先日、古いロードバイクのフレームが我が家にやってきました。

- 品名 MAYSTORM MACH555 FORCE
- 年式 2008年頃?
- 重量 1248g
- 素材 Dedacciai Alloy 7003
東京のトライアスロンショップ、メイストームのオリジナルモデルです。このセットがTrigonのフォーク付きで4980円(送料込み)でした。破格!
訳アリ理由はディレイラーハンガーなし、塗装劣化です。たしかにペイントは経年でぼろぼろだ。

さいわいディレイラーハンガーの代用品は見つかり、機能は復活しました。しかし、この悲惨な外観は室内オブジェにも街乗りの足にも落第です。あと、オレンジはぼくの中にはない。
ということで、ペイント剥離をして、銀色ポリッシュ化を計画しますが、過去のカーボンフレームの剥離の悪夢を思い出して、恐怖で震えます。手磨きは嫌だ―!
結果、自家塗装で人気ナンバーワンのホルツのリムーバーがぽちっとされました。

アルミフレームの剥離の方法
自転車のフレームの素材はおもに以下の3つです。
- 鉄系
- アルミ系
- カーボン系
竹、マグネシウム、チタンなどのレア素材はありますが、ぼくはまだ遭遇しません。
前回の剥離塗装は訳アリジャンクなカーボンフレームでした。

悪夢だ。
カーボンに剥離液はNG
一般的なカーボンパーツ=CFRPは炭素繊維のカーボンファイバーを継ぎ接ぎして接着剤的なものでかちかちに焼き固めたものです。ある種、高級なハリボテだ。
剥離液、ペイントリムーバーのような溶剤は接着剤や樹脂にダメージを与えます。つまり、カーボンフレームに使うと、塗装と一緒に樹脂まで分解してしまいます。
実際、強力系リムーバーは薄手のニトルリ手袋やプラスチックフィルターを溶かします。手袋越しにじわじわ刺激が来るのはこのためです。『強力』は伊達じゃない。
このため、ぼくは紙やすりとへら状のものでカーボンフレームと10時間ほど格闘して、粉塵塗れになりました。もう二度とやらんぞ・・・
磨けば光る7003
しかし、今回の獲物はアルミフレームです。あ、Dedacciaiの7003 Forceです。

ロードバイクのアルミフレームはだいたい6000番台です。GIANTのクロスバイクや入門グレードには『ALUXX 6000』みたいな記載がありますね。
このフレームはそのグレードより上位の7000番台で、さらに7005より上位の7003です。素材自体がけっこう高級品です。
実際、ちょいエアロなフレーム形状で実測重量は1248gです。同時期に入手したALUXX 6000のGIANT DEFYが1450gほどです。
パイプの質感はたしかに軽量でドライです。パリッと、カチッとした感じ。磨いて使う価値を秘めたフレームです。
アルミの塗装の剥離の手順
ぼくの個人的な経験から自家塗装、DIY剥離のポイントをいくつか紹介しましょう。
- 屋外でやる
- 春先から初夏がベスト
- 自転車フレームは最難関コース
とにかく屋外でやりましょう。インドアでスプレーやケミカルは絶対的に非推奨です。

上記の場面では動画撮影のために室内でプシューとやりましたが、飛沫の拡散で喉と目をやらかしました。
塗装、正確には塗装後の乾燥は低温の冬場や多湿な梅雨には不利です。仕上がりまでの日数や出来栄えが倍々ゲームで変わります。冬場にプラサフはマジで乾かない。
春先から初夏が塗装にはベターです。
そして、自転車フレームは自家塗装と剥離には最難関クラスの素材です。フレーム内側、BB周り、ステーの形状などが自動車のボンネットやバイクのタンクとかより圧倒的に複雑だ。

剥離と研磨の粗はそのまま浮かびます。厚塗りでごまかそうという甘い考えのずぼらなO型さんは誰ですか?
そもそもスプレーは均一に広がるので、低いところも高いところも均一に厚くなります。結果、相対的なギャップは塗りでは消えない。塗ってから削らないといけない。
塗装を荒らす
以上を踏まえて、屋外に来ました。

最初の作業は塗装荒らしです。砂利や紙やすりや釘でひっかき傷をつけます。これは剥離液を塗装の下の下地材に行き渡らせるための下ごしらえです。
大半の塗装の詳細はこうです。表面から
- コーティング
- 塗装
- 下地材
- アルミ地
の順で3層から4層のミルフィーユです。
カーボンフレームのクリアコートの実例です。

劣化と浮きで厚みが露になります。これを剥くのにめちゃめちゃ苦労しました。手応えは樹ないしゴボウ。超でかいゴボウの皮をこそぎ取るような作業です。きんぴら何人前やねん。
今回のアルミフレームのコーティングはここまでがちがちではありません。むしろ、部分的に劣化が進んで、塗料の層が見えます。
それでも、3層目の下地材の露出部分はそう多くありません。ここに剥がし液を活き渡らせるために表面を適度に傷つけるのが効果的です。
むろん、がっつり深くやると、アルミパイプにダメージを与えてしまいます。ええ塩梅でやりましょう。
剥離液を塗る、厚めに
いよいよ手袋、ゴーグル、マスクなどの対策をして、リムーバーを塗ります。

へら、刷毛、水は必須です。液を深皿に移して、刷毛でたっぷり目に塗りながら、作業を進めるのがおすすめです。缶からの直の垂らしはけっこう零れる。
あと、リムーバーをフレームに乗っけて、刷毛やブラシで薄く広げるのは効果的ではありません。ケチケチ作戦は失敗しました。
床屋さんの髭剃りのクリームみたいにたっぷり厚めに塗るのが効果的です。下記は成功例です。

ケチらずに厚めに塗ると、気持ちよくこそぎ落せます。これは剥離液が下地にしっかり反応した結果です。
全体を一気にグラデーション的に薄くするのは無理です。髭剃りのごとく一定の面積を丁寧に削ぎ落す方が結果的にうまく行きます。
この事実に気付いたのが中盤でした。結局、ここでリムーバー250mlが切れました。

剃り残し多し。
あと、この作業で気付きました。塗装は別に溶けません。『乾いた塗料が絵具みたいにどろどろに戻る』のではない。
実態は『土台の下地材が分解して流出した結果、その上の塗装がバラバラになる』ぽいです。商品名も『はがし液』で『とかし液』じゃないし。
なので、クリアコートや塗料の層はこの作業には邪魔です。液を塗る前に面を荒らすのは必須です。
皮膚に着いたら水で洗おう
このホルツの剥がし液は強力タイプです。ニトルリは普通に溶けますし、刺激は手袋越しに伝わります。
肌について20秒くらいで熱さが来て、そこからひりひりが来ます。

源液もそうですし、剥離後の塗装のカスも同様です。肌や粘膜に付けぬように注意してください。反面、匂いはそれほどでもない。サンポールの方が強烈です。
剥離剤1本、作業時間1時間のアフター
自他共にずぼらなO型で罷り通るこのB4Cがホルツのペイントリムーバー1本、作業時間1時間で前知識なしにざっくばらんにやったDIY剥離の結果がこれです。

剥離率80%くらいでしょうか。まあ、予想通りです。
最初から上記のコツ(厚めに塗る、部分的にやる)を踏まえたら、90%くらいまで行けたか? とはいえ、100%のDIY剥離は自転車フレームの構造ではムリゲーです。
剥離液の効果がちゃんと出れば、磨きなしで塗料はほぼ落ちます。ディレイラーハンガー回りの肉抜きのところの白塗料も落ちた。

裏腹にステーのところのオランダ代表みたいな橙黒は余裕で残りました。これは剥離液の塗り方ミス、ブラシ薄塗りケチケチのたまものです。
1時間でこれは超絶時短です。カーボンフレームを手磨きしたときには5時間くらい格闘しましたしねえ・・・二度とやらんぞ。
ホルツのペイントリムーバーまとめ
- 自家塗装、DIY剥離にはホルツがおすすめ
- 強力リムーバーはヨドバシが最安
- 1缶250mlで自転車フレーム1本分
- フレームの剥離は100%にはならない
- 厚めに塗る
- 外でやる
ナトコの1kg業務用が2000円です。こっちを買ってたっぷり使って磨きを時短するのはありです。ホルツの250ml缶はちょいかつかつですし。
とにかく床屋さんの髭剃りのクリームの盛り方でやるのが成功の秘訣です。
そして、サンドブラストに心が動き始めた・・・