走行中のチェーン落ち、チェーン外れは自転車乗りの通過儀礼です。このトラブルはロードやMTBに限りません。ママチャリ、軽快車、実用車、ルック車、いずれのチャリンコで日常的に起こります。
むしろ、野ざらしノーメンテのママチャリがチェーン落ちの常習犯です。だるだるのチャリで学校に向かう途中にチェーン落ちをやらかすと、一限目の授業にもれなく遅刻します。ぼくは何度かしました、ははは。
これを免れられるのはブリジストンアルベルトみたいなベルトドライブの自転車やよりマニアックなシャフトドライブのバイクばかりです。
アルベルトのもっさい乗り心地は不感心ですけど、ベルトドライブのメンテフリー度はPROSです。BSアルベルトのよいところはそこだけです。
チェーン落ちの種類
チェーン落ち、チェーン外れはおもに四種です。フロントの外or内、リアの外or内です。フロントはクランクのチェーンリングの上で起こり、リアはスプロケットカセットのコグの上で生じます。
番外的にまれに起こるのがディレイラーのプーリーからのチェーン落ち、チェーン外れです。これの頻度は多くありません。イレギュラーなチェーン落ちです。
この場合、こうゆうカスタムプーリーが疑われます。サードパーティ製のパーツは純正品より軽量ですが、歯先の厚みと長さが全般的に不足です。

基本はフロントとリア、クランクとカセットのチェーン落ちです。そして、1:9の割合でフロントが牙をむきます。ことさらにフロントマルチの2xや3xバイクはなにかとトラブルメーカーです。
主犯は変速範囲のリミットオーバー
自転車の外装変速システムはアナログなものです。メカのバネのテンションを張ったり緩めたりして、チェーンを意図的に脱輪させて、別のギアやリングにガチャンガチャンて移します。
究極には手でチェーンを乗せ換えれば、むりくりに変速できます。機械式シフターはリモートに過ぎません。機能は引っ張る/緩めるの二つだけです。

チェーンの動きを制御するのはディレイラーの役目です。これはSRAM GX 11spdのリアメカです。グリーンのアルミプーリーは別途のカスタム品です。

SRAMのリアメカの後姿はこうです。ニコイチのカップルの2本のミニねじとハンガー側のぼっちの1本のねじが見えます。

カップルの方がアジャスタボトルです。ディレイラーの動きの限度を決めます。ぼっちのネジはアームの調整ねじです。こちらはチェーンの張りを微調整します。
これはシマノ系のリアディレイラーです。型番はXT-RD980です。

位置関係はSRAMとあべこべですが、カップルの二本ねじがアジャスタブルボルトです。カップルの上ネジがカセットのトップ=小さい歯側の調整ねじです。
ネジとメカの動きの相関図はこんなです。


これはロー側の調整後のメカとコグの正しいポジションです。プーリーとチェーンと歯が一直線になります。

ここからアジャスタボルトをさらにいじって、メカの羽とプーリーを余計に内側へずらしてしまうと、リア x 内のチェーン落ちの原因になります。
チェーンはこのガイドプーリーの案内でカセットコグに導かれます。この水先案内が道を外れると、後続もあらぬ方向へ行っちゃいます。
この点、メカやプーリーは線路で、チェーンは電車です。シフターは線路の切り替え機です。
凶悪なリア x 内のチェーン落ち
リア x 内のチェーン落ちはなかなかやっかいです。カセットとハブのすきまにチェーンがはまると、ちょっとやそっとで抜けません。最悪、スプロケ外しの作業が必要になります。
一度、ぼくはこれをやってしまって、えらい目にあいました。カセットとハブがチェーンを完全に噛むと、リアホイールが空回りしなくなります。結局、担いで家までの5kmをてけてけ歩きました。ミニベロだったのが救いでした。
絶対にトラブりたくなければ、あえてローのリミットを狭くして、大内のギアを使わないて手があります。ぼくは上述の悲劇にこりて、ロー側のリミットをやや甘めに入れて、プーリーを垂直よりちょい右にします。
忘れたころのリア x 外
リア x 外のチェーン落ちはロー側のトラブルみたいに凶悪じゃありません。トップギアの外側にあるのはハブのキャップとフレームのエンドです。クイックリリースやスルーアクスルを外せば、出先で対処できます。
これの原因もアジャスタボルトの調整不足です。ねじをぐりぐり締めすぎて、ガイドプーリーをトップギアより外側に置いてしまうと、チェーンをすてきな谷間へと招待できます。
ほんとの原因は調整過多?
このようにチェーン落ちの原因はアジャスタボルト、ディレイラーの調整不足です。いや、実際のところは調整過多でしょう。
アジャスタボトル、アーム調整ボトルの正しい関係性はなかなか頭に入りません。SRAMとSHIMANOでちがいますし。
「どっちがトップで、どっちがローだっけ? (ぐりぐり)」
「右回しで外寄せ? いや、内寄せ? (ぐりぐり)」
こんなふうに無意識のぐりぐりが後を絶ちません。なぜかシロートは調べる前に回しちゃいます。ボルトの調整代はせんさいです。機能は『つまみ』です。
固定ねじのように「ぐりぐり」すると、一発で台無しにしちゃいます。回しすぎ。調整の最小単位は「ぐり」、いや、「ぐr」くらいです。ゲーム機の分解とは別物ですよ!
ハンガーやガイドやリングのゆがみ
メカの上限と下限がきちっと枠内に収まれば、ディレイラーはその範囲でしか動かず、チェーンは道を踏み外しません。あとはメカの変速の仕切り、インデックスで段数が決まります。
アジャスタの範囲はガードレール、インデックスは車道の車線のようなものです。ガイドプーリーは手旗信号のおまわりさんだ。
でも、道路自体がなにかのトラブルで湾曲・陥没・損壊すると、ガードレールも車線も自動車もめちゃくちゃになります。基礎がへたれば、建屋がゆがみます。
土台のガイド、ハンガー、リングの不具合はしばしばチェーン落ちの原因になります。ことさらにディレイラーハンガーとメカのケージの曲がりはちょくちょく発生します。

基本的にハンガーの強度はフレームよりしょぼくなります。最悪、ここがへにょっと変形・破損して、フレームエンドへのダメージを防ぎます。
ですから、ハンガーはわざわざ別付のパーツです。剛性の点ではソリッドに溶接するほうが有利です。それをしないのはフレーム保護のためです。
土台のハンガーが変形すると、付属のメカは正しい位置を保てません。上限下限がずれれば、チェーン落ちが起こります。対策は力技のハンガー戻しか、交換です。
メカのガイドも同様にやわな部位です。オフロードのやつはほぼ消耗品です。だいじにだいじに使っても、岩の一撃でジャムります。安い普及グレードを使い回す方が効果的です。
王道のフロントのチェーン落ち
うちのバイクはフロントシングルですから、リアのトラブルが先になってしまいました。が、ちまたのチェーン落ちの大半はフロントのものです。

これの原因はリアと同様です。メカの上限下限の調整不足ないし調整過多です。フロントディレイラーの水先案内ガイドは金属プレートになります。ぞくにフロントメカの「ハネ」です。まんまのガードレールです。
2xや3xの禁止事項のひとつがチェーンのたすき掛けです。アウター x ローやインナー x トップみたいにチェーンが極端に斜めになる掛け方はNGです。
変速のアップダウンでチェーンのテンションが激変して、トルクのポイントから斜めにかっとびます。ガードレールの金属プレートがこれを抑えきれなければ、チェーンは崖下=アーム側orBB側へと脱落します。
上り坂で立ちこぎしながら変速すると、「がギャギャン!!」て異常な異音と嫌な手ごたえを感じましょう。チェーンにはそのような強い負荷がかかります。弦の弓のようなものです。リンクがギアの歯から外れると、チェーンが落ちます。
変速なしのママチャリのトラブルはたいていチェーンの伸びすぎです。

だるだるのゆるゆるのチェーンは段差でギアの歯からかんたんに外れます。このチェーンは完全に寿命ですが、乗り手はぜんぜん無関心です。なげかわしいことです。
1xの立役者のナローワイドリング
オフロード系のフロントシングル、1xスタイルはナローワイドリングの下で開花します。

多段式の薄歯と固定やシングル式の厚歯が交互に並びます。この形状のリングはチェーンにまとわりつくように絡みつきます。
アメリカの人気リング屋のWolftoothのナローワイドはほんとに狼の牙みたいに食いつきます。

チェーンが伸びようが、段差でびよびよしようが、ぜんぜんリングから外れません。おかげで極端なロー側の大口径が可能になります。
クロスバイク、街乗りMTB、オールロード、アーバンコミューターのフロントは1xで十二分に間に合います。あと、1×11より1×10のが耐久度とメンテのしやすさの点で有利です。
廉価なクロスバイクの3×8は現代ではビミョーな変速システムになってしまいました。結局、これのメインもセカンドリングで、アウターとインナーはそのおまけ、チェーン落ちの予防の予防みたいなものです。
クロスの変速がロードみたいにフロント2段の2×8じゃないのは初心者やうっかりさんのたすき掛けのトラブルを減らすためです。純粋な変速段数は2×8でぜんぜんOKですしねえ。
フロントのチェーン落ちの直し方
チェーン落ちの直し方をさらっと紹介しましょう。フロント版です。チェーンが走行中にぱーんと外れました。あちゃー!
あたりを見回す
そそくさと手を付ける前にあたりを見回しましょう。なにがしかの紙切れ、ふくろ、ぼろ布的なものは突然のトラブルですごく役立ちます。
はい、ガムテが見つかりました。

どろどろのオイルで手を汚すと、マッハでモチベを削がれます。あげくにグリップ、バーテープが汚れます。さわやかなサイクリングがおじゃんです。
そこらの道端のゴミは不衛生ですけども、でろでろのチェーンより清潔でクリーンです。拾うことを恐れない。そのゴミをきちんとごみ箱に捨てれば、エコロジーさえ実現できます。あめいじんぐ!
完全主義者は軍手や薄手のビニル手袋、ちっさいラジオペンチをツールボックスやフレームバッグに忍ばせましょう。
ディレイラーのガイドを出す
こんなふうにチェーンが外れると、リアディレイラーは付属バネの力でヤドカリみたいに縮こまります。掛けなおすときにはこれを引っ張り出します。
SRAMのケージにはべんりなロックボタンがあります。ガイドを伸ばして、これを押すと、ケージを固定できます。


SHIMANO系のメカはこうなりません。ガイドを押しながらチェーンを掛けなおします。ぼろ布的なものを二個に分けて、汚れを回避しましょう。
チェーンを掛けて、クランクを回す
チェーンをリングに掛けて、クランクを回します、回転方向にそっと。逆回転や乱暴回転はNGです。純回転でそっとやさしくチェーンをリングに乗せます。
トラブルが続くなら、メンテが必要です。メカ、ハンガー、チェーンの順に疑いましょう。フロント落ちの最後の切り札はキャッチャーです。