YouTubeの収入 1再生=0.1円は嘘? 広告単価の仕組みと正しいCPM計算方法

1再生=0.1円

これは有名な通説ですが、今日のYouTubeの状況とは大きく掛け離れます。令和時代のYouTubeの広告単価はこんなものではありません。

ライブ配信のスパチャ
ライブ配信のスパチャ

日本国内の主要媒体の広告費は統計から分かります。2018年の総額は約6兆5000億円です。テレビ広告が1兆7800億円、ネット広告が1兆7500億円です。

その五年前の2013年の統計はどうでしょう? テレビの広告費が1兆8000億円で、ネットの広告費が9300億円です。

ちなみに同年の流行語は 「今でしょ!」 「お・も・て・な・し」「じぇじぇじぇ」「倍返し」 です。

そこからテレビ広告はほぼ横ばいで推移し、ネット広告は右肩上がりで成長します。2018年の実績はほとんどイーブンです。

で、これが旧時代の平成の状況です。リアルタイムな令和の現代ではテレビとネットの広告費は確実に逆転します。

少々の広告費を頂く者として2019年の統計の発表が楽しみです。

しかも、上の統計と同じ2018年の2月20日にYouTubeは大幅な規約変更を行いました。→ユーチューブ収益化の条件と実際に受け取るまでの流れ

この事件の前と後では収益化の難易度が全然違います。~2018年2月19日はイージーモード、2018年2月20日~はサバイバルモードです。

安易な再生数稼ぎの低品質コンテンツは積極的にBANされます。 冷やかし、チート、スパムは生き残れません。

最近ではキッズ向け動画さえが槍玉にあがります。

これらは広告費の無駄払いを失くして、スポンサーの不満を解消し、より多くの広告を得るための対策です。

この状況では広告費の分け前は正しい人か賢い人にしか配分されません。 現在のYouTubeは非常にフェアで健全です。

今や『1再生=0.1円』は古臭い都市伝説でしかありません。それは具体的なデータではない。ことわざとか慣用句のようなものです。

しかし、ある事情からこのことわざはあちこちで常用されます。

YouTubeの動画収入と広告単価の基本

YouTubeでチャンネルを開設して、一定の条件を満たすと、収益化の権利を獲得できます。

この実績を解除しないと永久に広告収入を貰えません。ゆえに初心者はこれを最初の目標にして、動画投稿に励みます。

チャンネルが条件を満たして、動画に広告が付き、一定時間の視聴やバナーのクリックがあれば、広告費の分け前がYouTubeから運営者に支払われます。

収益の配分はおおむね5:5です。

広告単価とCPM

こちらはうちのメインチャンネルの2019年11月から2020年1月までのYouTubeの広告収入のグラフです。

2019年11月-2020年1月のYouTube広告収入
2019年11月-2020年1月のYouTube広告収入

“CPM”はネット広告業界の代表的な一つです。”Cost per Mille”の略で、『1000回当たりのコスト』と訳されます。

上図のCPMは広告スポンサーにはコストですし、YoutubeやYoutuberには儲けです。モザイクの下にはこのチャンネルの千回当たりの収入があります。

なんで隠すか? それは利用規約のためです。YouTubeの未確定の不正確な広告収入の情報公開は利用規約に違反します。

厳密にはアナリティクスデータの一部の提示さえが完全なホワイトではありません。この記事のような使い方は模範優等生ではない。

この規約のせいでチャンネル運営者やサイト運営者は収入データを大っぴらに公開できません。

多くの場面で例の『1再生=0.1円』を用いてうやむやにします。最善策は黙秘です。

はたして、それはことわざや慣用句に過ぎません。『1再生=0.1円』は『雄弁は銀、沈黙は金』などと同じです。

ことわざを乱発して人を説得しようとする人はえてして知ったかぶりか嘘つきです。

肌感は0.2-0.3円

私は2018年12月にYouTubeチャンネルを開設して、二か月目に収益化の条件を満たし、コンスタントに動画をアップします。0.1円は都市伝説です。

個人的な感覚ではYouTube全体の1再生当たりの平均収入は0.2-0.3円でしょうか。つまり、CPMは200-300円です。

ただし、YouTube StudioのアナリティクスのCPMはこれより高く出ます。この数値はYouTubeの天引き前のものですから。

天引き後の実際のCPMは簡単な方式で出ます。『再生回数に基づくCPM』を二で割りましょう。その答えが実数に限りなく近くなります。

Social Bladeの最大予想収益÷2=YouTuberの収益
アナリティクスのCPM÷2=実際のCPM


私がYouTuberの講師であれば、この二つの公式をテストに出します。

YouTubeの広告単価が変動するわけ

YouTubeには様々な広告が出稿されます。スポンサーは多彩です。大手企業、商品プロモ、個人チャンネル、伝説の何某、カルト系etcetc…

この混沌の様相は全国テレビより地方テレビ、新聞より雑誌の広告欄にそっくりです。

広告の単価は一定ではありません。需要、時期、ジャンルで異なります。また基本的にオークション制です。高いものから優先的に消化されます。

クリスマスに水着のCMを出すのは安上がりでしょう。競合相手がいないから。 そもそも誰も真冬に夏物グッズを買いません。

金融、保険、医療、転職、資格、不動産などは典型的な高額ジャンルです。Webサイト業界ではクレジットカードが最激戦区ですね。

12月、3月は稼ぎ時

歳末の12月、決算月の3月には広告単価が一気に跳ね上がります。さきほどの図をもう一度見ましょう。

2019年11月-2020年1月のYouTube広告収入
2019年11月-2020年1月のYouTube広告収入

真ん中の部分が12月の広告収入です。月初から月末まで高水準で推移します。11月の好調さは再生数に寄ります。

さて、右の1月の部分はどうでしょう? ピークの山は12月の平均に迫りますが、それ以外は非常に低調です。

企業は歳末の商戦に広告費を突っ込みます。必然的にこの時期には広告の本数と単価が跳ね上がります。YouTubeは儲かるし、YouTuberも儲かる。

実際、2019年12月のモバイル動画の冒頭には5秒x2本のダブルCMが目立ちました。シングルでは広告の消化が追い付かなかったか?

裏腹に1月の広告は完全に祭りの後です。正味、収入は12月の60%ですね。このせいでお正月のYouTuberやブロガーには覇気がありません。

年度末の3月は歳末の12月と同じくYouTubeとYouTuberの稼ぎ時です。多くの企業が決算を控えて、駆け込みで予算を使い切ります。ダブルCMは確定です。

近い未来に5秒x3本のトリプル広告や5秒x4本のカルテット広告はありえます。

またネットの広告の配分はこの数年でパソコン < モバイルに切り替わります。スマートフォンこそが現代の最高の広告消費デバイスです。

広告は地域で変わる

YouTubeの利用者は国内に留まりません。私のチャンネルでは全体の2%が海外からのアクセスです。

当然、海外ユーザーのパソコンやスマホには現地の広告が入ります。単価は相場に準じます。先進国では割高に、それ以外では割安になります。

個人的な一例を上げましょう。以前、私はメインチャンネルのプロモーション用の広告を1円で出稿しました。

1円広告の視聴回数
1円広告の視聴回数

エリアを国内に限定すると1日300円の予算をぜんぜん使い切れませんが、アジア・南米・東欧をターゲットに加えると瞬時に消化できます。

つまり、この1円広告は日本の相場では割安、アジア・南米・東欧では割高です。

広告のエリア設定を細かくセッティングすれば、国内の特定の地域のみに広告を流せます。

名古屋のデパートの広告を大阪や東京に出すのは非効率的ですし、沖縄に南国のリゾート地の宣伝をするのも無意味です。

インドで主婦のカレーがバズったら

「日本の主婦のカレー動画がインドでバズった!」

これは奇怪な減少に見えますが、YouTuberではあり得ます。中国ではYouTubeは当局に規制されますが、インドではフリーです。人口は共に15億人です。

実際、世界最大の登録者数を誇るのはインドのT-seriesです。ここはボリウッド映画のミュージックチャンネルです。

このチャンネルのSocial Bladeのデータがこちらです

2020年2月9日の登録者が1億2800万人、総再生数が980億回です。15億の膨大な国内人口があれば、ローカルコンテンツが世界に勝てます。

この圧倒的な数の力で日本の主婦のカレー動画が100万回まで伸びても、CPMは現地の相場に落ち着きますから、広告収入は恐らく数万円でしょう。

長い動画は高単価

一昔前のYouTubeでは再生数が最大の指標でした。おかげで再生数稼ぎの低品質な動画が乱造されました。1再生=0.1円説はその再生数至上主義の申し子です。

今ではその手法と思想は古臭いものになりました。現在のYouTubeでは再生時間が非常に重要です。

YouTubeのアルゴリズムでは4分きっちり再生される5分の動画は2分しか視聴されない10分の動画に勝ります。決め手は視聴維持率です。

2分しか視聴されない10分の動画は8分の無駄を抱える冗長なデータです。

この低品質なガラクタも4分きっちり再生される5分の優良なコンテンツと同じくサーバーに完全に保存されます。

さて、この両方が共に百回ずつ再生されました。再生数は同じですが、視聴時間は別物です。400分と200分だ。

ではなぜYouTuberは長い動画を作りたがるか? それはミッドロール広告やポストロール広告のためです。

10分以上の長い動画には任意で広告を追加できます。頻度が増えれば、収入が増える。シンプルな理屈です。

仮に視聴者の都合を無視して、広告をべたべた貼りまくれば、収益面では最大の効果を得られます。

無論、ユーザーの満足度は下がって、短い視聴時間はさらに短くなりますが。

1分しか視聴されない10分の動画のような広告の塊というのはYouTubeのアルゴリズム的にはお荷物でしかありません。長期的観点ではマイナスです。

とはいえ、基本的に長い動画の広告収入は高単価です。

YouTubeの1再生当たりの収入のまとめ

1再生=0.1円は旧時代の常識です。今のYouTubeには全く通じません。これを見聞きしても決して真に受けず、ことわざや慣用句と見なしましょう。

2018年の統計で国内の地上波テレビとネットの広告費はとんとんです。成長率から現代の広告費は確実にネット > 地上波です。そして、スマホ > パソコンです。

広告の単価はオークション制で、色々な要因で変動します。12月、3月のYouTuberは上機嫌です。1月、4月は祭りの後です。

広告は地域で異なります。単価もしかりです。先進国は高め、途上国は低めです。日本はまだ経済大国の地位に留まりますから、広告はまあまあ割高です。

10分以上の長い動画は収益面では有利ですが、広告の乱用は視聴者とYouTubeに嫌われます。

結局、自分のチャンネルを収益化してしまうのが最高の唯一の正解です。