YouTubeで稼ぐ
つい最近までこんなフレーズはいかがわしい怪文でした。動画配信は身近な行為でなく、YouTuberは現実の存在でなかった。
しかし、この数年で一般人の情報源が文字から動画に移行して、YouTubeが珍奇な趣味から実用的ツールへシフトします。動画を見れば、たいていできます。
反対にWebサイトのテキストはややアカデミックなものになりました。文字と画像だけのコンテンツは動画世代には若干の堅苦しさを感じさせます。しかも内容が自動的に進まない。
昔の主婦はクックパッドでレシピを調べて料理をしました。今の主婦はDELISH KITCHENの動画を見ながら手順を真似ます。
クックパッドのレシピの『玉ねぎを乱切りにします』の『乱切り』が料理音痴にはもう分かりません。結局、その『乱切り』なる調理技法を動画で補完します。二度手間だ。
さて、この『乱切り』を笑う人は『三枚おろし』を完璧に説明できますか? 『サバを三枚おろしにします』というレシピに動画なしで対応できます?
ちなみにクックパッドは料理好きのためのサイトで、DELISH KICHENは料理嫌いのためのサービスです。利用者や初心者の前提がすでに違います。
こんなふうに動画の日常的な活用度が増すと、参入のハードルが下がって、一般人が続々と参入し始めます。
その結果、小学生、主婦、会社員、じいさんばあさん、医者、弁護士、大学教授等々の市井の人々がYouTubeでチャンネルを開設し、動画投稿やライブ配信をして、何某かの収入を得ます。
果てに犬、猫、鳥がYouTubeデビューし、非現実のバーチャル人格やアニメキャラさえがチャンネル解説します。YouTubeはオープンなプラットフォームです。
猫さえが広告収入を得られる仕組みを以下で詳しく解説します。
YouTube広告の仕組み
YouTubeはGoogleの動画共有サービスです。Google検索やGoogleマップやGmailと同じく無料です。 スマートフォンのOSのAndroidさえが無料です。
我々は利用料を払わずとも、ググれます、地図を見れます、メールを出せます、動画投稿できます。Googleのサービスは無料のオンパレードです。
でも、Googleは非営利団体ではありません。GAFAの一角を形成する超巨大企業です。つい先日の2020年1月16日に母体のAlphabet社の時価総額が初めて1兆ドルの大台を付けました。
稼ぎ頭は広告収入
そんな無料屋さんのGoogleの収入源は広告です。傘下のYouTubeの儲けもこれに同じくします。
お金の流れのイメージ図はこちらです。
源泉はスポンサーです。企業や個人はGoogleにお金を払って、広告枠を買います。価格は基本的にオークション制です。高いものが優先的に表示されます。
大手企業は電通や博報堂などの代理店を介して、Googleにお金を払い、広告枠を買います。
具体的な枠の例は以下です。
- Google検索の上位
- Gmailの余白
- Google MAPの余白
- Androidの無料アプリのポップアップ
- YouTubeのトップ画面
- YouTubeの動画内
- WebサイトのAdsenseエリア
これらがGoogleの広告枠です。インターネット上に無限に存在します。ネット利用=Google利用です。ネットユーザーはこれに触れざるを得ません。
無限の枠と最強のAI
スポンサーはどの部分にどんな広告をどれくらい出すかを細かく設定できます。私のように設定を間違うと、無意味に広告費を使い切ってしまいますが。
Googleのパーソナルターゲッティングの精度は世界一です。英会話の情報を調べた人には英語教室や留学案内などの広告が優先的に出ますし、ゲーム実況を見た人にはブラウザゲームやソシャゲの広告が重点的に出ます。
ネット上の無限の枠に最適な広告を出せる、これがGoogleの超高収益の秘訣です。新聞やテレビがどうひっくり返っても、これには勝てません。
で、YouTubeの収入は同サービスの広告枠から上がります。広告の種類はPC版のトップページの右サイドや検索結果のリストのバナーリンク、動画の冒頭の自動CM、再生中のポップアップ等々です。
広告の内容は視聴者の好みで最適化されますし、時期と需要で変化します。また歳末の12月、年度末の3月にはスポンサーが宣伝費を増やしますから、広告の単価と本数が跳ね上がります。→YouTubeの収入 1再生=0.1円はもう古い? 広告単価が高くなる時期と正しいCPM計算方法
次点が6月、9月ですね。四半期と重なる3の倍数月が稼ぎ時です。スポンサーがたくさんの広告を出すと、Googleが儲かり、YouTubeが儲かり、YouTuberが儲かります。
逆に 1月、2月、4月、8月は閑古鳥です。年明けから3月までの個人YouTuberは収益の低下や確定申告の書類作成に追われて非常に憂鬱です。
YouTubeの広告の種類
YouTubeの動画の種類は以下のようなものです。
- TrueViewインストリーム=スキップ可能な動画内の広告
- TrueViewディスカバリー=検索結果や関連動画画面の固定広告
- バンパー=スキップ不可の6秒広告
- オーバーレイ=再生中の透かし広告
前段の私のサンプルの設定はこの中の『TrueViewインストリーム』となります。動画冒頭や再生途中のスキップ可能な広告ですね。YouTubeの基本のCMです。5000円ほどが東南アジアの自転車好きの方々のスマホやPCのディスプレーで消化されました。
この場合、お金の流れはスポンサー(私)→Google→YouTube→ベトナムやインドネシアの配信者です。YouTubeと配信者の配分はおおむね5:5です。つまり、私はこの広告で2500円分の売り上げをGoogleに献上しました。
メディアを完全に牛耳れば、このようなぼろ儲けの仕組みを容易く作れます。ロビー活動をすれば、税金をすら回避できます。
2020年2月9日にGoogle (Alphabet) は2019年の収益を発表して、そこで初めてYouTubeの単体の儲けを公開しました。
Googleの収益は18兆円、YouTubeの儲けは1.6兆円です。これには有料のYouTube PremiumとYouTube Musicの利用料は含まれません。→YouTubeの広告収入は2年間で倍増。Googleが初めて収益を公開
2017年は9000億円ですから、その成長のすさまじさが知れます。
その他の収入源
広告以外の収益機能は以下の通りです。
- スーパーチャット
- メンバーシップ
- グッズ販売
- YouTube Premiumの分配金
スーパーチャットはライブ配信やプレミア公開のような生放送スタイルの動画の収益減です。放送中には広告が出ません。放送後のアーカイブには出ます。
メンバーシップはチャンネルのサブスクリプションです。運営者が価格やグレードを決めて、視聴者に直に課金できます。
スパチャとメンバーシップはチャンネル運営者の腕にかかります。ゆえに配分は基本広告より有利です。YouTubeが3、Youtuberが7ですね。
グッズ販売は日本では未実装です。国内の提携業者が決まれば、Tシャツやステッカーがここに並びましょう。
有料のYouTube Premiumに登録すると、一切のスポンサー広告を画面上から排除できます。YouTubeは儲かりますが、YouTuberは儲かりません。
ですから、分配金の形で有料会員の利用料の一部が運営者に分け与えられます。もっとも、有料会員の人数は多くありません。
YouTubeで稼ぐことのまとめ
『YouTubeで稼ぐ』ことは『広告を消化する』ことと同じ意味です。チャンネルの収益化=広告枠の借り受けです。イメージはそのまま大地主と小作人ですね。
ただし、この地主は真面目な小作人にはきちんと分け前を与えますし、悪質な輩には制裁や排除を辞しません。しかも母体は国家より強力だ。
実際問題、初期のYouTubeのチャンネル運営は畑の土づくりや種まきにそっくりです。有名人は最初から大きな木を植樹できますが、無名の市民は種や苗からしか始められません。
YouTubeは甘い世界ではありませんが、たしかに面白い世界です。