自転車の駆動部分のむき出し鉄系パーツは水気に当たると、たちまちに錆びます。
ボルト、チェーンは一回の雨でもうピンチです。

これの潤滑整備やサビ落としに何を使うか? そんなときに目に入るのが『あれ』ですが、これをぷしゅーとするのは大間違いです。
自転車屋がクレ556を使わない理由
さて、この『あれ』は何でしょう? はい、答えはこれ・・・いや、『クレ』です。

クレ556、KURE 5-56、呉五五六と表記はばらけますが、家庭用潤滑剤の王者はこれです。オイルスプレーのロングセラーの、ベストヒットだ。
缶に自転車ありますが?
で、初心者は『潤滑剤』のレッテルと缶の使用例の図を疑わず、自転車の錆びたチェーンやギアにぷしゅー!とやります。
これは間違いではありません。しかし、作業はここでは終わらない。ぷしゅーの段階で自転車整備の全体の工程はまだ40%です。
クリーニングとオイルアップは別
この呉556含むオイルスプレーの塗布はチェーンやギアのクリーニングには有効です。サビとよごれはみるみる落ちます。
が、オイルアップにはなりません。
むしろ、ケロシンの強い溶解力でチェーンオイルさえが過度に流れ落ちます。シャンプーをしてリンスをしないようなものです。鉄がかさかさになる。
ほかのさび落とし、丸洗い方法にはサンポールどぶ漬け、おなべで煮沸とかの方法があります。

サンポールで錆は落ちますが、潤滑は上がりません。サンポールの容器には自転車の使用例がないし、これは全国的には『トイレの洗浄剤』で通ります。
で、下記の理由から自転車に呉556をぶっかけるのはサンポールをぶっかけるのとほぼ同じです。
呉556の実体は?・・・
オイルスプレーの主成分のケロシンは灯油です。つまり、呉556の正体は灯油です。クリーナー的には割安ですが、灯油的には超高級品です。
実際に洗ってみましょう。チェーンをカットして、ペットボトルにぶっこんで、呉556をじゅぶじゅぶに振りかけます。
で、ガシャガシャとシェイクします。ものの30秒で潤滑液はでろでろの濃厚なデミタスコーヒー色に黒ずみます。

さらに五分ほどしゃかしゃかして、ハサミでペットボルトを切り開いて、チェーンを取り出します。オイル跳ねに注意しましょう。この汚れは落ちない!
個人的な気がかりはこのチェーン汁の処分方法です。556=ケロシン=灯油です。排水溝や下水にダイレクトで流すのは地球への反逆です。
古新聞かチリ紙に吸わせてごみの日に捨てるのが正解です。
556はメイク落とし、ルブは化粧水
ところで、このチェーンの呉556和えはこのままでは整備不良です。自転車メンテナンスの進行度はまだ40%だ。
プロはちり紙やぼろ布でチェーンの残り油をよくふき取って、ドライヤーや送風機で完全に乾燥させて、熱いお湯と粉石鹸とブラシでゴシゴシこすり洗いします。
で、さらにかっらからのぱっさぱさによく乾かして、チェーンルブをまんべんなく塗りたくります。

つまり、556は洗剤、ルブはケア剤です。メイク落としと化粧水は別物でしょう? オールインワンのクレンジングはありますが、呉556はそうではありません。ほぼ灯油ですから。
クレは秒で消える
オイルスプレーはその瞬間には塗布部分に残ります。しかし、30分前後で常温で揮発します。そこで潤滑の効果も防水の効果もなくなります。
ここにつぎの一雨がむき出しのチェーンに襲い掛かれば、サビが一瞬で復活します。
また、556の揮発前にルブを塗っても、かんじんのチェーンをテロテロヌメヌメにできません。556の上にルブが乗っかるだけです。
やっぱし、一雨で下の556と一緒に流れます。
つまり、クリーナー→乾燥脱脂→オイルアップは3点セットです。洗う、干す、潤す・・・AHU、アホウと覚えましょう。
干しはむずい
ポイントは乾燥、干しです。実のところ、洗いと潤しはかんたんです。洗剤バシャバシャ、油ドブドブが通用します。でも、干しは難関です。
革靴の水洗い、セーターの丸洗いとかもそうです。うまく干さないと、せっかくのスムースレザーに銀面浮きをするとか、カシミアニットを縮ませるとかしちゃいます。
とくに革靴メンテのながれとチェーンメンテのながれはそっくりです。
- 革靴:洗う、干す、レザークリームで潤す
- チェーン:洗う、干す、チェーンルブで潤す
わずらわしく感じても、半年に一度、1年に一度のチェーンメンテをすれば、よりよい自転車ライフを送れます。スニーカーを洗うように定期的にケアしましょう。
呉のルブはこちらです。これは556でなく、自転車油です。用途を間違わないように。

