日本は島の国、そして、山の国です。国土の2/3が山間部です。手狭な平野には人々と家々が密集して、はたらきアリのようにせっせと精を出します。
で、そんな土地柄では地元or日常からの脱出には峠越えがつきものです。風景写真の遠景には郊外の山々が入ります。リアル世界の壁だ。
で、路面の良し悪し、新旧はあれど、郊外の道路はおおむねアスファルト舗装です。海外みたいなダート、グラベル、トレイルはレアです。オフロード=山道になります。
で、このお国柄からロードバイクレースのセクションのひとつに過ぎないヒルクライムがなかば専門競技化します。
大きなイベントレースのタイトルはのきなみ「~ヒル」です、富士ヒル、ハルヒルなどなど。ダウンヒルは『下山』や『危険』て軽視されます。登高降低の傾向はあからさまです。
そんなわけでヒルクライムは日本のロードバイク乗りの通過儀礼となり、週末の恒例行事となります。10-20kmの低速域で全力を出せるのは明白な利点です。
また、自走派のMTBerも下るために上ります。ヒルクライムしないとダウンヒルできないから! オフロードが山にしかないから! 「ヒルクラは良いウォームアップだ」て割り切ります。
こんなふうにヒルクラは国内のスポーツバイク乗りの宿命です。これを楽ちんにこなせれば、オンローディはタイムを縮められますし、オフローディは体力を温存できます。
ぼくの個人的な経験とちまたの定説からヒルクライムを手っ取り早く楽に登れるコツをピックアップしましょう。体系的なテクニックでなく、ばくぜんとしたコツ、TIPSです。
ヒルクライムを楽にするコツ
ヒルクライムの意義はそれぞれです。練習、運動不足解消、TT、登頂の達成感、仲間内の付き合い、周りに平地がない・・・
ロード乗りはまじめです。MTB乗りやひやかしさんは降りて押して歩いて登ってもひんしゅくを買いませんが、ローディはそうではありません。足付き=恥=敗北です。
これは明文化されませんが、武士の国の価値観では暗黙の了解です。足付きは破滅を意味します。体は滅びませんが、サムライのプライドは滅びます。
逆に足付きさえしなければ、少々のタイム差を無視できます。かりに押し歩きの方がタイム的にイーブンor良好であっても、降車、足付き、一休みは問答無用でゲームオーバーになります。
この点、日本人は伝統的にストイックです。きつい・しんどいこそが美徳だ! 部活スピリッツは永遠に不滅です。がまんの文化ですか。そうゆうものがあります。
序盤に飛ばしすぎない
さて、ヒルクライムの敗北、つまり、足付き一発KOを免れるには終点までペースを保たなければなりません。最優先事項は完走です。速度は二の次だ。
初歩的なまちがいがハイペース、飛ばしすぎです。10kmマラソンの序盤に100m走ペースで全力Bダッシュする人はいません。人間のフルパワーのリミットはせいぜい10-30秒です。
国内のとうげの標高はおおよそに200m~です。それ以下はふつうの坂だ。で、ふもとからピークまでの距離は3km~です。平均斜度は5-7%になります。これが身近な郊外の山々のステータスです。
2000mオーバーは日本アルプスに集中します。実際、関西エリアにはない。距離~10km、標高~1000mが一般的なヒルクラの距離の目安です。
で、初心者の登りの5kmが30分、10kmが1時間です。時速10km。つまり、ヒルクラのペースや負荷はランニング、ジョギングとかぶります。アホみたいに飛ばしすぎると、スタミナ切れを起こします。
徒歩・ランベースで考えると開幕ダッシュの不毛さを理解できますが、ビギナーは自転車の効率の良さにまどわされて、無酸素オラオラしてしまいます。結果、20-30秒でバテバテになります。
ヒルクラの中身は中・長距離型の有酸素運動マンです。局部的ながんばりより全体的なペース配分がかんじんです。無酸素オラオラは厳禁です。
むしろ、必要なものは波紋法みたいな深い呼吸です。
オラオラ×
コォォォォ〇
チャリを軽くする
極度の軽量化や痩身は車体のバランスや健康を損ねますが、軽さはヒルクライムには絶対的なアドバンテージです。マラソンの1kg減量/3分短縮はほぼ定説です。
で、「体重を減らすのがてっとりばやい」て論法が出てきますが、減量はそんなにてっとりばやくも楽でもありません。健康的な体重減少は1kg/1Monthです。つらい長期戦です。
あと、体重を過度にそぎ落とすと、あからさまにパワーとスタミナを失います。痩身信仰でモデルみたいなガリガリ体系がもてはやされますけど、長距離系選手の健康状態はビミョーです。
個人的な極端ダイエットの経験では毛髪とか粘膜の質感が落ちて、風邪と夏バテの回数が増えました。冬の寒さ、夏の暑さが倍増しにこたえます。花粉や黄砂への免疫もあやしくなる。
結局、ナチュラルなちょいデブのがぜんぜん健全です。少なくとも、日常生活に支障をきたすような減量は無意味です。競技者や修行僧やドMさんは別ですけど。
そもそもダイエットの成功率が10%前後しかありません。9割の人が失敗します。成功率10%のものは作戦にはなりません。ばくちです。痩身過大評価、デブ過小評価がまんえんします。
てことで、おのれの腹肉には目をつむって、チャリをダイエットしましょう。自転車は勝手に太りませんし。
お金をかけるならパーツをアップグレードします。かけないなら余分な部品を外します。候補はライト、ツール缶、修理セット、サドルバッグ、ドリンクホルダー、ボトルとかです。
タイム狙いで切り詰めるなら、アウターリング、バーテープ、エンドキャップ、ブラケットフード、バルブキャップ、靴下、アイウェア、メット、小銭、スマホとかを徹底的に切り捨てます。
問答無用の電動アシスト
人力で坂を上る時代がにわかに過去へ遠ざかります。海外ではE-bikeが爆発的に普及します。きついところは機械の仕事です。人間はおいしいところだけをさくっと楽しみましょう。
こんな本場仕様の本格E-bikeを用意せずとも、ふつうの電動ママチャリで十二分に高速ヒルクライムできます。よゆうでエリートレーサーをぶっちぎれる。
ひきょうだ? 勝てばよかろうなのだァァァァッ!!
電動アシストの是非は定かじゃありません。しかし、実際問題、電動アシストのママチャリに坂ですいーと抜かれるとそこそこへこみます。わずかなくやしさと敗北感が起こる。
そして、電動アシストでロードやクロスをぶち抜くと、たしかな手応えと優越感を得られます。まごうことなき勝利の味です。はて、この感覚はスポーツじゃないか?
きついところでアシスト、ゆるいところで自力、はたまた、終盤まで電動で行って、最後のピークを人力でフィニッシュする。
機材の使いどころを考えて、効果的に発動する・・・それはもうれっきとしたスポーツではないか? 将来的なE-bikeの種目の中身はそんなふうになりましょう。
サイクリングMMOのZwiftではマリオのキノコみたいなアイテムの使いどころがランキングや得点に影響します。これはべつにひきょうではない。
過程や…! 方法なぞ…! どうでもよいのだァーッ
電動アシストヒルクライマーのパイオニアの栄誉はあなたのものです。そして、国内のアシスト規制が緩和されて、欧米仕様のチャリが来れば、状況は一変しましょう。
立ちこぎと座りこぎ
自転車のこぎ方は二種類です、立ちこぎと座りこぎ。業界用語ではダンシングとシッティングてCOOLな通称があります。
ざっくりと重い人は立ちこぎ向き、軽い人は座りこぎ向きです。これはランニングの歩幅系のストライド走法と歩数系のピッチ走法の事情に似ます。
ちなみにぼくは立ちこぎ派です。シッティングでちまちまこぐのは性に合いません。体重をかけて、バイクを振って、ガシガシガシ!てこぎます。
相性は愛車のタイプによります。うちのメイン機はフラットバーのフラットペダルのMTBです。幅広ハンドルとドロッパーポストのおかげで車体のコントロールがかんたんです。
反面、ロードバイクやオールロードのドロハンの振りやすさはMTBやクロスバイクには劣ります。立ちこぎのグリップポジションが一か所しかありません。赤のとこですね。
全体的にロード乗りは立ちこぎ下手です。野良の印象ではまともにバイクを振れるのは5人に1人くらいです。頭ぐっらぐら、体ぶっれぶれのポンコツダンサーがなんと多くいますか!
意図的に立ちこぎを多用して、ダンシングをとっとと習得しましょう。自分の影を見ながらすると、体の動きをよく理解できます。
良いダンシングでは乗り手の頭の位置や体のセンターは大きく動きません。バイクが左右にるんたったと踊ります。そして、タイヤラインも大きくぶれない。
自分は舞わず、バイクを躍らせます。それがダンシングです。だのに、車体に振り回される乗り手が後を絶ちません。使い分け以前の問題です。立ちこぎ力が圧倒的に足りない。
かりに固定ギアのバイクでとうげに行くとしましょう。シッティングオンリーでは絶対に上りきれませんし、下りきれません。良い立ちこぎ、グッドダンシングだけが頼りです。
シッティングは日常的なサイクリングやロングライドでそこそこ身に付きます。ダンシングはそうじゃありません。大方がダッシュやストップ&ゴーの発進にしか使わない。なげかわしいことです。
立ちこぎを制するものがヒルクライムを制します。
ライン取り
坂道の路面は一定ではありません。同じ高度で微妙なギャップがあります。カーブ部分ではそれがけんちょです。
基本的にカーブの外の傾斜がゆるくなり、内の傾斜がきつくなります。比例的に走行距離は長短します。楽なラインを見極めるのは有効な手段です。
ちなみに上のぐねぐねの小カーブ帯ではまんなかを一気に直進するのが正解ですね。道なりに左の死角へ入るのは数秒、数メートル無駄足です。もちろん、対向車や追い越し車には注意します。
同じコースを反復する
ヒルクライムのルートは一般道です。自動車、信号、通行人、みぞ、グレーチング、天候、路面状況などなどはコース設定の一部です。これらの影響力はジョギングやランニングの比ではありません。
つまり、ヒルクライムは実質的にはプチ障害物競争です。不確定要素は無数にあります。そして、郊外の山間は行楽地をかねます。週末と平日、朝夕で難易度がはっきり変わります。
絶好のきれいなゆるいアッパーストレートもこれではだいなしです。車圧のプレッシングがえげつないレベです。
同じコースを何度か走れば、ペース配分やコース設定を改善できます。不利を避ける。ストイックを気取って、わざわざアウェーで戦わない。行きつけのホーム坂を見つけましょう。
げんに信号のタイミングや交通状況は実走の反復でしか分かりません。通勤通学のチャリ通も同様です。単純反復が時短にはもっとも効果的です。ただの道がマイルート、ホーム戦になります。
ヒルクライム攻略まとめ
E-bikeがぶっちぎりのおすすめですが、そのおもしろさと可能性は国内の既存の自転車ユーザーにはまだまだ届きません。チートじゃないよ~、自転車だよ~、スポーツだよ~、差別しないで~。
てなわけで、軽量化、立ちこぎ、ホーム戦の三本柱がヒルクラ攻略の妥当なTIPSです。