自転車にはAlloy、アルミニウムのパーツがおおく使われます。安価で軽量、そして、サビない。
正確にはアルミも常温空気中でサビますが、そのサビ=酸化被膜のおかげで鉄みたいに深く腐食しません。
アルマイト=アルミの染色
アルミパーツの塗装にはアルマイト加工、アノダイズ加工がよく用いられます。
希硫酸の溶液にパーツをどぶ漬けして、電気をビリビリ流して、アルミの表面を科学的にざらつかせ、染料をそこに加えて、煮沸して表面の穴を封じます。
塗装と染色
ふつうのペイント塗装は化粧です。塗料の上塗り。対照的にアルマイト、アノダイズ加工は成分のすりこみです。まんま染めもの、染色ですね。
『塗る』と『染める』は別物です。必然的に染める=アルマイトの方が強力なカラリングになります。これの剥離は塗料のように行きません。リムーバーやうすめ液が通用しない。
で、今回のDIYのいけにえはそのアルマイトのMTBクランクです。
みごとなライムグリーンないしキュウリ色です。カラフルパーツには旬があります。ぼくのなかの浅緑ブームは終わりました。『飽き』はイロモノの功罪です。
車体と気分に合わせて、このアルマイトクランクを剥離して、シルバーカラーに仕上げようと思います。
家庭用の二大強力洗剤
ちかごろのホームセンターには強力な剥離剤がありません。自然環境保護の観点から本気の業務用剥離剤は近所のホムセンやプロショップのたなから消えました。
そこらの店にならぶのは非塩素系の液剤やチキュウニヤサシイ系のぬるいやつばかりです。エコブームの光と影です。
が、しかし、家庭用品のコーナーには業務用に匹敵する強力な二大洗剤が存在します。はい、パイプユニッシュとサンポールです。
塩素と酸
トイレそうじのサンポールはうたい文句のように酸性洗剤です。酸がベンキのきばみ=尿石=カルシウムとタンパク質にききます。
おふろづまりのパイプユニッシュは塩素系の洗剤です。髪の毛やヘドロ=有機系のよごれをどろどろに溶かします。
そして、注意書きのようにこのふたつが混ざると、有毒なガスが発生します。ザ・まぜるな危険オリジンです。
この家庭用の二大巨頭でアルマイトパーツの剥離にチャレンジしましょう。
アルマイト剥離開始
クランクをばらして、てきとうな容器に入れて、パイプユニッシュとサンポールをどぼどぼぶっかけます。もちろん、両者をぜったいに混ぜない。
はやばやパイプユニッシュのクランクに変化が現れます。この時点で泡がぶくぶくして、緑色がうすくなります。そして、液剤が熱を発して、あやしい気体がほわほわと・・・
剥離作業の注意点
剥離作業をするなら、屋外でやりましょう。通気性がいのちです。せまい場所でもそもそするのはいのちとりです。
液剤は非常に強力です。ことさらに塩素系は人体に有害です。素手で触るのはNGです。ゴム手袋と水道は必須です。
美容師さんは髪の脱色の作業に塩素系を使います。で、手と指ががさがさにあれます。職業病です。
パイプユニッシュは毛を溶かすほどに強力です。肌へのダメージは脱色剤の比ではありません。
塩素で溶かして、酸で仕上げる
引き上げて水洗いしました。のこりじるは本来の役目に従って、それぞれおふろの排水溝とおトイレへ向かいました。
結果はれきぜんです。塩素系のパイプユニッシュの圧勝です。レーザー刻印のATLASのロゴ文字と地形図、アイコンがくっきりのこりますが、ほかの部分はまっくろです。
このくろずみは『スマット』てものです。アルミ鍋のくろずみの親戚です。アルマイトを塩素で剥離すると、この大々的なスマットをおがめます。
で、このくろずみの除去には酸性の液剤が有効です。代表はサンポールです。そう、トイレそうじのおともはこの第二段階でこそかつやくします。
アルマイトの剥離の過程をまとめます。
- 空ぶきして水分と油分をおとす
- パイプユニッシュにどぼん
- 水洗い&水切り
- サンポールにどぼん
- 水洗い&水切り
こんなふうになります。3と5の水洗いと水切りは不可欠です。くれぐれパイプユニッシュまみれのパーツをサンポールにどぶづけしない。
塩素=脱色剤です。アルマイト=染色です。頭髪の色抜きに塩素系を使うことを思うと、この実験結果になんとなく合点できます。
みがく、ひたすら、みがく
パイプユニッシュでアルマイトの染料を脱色して、サンポールでスマットのくろずみを除去したら、みがきに入ります。ここからは物理の時間です。
金だわし、紙やすりと来て、しあげに王道のアレをつかいます。PIKALさんや!
缶入りピカールを使い切るのがぼくの人生の目標です。まじでぜんぜん減らない。
ピカール前とピカール後です。てか、右アームのダメージがめだちます。やっぱり、左降り・左乗りで行動しますから、ドライブ側を車止めや木にさらしちゃいます。
みがきは根気です。か、道具ですね。クランクアームを手磨きするのはかんたんです。形状がシンプルで、サイズがミニマムですから。
これがフレームになると、作業面積とこまかい部分が増えて、難易度がはねあがります。ドリル、サンダー、リューターが必要です。