チェーンは自転車の駆動系部品、ドライブトレインの重要な1ピースです。変速と出力を大きく左右します。
でも、軽快車やママチャリのチェーンの扱いは下の下です。おざなりです。外置き、野ざらし、ノーメンテのチェーンはことごとくこうなります。

サビサビ、ノビノビです。これはもうとうに寿命です、ちーん。チェーンは消耗品です。自転車の性能を長持ちさせるなら、定期的にクリーニングとオイルメンテを欠かさない。
ずぼらな人にはベルトドライブがうってつけです。高めのシティサイクルの駆動系はこれです。
でも、ぼくの経験ではベルトドライブはパワー伝達に劣ります。ペダリングのパワーがなんか逃げる。ぼくは二度と買いませんね~。
チェーンのメンテをかんたんにする簡易リンク
さて、完成車のチェーンははなからワッかですが、単品のチェーンはただの鎖です。

これをディレイラーのプーリーに通して、フロントリングとスプロケットに掛けて、チェーンのはしとはしを繋ぎます。これが自転車チェーンのセッティングです。
以下がチェーンセットの場面です。
- 新品に交換する
- リングやスプロケットの歯数を変える
- 伸びを調整する
です。断裂や破損はめったにありません。そんな破壊トラブルはよっぽどです。
で、チェーンをつなぐときには主に三つの手法を使います。
- お古のコネクトピンを再利用する
- 新品のアンプルピンを圧入する
- ミッシングリンクを使う
です。お古のアンプルピンはこんなです。

もともとのチェーンの中ピンを再利用します。これは一昔前まで街のチャリ屋の定番の手法でしたが、現代のシンケイシツなチャリ界では好まれません。
が、ぼくはこれでばかすかやっちゃいます。ミッシングリンクやアンプルピンをいちいち用意するのはめんどうです。DIY is Justice!
現代の安心安全正統派がアンプルピンです。こんなです。

コネクトピン+ケツの押し込み部と頭の先細り部がこいつです。圧入がコネクトピンより楽です。それだけのことです。これでなくちゃならない! てことはありません。
そして、これは一回こっきりです。圧入の後でケツと頭のあまりをぽきっと折り取りますから。使用済みのアンプルはただのコネクトピンに成り下がります。使いまわしは蚊帳の外です。
ミッシングリンクはこんなです。

チェーンの擬似的な外コマです。二つで一つのニコイチパーツです。装着方法は圧入式でなくて、相互嵌め込み式です。オスメスの雌雄同体です、きゃあ!
ミッシングリンクはリユースフルです。x回の取り付け・取り外しが可能です。が、新品はだいたいかちかちです。手では着脱できません。ワイヤーや工具を使います。器用な人はラジオペンチでします。
ところで、ミッシングリンクはこの簡易リンクのパーツ名でなく、商品名です。台湾のチェーン屋KMCの専売特許です。
上のものはKMC DLC 11s用です。2000円! です。そこそこのチェーン本体級の価格です。本体の定価は2万です。

で、このミッシングリンクは11速用です。10速や9速や8速のチェーンには合いません。チェーンのコマの厚みが違いますから。

厚みが違う=中ピンの長さが違う、です。11速(12速)のチェーンが最薄です。ピンは最短です。10速以下には寸足らずになります。
ぎゃくに10速以下の中ピンやミッシングリンクは11速や12速には寸余りになります。中ピンがリンクの外コマから飛び出ます。ピンの穴の径は同じです。
現状の簡易リンクの決定版はこのKMCのミッシングリンクです。他社が追随しないのは技術より特許のせいです。この合理的な形状はKMCの専売特許です。
台湾YABAN YBNのリンクはこんなです。

品名はQUICK LOCK LINKです。擬似外コマ+ピンの形状は変わりません。リンクのデザインの違いが特許逃れの苦労のあかしです。
他社は特許使用料を払わねば、この形状や類似の形状を使えません。構造自体はシンプルですからね。競合品の少なさは技術的な問題ではありえない。
他社の特許を潜り抜けつつ、性能を維持・向上する商品開発はものづくりの基礎の基礎です。まま、その苦肉の策がSRAMのフロントシングルの1xのような業界全体のブレイクスルーにつながります。
復活のシマノクイックリンク
さて、われらのシマノはチェーンコネクトには純正アンプルピンを推奨します。
簡易リンク的な純正品はありません。いや、実質的にはありました。が、歴史の闇に隠されました
その型番がSM-CN79です。7900世代のデュラエースグレードのパーツです。2008年ごろの商品です。そんなに古くありませんが、すでに幻です。
形状はYBNのクイックロックリンクに似ます。肉抜きがだいたんです。特筆はピンです。なんと片方がスライドします。
あきらかに構造が過剰です。しろうとのぱっと見の直感で潜在的トラブルの多さが知れます。スライドピンかスライドソケットのどっちかが速攻でばかになるよー、ゼッタイ。
案の定、リコール、クレームの嵐が巻き起こって、こいつは表舞台から駆逐されました。PDFファイルに名残を残します。特許逃れの苦肉の策が裏目に出ましたね、本末転倒だ。
シマノはなにわの企業の典型です。たいてい慎重派の後だしじゃんけんで大外しを回避しますが、たまにこうゆうズッコケをやらかします。
このSM-CN79の失敗からシマノはアンプルピン推奨派に落ち着きます。それから、はや7、8年です。古傷がいえたか、熱さが喉元を過ぎたか、ついにシマノクイックリンクが復活しました。
シマノより遂に出ましたこちらの商品「SM-CN900-11 11S用クイックリンク(2個入り)」!HG-X11スピードチェーンに対応した工具なしでも接続が可能な簡単接続、まさに”クイック”リンク。期待は大です!要チェックです!https://t.co/cZ3HwFSR1F pic.twitter.com/wI6YP8NBXN
— サイクルベースあさひネットワーキング店 (@cbasahi) 2017年5月19日
はい、完全にKMCのミッシングリンクです。完パク、パクリングリンクです。シマノらしさは無です。拍子抜けですわね~。
しかも、KMCはシマノチェーンのOEMをします。なら、この純正クイックリンクもKMC製じゃないかあ?! このスモールパーツのために工場のラインを新設します? えらい大儀でっせ?
KMCの11速のミッシングリンクの再利用はメーカー非推奨です。トラブルの責任回避のきまり文句アナウンスです。実際の再利用はぜんぜん無問題です。
そして、このシマノSM-CN900も再利用不可です。こんな使用上の注意も同一です。ラインも一緒じゃないかなあ?
とにかく、今回のシマノの二代目新型クイックリンクは目新しいもんじゃありません。権利問題をクリアしたミッシングリンクです。シマノ純正品ダイスキーな人用です。
コネクトピン再利用派のぼくにはぜんぜん無用だなあ。KMCの未使用のミッシングリンクも2セットからあるしねー。