MTBやオールロードのスタンダードなタイヤのシステムはチューブレスorチューブブレスレディです。
標準はラテックスシーラント
チューブレスレディ、チューブレスイージーのおともがこの白い液、シーラントです。上のものはチューブレスレディの特許の大半をかかえるSTANS NOTUBEのタイヤシーラントです。
この液剤の白色はLATEXです、天然ゴム。ゴムの木の皮を刃物でそいで、樹液をぽたぽた集めます。
カエデの木の汁がメープルシロップに、ウルシの木の汁が漆になるように、ゴムの木の汁はラテックスになります。植物由来。ラテックス系シーラントのなまぐささはこのためです。
このゴムの木の樹液、天然ゴム、ラテックスは空気に触れると固まり始めます。樹液=血液です。表面が固まって、貴重なエキスの流出をふせぎます。
で、この性質の通りにラテックス入りシーラントは乾燥すると固まり始めます。
ゴムのタイヤやチューブの密封性は完ぺきではありません。コンパウンドのすきまから空気や水気が徐々に抜けます。ゴム風船が勝手にしぼむように。
で、シーラントがからからに乾くと、このようなホムンクルスもどきがタイヤやチューブのなかに誕生します。
MTB乗りはいちいちタイヤを外しません。ホイールを振って、ちゃぷちゃぷ音で判断します。チューブレスあるあるです、ははは。
FINISH LINEがシーラントへ参入
チューブレスタイヤの普及と拡大で関連アイテムが広がります。元祖のSTANS、有力タイヤブランドが先行する市場に大手ケミカル屋が満を持して参戦します。
はい、FINISH LINEです。スポーツ自転車屋の店頭のケミカルコーナーの常連選手です。アクセサリのTOPEAK、工具のパークツール、ケミカルのFINISH LINEはチャリショップの風物詩です。
うぶな自転車乗りは店員のおすすめに従って、たいていドライテフロンを買ってしまいます。
で、後日にキャップの独特な開け方にとまどって、しばらくおろおろします。FINISH LINEあるあるです。
非ラテックスのカーボンケブラー
ルブとオイルの実績からFINISH LINEのシーラントには過剰な期待がかかりました。
しかも、カーボンケブラーで”NEVER DRY”をうたいます。ラテックス系と真っ向勝負をいどみます。打倒STANS!
FINISH LINEはアメリカの大手化学屋のデュポン社と蜜月です。ナイロン、テフロン、ケブラーみたいなものはここの開発技術です。
で、このシーラントにはそのデュポン社のケブラーがふんだんにおしみなくちりばめられます。
左がFINISH LINEです。くろいツブツブがじまんのケブラーです。チョコチップやすりゴマや皮付きとろろ芋じゃありません。無臭です。右はSTANSのやつです。なまぐささがツンと来ます。
“NEVER DRIES”『絶対に乾かない』て言葉をたしかめるためにこの状態で経過を見ましょう。窓辺に配置します。
海外では酷評
でも、このFINISH LINEの海外の評価はすでに確定です。返品レベ、ゴミ、タイトル詐欺、商品未満などなどのCONSな表現が飛び交います。
アメリカのamazon.comの評価は星2.7、MTB系サイトのレビューの点数は2/10です。やっちまったなあ!
圧倒的な低評価のせいで初期ロットのキャッチコピーか説明かが黒歴史化して不採用になったとか・・・海外の販売から日本の販売までのへんなラグはそのせいだあ?
購入者のあいだでは「ラテックスシーラントでさきにタイヤを強化すれば、このFINISH LINEのシーラントをそこそこ使えます!」みたいな本末転倒が結論が出ました、ははは。
じゃあ、なんで買ったし・・・ウエパーの店頭にものがあったから、つい・・・
量多し、コスパ悪し
FINISH LINEのシーラントのだめなところはそれだけにとどまりません。
ウエパーの店頭価格でSTANSは32オンス=944gで約3000円です。FINISH LINEは120mlで約900円です。
で、FINISH LINEのシーラントのメーカー推奨の投入量はロードタイヤで60ml、MTBタイヤで120mlです。一本で足らん!
STANSの投入量の目安はロードタイヤで30ml、2インチで60ml、プラスタイヤで100mlです。ぼくはケチって3インチのセミファットに50mlしか入れませんが、とくに不便を感じません。
FINISH LINEの投入量はSTANSの倍です。足回りがおもくなります。ロードタイヤの60mlは許容の範囲から外れます。軽量チューブより重量級ですし。
以上のことからFINISH LINEのカーボンケブラーシーラントがラテックスシーラントにあきらかに勝るのは洗いやすさと匂いのなさばかりです。それから、CO2ボンベがOKです。
シーラントの腕試し
とはいえ、実際に使ってみんことにはなんともゆえません。FINISH LINEのシーラントをチューブレスタイヤに投入しましょう。
実験台は一年半の長きにわたりぼくの足元を支え続けるセミファットタイヤWTB RANGER 3.0です。ラテックスがへばりつきます。
見た目はあれですが、コーティング効果は絶大です。素の状態より気密性は上だ。これをはがすのは逆効果でナンセンスです。このまま使いましょう。
パンクは塞がるか?
ビード上げは問題なしです。積年のラテックスの層が強力ですし。新品のピュアクリンチャーのチューブレス化はどうでしょうねー?
で、わざわざ押しピンをタイヤサイドにぶすって刺します。ぶすぶすぶすっと。
で、タイヤをふりふりします。
ふむ、ふつうにシーラントが出てきました。空気のもれはとくにありません。予想がいい方向に裏切られました。
気をよくして、10個ほど追加の穴を開けて、シェイクシェイクします。
はい、ふつうに塞がりました。しばらく放置して、減圧を見ます・・・とくに感じられません。
てことで、このFINISH LINEのシーラントのファーストインプレッションはまあまあです。
でも、投入量の目安と割高さはネックですね。STANSやラテックス系の牙城を崩すには至らない。
3週間がたちました。
ここまで粘り気が出ると、流動性がなくなります。
「ラテックスシーラントのべたべたがいやだ!」て潔癖症のA型さんは小さい容量から試してみましょう。