Panasonicは大阪門真の電気屋さんです。大阪市内から京都方面へ京阪国道で向かうと、げにでっかいパナ本社を拝めます。

パナソニック本社
得意分野は白物家電と電池・バッテリーです。デジタル家電はすっかり弱くなっちゃいました。2013年頃までパナソニックのP印のスマホはふつうにありましたけどね~。
げんにぼくの先代スマホはここのELUGAでした。いまやXiaomiです。チャリもスマホも中華製だね!
で、パナソニックは巨大企業です。いろんなジャンルをします。そのなかの自転車部門は実質的に国内最大クラスのフレームメーカーです。
Panasonic Order System、通称POSです。全工程を大阪府柏原市の自社工場で行います。フレーム素材はクロモリとチタンです。カーボンのノウハウはありません。ザ・溶接屋さんです。
日本の自転車の製造業はほぼ壊滅しましたから、パナソニックのPOSは異例中の異例です。ほかは中小系のフレームビルダーばかりです。しかも、フルオーダーが40万~です。良心的です。
また、タイヤのパナレーサーはその名の通りにもともとここの傘下でした。と、この自転車へのこだわりは創業者の松下幸之助が駆け出しのでっち時代に自転車で修行したからです。
このフレームのパナ、ホイールのアラヤ、コンポのシマノの力を結集すれば、世に珍しいピュアmade in japan バイクを作れます。
そして、本家のパナソニックは屈指の電池屋さんです。フレーム+バッテリー=電動アシスト自転車です。
実際、国内の電動アシスト自転車のパワーユニットはパナソニックかヤマハになります。電池屋かモーター屋か。
この二社とともに電アシ御三家に連なるタイヤ屋のブリヂストンはこの両方を使い分けます。ブリジストンの独自のユニットはありません。タイヤ屋ですから。
現在、国内の電動アシストの販売台数は原付をゆうに越えます。そのうちのほとんどがママチャリ系の電動アシスト自転車です。原付より気軽です。
免許なし、メットなし、そして、子供を乗せられるのが大メリットです。原付の二人乗りはNGです。
で、実用的電動アシスト自転車はすでにおなじみですが、スポーツ系の電動アシスト自転車はマイナー・ニッチ・キワモノのレベを出ません。
欧米ではすでにE-bikeが激アツです。ヨーロッパではドイツのBoschのパワーユニットが人気です。シマノも欧米仕様の電動ユニットを出します。
ややこしいぞ 電動アシスト規制
アメリカのSpecializedは本気のオフロードE-bikeを早くから投入します。Turbo REVO Bikeシリーズです。100万オーバーのホンカクハです。パワーは500w越え! のモンスターです。
しかし、こいつを日本に持ってくると、途端に活動範囲を限定されちゃいます。電動アシストの規制のせいです。これは各国で異なります。
EUは250W以下25km/hまで、カナダは500W以下32km/hまで、アメリカは750W以下32kmまで、です。まちまちです。
中国では10km以下のフル電動自転車が公道に出れます。漕がずに進むやつです。たまに日本でも見ます。国内では電気スクーター扱いになります。ナンバープレートやメットが必要です。
日本の電動アシスト規制は複雑です。箇条書きにしましょう。
9km/h以下では人力:電動の出力の割合が最大1:2
25km/h以上で電動アシストはなくなる
10-24km/hでの電動アシストの出力は走行速度をキロメートル毎時から10を減じて得た数値を7で除したものを2から減じた数値
は、はあ? お役所仕事はこれだよ! 減ずる=引き算、除する=割り算です。えーと、てことは、20km/hの場合は、
20-10=10
10/7≒1.43
2-1.43=0.57
20km/hのときの人力と電動アシストの比率は1:0.57です。だあ? 10kmと24kmでやってみましょうか。
10-10=0
0/7=0
2-0=2
24-10=14
14/7=2
2-2=0
うん、この式で正解でしょう。
つまり、速度が10kmから24kmに近づけば近づくほど、電動アシスト力は徐々に弱くなります。『徐々に』てのがクセモノです。
欧米のモデルはこうじゃありません。制限速度に達するまでアシストはかかり続けます。で、制限速度でぱたっと止む。シンプルでダイレクトです。
この日本独特の規制のために海外のモデルは公道を走れません。たんに制限速度を抑えるのは簡単ですけど、徐々に遅くなるアシストのプログラミングは一手間です。
じゃあ、海外モデルが走れるところは公道以外のクローズドエリア、パークやコースやゲレンデや私有地です。「この山、わしのん」て人はばりばり乗り出せます、ははは。
河川敷は昔からグレーゾーンになります。河川敷で友だちの原付を借りて練習をするのはマイルドヤンキーの通過儀礼です。
このアシストの徐々に弱まる仕様の理由は乗り手の安心・安全のためでしょうね。例えば、アシストOK速度ゾーンの23km/hで250wの目一杯アシスト+全開人力漕ぎ漕ぎすると、一気に30kmぐらいまでばーんと到達しちゃいます。
外国では個人主義で自己責任が確立します。責任の所在地ははっきりくっきりします。びゅんびゅん飛ばして乗り手が怪我したら、
「おー、無茶するYOUがアホだね~、HAHAHA!」
てことになります。
一方の日本では責任の所在はあやふやです。アシストで怪我をしようなら、
「うちの子が怪我したわ! この自転車はキケンだわ! こんなのを売る店と企業が悪いわ!」
てなります。まれに「うちの子」てのが20、30歳のオトナだとかしますが、ははは。
数日でSNS上に大拡散、大炎上、マスコミ殺到、あげくのはては、
社長「まことに申し訳ありませんでした・・・」
です。
て事態を避けるために安心・安全は不可欠です。ユーザにも安心安全、メーカーにも安心安全です。政府と企業のえらい人のけんけんがくがくが思い浮かびます。
とにかくトラブルの責任をうやむやにすることはわが国の組織団体では必須のスキルです。責任をうまくなすり付けられる人、煙に巻ける人が出世します。
責任感のある熱血漢は個人的には良い人ですが、組織的には目障りなもんです。日本の会社や団体では煙たがられます、まじで。金八先生は校長にはなれません、ぜったいに。
で、そうゆう人らがトップになって、ルールや規制を作ります。熱いアグレッシブなものになるわけがない。せいぜい微温です。
もうすこし楽しいはなしをしましょう。アメリカの規制の上限の750wのユニットを30kmでフル出力させて、さらに人力でアシストすれば、瞬間的に40km前後まで上がりそう。
で、おそらくアメリカ人はそれで別の遊び方を考えて、新しいジャンルを作っちゃいます。やっぱし、そうゆうダイナミックなセンスは圧倒的にアメリカです。
アメリカ、カナダは有名自転車ブランドを多く持ちますし、規制に恵まれますし、雄大なコースに事欠きません。パワフルなモンスターはここから生まれます。
東京オートサロン2017出展車輌に積載する日本未発売の電動アシストマウンテンバイク
「SPECIALIZED S-Works Turbo Levo FSR 6Fattie」
キタ━━━━━━ (・o・) ━━━━━━ッ!!https://t.co/THow9wHcyi pic.twitter.com/e3WLvhFfBz— NEEDSBOX (@needsbox) 2017年1月7日
や、やべえ!
が、このモンスターも日本では子猫なみに大人しくなります。ゲレンデ用かイベント用です。規制がボトムネックです。
前の改定からすこし時間が経ちますから、新しい動きがそろそろ出るう? 速度上限よりアシスト比の緩和ないし撤廃が希望です。
パナソニックの電動アシストマウンテン XM1
そんなもろもろの事情で北米のスーパーモンスターE-bikeは日本では猫に小判です。が、EUやアジアの規制は日本に似ます。シティ系の電アシはちょくちょく出ます。
最近ではBESVやVANMOOFが注目です。
アジア系=小径車、ヨーロッパ系=オートバイブランドのMTB系てかんじです。日本での受けはこうゆうスタイリッシュな小径車です。
実際問題、日本の電アシ御三家はむりに新ジャンルを開拓しなくても、ママチャリ系電動アシストで儲けを出せます。ママさんがたはうるさく言いません。見た目と色と価格です。
が、スポーツバイクがちまたにぶわっと広がりまして、非実用系の電動アシスト自転車の需要がほんのすこし出てきました。
ここに規制緩和が来れば、伸び代は出ます。現状にあぐらをかいて、試作品みたいなものを作らなければ、せっかくの新しいビジネスチャンスを外国勢にやられますし。
ですから、ヤマハもパナも電動スポーツバイクを見切り発車で投入します。規制緩和やブームが来てからでは手遅れです。黒船モンスターはすでに海外にありますからね。
ヤマハはすでに電動アシストクロスと電動アシストロードバイクを出します。YRPJシリーズです。

電動クロスバイクYRPJ-C
これはクロスタイプです。ユニット性能は変わりません。ドロップハンドル、変速なんかが違います。これは税込み199800円です。
見た目はクロスバイクですが、乗り心地はただの電動アシスト自転車です。そして、ディスプレイがかっこよくない。

サイコンと電動リモートパネル
スタイリッシュさが足りません。ガジェット、ギミックもない。デザインも凡庸です。事務的。チャリ通や体力ないおっさんの運動不足解消にはけっこうでしょう。が、若者の心は「おっ!」とならない。
てCONSが目立ちますけども、本格クロスとロードタイプが出たことは僥倖です。ヤマハはMTBモデルの投入を公言します。これよりしゅっとしろ~。
で、ライバルの動向を尻目にしつつ、パナソニックが本格電動マウンテンのXM1を抜き打ち発表します。
街でも山でも自由に走れる電動マウンテンバイクが「XM1」登場!
フレームと一体化したバッテリーを搭載し、洗練されたデザインと走りを楽しむための本格的装備で自転車本来の走る楽しさを味わえます。9月1日発売!#WBShttps://t.co/U93RMDY93e— Panasonic Japan公式 (@Panasonic_cp) 2017年7月5日
まず、一体型バッテリーユニットが目を引きます。ようやくここまで来たか! てのが正直なところです。上のヤマハのバッテリーはまだバッテリー感を出します。
内蔵でしゅっとさせるか、外装でアクセントを付けるかはブランドやモデルで分かれます。セミ内蔵でこのルックスは悪くありません。
が、なんでハードテイルでしょうか? 本格をうたうなら一思いにフルサスにしましょう~。この際、重量増はスルーです。
そして、フロントフォークはSR SUNTOURのスルーアクスルですが、フレームのリアエンドは135のクリックリリースです。
135のクイックリリースのMTBホイールてのがもう黄信号です。148のブーストまで行かずとも、142のスルーアクスルにしてくれ~。
そして、変速はDeore SLXの1×10速です。10速?! なんで?! 型番はSH RD M7000 SGSです。現行モデルです。もちろん、SLXのスタンダードは11速です。なんでわざわざ10速をつけるう?
ダウンヒルに特化するなら、一思いにSRAM7速とかにしますよねー。現行モデルの10速のフロントシングルてのはなぞです。てか、うちの先代のカスタムクロスバイクですやんけ。

GIANT ROAM 3 Ver11
XT M780のなんちゃって1×10速です。町乗りにはじつに便利ですよ、町乗りには。でも、オフロードには力不足でしょうよ。
油圧ディスクブレーキのSLX BR-M7000はぜんぜん無問題です。これはOK牧場及第点です。本格です。
シートポストはノーマルタイプです。ドロッパーじゃない~。アウト! 町のポジションで山に突っ込む? このご時勢にクイッククランプをしこしこをする? ないよ~。
ホイールは27.5です。これはOKです。2018モデルからBOOST化と29erへの回帰が始まりましたが、数は多くありません。BOOST 29erを持つのは去年後半から今年前半に買った人だけでしょう。
しかし、リムの記載が『アルミ 32h』だけです。チューブレスか否かが定かじゃありません。タイヤはMAXXIS IKONでチューブレスイージーですが、Ebikeモデルです。これはどっちだあ?
そして、ユニットのBBがスクエアテーパーです。調べる限り交換は難しそうです。じゃあ、クランクが限られます。ホローテックかGXPにしといてよ~。
シマノ系、SRAM系、CNCサードパーティ系のクランクが全滅です。ピスト系のクランク? SUGINO? 山でSUGINO?! うーん、ミスマッチです。
フロントリングは41T、カセットは11 13 15 17 19 21 24 28 32 36Tです。クロスバイクのレシオです。
上りをアシストに任せるなら、一思いに11-28Tみたいなロード系クロスレシオカセットに変えて、中間層のギア数を増やすか。しかし、なんで10速だ?
ディスプレーとリモートのボタンはヤマハのださコンパネよりぜんぜんスマートです。これは家電屋の面目躍如です。
サイズは1サイズの400のみです。157~183cm 72~84cmが適応身長です。て、おいおーい! 実際、400サイズは165-175前後でしょうよ。日本人男子平均身長の偏差値の中心です。
そら、小学生もママチャリには乗れますよ。が、適正ではありません。逆もしかりだ。180cm以上のひとには酷でしょうよ。この記載の仕方はザ・アウトです。本格の名折れですわ。
重量は21.8kgです。これはこんなもんです。じゃあ、もうフルサスにして25kgにしてくれよーて思います。
とりあえず、性能的には『電動クロスのフォークをサス付きにしました』てのと大差なしです。山には入れますけど、山では遊べません。
MTB的にはレトロのレベです。プレステ的にはPS3だ。わりと乗り慣れた人が気を遣いながら走って遊べるレベルです。そうゆう意味での本格派だあ? ちゃうか。
機材がよくなれば、乗り手の負担が減ります。初心者が気軽に遊べるレベにするにはざっと20万-30万プラスして、機材をグレードアップさせないといけません。
とにかく、このXM1の仕様は初心者向きじゃありません。中級者向きです。オフロードとしては。
絶対の変更ポイントは
ドロッパーポスト
フォーク
ナローワイドリング
チューブレス
です。はい、15万~。
あと、ホンカクハを売り文句にするなら、しょーもないECOモードを切り捨てましょう。ノーマルとパワーだけでOKです。
全体的にこのジャンルを本気で欲しい人が思うより丸く大人しい仕上がりです。よくいえば万人向け、悪く言えば生ぬるいローカライズです。MTB的に中途半端だ。
お値段は33万です。SLXのハードテイル完成車20万、電動ユニット10万て内訳を考えると、妥当な価格です。
が、50万でもっとしっかりMTBにしてよ! てのが本音です。競技系する人を「おお!」て唸らせる突き抜け感がぜんぜんない。及第点はほんまにブレーキばかりです。
その人らのほんとの希望はスペシャラの500wのやつです。でも、それはむりだ。どうせ10速にするなら、SAINTやZEEを使えんけ? フルサスやろ? とかの不満がいろいろ聞こえます。
やはり、競技系ホンカクハの人の賛同を得られないと、普及には行き詰りますねー。この仕様では熱心な支援者やファンは生まれませんで。
このXM1の発売日は2017年9月1日です。うーん・・・ヤマハの新型を待ちましょう、ははは。
正味、ノットママチャリの電動アシスト自転車的の魅力としてはBESVやVANMOOFの方がぜんぜん上です。町乗りジャンルのなかでしっかりピーキーですし、ガジェット的なおもしろみを醸しますしね。
へたすりゃ、中華製のフル電動のがまだしも琴線をちろっとくすぐります。違法だけど。