自転車のタイヤはいくつかの部位から成り立ちます。地面と接地するトレッド部分、骨組みを守るショルダー部分、側面を守るサイドウォール部分、そして、ホイールリムに嵌まるビード部分です。
タイヤの耳・・・ビードの中には補強用の芯材があります。スチールのワイヤーかアラミドのケブラーです。前者がワイヤービード、後者がケブラービードて称されます。
この二種類のビードの特徴をざっくりとおさらいして、ちがいをチェックしましょう。
ワイヤービードとケブラービード
スポーツバイク以外の自転車のタイヤはイメージ通りの『タイヤ』です。サイズ、色、価格は視界に入りますが、そのほかの詳細は理解の範疇から逃れます。森を見て木を見ません。
一転、スポーツバイクにこりはじめると、『タイヤ』のディテールに血眼になります。上記のトレッド、ショルダー、ビードから始まって、コンパウンド、ベルト、スレッドetcetcにのめりこみます。
ハキモノに開眼すると、中敷き、ミッドソール、アウトソール、カップ、アーチetcetcみたいな細部に前のめりになります。ただの靴が日用品でなくなる。シューズもタイヤもこだわり屋には小宇宙です。
おなじみワイヤービード
ワイヤービードは一般市民におなじみです。とくに意識せずとも、昔からお世話になります。ママチャリ、軽快車、クロスバイクのタイヤはおおむねワイヤービードモデルです。
補修用、交換用はこれです。タイヤ代は2000円弱ですが、工賃がどさっとかかって、一般車のタイヤ交換はバッドコスパな不愉快体験になります。1万のママチャリに5千のランディングコストは微妙です。
セミスポーツバイクのミニベロのタイヤもほぼワイヤービードです。ケブラービードモデルは圧倒的にレアで高価です。パナレーサーやシュワルベの一部のハイエンドモデルのみがケブラービードです。
チープでタフなワイヤービード
ワイヤービードの特徴は安さと丈夫さです。鉄鋼ワイヤーは汎用の大量生産工業品です。世界中の10億台のママチャリのタイヤにお安く安定供給できます。
タイヤのビード内のスチールワイヤーは基本的にぐにゃと曲がりません。それ自体の強度で形を保つ太さです。しなやかさはない。おかげでワイヤービードのタイヤは自然とわっかの形になります。
サイクルベースあさひやイオンバイクの店頭のフックやたなにずらっと並ぶのはワイヤービードです。ワイヤービード=一般的なタイヤのイメージです。
ここから見えるタイヤの9割はワイヤービードでしょう。
ヘビーでハード。折りたためない
ワイヤビードの短所はまんまに長所の裏返しです。スチールワイヤーの重さと固さと太さがネックになります。たためません、折り曲げられません、圧倒的にかさばります。
この性質からワイヤービードタイヤは遠出の予備や緊急用にはなりえません。購入店から車なしで持ち帰るのさえがたいへんです。ショルダーバッグみたいに斜め掛けするか、ネックレスみたいにぶらさげるか。
また、むりに折りたたむと、ビード内の鋼線の変形を招きます。変形したビードは本来の性能を発揮できません。タイヤの型崩れは乗り心地にはっきり出ます。ラインがねじれる、ぼこが出る。
ネット通販でワイヤビードを買うと、梱包のでかさにおどろきます。26インチや700cのタイヤは余裕で60cm以上になります。
安い軽いかさ高いブツ・・・販売元には手痛い商品、配送業者にはおいしい案件でしょう。
万が一におりたたむなら、タイヤをひとねじりして、『8』の字にして、重ね目で二つ折りにして、ゴムかバンドで留めます。
さらに小さくしようとすると、スチールワイヤーにへんな癖をつけちゃいます。8の字の二つ折りが限界です。
スポーティなケブラービード
ケブラービードはスポーツバイクのスタンダードです。ロードバイクやMTBのタイヤはほぼケブラービードです。
もしか、クロスバイク、ミニベロ、折り畳みの完成車付属のタイヤがケブラービードであれば、そのモデルは最上位クラスの高級品です。ことさらにミニベロのケブラービードモデルは割高です。
これはパナレーサーのMinits Liteです。お値段は5000円を下りません。ワイヤービードの2倍から3倍です。
スポーティな街乗り小径車てのが比較的に新しいニッチなジャンルです。手頃な中間層のタイヤの選択肢は多くありません。廉価モデルと高級品に二極化します。
軽くてしなやかケブラービード
ケブラービードのケブラー=Kevlarはそもそも一般名詞じゃなくて、アメリカの大手化繊屋のDUPON社の商品名です。ケプラーじゃなくて、ケブラーです。ノーノー、ケヴラー。
ケブラーの別名はパラ系アラミド繊維です。人工繊維のひとつです。もともとはプラスチックですから、もともとのもともとは石油でしょう。まあ、すんごい丈夫な樹脂の糸です。
ケブラービードタイプのタイヤのビードのなかにはこのアラミド繊維の束がみっちり通ります。これはほんとにじょうぶな繊維質です。ハサミやカッターを駆使しないと、なかなか断ち切れません。
実際、ケブラーのキャッチコピーは「鉄の5倍の強度!」です。スチールビードの5分の1で同じ強さを出せます。
一本一本の繊維がほそくなれば、しなやかさが生まれますし、重量が軽くなります。ワイヤービードとの重量差は数十グラムになります。足回りの数十グラムの差は大です。
店頭のケブラービードのタイヤはタイヤの形をしません。コンパクトな箱入り、袋入りがふつうです。
チャリダー以外はこれを見ても、自転車のタイヤを思い浮かべません。チューブかパンク修理キットみたいに見えます。タイヤの形じゃないし。
コンパクトに折りたためますから、保管場所に困りませんし、予備や緊急用に携帯できます。ごつめのオールロードタイヤさえが袋入りラーメンくらいのかさに落ち着きます、ははは。
ワイヤービードより高価
ワイヤービードのネックはお値段です。おなじ商品のスチールビードモデルより割高になります。くだんのように小径車用のタイヤでその傾向が顕在化します。
しかし、26インチ以上のタイヤの選択肢は豊富です。手ごろなモデルはたくさんあります。基本的にロードバイクやMTBのタイヤはケブラービードです。スポーツからホビーまで。
ツーリング、クルーザー、アーバンコミューター系のタイヤの一部がワイヤービードです。Continental ContactとかSchwalbe Marathonとかが代表です。
実用重視のタイヤです。この堅牢さ、もっさりどっしりは歩道の段差、アスファルトの亀裂、道のごみ、線路などなどのためです。オフロードの岩、砂、木みたいなものには不向きです。
でも、パンクはふつうにします。過信は禁物です。個人的にワイヤービードの美点はありません。重さとかさだかさの前に長所はむなしく消え去ります。
自転車タイヤは可燃ごみ
ちなみにワイヤービードタイヤもケブラービードタイヤも可燃の一般ごみになります。小さく切るか、折りたたんで、燃えるごみの日に出しましょう。
ベランダの放置タイヤに雨水が溜まると、夏場にボウフラが沸きます。この時期に不要タイヤを処分して、蚊の大発生を阻止しましょう。