自転車パーツは規格の樹海、仕様の底なし沼です。各国、各ブランド、各ジャンルから未知の製品がわらわらと発生して、人心をまどわせます。
変速御三家さえが例外ではありません。先日、ShimanoがMTB用のHG+を発表して、めでたく三社のフリーボディが独自規格になりました。世はまさに乱立の時代です。
BB界に新星登場!
そんなカオスな自転車パーツ界のなかでもっとも混迷なる部位がBB、ボトムブラケットです。毎シーズンのように新規格が登場して、業界内外の人々を戦々恐々とさせます。
プロもアマも未知なるものへの1stコンタクトには一抹の不安を覚えます。経験値はひとしく0から始まりますし。
で、この2018-2019シーズンにアメリカのSRAM社から最新鋭のBBが登場しました。SRAM dubボトムブラケットです。
旧来のSRAMの独自規格BBは左右異径のGXPです。これがフェードアウトして、このdubが今後の同社のボトムブラケットの標準になります。
今回、クランクとドライブの交換にともなって、このdubのBBを興味本位で取り寄せました。2019シーズンのボトムブラケット界の最新鋭をインプレしましょう。
SRAM dubのアレコレ
て、そのまえにSRAM dubをおさらいしましょう。
- シャフトは未知の28.99mm
- シールドベアリング
- 各種プレスフィットとねじきりに対応
- XX1 EAGLEクランクとのセットは最軽量級
- 小文字の”dub”が正解
こんなところです。大枠はPF30系の親戚筋にあたります。シャフトが前代未聞の28.99mmです。なんですっきり29mmじゃないか? なぞです。もっとも、0.01mmは誤差の範囲ですけど。
旧来のSRAM GXPは22ー24mmです。シャフトの片側はシマノのホロー系の24mmとかぶりますが、もう片方はオフセットして、一段と細くなります。オリジナリティ!
で、dubのシャフトは左右対称の28.99mmです。まんまに小口径のBB30シャフトです。が、1.001mmのちがいはオリジナリティ!です。
直径1mmの差は外周3.14mmの差になります。剛性は少し下がりますが、軽量性はすこし上がります。ライバルは30mmシャフト最軽量のカーボンクランクRACEFACE NEXT SLですね。
22mmや24mmの細いシャフトは昨今の高剛性のフレームや激しいライドにはちとパンチ不足です。GXPの撤廃は自然の流れでしょう。
ぼくのMTBのフレームはカーボンのBB92シェルです。クランクはRaceface Atlas Cinchです。シャフトは30mm径です。BBは無印のPF4130とRacefaceの純正のミックスです。
Atlasクランクはがんじょうなクランクですが、オンロード・オフロードの兼用とブラック企業なみの酷使ハードワークでぼろぼろになります。そして、リングの摩耗が黄信号です。
あと、こいつがとおりすがりの小学生に「キュウリみたい!」てゆわれてから、絶妙なるキュウリぽいオーラをつねにまといます。
カラフルなイロモノはナマモノです。旬がある。ぼくのなかでキュウリの時期はすぎました。しおどきです。
で、この期に足回りを総とっかえします。SRAM GX EAGLEのリング付きクランクがわりにお値打ちでした。
SRAM dub 4130をチェック
で、かんじんのSRAM dubのパッケの中身です。
左右カップ、インナースリーブ、スペーサーです。カップはアルミ製、スリーブは樹脂製、スペーサーはプラスチック製で、2mmと4.5mmです。
2mmスペーサーは92mmシェル用、4.5mmスペーサーは89.5mmシェル用です。つまり、4.5mmはロード系のカーボンフレーム用です。
今後、SRAM系のオールロードやシクロクロスにはこのDUBが多くなりましょう。Force dub、Apex dubの1xなどが現実的です。で、BB30系はのこるが、GXPはしれっと退場する。
それから、個人的な予想でdubはDurable Ultra Bottom bracketの頭文字です、おそらく。※Durable Unifierd Bottombracketでした。
で、箱のプリントと本体の刻印から小文字の”dub”が正解です。疑似左右対称になって、スタイリッシュになります。
重量実測
では、dubの体重測定をしましょう。スペーサー抜きのカップとスリーブの実測がジャスト80gです。
カップのベアリングです。
シールに6806 WS(6?)LUVて刻印が見えます。ぱっとGoogleサーチでは同型番のベアリングの単体情報は出てきません。SRAM dub用の特殊製品みたいです。
カップの質感はむきだしのアルミです。セラミックベアリングBBみたいな高級感はありませんが、つくりの印象はわるくありません。樹脂カップよりGOODです。
毎月恒例BBプレスフィット
さあ、毎月恒例のBB圧入です。月刊プレスフィットです。PFメンテはマンスリー!
SRAMのオフィシャルのPDFでインストの手順をたしかめます。フレームのシェルをきれいにして、左カップから圧入します。
マイツールは例のごとくプラッチックハンマーです。カップをまんべんなくバシバシ叩き込みます。ベアリングの回転はビミョーです。が、出荷状態のふつうのBBはこんなものです。
フレームをひっくりかえして、右カップにスリーブをかぽってはめて、まんべんなくばしばし圧入します。
BB92にはインナースペーサーは不要です。ドライブ側のカップの外側に2mmスペーサーが必要です。ロード用BB89.5ではスペーサーが4.5mmになります。
はい、今月の圧入が終了しました。
このぴっちり感がPFのだいごみです。
クランク取り付け
クランクを取り付けます。SRAM GX EAGLE Boostの165mmサイズです。もちろん、dub用です。
リングは32Tです。クランクのバンドルです。アーム単体のオプションがストアになかった。BOOSTリングのオフセットはややこしいところです。とくにこだわらなければ、バンドルを買いましょう。
RacefaceやRotorのクランクとおなじく左アームにシャフトがあります。取り付けに8mmアーレンと2mmアーレンを使うのもおんなじです。
で、クランクを指定トルクで締めて、右アームの中央をゴムハンでやさしくこつこつ叩いて、最後に左アームのプリロード調整機構であそびを取ります。
ここの小さな六角ボルトはすぐになめます。裏技でトルクスのT8が2mmアーレンキーよりぴったりです。
そして、がちがちに締めるのはNGです。多少のすきまはOKです。玉当たり調整とおんなじです。