【最新版】ワイヤレス電動変速機EDS OX 2.0のレビュー 機械式10速MTBに導入して互換性、使用感、調整方法を検証する

4.0

自転車のトレンドは逐一で変化します。以下はここ十年の主な潮流です。

  • フロントシングル
  • ロードバイクディスクブレーキ
  • eBike普及
  • インテグレーテッドデザイン
  • 内装、ワイヤレス

ワイヤー、ケーブル、ホース類を徹底的に失くす&隠すのが最近のトレンドです。見た目は非常にすっきりしますが、小物が専用化して、配線が地獄と化します。

内装用ヘッドカバー
内装用ヘッドカバー

古参の自転車道楽者の頭脳にはここで二つの可能性が浮かび上がります。

  1. 伝統と信頼の外装、フルアウターに回帰する
  2. ワイヤレス

ぼくは予算の関係で1しか選べませんが、たまたまメーカーより2のレビューの依頼を受けました。

EDS OXの外箱
EDS OXの外箱

はい、数年前から自転車界をざわつかせる格安ワイヤレス電動コンポのEDSシリーズです。何でSRAMのAXSシリーズとバッティングしないの?!

そういう大人の事情を考察勢にお任せするとして、ぼくは自転車オタク的な目線でこれをレビューしましょう。

ちなみに先方の依頼はレビュー動画の作成です。そちらはYouTubeのぼくのチャンネルにあります。この記事は補足とおまけと備忘録です。

格安電動無線コンポEDSシリーズ

このEDSはWheeltop社のワイヤレス電動変速シリーズの製品名です。EDSは”Electronic Derailleur System”の略称です。

製造販売元のWheeltopは1951年創業の古参の下請け系のメーカーです。台湾のTSMCみたいな感じでしょうか。

Wheeltopの小売り向けの商品はこのEDSシリーズのみです。アナログパーツのラインナップはありません。ぼくも知らない。基本的にB2Bがっつり工場系メーカーのようです。

実際、レビュー依頼はPR代理店経由で来ました。小売り向け販促部門が社内にないorそこにコストを割かないor日本向けの広報がいない=こつこつモノづくり系の推測が成立します。

といって、なぞの怪しい会社ではありません。EDSシリーズの国内販売代理店は埼玉の古参自転車有力企業のホダカです。元ジャイアント系だ。

とすると、WheeltopはGIANTのオリジナルレーベルの下請けの一つだあ? とか何とかの妄想が捗ると、パーツの開封の義が始まりません。はよ、開けろ。

あと、ホダカみたいな古参企業が代理店だと、新興ワイヤレス機器の小さな気掛かりである技適の心配がなくなります。無論、EDSシリーズは技適認証済みです。はよ!

はいはい、ぱかっとな。

EDSセットの中身
EDSセットの中身

MTB用のOX 2.0

今回のEDSのセットはMTB用のOX2.0です。2.0の数値の通りにEDS無線電動の第二世代、Ver2です。2025年の最新版だ。くしくもシマノの新型XTR9200系と同期となりました。

1.0から見た目がよりSRAMぽくなり、対応レシオが3-14速まで広がりました。まあ、ワイヤレス機器にはファームウェアのアップデートがより重要ですが。

で、現行のMTBの変速システムはほぼフロントシングルです。ディレイラーはリアのみ、フロント変速は完全に廃れました。

ゆえにEDS OXのセットもリアディレイラー、シフター、充電ケーブル、アダプターというシンプルな内容になります。

OX、TX、GeX

OXがMTB用、TXがロード用、GeXがグラベル用です・・・という、カテゴライズは現行の自転車トレンドではややミスマッチです。よりトレンディーに、正確にしましょう。

  • OX=フラットバー用
  • TX=ドロップハンドル用フロント変速あり
  • GeX=ドロップハンドル用リア変速のみ

OXをざっくり『MTB用』と狭義的に銘打ってしまうと、「折り畳みには使えないの?」とか「フラットバーロードには載せられんのけ?」というツッコミを食らいかねません

ゆえにオブジェクト指向でデバイスの意義を把握するのがベターです。EDS OXのより正確なコピーは『レバーなしのリア変速機とシフターの電動無線セット』です。

正味、2032ボタン電池で動くワイヤレスシフターは完全なリモコンです。自転車パーツ感があんまりしない。ハンドルに固定しなくても、ぽちぽちクリックでディレイラーを動かせます。

リモコン
リモコン

ぼくの検証では7m、壁二枚越しで電波は届きました。

レバーをどう評価するか?

他方、EDS TXとGeXはOXほどに汎用変速オブジェクトではありません。ドロップハンドル用のセットにはレバーが付きます。

Wheeltopは『ブレーキとシフターの組み合わせ、ブリフター!』という直球なネーミングでこれを売り出します。

EDS TXセット
EDS TXセット

結果、レバーとブレーキがワイヤレスシフターのおまけで強制的に付属します。「レバーとブレーキの抱き合わせかあ・・・」が正直な感想でしょう。

ぼくの主要各社のドロップハンドルのレバーの感想です。

  • シマノ=フロント変速は良い。ブレーキにシフト機能持たせるのは意味不明
  • SRAM=ダブルタップの機能性は良い。レバーは何かでかくて大味
  • カンパニョーロ=レバーの作りは最高。親指シフトは分かりやすいがちょいダサ

そもそも自転車のフロント変速の価値と意味がリアのワイドギア化で相対的に下がりました。おかげでフロントマルチのTXセットのコスパが見劣りします。

そして、サードパーティのドロップハンドル用レバーはこの3大メーカーに及びません。ぼくのお気に入りはカンパニョーロのレバーです。

カンパニョーロポテンザ
カンパニョーロポテンザ

TRPのレバーもカンパ似で、何かよさげです。さて、Wheeltopのブリフターがこれに並ぶか? 無理です。

他方、フラットハンドル用のブレーキレバー界にはMAGURA、HOPEみたいなクラフト系の猛者がいます。

がっつりストップ派はシマノやFormulaに流れ、じっくりコントロール派はMAGURAやHOPEを愛好します。オートバイ乗り兼MTB乗りにはマグラ使いが多いような・・・

このようにレバーとブレーキは人を選びます。さらに頻繁に手で触るレバーの感覚は重要です。でかいやつと安っぽいやつは個人的に嫌だ。

で、おそらくEDSのドロハンレバーは主要各社の製品に及びません。デザインも中間的なニュアンスで、特徴を欠きます。自転車好きはブリフターに引かれない。

この点、ワイヤレス電動を最小構成で導入できるOXはもっとも汎用で、非常におすすめです。こちらは乗って弄ってをアクティブにこなす自転車趣味人の心に刺さります。

EDSの価格、公式直販とホダカの定価

EDSシリーズの国内代理店はホダカです。2025年6月のOX2.0セットの定価が税込み8万ちょいです。

本家SRAM AXSの最安グレードのGX AXSは10万オーバーです。機能差はほぼありません。2万の差をどこに見出すかが問題です。

シマノのMTBコンポDi2は電動ですが、無線ではありません。セミワイヤレスでもない。二世代前の完全有線です。現行世代のマウンテンバイク変速には電動の新作が出なかった。

ただし、つい先日の発表で2025年新型XTR9200シリーズがおひろめされました。事前のリークの通りにワイヤレスです。クランクが一昔前のSRAM XX1ぽくなった?

シマノXTRは最上位グレードですから、お値段は10万アンダーにはなりえません。機械式の変速最小セットが8万くらいです。倍で15万円?

Wheeltopの公式の通販ではOXの価格は2025年6月現在で456ドルです。送料、輸入消費税別途で。とすると、最終支払いは7万円ちょいくらいでしょうか。

公式から3%オフの招待コードを貰いました。↓に添付します。

WHEETOP公式通販用3%割引コード

EDS OXの性能と機能

EDSの詳細なスペックは公式ページにあります。しかし、表記の数値は直感的に分からない。

電動コンポの重量

で、実測します。

EDS OX重量
EDS OX重量

412gです。バッテリーとモーターで重さがどーんと増加します。

こちらはMTB変速機の歴史で最軽量クラスの10s用SRAM XX1 GSです。

SRAM XX1重量
SRAM XX1重量

なんと180g、反則級の軽さです。強度を削って、軽量化に全振りしたモデルです。クロカンレース用? ぼくは里山トレイルに使わず、街乗りに使います。

一方、シフターの重量は以下のようになりました。

  • EDS OXシフター 69g 電池入り
  • SRAM XX1シフター 100g インナーケーブル込み

EDSシフターの軽さが際立ちます。

セットの重量の比較です。

機械式と電動の重量差
機械式と電動の重量差

ちょうど180gの差が出ました。で、ディレーラーがより重くなります。つまり、比重が後ろ側による。

軽量フレームではこれが影響しかねませんが、うちのフレームは2.4kgのハードテイルと4kgのフルサスです。相対的に比重の偏りの影響は薄くなります。

前にトレイルで会ったクロスカントリーのベテランライダーさんは「機械式のが軽くて良い」と仰いました。

その人は薄手のソフトグリップを細いワイヤーで止める本気勢の方ですが。ロックオングリップを使わないのはガチの証です。

無論、レース用や競技用にはSRAM XX1 T-TYPEやXTR9200があります。XX1 Eagle AXSセットは264110円ですよ、奥さん。

EDS OXの位置づけは『ワイヤレス電動を手軽に楽しむセット』です。

機能と互換

最新版のEDS OXの対応レシオは3-14速です。最近のファームウェアのアップデートでアプリの設定もそうなりました。

変速調整
変速調整

3速? 14速?

3速はママチャリの内装3速でなく、DAHON K3とかの外装3速です。しかし、あれのギアとチェーンは9速用です。

4、5速はぼくの知識では不明です。6、7、8速はシティサイクルやクロスバイクのギアですね。9-11はちょいレトロな構成です。うちのは10速と9速パーツの6速カスタムです。

13速は中華やカンパニョーロに既製品があります。

14速の実機はこれまた不明です。ドイツのローロフ社の内装ハブが14速ですが。

そして、15速以上にはギアの歯とチェーンが細くなりすぎるという構造的な弱点があります。

ゆえに大手は変速数のアップを意図的に遅らせます。SRAMとシマノは12速どまりです。14速化は10年後? 15年後?

実際問題、12速で困る場面はほぼありません。むしろ、変速調整とチェーンの強度で困る場面が多くなります。前に買った中華13速ディレイラーのインデックス調整は大変だった。

中華13速リアディレイラー
中華13速リアディレイラー

とにかく、EDSはニッチな3速から未来の14速までカバーします。

基本は12速

EDS OXの出荷状態は12速用です。シフターとディレイラーはペアリング済みです。最初に付属の充電ケーブルをメカに差して、スリープを解除します。

スリープ解除
スリープ解除

これでシフターをかちかちすると、アームをぎこぎこ動かせます。ちなみにバッテリーは内蔵型です。

で、初期状態は12速です。MTBでは2016年ごろから12速がスタンダードですが、ロードもこの3年くらいでほぼ12速化しました。TXとGeXの初期もおそらく12速セッティングです。

ワイヤレスの神髄

では、取り付けましょう。重量比較のためにSRAM XX1を取り外した街乗り用MTBのエンドがそこにありました。何とがら空きなディレーラーハンガーでしょうか。

10速スプロケに12速ワイヤレス電動
10速スプロケに12速ワイヤレス電動

スプロケットはSRAM PG 1050の10速用です。ローギアが34Tで、フロントシングル構成ではややクロスレシオです。フロントダブル時代の歯数構成ですね。

配線、ケーブルハウジングは完全外装フルアウターです。内装よりメンテナンス性は上です。ケーブルの切り過ぎにさえ注意すれば、そうそう事故りません。

さて、ワイヤレス電動の真価です。

取り付け完了
取り付け完了

あーら、見た目がすっきりしました。ディレイラー取り付けは10秒、チェーンの取り回しは1分です。配線の手間暇が完全に失せました。サイコー!

ケーブルの内装化はメンテナンスの泣き所ですが、難所はそればかりではありません。

  • ケーブルの長さが合わない
  • エンドキャップが足りない
  • インナー伸び
  • 外皮縮み
  • シフターからインナーが出てこない
  • ワイヤーとディレイラ―の固定箇所が分からん

個人的にSRAMのシャドータイプのインナーケーブルの取り回しが苦手です。このガイドの回り込みでいつも苦戦する。

シフトケーブルの固定のややこしさ
シフトケーブルの固定のややこしさ

インナーケーブルの交換もめんどうです。

さきにインナーケーブルを抜く
さきにインナーケーブルを抜く

この作業が根本的に消え去りました。もうペンチでシフトケーブルをぐいぐい引っ張らずに済みます。初期伸び取り? ケーブル断面のほつれ? シマノタイマー? なにそれ? 

シフトケーブルの配線と張りは変速性能に直結しますし、通常の使用でけっこう変動します。駆動パーツがザ・鉄の紐ですから。牧歌的システム。弦楽器的。

むしろ、ワイヤレス電動こそがインデックス型とマッチします。クリックで一定の動作が保証される。ピアノ的。

これは気のせいではありません。機械式より動作の遊びの部分が少ないです。きびきび、カチカチとダイレクトに動きます。

初期設定に時間をかける

反対の理屈でレバーをちょい強めに引いて、変速調整の甘さを補うみたいな塩梅さじ加減は無理になります。クリックを強くしても、強パンチを出せません。龍虎の拳じゃない。

あ、長押しは連続変速になります。連打よりちょい遅めですが。

ということで、ワイヤレス電動では最初の変速調整が機械式より重要です。10速と12速を大まかに決めて、アプリから0.2mm単位で個別インデックスを調整します。

正味、ここの手間はおんなじです。アジャスタボルトや調整ネジでやるか、Wheeltopのアプリでやるかの差に過ぎません。機械とギアの歯を見ながら現物合わせでちまちまやるのは変わらない。

スマホで変速調整
スマホで変速調整

つまり、メリット・デメリットの項目は

  • 配線の手間=減少、ほぼゼロ
  • 互換性=向上、既存変速ほぼカバー
  • 性能=やや向上、悪くない
  • 重量=増加
  • 変速調整の手間=イーブン

のようになります。

10速チェーンvsナローワイドプーリー

さて、フレームへの取り付けではワイヤレスの真価を発揮したこのEDS OXでしたが、直後にうちの10速環境のMTBとバッティングしました。

チェーンがテンションプーリーで詰まります。クランクが止まる。繋ぎなおしたINTREPIDの10速チェーンがおイタをしたかに見えましたが、問題はプーリー側にありました。

EDS OX 2.0 SGSの下側のテンションプーリーはスラム系のナローワイドタイプです。これは11速以上推奨です。

この厚みと形状が10速チェーンと微妙に噛み合いません。ナローワイドのワイドの歯の部分がチェーンに引っ掛かります。

結果的にSRAM XX1の10速用プーリーを導入したら、この不具合を解消できました。なら、オイル切れやチェーンの繋ぎ直しの精度の問題じゃないなあ。

プーリー交換

しかも、この10速プーリーはKCNCのカスタムプーリーです。やっぱり、この初期のテンションプーリーのワイド部分が10速チェーンには厚過ぎるのか?

そういえば、SRAMの純正の12速ナローワイドのプーリーも9速チェーンとバッティングしたような記憶がうっすら出てきました。

上記の中華13速のテンションプーリーはノーマルで、こっちはバッティングしなかったかな?

互換性の記憶は曖昧ですが、ぼくの環境ではこのEDS OXのナローワイドのテンションプーリーと10速チェーンでは顕著な詰まりが発生しました。

まあ、9速、10速MTBがもうマイナーですが。ギアの12速化がかれこれ10年目ですしねえ。

とにかく、EDS OXを11速、12速以外の自転車環境に導入するときにはこの点を留意してください。

EDS OX ワイレス電動変速機のまとめ

今回のレビュー依頼には特定のプロモーションの指示はありません。以下の項目や得点はぼくの正直な感想です。

  • 価格 4 変速機としてはやや高め。ワイヤレス電動コンポとしては最安。
  • 機能 4 3-14速までカバー。内装、配線、さようなら
  • 性能 3 変速はきびきび。重量はどっしり
  • 見た目 3 本体はSRAM似。アームとボルトがややチープ
  • ブランド 2 国内知名度はないが、ホダカが代理店なので
  • 総合評価 4 OXの最小セットで。レバーとブレーキが付くTXやGeXは少し落ちる

EDSシリーズにおすすめな人

  • 走るのにも弄るのにも積極的な自転車好き
  • 自走MTBホビーライダー
  • フレーム内装、ケーブルハウジングに懲り懲りした人
  • 複数台所持者、クロスオーバー主義者
  • パーツマニア

おすすめじゃない人は以下の通りです。

  • レーサー、プロ、競技系
  • ライドオンリー勢
  • ドロハンのチャリしかない
  • 軽量化主義者
  • レトロバイクの愛好家(デザインが全く合わない)
EDS OX PAGE
EDS OX PAGE

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