クロスバイクはスポーツバイクの登竜門です。旧時代のMTBとロードバイクのかけ合わせから生まれて、通勤通学からサイクリングまで多様に使われます。
正直、日本の都市部の交通状況と文化風土ではMTBやロードみたいな競技用自転車は不便で窮屈です。些細な瑕疵が炎上の種だ。
おまけに大半の自転車利用者はそんなカリカリのピーキーさやガツガツのスポーツマンシップを求めません。90%の利用者ニーズをクロスバイクで満たせます。
あと、MTBやロードバイクのような競技用自転車は無情の金食い虫です。ミニベロ、折り畳み自転車も嗜好性の高さからお財布を軽くしてくれます。
そんな高コストな自転車界の中でクロスバイクは庶民の味方です。ホームセンターのママチャリ? あれはコスパの化け物です。
クロスバイクのホイール事情
現在のクロスバイクの位置づけは日常品とスポーツグッズの中間にあります。これは競技用機材ではありません。
また、現代的なMTBとロードバイクの掛け合わせの解はクロスバイクにはなりません。グラベルやアドベンチャーバイクになります。
つまり、自転車業界の区分ではクロスバイクは雑種の亜流の古物に振り分けられます。血統書は付きませんし、希少価値はありません。
基本的に自転車の進化や変化は競技用のハイエンドモデルから始まります。で、それが上位から下位に行き渡って、新しい波が上からまた来る。トップダウン式です。
まれにグラベルやファットバイクのような異端児が生まれます。そういうのはたいていアメリカ発です。
で、クロスバイクはこのフローチャートの最下層にいます。その本質が純粋なスポーツグッズでないから。クロスバイクのの片輪は生活用品に入ります。
ゆえに機材のトレンドがこのなかなか伝わりません。結果、一般的なクロスバイクの姿は数十年前から変わらない。毎年のモデルチェンジの実態はカラーの変化と価格の見直しくらいです。
自転車弄り愛好家、機材マニアの目にはクロスバイクはそんなに魅力的ではありません。このおんぼろの車体も最新のモデルもほぼ一緒です。
むしろ、コストダウンや為替変動で完成車付属のパーツ構成は微妙にしょぼくなります。2010年頃がコスパのピークでしょうか。
このような事情からクロスバイク専用のグレードアップパーツ、最新鋭アイテム、超クールガジェットというのは出ません。元々が余り物の雑種です。
料理人がごった煮に明石鯛の刺身や松坂牛のサーロインをぶち込まないようにパーツ屋や自転車ブランドもクロスバイクに気鋭の技術を投入しません。
結果、クロスバイクの改造は『日用品を競技用機材でアップグレードする』というアンビバレントなものになります。
そして、走りの要のホイールの調達が至難です。完成車付属品、補修用、最廉価モデルはあります。でも、その上がない。全くない。→クロスバイクのホイール交換は至難 立ちはだかる135mmエンドの壁
悪夢の135mmエンド
135mmエンド幅のVブレーキ用のホイールハブ、これがクロスバイクのホイールの特徴です。で、これは古い時代のMTBのリアホイールの名残です。
現在のマウンテンバイクのブレーキはほぼディスクブレーキです。
『135mmエンドのVレーキ用の新型ハブ!』のようなものは絶対に出ません。それはすでにヴィンテージな骨董品です。
まあ、この問題は130mmエンドのロードバイクホイール+135mmアダプターで解決します。でも、それはありきたりです。ぼく的におもしろい企画ではありません。
ぼくはクロスバイクにロードバイクホイールを入れてしまうような健全な自転車好きではありません。単純なアップグレードが目的ではない。
規格の調査、パーツの入手、完成から試走までの工程をゲームのように楽しむ、それが重度のチャリ道楽です。
クレイジーだ? いや、「どれにしようかあれこれ悩んでる時間がいちばん楽しい!」て申しません? グアムかハワイか、130mmか135mmか、完全に一致です。
MAVIC OPEN PRO USTリムを購入
で、今回のネタの鬼門は明らかに135mmエンドのリアハブです。こいつの調達の難しさを見越して、さきにリムを調達しました。
MAVIC OPEN PRO USTリムです。上述のように市販のクロスバイクの完組ホイールは鉄下駄ばかりです。必然的に手組が確定します。
MAVIC OPEN PROは手組では超定番の軽量アルミリムです。そして、このUSTモデルは新型のチューブレス仕様です。内幅はC19ですね。
実測重量はキッチンばかりで420g/1本です。これはロードバイクホイールのカンパニョーロゾンダとどっこいです。
国内定価12000円、海外通販6500円
MAVICはおま国ブランドの一角です。おま国はゲーム業界の俗語で『おまえの国には売らねえ!』の略です。正式には国別リージョン制限ですか。
英国の人気自転車ストアのCRCは2016年頃までがんがんMAVICを推しまして、頻繁にセールを行いました。てか、CRCとMAVICは向こうのトップチームにダブルネームでスポンサードしますし。
が、Wiggleに買収された影響かCRCのMAVICがおま国になってしまいました。ホールからウェアからアクセサリまで日本語版のリストから消えました。
しかし、入手経路は英国系ばかりではありません。スペイン系のBIKE INNはMAVICを販売します。このOPEN PRO USTは一本6500円でした。
ちなみに同商品の国内定価は驚異の12000円です。『国内正規流通品』のキャッチフレーズ代は非常に高額な代物です。
700cリム二本の梱包はまあまあ嵩張りますが、国際送料は1000円ちょいでした。インボイスの金額は16666円以内に収まります。税金は無料です。
MAVICリムはフランス製
MAVICリムの細かい記載です。”Made in France”の文字が見えます。この部分は刻印ですが、ロゴはステッカーです。なんかざんねんだ。
その他の詳しいプロフィールです。
- ホール数:32H
- ERD:589
- 有効リム内径:C19
- 最大空気圧:6BAR
最大空気圧の低さが目立ちます。リム内径がC19ですから、最適タイヤは28Cです。そもそもの規格が一昔前のカンカン高圧ロードタイヤ用ではありません。
個人的にはクロスバイクに23Cの細タイヤはナンセンスです。とくに安いクロスのフロントはアルミフォークですから、カンカンの細いタイヤは暴れます。
リムの繋ぎ目はおおらかです。
フランス製、イタリア製の工業品や手芸品の仕上げはわりと雑です、ははは。このような細部のクオリティはアジア人の得意分野です。
このリムを皮切りに最強クロスバイクのホイール組み立てシリーズを始めます。次回はハブ編です。