シクロクロス 走る、曲がる、停まる、そして『担ぐ』レーシングバイク

Cyclocross、シクロクロス、シクロ、CXはオフロード周回レースです。レーサーたちの冬場のトレーニングが発祥とされます。

シクロの公式レースはロードの公式レース並みの歴史を持ちます。記録上のファーストレースは1902年です。伝統の100年競技です。

ちなみにそっくりなXCはクロスカントリーの略称で、MTBの競技の一種です。当然、こっちはMTBの誕生後の新しい競技です。初の世界選手権は1990年、オリンピックは1996年です。

また、シクロはMTBの祖先的なポジションにあります。この亜種ロードがヨーロッパからアメリカに渡って、ゲイリー・フィッシャーとかトム・リッチーとかの手でアメリカナイズされて、MTBになりました。

ベネルクスで盛ん

ロードの3大レースはツールドフランス、ジロデイタリア、ブエルタエスパーニャです。仏伊西です。いずれがカトリックのラテン系です。

イギリスやドイツの大会がないのは意外です。この両国はプロテスタントのゲルマン、サクソン系です。代表選手はフルーム、キッテルです。イギリスはトライアスロン、トラック競技で無敵です。

で、シクロクロスの主要な大会はUCIの世界選手権です。MTBのダウンヒルやフリーライドみたいに大型スポンサー付きのレースや大会はレアです。世界選手権が有力選手の主戦場です。

ホットエリアはベネルクス地方です。なかの『ベ』と『ネ』がとくに強力です。ベはベルギー、ネはネーデルラント、すなわちオランダです。

2017年シクロクロスの世界選手権の結果がUCIの公式ページにあります。ポイント1位はベルギーの5000、2位はオランダの4000、3位のドイツが2000です。

1位と2位が3位のダブルスコアです。実質、シクロクロスはこの二国の争いです。個人成績の表にはVan Aert、Van del Poel、Van KesselなどなどのVan姓が目立ちます。

Vanはベルギー、オランダではおなじみの名前です。マルコ・ファンバステン、フィンセント・ファン・ゴッホ、ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ドリス・ヴァン・ノッテンなどなど、ファンとヴァンが混在しますが、元の字は”Van”です。

そして、個人ベスト10のうちの6名がベルギー人です。オランダ2、ドイツ1、USA1です。トップ20以内でもこの傾向は変わりません。ベルギーの独壇場です。

そして、ベルギーの国技はまんまの『自転車』です。有力ブランドはRidleyとEDDY MERCKXです。そして、オランダは世界屈指の自転車フレンドリー国です。

どのブランドのシクロクロスが人気?

じゃあ、シクロのトップ選手のバイクはリドレーやエディメルのシクロだな! て単純なはなしにはなりません。

現代のロードバイクの二強はすぐに分かります。ピナレロとスペシャライズドです。人気と実績のピナレロ、性能と総合力のスペシャライズドです。この2社がロード会を引っ張ります。

とくにピナレロはツールの3連覇とLVMH県連企業入りで空前のブランド力をほこります。フラッグシップのドグマはヴィトンのモノグラムみたいなステイタスを持ちます。名前で勝てる。

かようにロードバイクはブランド的な価値を持ちますが、シクロクロスはちょっと違います。競技の性質上、チーム色より個人色が強くなり、バイクよりライダーが優先になります。

現在1位のWout Van Aertはコルナゴのバイクに乗ります。2位の最注目の若手Mathieu Van Del PoelはStevensに乗ります。Stevensはドイツの自転車ブランドです。

ちょっと前のシクロ界のレジェンド鉄人スヴェン・ネイスのバイクはコルナゴやFELTです。

やっぱし、バイク < ライダーです。世界チャンピオンのバイクが一気にバカ売れ! みたいな現象は期待薄です。

担ぐシクロ、担がないグラベル

シクロとグラベル・アドベンチャー、この二つのバイクは良く似ます。ドロハン、ハードテイル、ディスクブレーキ、スルーアクスル、チューブレスタイヤです。

SALSA カーボングラベル
SALSA カーボングラベル

が、シクロクロスは競技ですが、グラベルバイクはスタイルです。レースとホビー、根幹が違います。

シクロの公式レースではレギュレーションがあります。選手登録、車体検査、そのほかもろもろが付きまといます。競技です。

グラベルはスタイルです。おあそび、ホビー、アクティビティです。公式レース的ものはありません。じゃあ、必然的に委員会や選手登録はありません。

じゃあ、各社が好き勝手に新モデルをぞくぞく作ります。Specialized Divergeはステム内蔵ショックやドロッパーポストを搭載しますし、WTBはロードプラスタイヤを提唱します。

ついでにすこし前までさかんだった『シクロにディスクブレーキ不要論』は新世代の台頭ですっかり鳴りを潜めました。

機能面での違いはシクロ独特の担ぎの有無です。シクロレース内での『担ぎ』はプレーの一環です。走る、曲がる、ブレーキする、担ぐ、全部が重要です。

グラベルやアドベンチャーバイクでは担ぐはそんなに重要ではありません。プレーじゃない。そもそもレースじゃないし。

商品名の目印は”CX”です。