。タイヤのブロックパターンがグリップを生みます。ウェットな草地に滑りません、負けません
もちろん、がっちんオフロードの岩場や段差は無理ですが。40cはオンロードでは太めですが、オフロードでは細めです。
40mm/2.54cm=1.57インチです。本格MTBのタイヤ幅は2-2.5インチです。3.0のセミファットの表記はこんなです。

72cです。ごんぶとです。ごむまりみたいに跳ねます、ぽよんぽよーん。実際、推奨空気圧が1barちょいですから、サッカーボールと同じくらいです。
グラベルバイクが行けるのはひとえにマイルドな悪路です。そこを本格MTBより速く駆け抜けられます。そして、きれいな舗装路ではアーバン系やクロスバイクに勝ります。

手前の緑クランクのマットなやつがぼくの愛車です。ドロハンでないから、グラベルクロスてとこです。タイヤが上記のグラベルキングSKのチューブレスです。フレームはMTBのトレイル用です。
たまたま写真に入った右どなりのディスクのドロハンバイクは典型的なオールロード系のツーリングバイクです。タイヤは35mmくらいだあ?
こうゆう使い方がグラベルバイク、オールロードの本領です。日常+冒険、オンロードとオフロードのハイブリッドです。ランドナー・リマスターバージョンてとこです。
ツーリング? ノーノー、バイクパッキングがイマドキの呼び方だよ! ビバ・バイパキ!
グラベルロードとディスクロードの違い
ピュアロードレーサー乗りにはディスクロードもグラベルロードも同じ異端児に見えちゃいます。23cクリンチャー、キャリパーブレーキ、ホリゾンタルトップチューブの神話は根強く残ります。
たしかにディスクロードとグラベルバイクのぱっと見の印象はよく似ます。いずれがディスクブレーキのドロップハンドル自転車です。
しかし、ディスクロードはあくまでオンロードバイクです。得意分野はきれいな舗装路です。路面のノイズやバッドコンディションはノーセンキューです。
こうゆうのが苦手です。


グラベルバイクはそうじゃありません。こうゆうのは好物ウェルカムです。こうゆうのを気兼ねなくぎゃーと乗り越えるのが楽しいものです。チューブレスのだいごみです。
げんにグラベルタイヤで街中の舗装路のアレやノイズに困る場面はほとんどありません。てゆうか、23c、25cのクリンチャータイヤの使い勝手がぽんこつすぎです。
都心部で頻出するこいつがもう天敵です。

グレーチングです。これの隙間の幅がだいたい24-27mmです。あとは線路のレールです。
とはいえ、チューブレスでこんな本気のごりごりオフロード山道はむりですけども。

これをずぎゃーんと突破するのはフルサスのMTBの仕事です。バニーホップで突撃しましょう。
ディスクロードのタイヤはロード系です。最近、タイヤ幅の主流が23cから25cに変わりました。が、チューブレスはまだまだマイナーです。細クリンチャーは神経質なタイヤです。
タイヤのほかの前100、後ろ142mmのエンド幅、12mmのスルーアクスルは共通します。しかし、ディスクロードのフレームとフォークのクリアランスは30c前後です。シクロ系タイヤが限度です。
また、車体が圧倒的にきゃしゃです。ラフ・タフではありません。無茶は禁物だ。素体はオンロード用ですからね。チャリの骨格は中長距離のマラソン選手です。室伏じゃない。
でも、ディスクロード自体はこれからのロードバイクの基本形になりますよ。マルセル・キッテルがツールドフランス2017の第2ステージでSpecialized Vengeのディスクモデルで勝利しました。
機材OK、安全性OK、レギュレーションOK、そして、ついに実績がOKになりました。カンパニョーロがディスクブレーキをようやく完成させましたから、今年後半からロードのディスクブレーキ化が一気に加速します。
そして、これはキャリパーブレーキの終わりの始まりです。てことは、100、130mmエンドのクイックリリースが必然的に衰退します。
130mm幅でリアの12速化13速化はちょっと危険ですしね。変速調整がシビアになりすぎますよ。コグの耐久度も不安だ。
げに一個が動けば、ほかが連動的にがたがた動きます。それが徐々に勢いを増して、最終的に雪崩のようにがーと押し寄せます。はて、26インチのMTBはどこに行った?
油圧ディスクを使いなれるとキャリパーやVのワイヤーを引いて止めるてゆう機構にアナログさを覚えますし、スルーアクスルに乗りなれるとクイックリリースの仮留め機構に頼りなさを感じちゃいます。
だって、ほっそい棒を爪にひっかけるだけですよ?! 安定感ではママチャリのボルト締めにぜんぜん適いません。
クイックリリースの手軽さはよく利点に上がりますが、このタケノコバネが意外と曲者で、わりにゆがむとか行方不明になるとかします。

正味、スルーアクスルとクイックリリースの着脱の手間はそんなに変わりません。そして、クリックリリースは取り付けの段階でトルクや固定がけっこうばらついちゃいます。ルーズだ。
反面、スルーアクスルはかっちりします。エンドの貫通穴に太い中空棒を通しますから。

ちなみにこれはSRAMのMAXLE系シャフトです。シマノはE-thruです。
ディスクブレーキにはこのかちっとした一体感が必要です。また、ハブが広がれば、フランジが広がって、安定度が増します。これはコーナーリングの性能に影響します。
そして、スルーアクスルはディスクブレーキと好相性で、ディスクブレーキはカーボンホイールと好相性です。
チューブレスホイールはクリンチャーホイールより高精度です。リムにストレスを与えないのが肝心です。それにはキャリパーよりディスクのが適当です。
上のうちのグラベルクロスのホイールはフルカーボンのチューブレスですが、六甲山の山頂からふもとまでの下りをなんなくダウンヒルしきっちゃいます。熱変形の心配がありませんからね。
変速は1xフロントシングル
トラブル過多、使用頻度小のフロントマルチはこの数年ですっかり廃れました。フロントシングルが主流です。
ロードの2x、XCの3xはすでにマイナーです。クロスバイクの3×8ごときはもうほんまにただの飾りです。ミニベロや折り畳みの1×8のがまだ合理的です。
じゃあ、おのずと変速系はSRAM系になります。ワイドレシオの1×11がスタンダードです。ホイールのフリーをXDドライバーにすれば、11t以下のトップギアを使えます。
10-42T、9-44Tなどのワイドレシオが魅力です。トップギアを少なくすれば、フロントリングをコンパクトにできます。グラベル系に50T以上のリングはナンセンスです。
ぼくは前リング34T、後ろカセット10-42Tにしました。

従来の37-11Tギア比です。タイヤ外径がロードより一段大きくなりますから、実質トップアウターの踏み心地は40-11Tくらいです。ちょうどロードのインナートップくらいです。
そして、ローの42Tは坂で活躍します。

ここでケイデンスうんぬん、休むダンシングを言うのは昭和のスポ根ナンセンスです。グラベルバイク、オールロードはファンライドです。スポーツじゃない。こまけえことはいいんですよ。
実際、長い上りではロードには勝てません。でも、下りはキャリパーのロードより快適スピーディです。ディスクブレーキの安定した制動力、142mmスルーアクスルの剛性、太目タイヤのグリップでぎゃんぎゃんごりごり下れます。
シマノのMTBクランクを流用するのはぜんぜんOKです。フロントシングルのオプションはロード系よりオフロード系機材に多くあります。
ただ、最高グレードのXTRはノットおすすめです。

こいつだけは特殊なBCD96です。XTやSLXのBCD96リングとはノットコンパチです。
このジャンルにマッチするのは2016年デビューのアーバン系コンポMETREAです。こいつは販売当初から1xを包括します。
デザインもイマドキスタイリッシュで個人的にツボです。が、いかんせん、165mmサイズがない!
おすすめグラベル
グラベルバイクは新ジャンルです。各社がいろいろ競い合います。ブランドより仕様とデザインと価格で選びましょう。ロードみたいなフォーマルなかしこまりは無用です。
自分で完成車をいちから組めるなら、29erのハードテイルのMTBやシクロフレームをベースにして、いろいろ遊べます。142mm 12mmのスルーアクスルの互換性が広めですから。
たとえば、広めのクリアランスのフレームを買って、29erホイールとロードの700cディスクブレーキホイールを併用するとかできます。カンパのBORA DBが今秋から出ますし。
サスフォークを使っても、リジッドフォークを使っても、別にわいわい言われません。グラベルバイクはフリーダムです。しゃちほこばった気構えは不要です。
完成車はいろいろです。10万からあります。アルミでぜんぜんOKです。
とりあえず、40c前後のチューブレスタイヤでマイルド悪路をざーっと走ってみましょう。グラベルバイクはタイヤから! です。
それで逆算的にホイール、ディスク、スルーアクスルまで決まります。ドロハンorフラット、フロントシングルorフロントマルチは好き好きです。