先日、DT SWISSの公式サイトのスポーク計算機でDT SWISS R460のリムとWhite Industriesのハブからスポーク長を算出しました。
で、今回はその実践編です。うちのロードバイクちゃんのためにホイールを手組しましょう。
はじめての手組 by のむラボ
おりよく船場のやり手のチャリ屋ののむラボのブログにこのWhite IndustriesのT11の組み立て例がありました。
その組み方はぞくに『半コンペヨンロク』です。??? 初心者には王将の『コーテルイーガー』やテレビ屋の『パイオツカイデー』なみのスラングです。
このなぞの『半コンペヨンロク』の実態です。
- ドライブ側のスポークはDTコンペティション
- 反ドライブ側はエアロスポーク
- ドライブ側のスポークの交差は2クロス(4本組)
- 反ドライブ側の交差は3クロス(6本組)
スポークの半分をDTコンペにして、ドライブ側を2クロス、反ドライブ側を3クロスにする・・・てことです。半チャー、バリカタ、肉マシ、ツユダクetcetc…
半コンペヨンロクをひもとく
この半コンペヨンロクのレイアウトの意味は反ドライブ側のスポークの変形量を少なくすることです。
DTコンペはノーマルな丸スポークです。これの比重の指数はのむラボ的には85です。DTチャンピオンが100です。SAPIM CX RAYやDT AEROLITEは65です。
扁平なブレード系のスポークの方がふつうの丸スポークより軽量で細身です。弱いテンションでキンキンに張れます。結果、変形量が少なくなる。
逆に太いスポークは強いテンションを受けても、やすやすとキンキンになりません。変形の余地がある。
で、のむラボの大将のコンセプト、ホイール哲学では反ドライブ側のスポークの変形は絶大な赤点です。こっち側のテンションをいかに上げられるかが重要なポイントです。
それ以上のくわしいところはしろうとにはよく分かりませんが、この考え方にはばくぜんとした直感的シンパシーがわきます。
てなわけで、T11のフロントのレイアウトはすでにヌポークラジアル by のむラボです。この工夫はBOOSTハブの発想に通じます。
フランジ幅のワイド化の威力はぜつだいだ! てFOXとMondrakerの日本代理店のマムアンドポップスの中の人がつねづねおっしゃります。
国内のホイールの第一人者とサスペンションの第一人者の意見が一致する。で、これがぼくのフィーリングに反しない。異議はありません。
ただし、別々のスポークを発注するのはめんどうです。Piller PSR 1423のみでヨンロクで組みます。
スポーク調達はたいへん
で、設計図ははやばや決まりますが、パーツの調達はすっかり遅れます。大陸のセラーとの連絡がたいへんでした。スポークの調達はわりにめんどうです。
- スポークのモデル
- スポークの長さ
- スポークのカラー
- 首折れかストレートプルか
- 本数
- ニップルのタイプ
- ニップルのサイズ
- ニップルの素材
- ニップルのカラー
おまけのニップルの指定をこまかく連絡しそこねて、むこうを混乱させてしまいました。スポークの長さだけでオーダーが完了しない~。
で、カートインから三週間後にようやくものがとどきました。
Piller PSR AELO 1423の299mmと284mmです。数字のとおりに14号の2.3mmです。本数は15本ずつ。ニップルはノーマルタイプ、アルミ、シルバー、12mmです。
DT AEROLOTEとSAPIM CX RAYは非常にきゃしゃです。1423はブレードスポークですが、丸スポークみたいなしっかりです。ぐにゃぐにゃしない。
これより細い1420はCX RAY系です、ぐにゃぐにゃ。うちのMTB用のカーボンホイールのスポークがそうです。
丸スポークの方がおなじみではない。
Pillerのスポークヘッドです。イニシャルのPの刻印が見えます。
15本が23ドル、1本の単価は約180円です。おねうちのエアロスポークです。
ところで、日本国内では丸スポークのがメジャーですが、丸スポークはAliExpressの自転車ストアにはぜんぜんありません。
でも、ブレードスポークの形状は初心者には有利です。ホルダーでしっかり掴めます。ねじれを防げて、テンションを掛けられる。価格、調達性、どっこいです。
スポークの重量です。284mm x 15は110gです。7.3g/1本、0.025g/1mmですね。
より細い1420は0.016g/1mmです。じゃあ、1mmの比重差はざっと1:0.65です。1423はひらべっちゃい丸スポークのようなものです。とくに軽量ではない。
実際、組み立てに使う24本分の重量差はざっと50g前後になります。
もっとも、今回の手組はチューブラーリムからアルミチューブレスリムへのリビルドです。かるさははなから蚊帳の外です。
名前はDT R460、体重は480gです。誤差誤差! リム内径は18mmで、タイプはチューブレスレディです。
C18のアルミのリムブレーキの24ホールのチューブレスは貴重です。
ホイールの組み立て
そろそろ組み立て作業をはじめましょう。
スポークの交換、手持ちのホイールのバラしと組み直し、振れ取り、センター出し、テンションチェックetcetc…てやりますが、スポークの調達からやるのははじめてです。
これがほんとのB4Cの手組ホイール一号、デビューホイールです。
ハブにスポークを通す
はじめにハブにスポークを通します。ハブはホワイトインダストリーズのT11です。OLD130mm、QR式、リムブレーキ用の標準的なロードハブです。
で、このハブのギア側を上に向けて、穴を一個飛ばししながら、284mmのスポークをフランジにすとすと落とします。
つぎが第一チェックポイントです。ITAとJISの振り分けです。
上記のようにフランジのスポーク穴は左右同軸ではありません。上の穴の直下には下の穴が来ない。おたがいがちょっとずれます。
で、左落としがイタリアン組、右落としがJIS組です。ぼくはのむラボのセオリーにしたがって、イタリアン組を採用します。じゃあ、299mmのスポークを左の穴に落とします。
この振り分けで最終のスポークのレイアウトが決まります。左落としはイタリアン、右落としはJISです。
ストレートプルのハブはこの振り分けとは無縁です。最初からスポークの指向性が出ます。これは28hのJISの3クロスです。
ストレートプルのがらくちんです。でも、これは手組ではイレギュラーです。なぜだ?!
こういうハブやスポークの入手性は一昔前とはだんちがいです。ふるめかしい丸スポークやクラシックハブを使う意味はとくにありません。
そして、ディスクブレーキホイールのレイアウトは原則的にJIS組です。イタリアン組は従来のロードレーサーや競輪のための組み方です。
ディスクブレーキが台頭すると、ラジアル組もイタリアン組も過去のものになってしまいます。
で、起点の一本が決まれば、のこりはすっすと決まります。穴一個飛ばしでスポークを落として、ハブをひっくりかえして、反対側の穴を埋めていきます。
スポークとハブの合体は以上です。つぎはスポークとリムの合体です。
リム穴の振り分け
たいていのリムにはスポークホールの振り分けがあります。穴は同一線上にはならびません。びみょうに右左に振れます。
下の図ではバルブ穴の奥のスポークが左に寄って、手前のスポークが右に寄ります。これが標準的な振り分けです。この指向性とハブのフランジのスポークを合わせます。
ドライブ側は2クロス=4本組です。
スポークが2クロスです。起点スポークから4つ目の穴(中穴二つ)のスポークを交差させます。
反ドライブ側は3クロスです。起点スポークから6つ目の穴(中穴四つ)のスポークを交差させます。
正直、ここの手順は文章や動画ではさっぱり分かりません。右左? 内外? 表裏? つぎどれ? このとなりはどれだあ? はああ??? て頭がこんがらがります。
さいわい実用的なパターンはおおくありません。2クロス、3クロス、4クロスがせいぜいです。そして、やり直しが可です。
スポーク長をまちがわなければ、パーツをこわさなければ、ぜんぜんリカバリーできます。じっくり根気よくやりましょう。失敗は成功のもとです。
振れ取り、センター出し、テンションチェック
以降の作業はすでに消化済みです。振れ取り台で振れを取ります。
うーん、たしかに右フランジがもうちょっと欲しい。
センターゲージでハブセンターを見ます。
スポークテンションをチェックします。
いつもの調子で反ドライブ側のスポークを張ったら、ハブをどえらく片寄らせてしまいました。
最終的な左右の第一スポークテンションは反ドライブ1.6-1.8mm、ドライブ2.5-2.7mmてところです。反ドライブ側はぐにょぐにょです。あとで1420にしようか。
で、換算表にはこのスポークの参照がない・・・比重的には1423は下記の1.8と2.0の間くらいです。ドライブ側の3は黄信号、90%の2.7くらいが落ち着きどころでしょうか。
スポーク長はぴったりです。ニップルのケツ-1mmてところです。で、ソケットが六角です。こちらのが合理的です。
たまに長いのが飛び出します。
幸いスポークのねじ山は見えません。スポークの長さは及第点です。上出来ですよ、上出来! DTのスポーク計算機はOKです。
しまったー!!!
まあ、かまいません。性能に影響はない。見て見ぬふりをして、チューブレステープを貼ります。
OKです。B4Cホイール一号が完成しました。
C18のチューブレスのリムブレーキ用のロードバイクホイールです。重量はシングルギアとクイック付きで1030gです。ホイール単体は900gちょいです。なかなかの特殊仕様です。
VittoriaのRubino Proをむりやりチューブレス化して、試乗に行きました。
22mmのチューブラーと比べると、乗り心地のよさにがくぜんとします。ワイドリムとチューブレスがジャスティスです。
ホワイトのハブがよく回ります。リムの重さをいかして、ちょろって漕いで、フリーをしゃーって回すと、わりとらくに進めます。加速は苦手ですけど。まあ、シングルギアですし。
しかし、うしろの鳩、警戒感ゼロです。飛べよ。