自転車は消耗品です。走ればへたれます。ママチャリもロードもMTBも実用車も例外じゃありません。
そして、ロードやMTBみたいなスポーツバイクは競技用機材です、専門用品。価格がママチャリの数十倍であっても、寿命はイーブンかそれ以下です。
むしろ、車体のフレッシュな期間、おいしい時期、旬は実用車や軽快車より短命です。一台をがりがりにヘビロテすると、日進月歩で劣化を引き起こします。
プロ選手は1シーズンにつぎつぎ乗り換えて、つねにフレッシュなバイクを使います。サッカー選手はシューズやスパイクを1-3か月で履き替えます。
元チェルシーFCのジョン・テリーは試合前の練習で1足、前半で1足、後半で1足てクレイジーな履き方をします。もちろん、使用は一回きりです。
本番勝負の機材の消耗は練習の比じゃありません。一試合一試合が真剣です。サラリーがかかりますから。あと、汚いシューズやバイクでセレモニーや取材をするのは営業的にかんばしくない。
一般人はこんなことをできません。一台の自転車、ひとつのパーツをなるべく長くだいじに使うのが理想的です。
フレーム、ホイール、ブレーキ、ワイヤー、チェーン、スプロケ、ベアリング・・・いずれが消耗品です。『一生モノ』はキャッチコピーでしかありません。
自転車の寿命の目安を特集しましょう。
パーツの寿命と交換時期の目安
スポーツ用品の負荷は日常品のそれより多大です。ママチャリやシティチャリはノーメンテでながなが生き永らえますが、月間1000kmを走るとか、崖を下るとかしません。
また、もともとの走行性能が下の下ですから、劣化の具合がぼんやり紛れてしまいます。走る、止まる、曲がるがOKであれば、そこそこの消耗はスルーされます。
さびさびのゆるゆるチェーンはご愛敬です。
むしろ、ピカピカのチェーンがレアです、ははは。外置き、野ざらし自転車の宿命です。
ヘビロテ、兼用は短命のもと
で、ロードやMTBはスポーツ用品です。サンダルやつっかけじゃありません。専用のスパイクやシューズです。一回一回の負荷は日常品の数倍です。
単純計算で100kmのサイクリングに出かけると、10kmチャリ通十日分、3kmちょい乗り一月分の負荷を一日で食らいます。
そのうえ、シューズと同じく一台のチャリの連日連夜のヘビロテはダメージ蓄積のもとです。長持ちのコツは履きまわし、乗り回しです。
トレーニング、レース、サイクリング、イベント、普段使いの兼用はかくじつにバイクの寿命を縮めます。
運用の観点では50万円のバイクx1台より25万円のバイクx2台のが上等です。フレッシュなおいしい状態を長く味わえます。
高い品を長く使うか、そこそこの品を早めに回すか・・・満足度、予算、用途、ライダーの性格によります。
荒っぽく使うぼくみたいなO型さんには2台持ちor高回転のが結果的に合理的です。高いバイクも安いママチャリも同様の速度でヘタれます。性格的に最初だけしかていねいに扱えない。
はかなき回りもの
パーツの寿命には格差があります。全般的に回転系、駆動系の回りものは短命です。それから、安い鉄パーツは速攻でさびます。
チェーン
はかない回りものの代表がチェーンです。回りもの、多ピース、むき出し、鉄製の四重苦を抱えます。11速や12速用のチェーンはさらに細身です。
11速チェーンの寿命は約5000kmです。3000km前後からへたりと伸びが出て、性能が落ちます。
これは6000kmを走ったKMC DLCチェーンです。走行中にばつんと行きました。
帰宅後、中空ピンを再圧入しようとしますが、かんたんにパキポキて破壊できます。ピンがガラスみたいにもろもろです。お役御免です。
15000円のチェーンの寿命も5000円のチェーンとおんなじです。
スプロケットやチェーンリング
チェーンとスプロケやリングは削り削られの関係性を持ちます。自転車はこれらのドライブトレインをシャリシャリ削りながら走ります。
カセットやリングの寿命は1万kmから2万kmです。目視で歯先をチェックします。うえのリングはまだまだ健在です。
チェーンがうまくかみ合わない『歯跳び』も交換の目安です。一定のギアばかりを使うと、部分的にそこだけをやっちゃいます。ぼくは2速3速ばっかり使ってしまいます。
前3段のクロスバイクのフロントは真ん中のミドルリングから真っ先に痛みます。アウターとインナーより使用頻度が段違いですから。
タイヤ
チェーン、リング、カセットを削るのはそれぞれの歯です。一方、タイヤは路面や地面でがりがり削られます。
ロード系の細軽タイヤの寿命の目安は3000-5000kmです。おいしい期間の短さはチェーンと並びます。
運用が車体x1、ホイールセットx1、タイヤセットx1であれば、タイヤとチェーンの交換の目安はかんたんです。ホイール入れ替え、タイヤ履き替えしちゃうと、時期を逸します。
消耗の仕方は前輪 < 後輪です。体重は後ろ側にかかりますし、急ブレーキでリアがロックすると、そこのトレッドが一気に削れます。ブロックタイヤではけんちょに出ます。
重量はかるくなりますが、グリップはちょろくなります。前後を入れ替えるか、タイヤを交換しましょう。ぼくは前輪にヘタレタイヤを使うことには懐疑的ですから、新調派です
見落としがちなプーリーさん
回転系の小さい黒子役はよくすっぽかされます。そう、リア変速機のプーリーです。これもりっぱな回り物の一員です。
しかし、テンションがそんなにかかりません。走行の摩耗は少なめです。それ以外のトラブルでの損傷のが多数です。
これはガイドプーリーです。
はい、はでにジャムりました。なんかの拍子でスプロケに巻き込んで、がりがりやっちゃいました、うへ。
下側のテンションプーリーは障害物や段差にヒットして、しばしば破損します。ハンガー、ケージ、プーリーはなかなか神経質です。
ごりごりベアリング
回りものの陰にベアリングがあります。カートリッジ式のシールドベアリングとカップアンドコーンのむき出しベアリング、ばら、リテーナー一体型が混在します。
いずれの寿命の目安がゴリゴリゴリラです。ぬるぬる感、するする感がなくなって、ゴリゴリ、がたがたが出始めると、そのベアリングは黄信号です。
基本的にシールドベアリングはメンテフリーです。ベアリングシールの開封メンテや鋼球の交換は非推奨です。全とっかえが正解です。
カップアンドコーンの目印はボールやカップの虫食いです。
こういうチッピングが交換の合図です。虫歯みたいにここからもろもろ崩れます。
はっきりしない土台系
回りもののヘタリははっきり出ます。反対に土台系パーツのフレームやフォークの寿命はしろうと目には判然としません。
フレーム
高級素材のカーボンフレームはわりとかんたんです。ひびわれ、クラックが寿命の目安です。
こんなふうなクラックが入ると、そのフレームは問答無用でJUNKになります。商品価値はもうありません。
外見の目視では損傷がわかりません。カーボンドライジャパンみたいな一部の専門業者だけがきっちり診断できます。
アルミやチタンのひびもおなじく寿命の信号です。てか、テキトーにそこらの町工場で延命措置できるのは鉄フレームばかりです。
気むずかしいアルミ
ほかにアルミの表層の白い斑点はひとつの目安です。表面のコーティングが劣化して、電気的な腐食が部分的に進むと、ぽつぽつや1円玉みたいな色のくすみが出ます。
美観がよろしくありません。しかも、アルミは逝くときにはぽっくり逝きます。
鉄みたいにぐにゃて曲がらずにばきっと折れます。10年もののアルミバイクはビミョーなところです。
アルミの安さ、軽さ、硬さはなにかの裏返しです。
長生きフォーク
フロントフォークはまあまあ長生きです。つくりがシンプルでソリッドです。乗車中にフロント側を目視できますから、不意打ちのガツン!やガリ!を防げます。
ただし、オフロードのサスペンションフォークは別物です。高級モデルはダンパーやショックスやコイルやシリンダーの集合体です。
ハイエンドのサスをかんぺきに調整できる店は非常に限られます。外置き、野ざらしのクロスバイクの安いサスフォークはこの宿命を免れません。
リジッドフォークの交換時は・・・ライダーの気分だあ? フォークのとっかえにはカオスなヘッドパーツがからみます。しろうとの手出しは無用です。
あと、
MTBのフレームセット=フレームのみ
ロードのフレームセット=フレームとフォーク
です。ロードで純正以外のフォークを使うのはまれです。フォーク破損=純正品か類似品の取り寄せコースです。
逆にオフロードのフォークはBOOSTとかトラベル長とかプラスタイヤクリアランスとかでにぎやかです。
オールロードの決め手はキャリアのマウント台座、ダボ穴です。
永遠のステム、クランク
ステムやクランクはパーツのなかでもっとも長命です。シンプルソリッドなものはそうそう壊れません。
こんなショートステムはただのアルミのインゴット、ザ・鈍器です。
そして、ステムはそのがんじょうさからしばしば工具の代わりに活躍します。フォークコラムのカットのソーガイドにさいてきです。
圧入のかませに。
やすり掛けのあて木に。
オーバートルクで割れるのはコラムやハンドルのクランプです。ステムはめったに割れません。オフロードで激しくCRASHして、正面から岩に突激すれば、キャップを砕けますか。
クランクアームも同様です。中空型はそこそこ壊れますが、鍛造型はちょっとした打撃タイプの片手武器です。
整備不良のシャフトマウントのがた、ガリきず、ペダルの固着とかが寿命らしい寿命です。寿命より先にモデルチェンジや規格変更が来ます。