自転車パーツは消耗品のかたまりです。回転駆動系、ドライブトレインは日に日に摩耗します。ことさらにチェーンはまっさきにへたります。

鉄素材、多ピース構造、むき出し、常時酷使のブラック四重奏が原因です。そして、多段ギアのチェーンはシングルギアのものより細身です。

厚みがこんなにちがいます。そして、最新鋭の12速のチェーンはさらに繊細です。耐久寿命は3000-5000kmです。

150kmのロングライドx20や往復30kmチャリ通100日でもう黄信号がともります。チェーンの耐久度は12速以降の頭痛のたねです。
そんなふうにスポーツバイクには定期的なチェーン交換がつきものです。こんなことでいちいち自転車屋の行けませんから、この際にメンテナンス方法を覚えましょう。
チェーン交換の工具
チェーン交換は自転車メンテナンスのなかでは比較的にかんたんな部類になります。ごりごりのパワーや小手先の器用さが不要です。
道具をそろえて、手順を守って、ポイントを押さえれば、不器用な男子も非力な女子もらくらくにメンテナンスできちゃいます
まずは道具です。以下のものを用意します。
- 新しいチェーン
- チェーンカッター
- コネクトピンorミッシングリンク
- 手袋
- マット
ピンクの二つが必須です。手袋とマットは手と床の汚れ防止です。古いチェーンはもれなくドロドロですから。
新旧チェーンの変速数を合わせる
前段の画像のようにギアの変速数でチェーンの厚みは変わります。10速ギアには10速チェーン、11速には11速、12速には12速チェーンを使います。
おすすめのチェーンメーカーは台湾のKMCです。ぼくはバルク品をよく買います。

11速ギアに10速チェーンみたいな組み合わせは完全にアウトではありませんが、変速性能はかくじつに落ちます。どっかのギアが飛ぶとか、耳障りなシャリシャリ音がするとか。
ちなみに6、7、8速のチェーンは共通です。6-8速は外装変速付き軽快車~安価なクロスバイクの装備です。使いまわしはOKです。
専用工具のチェーンカッターもチェーンに準じて、変速数ごとに分かれます。でも、最近のものはマルチ対応です。
これはPWT7-11速用のカッターです。

価格は1500円前後です。ピンの強度がGOODです。数百円の小型なものはすぐに壊れます。コンパクトタイプのカッターの用途は携帯用です。
これがないと、チェーンのカット=中ピン抜きが至難になります。うちのおじいさんは器用にかなづちと細い鉄の棒でママチャリのチェーンをカットしてましたけど、ははは。
チェーンをカットする
では、古いチェーンをカットしましょう。「カット」てひびきからバッツンの力業に思えますが、これはげんみつには中ピン抜きです。
チェーンの1ピースの8の字型の金属プレートのまんなかのピンがコネクターです。これをカッターで押し出すのがチェーンのカット作業です。

これをこんなふうにセットします。ぜったいに斜めにしない。

ちなみにぼくはチェーンをたるませて、ピンを落とします。この方が安全です。

ここでピンを外プレートで寸止めにすると、あとでかんたんに再コネクトできます。が、抜きピンのリサイクルは現代の自転車整備の世界では非推奨な方法です。
ピンかリンクか
で、新しいコネクトピンかミッシングリンクはなかば必須になります。

シマノはなぜか最近までコネクトピン派でして、こうゆう簡易リンクに消極的でしたが、昨年ごろから純正のクイックリンクの販売を再開しました。
でも、このシマノのクイックリンクの評判がよろしくありません。初代は黒歴史ですし、現役の二代目も前途不安です。
おかげでシマノチェーンの愛好家は古風なコネクトピンを愛用します。こうゆうやつです。

チェーンの長さ合わせ
古いチェーンは不燃ゴミです。緊急時に使うか? と思って取り置きしても、まずまず使わずに忘れます。すなおに捨てましょう。
最後の役目は長さ合わせです。旧チェーンのコマ数を目安にして、新チェーンの長さを出します。

あと、古いチェーンは伸びます。全体で半コマほど長くなります。新旧のリンクはびみょうにかみ合いません。
で、長さを決めて、余分なコマをカットします。

新品の取り付けには?
- 旧チェーンがない
- ギア比が変わる
- 新車のバラ完
こうゆう状況では上記の方法はむりです。この場合、チェーンの適正サイズは前後最大ギア+2リンクなどになります。

これと同じく一般的に普及する『前をアウター、後をトップギアにして、上下プーリーを垂直にする』方式は最近のワイドギアのものには通用しません。

この長さで前後のギアの組み合わせが最大になると、アソビが完全になくなって、チェーンとリアメカのケージがぱつぱつに張って、変速がきかなくなります。
30T以上のワイドレシオギアをリアに使うなら、+2リンク方式を採用しましょう。40T以上ではこれが必須です。
はたまた、メカの動きを見ながら、手探りでちまちまカットを繰り返すか。

チェーンの両端に注意
長さの調整の注意点は端の処理の方法です。
ミッシングリンクを使うなら、チェーンの両端を内-内にします。ミッシングリンクは疑似的な外プレートですから。
コネクトピンを使うなら、チェーンの両端を内-外にします。別売りのピンもピンです。元の中ピンとのちがいは圧入のしやすさや鮮度にすぎません。

ピンは内-外でしか入りません。
ミッシングリンクは内-内でしか入りません。
ピンを押し込み過ぎない
ところで、ピンには返しやストッパーがありません。形状は寸胴です。カッターのレバーをあほみたいにくるくるすると、えんえん押し込めてしまいます。
ピンの出っ張りを見ながら、しんちょうに圧入しましょう。作業中、固い手ごたえが二度来ます。二度目からの調整はコンマ数ミリ単位です。あほみたいにくるくるしない。
慣れれば余裕で寸止めできます。

仕上げはカチッ!orパキッ!
ミッシングリンクの仕上げは互いをしっかりと噛みこませることです。専用工具を使うか、ペダルに体重をかけて、カチッと噛み合わせます。

アンプルピンの仕上げはさきっちょをへし折ることです。ペンチかなにかで挟んでひねると、かんたんにパキッっとやれます。
リンクは再利用可能ですが、ピンは再利用不可です。さきっちょを失くした別売りピンはもとの中ピンとかわりません。
おまけのチェーンの通し方
はじめてのチェーン交換のあるあるが「チェーン、どこ通すねん?」問題です。リアメカの二つの小さな歯車のところでこれが多発します。
正解はこうです。ちっこい上下の歯車にそって、S字を描きます。あ、外れ止めプレートの内側へ通しましょう。まれに初心者は外側に通しちゃいます。

万が一、取り付け方をまちがってしまっても、あたふたチェーンを外さず、この歯車=プーリーとケージを外しましょう。そっちのがらくです。