輪行・・・乗り物に自転車を積んで移動することです。一般用語ではありません。狭義の意味では電車輪行を指します。
- 電車=電車輪行
- 自動車=トランポ、トランスポーター
- フェリー=フェリー輪行
- MTBコースのゴンドラとか=とくになし
- 飛行機=飛行機輪行 ※この記事
以前にオーソドックスな電車輪行の記事を詳しく書きました。ここではやや上級な飛行機輪行のポイントを未経験者向けに解説します。
飛行機輪行の基礎知識
「飛行機に自転車を持ち込めるか?」
これは可です。飛行機に自転車を持ち込めないと、世界各地を転戦するプロの競技者やコアなライダーが困ります。
自転車はサーフボード、ゴルフバッグ、スキー板、スノーボードなどと共にスポーツ用品に含まれます。
自転車の3辺合計は機内持ち込み手荷物の規定には明らかに収まりません。どんなに小さな車体のサイズも120cmを越えます。
必然的に自転車は預け荷物になり、係の人にじっくり調べられます。
おまけにギザギザのギアやペダルのピンはけっこうな攻撃力を秘めます。防犯面の観点から持ち込みは不可です。
もちろん、工具類の持ち込みもNGです。
また、電動の乗り物は全般的に不可ですが、電動アシスト自転車は例外的に可です。
JALとANAは無料、LCCは有料
電車への自転車の持ち込みはほぼフリーです。スポーツ用品や楽器の3辺サイズや重量は特別扱いで不問に処されます。
一方、飛行機の手荷物の規定は鉄道のようにルーズではありません。乗客の一人一人に入念な検査があります。
預かり手荷物のサイズや重量、そして、料金は航空会社で異なります。各社のエコノミー席の手荷物の規定です。
航空会社 | サイズ規定 | 重量 | 備考 |
JAL | 50cm×60cm×120cm以内 | 20kg | サイズ内1個目は無料 路線や機材で200~300cmまで応相談 |
ANA | 3辺合計203cm以内 | 20kg | サイズ内1個目は無料 1辺の上限なし 路線や機材で250~400cmまで応相談 |
LCC ※Peach | 3辺合計203cm以内 | 20kg | 自転車は3900円 |
JALとANAの手荷物は1個=1梱包まで無料です。路線、機材、貨物室の空き状況である程度のオーバーサイズは応急措置的に黙認されますが、過信は禁物です。
一方、格安のLCC系の手荷物は問答無用で有料です。代表的なPeachの自転車の受諾手荷物料金は3900円です。もちろん、往復で2倍になります。
つまり、LCCで飛行機輪行をすると、割安さという最大のメリットを受けられません。しかも、関空はうちから50kmですが、伊丹空港は7kmですし。
2個以上の受諾手荷物、明らかなサイズ・重量オーバーは超過料金の対象です。以下はANAの国際線の実例です。
羽田⇒パリ エコノミークラス
・手荷物1個=23kg、3辺の和が158cm
・自転車1台=25kg、3辺の和が250cm超過料金=6,000円
超過手荷物料金の例(国際線) ANAより
国際線の6000円は意外に安く見えますが、国内線のせいぜい2時間の旅にこの支出は大打撃です。
安く飛行機輪行をするコツです。
- ANAかJALを選ぶ
- 受諾手荷物を1つにする
- 梱包を203cm以内に収める
20インチ以下の折り畳み自転車はパーツの取り外しなしでこのサイズに収まります。
飛行機輪行の方法
このように飛行機の手荷物のサイズ&重量の規定は電車よりシビアです。料金はJALとANAでは無料ですが、LCCでは有料です。超過料金は現場でしか分からない。
他方、自転車の梱包や分解の規定は鉄道よりルーズです。
- 専用の袋に入れること
- 分解すること
電車の手荷物既定の二大要素が飛行機の手荷物既定では明記されません。
箱や袋はフリー
自転車で放浪旅行や世界一周をするような猛者は飛行機輪行の達人です。彼らは気軽に飛行機輪行をします。形式や見栄えに拘りません。
- シートぐるぐる巻き
- ダンボール固め
- 布+テープ
これは常套手段です。重要なことはオーバーサイズ、オーバーウェイトをしないこと+致命的な破損を被らないことです。
事実、日本の空港の荷物係の優しさは圧倒的に世界一です。荷物をぽんぽん投げない。おもてなし大国の飛行機輪行はぬるゲーです。
海外の空港の荷物係はこうではありません。荷物をぽんぽんぶん投げます。結果、海外通販の外箱はしばしばベコベコになる。
スーパーやコンビニのレジのおばちゃんさえがフレンドリーなスマイルで商品をカゴにばんばんぼんぼん放り込みます、マジで。
で、海外の空港では相応の心構えが必要ですが、国内線の自転車の梱包はペライチの輪行袋やシートぐるぐるでOKです。
ちなみに自転車はベルトコンベアでは流れて来ません。横の扉から個別に運び込まれます。
そして、ウニの軍艦巻きのオブジェは大分空港の風物詩です。
ライト、サイコン、工具、空気ボンベの取り扱い
自転車本体のサイズやウェイトをクリアしても、まだ飛行機には載せられません。アクセサリーや付属品が問題です。
- ライト=リチウムイオンバッテリー
- サイクルコンピューター=無線機器
- ボンベ=ガス
- 工具=準刃物
これらはことごとく飛行機には神経質な代物です。
ライトやサイコンを自転車と共に貨物室へ入れることはNGです。バッテリーがダメです。取り外して機内に持ち込みます。これはスマホなどと同じです。
空気ボンベの持ち込みはタイプと容量に寄ります。引火性のものはダメですが、非引火性のものは50ml x 4個までOKです。
工具は上記の通りです。アーレンキーはぎりOKですが、マイナスドライバーはグレーゾーンです。戦闘のプロはこれで一般人を制圧できます。
タイヤと油圧とサスペンション
その他の気掛かりな機材はタイヤ、油圧ディスクブレーキ、サスペンションでしょうか。
高度が上がると、気圧が下がります。結果、タイヤのような高圧の密閉物は地上よりパンパンになります。
しかし、飛行機内は制御装置で与圧されますから、自転車タイヤの空気圧はせいぜい0.2barくらいしか上がりません。
油圧ディスクブレーキのオイルの圧力も同様です。そんなドバドバ漏れません。
サスペンションは特殊です。高級なものは空気圧&油圧のハイブリッド、さらに一部の機器は無線電動システムを内蔵します。
自転車サスペンションの2大メーカーのRochshoxとFoxのサスはたいていの航空会社でスルーです。メーカーがサンプルと仕様書を空港に配りますから。
マイナーメーカーのサスペンションは現場の判断に寄ります。
ベテランライダーはメーカーの公式ページから仕様書のPDFをダウンロードして、それを印刷して、旅先に持参するとかします。
さて、最新の電動無線のドロッパーシートポストなんかはどうなるか? 油圧、ガス、リチウムイオンバッテリー、無線機器というセンシティブの塊ですが。
おそらくこれは機内持ち込みでしょう。しかし、サドルが鈍器の判定にならないか?! 歴戦のツルハシ使いはこれで一個中隊を制圧するとかしないとか?!!
ぼくは以下の通りにします。
- タイヤ→そのまま
- ライト→外す
- 工具→車体と一緒に預ける
慎重派のA型さんは任意でリアディレイラーを外したり、チェーンを保護したりしてください。
あと、電動変速機の取り扱いも少し厄介です。最新のものは無線+バッテリーです。電源オフで行けるか?
空港での手続き
飛行機輪行の空港での手順は普通の搭乗手続きと変わりません。ただし、荷物検査と免責事項への同意(航空会社は運搬中の破損を補償しません。OK?)が少し時間を取ります。
- チェックイン
- 荷物預け
- 荷物検査
- 免責事項の同意書に署名
- 保安検査
- 搭乗口へ
はじめての人は+15分くらいの余裕を見ましょう。
飛行機輪行まとめ
自転車は受諾手荷物です。サイズと重さの規定は航空会社で異なります。ANAとJALは基本的に無料ですが、LCCは有料&割高です。
JALよりANAの方が緩めです。というか、29インチ=700cホイールの縦横は622x622mmです。基本の規定に収まりません。
3辺合計203cm以内、重量20kg以内が無料の目安です。オーバーサイズ、オーバーウェイトの超過料金は現地でしか分かりません。
自転車の付属品のライト、サイコン、ボンベ、工具はそれぞれリチウムイオンバッテリー、無線機器、刃物に相当します。取り扱いに注意しましょう。
輪行袋の形状や材質、車体の分解や梱包の方法に特別な定義はありません。
タイヤの空気圧と油圧ディスクブレーキは放置でOKです。
サスペンション機構はメーカーに寄ります。RockshoxとFoxが安心です。
上記の機材や付属品の取り扱い、荷物の検査、免責事項への同意所などで普通の搭乗手続きより少し時間を取られます。
それから、コロナのおかげでJALとANAの株式優待券が非常にお買い得です。1600円くらいで運賃を半額にできます。Peachで手荷物料金払うよりおすすめですよ。