本格スポーツ自転車は競技用機材です。パフォーマンスを高めるために特殊なペダルを搭載します。クリップレスペダル、ビンディングペダルです。
これはオフロードで人気のCrankbrothers Candy 3です。

専用シューズの靴底にクリートてゆう金具を付けて、このペダルの中央の固定機構にカチャッてはめます、こんなふうに。

お察しのように自転車ビンディングのオリジンはウィンタースポーツのビンディングです。現行の自転車ビンディングシステムの本家のフランスのLOOK社はもともとスキー屋さんです。
特徴的な見た目とこのカチャ音が一般人の心の奥のスポーツマンシップをくすぐります。実際、形から入る人には最高のグッズです。
しかし、用途に合わない専用品は汎用品に及びません。街乗り、ちょい乗り、ポタリング、ツーリングではビンディングペダルの効果は半減です。100%の機能が出ない。
立ちごけ、ポイントの固定、着脱のわずらわしさ、シューズのワイズ展開の少なさ、デザイン、初期費用などのデメリットが浮き彫りになります。
ぼくはビンディングのよしあしを踏まえて、フラットペダルの気軽さにほれなおします。これが性格、用途、自転車スタイルに合います。相性は大事です。
で、フラットペダルをこよなく愛するぼくがフラットペダルで速く走るためのコツやテクニックを伝授しましょう。
フラットペダルで速く走るコツ
フラットペダルはオールラウンダーです。ママチャリ、軽快車、クロスバイク、MTB、トリックバイクがフラペダを搭載します。
オフロードのトップレーサーの一部はフラペを使います。Nukeproofを駆るENDURO世界チャンピオンのサム・ヒルはフラペダラーです。
そもそもそんなに遅くない
気軽さ=初心者向け、の構図はしばしば誤解を招きます。そもそもフラットペダルはそんなに遅くありません。
オフロードの選手がビンディングを使うのはおもに激しい下りのときにペダルを踏み外さないためです。スピードは副産物です。
ロード乗りがビンディングを使うのは上りを楽にするためとロングライドの効率を上げるためです。1km/1時間は10km/10時間になります。同じ時間で遠くへ行けます。
- ビンディング≠出力を上げる
- ビンディング=出力の取りこぼしを防ぐ
です。一瞬の出力、最高速度はライダーの身体と自転車の性能にかかります。遅い人がビンディングを使っても、フラペダ上手のチャリダーには勝てません。
体感的に速さの順位は、
ぼんやりフラペダ < ぼんやりビンディング < しっかりフラペダ <しっかりビンディング
になります。
舗装路のフラットなゆるい風速のコンディションではそんなに決定的な差は出ません。
向かい風、上りではビンディングが有利です。これは歴然です。わりとざつにガシガシ漕いでも、腿の裏と表の筋肉パワーでグイグイ進みます。

が、こんな超激坂で途中下車してしまうと、再発進に苦労します。そして、ロード用ビンディングシューズでハイキングすると、むき出しのクリートをめっきり痛めてしまう。
玉当たりを調整する
当然のように小売りのペダルは未調整です。耐久性と安全度のためにねじ類はきっちり、グリスはどっぷりです。
ついでにものが長期在庫品であれば、必然的になかのオイルやグリスが古びます。「セール品買った!→サビ見っけた!」のざんねんコンボは特価品あるあるです。
六角ナット用の工具を用意できるなら、玉当たりを調節しましょう。ギチギチとガバガバの間のベストあんばいを手探りで。

こんな安物のカップアンドコーンのペダルはなおさらです。要メンテです。
バラせるなら、定期的にクリーニングしましょう。

定期メンテはスピードアップと致命的な固着の防止に効果的です。チタンシャフトはさびませんけど、クロモリシャフトはごりごりにさびます。
軽いペダルを使う
回転体の軽量化はそのほかのパーツより効果的です。しかも、ペダルはクランク軸の延長の外周にあたります。これの重量はまあまあ大です。
これはうちの超軽量フラットペダルです。シャフトはチタン、プラットフォームはマグネシウムです。台湾AEST製です。

ペア重量は170-175gです。ふつうのフラットペダルの半分です。踏み面はやや小さくなります。ハードなオフロードやトリック練習には不向きです。

WellgoのCNCペダルが街乗りにはおすすめです。
でかいペダルを使う
ペダル交換のもうひとつの方向性がサイズアップです。でかい幅広のペダルを使うことだ。

ポイントはペダリング、ペダルの踏み方です。つま先立ち気味に点で踏む人には小さいペダルが有効です。反対にべたっと足裏で踏む人にはでかいペダルがおすすめです。
ぼくみたいに幅広、べた足、スニーカー履き、立ちこぎ多用者にはワイドペダルのが楽です。体重を全乗っけしてのダンシングが容易になります。
欠点は重量増です。上の樹脂製のTIOGAのは良品です。
質感と軽さを求めると、万円台になっちゃいます。5万のクロスバイクに1万のペダルはいかがなものでしょうか?
薄着、ピチT
気軽なフラペダライダーは普段着でライドに出かけます。ジャンパー、ジーパン、キャップ、サンダルで100kmは朝飯前です。
が、速度アップにこれはタブーです。空気抵抗は自転車の大敵です。だぼだぼジーパンやざっくりジャンパーはバタバタバタ!てはためきます。
河川敷のサイクルロードはふきさらしです。追い風は背中を押しますし、向かい風は分厚い壁のごとく行く手に立ちはだかります。

冬場には上着を少し減らして、夏場にはピチTやピチパンを着ましょう。
ジーパン派は裾をひもやゴムで絞りましょう。じみに効果があります。
引き足を使わない
ペダリングの基本は共通です。効率を高めて、ロスを減らす。ビンディングの引き足は出力の取りこぼしを防ぐのに大いに貢献します。
フラットペダルで引き足を使うのはむりです。
片足でペダリングすると理解できます。アナログ時計の10-12時のところがすぽっと抜けます。これはふつうです。
ここにへんな力を入れると、全体の動きの統一性を欠きます。結果、ペダリングがぐちゃぐちゃになります。
「引き足を使うぞ!」てりきみや意識は逆効果です。逆にリラックスして、余分な力を抜きます。
引き足×
抜き足〇
です。実質、クランクの3時以降の回転はフォロースルーです。余韻にすぎません。パワーのピークは1、2、3時の昼下がりです。
『甘噛み』て言葉が日本語にあります。いわば、3時以降の踏みは『甘踏み』です。へんなりきみは逆足のピークのトルクの足かせになります。
『引き足』てスラングがなかなかの罪です。引く=綱引き=わっしょいわっしょい! です、ほんまに。
初心者が聞きかじりで直観的にやると、かくじつにりきみます。『抜き足』のニュアンスのが正解です。薄氷を踏むようにね。
硬いソールを使う
ビンディングペダルはシューズを選びます。ペダルのビンディングに合致するタイプの金具付きのシューズしか受け付けません。

一方のフラットペダルはフランクです。革靴、サンダル、スニーカー、ブーツ、パンプス、どんと来い!
夏場のサンダルチャリダーは気軽で爽快です。ぼくのベストお気にスタイルです。おかげでソールがすごい勢いで痛みます。

ビンディングシューズの靴底はハードです。ロード用のソールはスパイクシューズみたいにかっちかちです。安価なものは樹脂、高級品はカーボンです。
ランニングであれ、自転車であれ、基本的に硬いソールは高反発で高速用です。ペダリングの踏み踏みパワーをよりダイレクトにペダルに伝道します。
反面、足裏足首の疲れは溜まります。休憩を多くとる、マッサージをする、踏み方を変える、インソールを工夫する、みたいなところで緩和します。
逆にふにゃふにゃの柔らかすぎのシューズを使っても、へんに疲れちゃいます。パワーが逃げる、てか、靴がぐにゃぐにゃ歪む。これは立ちこぎであきらかです。
革靴やレザーブーツのソールはかちかちですけど、フラットなやつはつるつる滑ります。そして、何かの拍子にオイル汚れが付くと、しみができます。ノーセンキュー。
高反発のランニングシューズが最速候補です。はたまた、スペシャライズド2FOやFIVETENみたいなフラットペダル専用のサイクリングシューズを買うか。
これらはアメリカンサイズです。甲高幅広さんには向きません。足幅4Eのぼくはスポーツシューズ難民です、うえーん。
この件をスポーツデポでアレコレ物色して、めぼしいやつを見つけました。NIKEのSPEED RIVALです。
ソールの六角パターンとコンパウンドの硬さが理想的です。しかも、軽量で通気性です。ピン付きフラットペダルに最高でしょう。
4Eがあればな~、はあ~。