可変機構、変形システム、モードチェンジ・・・魅惑的な言葉です。自転車の設計・デザインでは『アジャスタブル』て称されます。
MTBホイールが27.5と29インチのダブルスタンダードになって、フレームのアジャスタブル化がにわかにトレンドです。『可変フレーム』てひびきはビシビシ来ます、ははは。
シートポストは動くもの
で、最近のオフロードバイクのアジャスタブル・システムの定番がドロッパーシートポストです。
![TMARSドロッパー 27.2mm](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/06/1b354f57c7ec4d0e41bae3737b1adda7.jpg)
サドルの下のうごく棒です。
事務椅子の上げ下げ機構みたいなものがシートポストのなかにあります。上のやつはTMARSのやすいスプリング式3段トラベルのドロッパーです、8000円。
こっちは高級なエアコイル式無限可変のTHOMSON ELITEです、4万円。
![Thomson Elite ドロッパーポスト](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2017/03/9e3acacdb8ed8e0e9d7c28b3d0647962.jpg)
定価には手を出しかねます。ぼくはY’sroadの年末セールで7割引きの2万円くらいでGETしました。
このべんりグッズの登場でサドル高てものが過去のものとなりました。フィーリングと相談しながら、都度にさいてきなベストポジションを出せます。
で、これがKONA HONZOからVitus Sommetへ移植されて、そろそろ丸二年を迎えます。年内一杯で保証期間が切れる。
実際、この二年弱の街乗りとオフロードでシュコシュコ上げ下げしまくりして、多少のガタを感じます。荷重でポストがすこし沈む。
これはTHOMSONのドロッパーの典型的なCONSです。内側のカートリッジかダンパーになんらかの問題がある、て外国のユーザーレビューにあります。
で、このドロッパーシートポストはサスペンション以上のブラックボックスです。DIYの修理は不可です。アメリカTHOMSONへの修理依頼が定石です。送料はこっちもちです。
今のところ、ノルウェーのチャリンコ乗りの分解メンテのレポが一件だけあります。作業工程はひじょうにはんざつです。しかし、DIYスピリッツが無性にかきたてられます。
フレームデザインでポストがつっかえる
とはいえ、今回のドロッパーポストの問題点はそれじゃありません。バイクとポストの状況を見ましょう。
![THOMSON ELITEの出代](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/997ed639d95729610eb88a8036189af7.jpg)
シートポストの上のとっかかりまで数cmの余裕がありますけど、これが目一杯のベタ下げです。ポストはもう沈みません。
理由はシートチューブの形状です。
![シートチューブのオフセット](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/c5e2d5c429e777235b296f05e3920031.jpg)
シートチューブがBBの上でうしろにオフセットします。シートポストのケツがここにつっかえる。
ドロッパーポストの筒の中にはダンパーやガスやオイルがつめこまれます。ふつうのポストみたいにカットするのはむりです。物理的にこの高さが精一杯です。
サドル高すぎ、足短すぎ
で、全体にそのなにが問題でしょう? はい、このシートチューブのオフセットで底打ちしたポストは短足さんには高すぎました。
先代のHONZOのシートチューブもややオフセットしますが、カーブのふかさはマイルドです。ポストはすっぽり入ります。
![ガラスコートで見違えたフレーム](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/10/3b25457d01c80230f28ece367ead2486.jpg)
で、この完全INの状態がぼくの足にはセーフティな高さでした。Sommetの不完全INの状態は問答無用で我が両足を爪先立ちにしてくれます。ポストが長すぎやで、ほんま!!
・・・いいえ、実態はこうです。
- ポストが長すぎる×
- 足が短すぎる〇
ちなみにぼくの身長は170cm、股下は73cmです。この股下は日本人の身体データでは162cmの女子に匹敵します。XSサイズ!
来世には高身長の八頭身の白人イケメンアメリカ人に転生するとしても、ファッキンな現世ではこのサドル高にしばしば悩まされます。
こういう下りやトリックでは足つきがかんじんです。
![フライパン](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/09f26a58fb1a041f674e4d906c77f154.jpg)
根っこや岩にタイヤが乗りあがると、車高はおのずと上がります。で、急場ではつま先立ちがバレリーナになります。これは危険です。
デフォルトでべたっとソールを地面に着けられる完全ベタ足ポジが下りでは理想的です。急場ではべた足が爪先立ちになります。
このTHOMSON x Sommetのサドルポジはぎりそこに達しません。足つきが完全じゃなくなる。
予備のEASTON HEAVENはみじかめ
解決策はシートポストの交換です。さいわい予備のEASTON HEAVENドロッパーがあります。これも4万くらいですが、CRCのセールで17000円でした。
長さを見ましょう。
![ドロッパー長さ比較](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/e4e4f17a28c1d621cfb534fb21796615.jpg)
EASTONのがすこしショートで、すこし軽量です。ポスト径はおなじ31.6mmです。Sommetにポン付けできます。
しかも、HEAVENのケーブルはステルスタイプ=内装式です。Sommetのフレームの内装ルートが活きます。
![ドロッパーポストの内装ルート](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/83309682611ed6addb3107e0d9adabed.jpg)
Thomsonのコーティングはカシマコートです。アルミ表面の無数の小さな穴にモリブデンを流し込んでヌルヌルのスルスルに仕上げます。
ためにカシマコートの色はモリブデングリス色です。半透明のババ色です。
![おなじみAZ万能グリス](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2016/04/DCIM0590.jpg)
EASTONのコーティングの詳細はN/Aです。おそらくROCKSHOXのサスペンションのコートとおなじ黒アノダイズのスルスルコートです。
![ROCKSHOX SUPER DELUXE RC3](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/ROCKSHOX-SUPER-DELUXS-RC3.jpg)
若干、EASTONのがクイックにメリハリします。リバウンドで股間を打たないように。
このEASTON HEAVENのドロッパーポストの弱点が取り付けのややこしさです。これが不評の主因で、セールの要因です。
THOMSONのはかんたんです。インナーケーブルを外付けレバーに通します。以上。
![THOMSONドロッパーのサドル側のワイヤー取り回し](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2017/04/dropper-post-housing.jpg)
ところで、ドロッパーポストやサスペンションのリモコンのケーブル・ワイヤー類はシフト用です。
で、この分野もじりじり無線電動化します。MAGURA Vyronは単独の無線電動で、Xshifterはシフターと一体のセミ無線化ユニットです。
SRAMとSHIMANOもぞくぞく無線電動システムにかじきりします。ハイテク化の波が止まりません。ほんとのリモコン化は近い未来のはなしです。
世界一めんどうなドロッパーポスト換装
では、めんどうなEASTON HEAVENの取り付けに着手しましょう。こんなめんどうなポストはこのEASTON HEAVENと同型のRACEFACE TURBINEだけです。
ちなみにEASTONもRACEFACEもともにFOX傘下のブランドです。
材料です。
- シートポスト
- コネクトパーツ
- レバー
- アジャスタ
- アウターケーブル
- インナーケーブル
コネクトのジョイント部分のパーツです。これがじつにくせものです。
![ジョイントパーツ](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/4fb079ebdaf161d4a953c4f2c0e451bf.jpg)
てはじめにケーブルをフレームに内装します。シートチューブの下-ダウンチューブ根本-ヘッドチューブの横がドロッパーのルーティングです。
![ケーブル取り回し](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/216cf1e8796ab6e92f80fc033f103f44.jpg)
で、リモートレバーにインナーワイヤーを通します。タイコはこちら側にきます。
![リモートレバーのタイコ](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/5530b8923ad42a859b500133adc4ad3b.jpg)
ひらべったいタイプのタイコはレバーのソケットの中におさまりますが、このふつうの太鼓焼き型のタイコは入りません。うすべったいタイプがヨドバシ梅田になかった。
で、ここからアウターをてきとうな長さにカットします。ここは一発勝負です。切りすぎると、またヨドバシの自転車コーナーに走るはめになります。
で、ジョイントその1をアウターにねじねじします。
![ジョイントその1をねじこむ](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/5a944a524af2fbb6d5c04f678cadcd60-2.jpg)
ねじ山ができました。
![アウターにねじ山](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/c2a736eeae18c9eec8609daddd779eb0.jpg)
つぎにジョイントその2のエンドプラグをアウターに差し込みます。
![ジョイントその2を先に入れる](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/5ac034fca23a8c45c203452d43607067.jpg)
そして、ジョイントその3とその1の合体パーツをアウターケーブルにねじねじします。
![ジョイントその1をジョイントその3に通してケーブルに](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/d46336ec8de6f1356782c2494694c874.jpg)
で、インナーケーブルを通して、その1をその3のまんなかの白線にセンタリングして、ちっこいイモネジをしめて、上をぱっつんカットします。
![ジョイントその1をセンタリング](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/fa6de3f80524ce2d09c5775eda638277-1.jpg)
で、その1のせんたんをドロッパーのケツにねじ込んで、その2で封じます。
![シートポストに合体](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/fbe49b967602539d7340ca4e457d1a1a.jpg)
しめにサドルを付けて、べた下げして、クランプを閉めます。
![EASTON HEAVEN ドロッパーシートポストべた下げ](https://b4c.jp/wp-content/uploads/2018/11/6cd9735b77b6090bcab45c7a0fc85589.jpg)
OK!!
正直、この手順はWindowsのOS再インストール並みのめんどくささです。なんで設計者はジョイントを別パーツにしてしまったか?
で、ややこしいジョイントとややこしい内装ルーティングがかけあわさると、小売店の不満がビッグバンします。
しろうとは一日一個で済みますが、メカニックは二回三回とやらされます。ブチギレは必須です。
ユーザーレビューの低評価はこのインスト手順のめんどくささに尽きます。ほかの内装ドロッパーはこんなにはんざつじゃありません。ふつうはタイコかケーブル端のぽん付けでしょうよ。
でも、苦労のかいがあって、足つきが格段によくなりましたし、見栄えの統一感があがりました。2-3cmのギャップの影響は大です。サドル高がほぼ1サイズダウンです。