今回、ぼくはロードバイクのフレームにコーティング作業をほどこそうと思います。
パーツを取り付けてしまうと、こまかいところをぬりぬりできません。最初にまるっとやってしまうのが得策です。
自転車店のコーティングは割高
近年、スポーツバイクのカーボンフレームが急速に一般化しました。「一台目のロードやMTBがフルカーボンで、一本目のホイールがカボクリだ」はもうふつうです。
じゃあ、新たなサービスが自転車ストアにぞくぞく登場します。シューズのフィッティングやハイテク機器のサイズ測定、そして、フレームのコーティングです。
オプションでお金をいただくのは商売的には正しい方向性です。従来のバイクの売り上げはそう爆発的には伸びません。ウェアやケアのが高利益ですし。
バラシと組み立て代がむだ
フレームのコーティングはケア系のビジネスの一角になります。料金は5000円から20000円です。安い金額ではありません。
自転車屋は自転車のプロです。でも、塗装のプロではありません。ケミカル屋の講習を受けて、一月に一台するかしないか。実態はそんなところでしょう。
また、コーティング代金の一部はバラシと組み立ての工賃になります。店頭購入分は割引されますが、持ち込み分は高くなります。ビミョーさが加速します。
じゃあ、自分でやりましょう。DIYコーティングです。
未知数の自転車用コーティング剤
DIY用のガラスコーティング剤はアマゾンや楽天にあふれかえります。自転車用の有名商品はクレストヨンドのガラスシリーズです。
ガラスの盾は市販品ですが、ガラスの鎧とガラスの甲冑は業務用です。ノウハウと塗料が一般には流通しません。
もっとも、中身は自動車用やオートバイ用のコーティング剤の名前替え商品でしょう。自転車フレームのコーティングみたいなニッチ産業にピュア専門品はそうそう出ません。
で、市販品のガラスの盾はスプレータイプの簡易コーティング剤です。おねだんは3000円/50mlです。60円/1mlです。ファンタジックプライスです。
AZのガラスコーティング材は298円/50mlです。6円/1mlです。この差は全体になにごとでしょう? 容器代? おまけのマイクロファイバーのタオルが高級品だあ?!
ぼくのケミカル類の価格の基準はAZです。許容範囲はせいぜい3倍です。10倍の同等品には手が伸びません。
そして、結局、ガラスの盾は簡易コーティングです。後出しのワックス掛けや艶出しスプレーとにたりよったりです。ぼくの趣旨ではない。
で、カテゴリを変更して、自動車用コーティング剤のなかからまともなガラスコーティング剤を選びます。このジャンルでは有名ブランド品と同等無印の価格差がマイルドで健全です。
自動車用ハードコートを購入
すなおにおすすめからAQUADROP GLASS COATを選びました。ただし、ハード用です。『上級者向け』て説明書きがペイントマンシップをさそいます。
ものがとどきました。茶色のガラス瓶入りです。「まともなガラスコーティング剤は紫外線防止のために色付き瓶で販売される」て説をうのみにしました。
付属の説明書を読みます。取り扱いの注意点はぼくの知識や先生の教えと一致します。ポイントは『うすくすばやくていねいに塗ること』です。
コーティング開始
ところで、塗装のベストシーズンは冬場です。5度以下が理想的です。気温が10度上昇すると、難易度がひとつ上がります。真夏がEXハードです。
で、現在の平均気温は15度前後です。涼しい時間に屋内で作業すれば、難易度をノーマルかちょいハードで留められます。
丸洗いで脱脂
さて、塗装の基本は脱脂と洗浄です。油分、粒子は大敵です。フレームをおふろで丸洗いします。油汚れにはJOYですわ。
水気をよくふいて、完全に乾かします。取り扱いには薄手のビニール手袋がべんりです。人の手はえげつない汁を常時に発散して、五分と持ちません。
カーボンホイールで練習
上級者向けの一文を信じて、予習を行いましょう。実験台はディープリムのカーボンホイールさんです。めずらしくばっちり作業台を作りました。
平面の部分がフレームやフォークよりふんだんにあります。塗りの練習にはもってこいです。フレームと同じくお風呂で丸洗いして乾かしました。
いよいよ小瓶を開封します。
こんなふうに瓶の口にスポンジをあてて、瓶をふって、適量の塗料を生地に吸わせます。べたべた、どぶどぶはNGです。この付属のスポンジに吸水力はそんなにありません。
それから、ふたの開けっぱなしは厳禁です。
ためしに硬化時間を計りました。うーん、たしかに速攻で表面がねばつきます、セミ瞬間接着剤です。気温15度では約15秒が制限時間です。これは神経質だあ。
乗せ、縦伸ばし、横伸ばし、ふき取りを繰り返します。
スマホで写メるうちにさえ硬化がどんどん進みます。これはたしかに上級者向けです。気温がもう少し低けりゃなあ。
で、マイクロファイバーのクロスでふきとります。
リム面積の4分の1くらいずつやるのがよさげです。塗り始めがもうねばっとしはじめました。ゴムのりの渇きの比じゃありません。ちょっと待って!
どうにか一本目を終えましたが、はやばや25%の液剤を失います。床こぼし分が約15%です、ははは。このあと、48時間室内で乾燥させます。
使い果たす前に本番に行きましょう。
フォークをコーティング
はい、フロントフォークです。
形状からフレームがラスボスです。でも、こいつもディープリムみたいにフラットではありません。難易度が一気にはねあがります。
かんたんなビフォーアフターです。
光の当て方と見る角度は影響しますけど、てかりとつやはきちっと出ます。そして、作業後にじっくり見ると、けっこうな数の塗りそこないやぬりむらを発見できます、あちゃー!
フレームコーティングはむずい!
フレームのぬりはたいへんです。持ちどころがない。固定スタンドやバイスでBBあたりをつかんでぐるぐる回りながら塗るのがけんめいでしょう。
ぼくは釣り竿に通して、ドネルケバブかあんこうの吊るし切りみたいに上から下へ受け流しました。
むずい! むずいよ! 四角いスポンジはこのチューブ形状には合いません。絵画用の平筆とか刷毛のがよさげです。抜け毛がすこし心配ですが。
そして、ざくっと全体をやったら、コーティング剤を使い果たしました。二度塗りはむりです、ちーん。序盤のこぼし分がひびいた・・・
ギャー!
コーティングの重量増加は?
数値だけをざっとあげましょう。
フレーム 880g→885g
ホイール 810g→820g
フォーク 385g→ほぼおなじ
そんなものです。ホイールの10gが気がかりです。ぶあつく塗りすぎたか?
自分でガラスコーティングの結論
今回、意図的にハード系コーティング剤を使いましたが、取り扱いにまあまあ苦戦しました。とにかく余裕がありません。やり直しがきかない。
さらに自転車のフレームのチューブ型形状がむずかしさに油をそそぎます。てか、DIYコーティング的最高クラスの難易度でしょう。こまかいところがむりゲーです。
ディープリムはかんたんでした。
以上のことから自転車フレームの形状にはソフトタイプのAQUADROP GLASS COAT PREMIUMがおすすめです。ハードより安価ですし。
これで上からワックス系のコートをかけて、艶出しすれば、てろてろのグロッシーにできます。