スニーカー系自転車シューズ CHROME KURSK AWのレビュー

  • 総合評価は4.5/5 ★★★★
  • 入魂のパナレーサー製のソール
  • 街乗りからトレイルやパークまでOK

2021年夏、CHROMEのサイクリングシューズが大幅に進化しました。

目玉は自転車タイヤメーカーのパナレーサーの専用ソールの搭載です。

今回、CHROMEの中の人からこの最新版のCHROME KURSK AWのサンプルを頂きました。使用感、サイズ感、グリップ性能などなどを以下で詳しく紹介します。

CHROME シューズの外箱
CHROME シューズの外箱

CHROME(クローム)の基本情報

CHROME INDUSTRIESはアメリカのアパレルブランドです。1995年にコロラド州でお手製のバッグと共に誕生しました。現在の本社はオレゴン州のポートランドにあります。

CHROMEのコンセプトは「丈夫でおしゃれなギア」です。メッセンジャーバッグに始まり、バックパック、自転車アパレル、そして、自転車シューズを生み出します。

また、ストリート、パークとの相性からスケボーやBMXなどのプレイヤーやファンの支持を多く集めます。

日本人泣かせの自転車シューズ事情

自転車は身近なアイテムですが、自転車競技はスポーツの中ではマイナーです。必然的にグッズやアパレルもマイナーになります。

国内には世界的なスポーツメーカーのミズノとアシックスがあります。しかし、この二社はサイクリング用品を販売しません。

asics GT-2000
asics GT-2000

サイクリングアパレルの大手はパールイズミです。自転車界ではメジャーですが、一般的にはマイナーです。

次点がシマノです。しかし、シマノは世間的には釣り具と自転車パーツのメーカーです。皆がぱっと思いつくシマノ服はロゴ入りのフィッシングベストです。

さらに自転車競技の本場は欧米です。自転車専用のグッズやアパレルはヨーロッパ人やアメリカ人の基準で作られます。

実際、シマノの標準シューズは日本人にはタイトです。標準サイズ=欧米サイズです。で、基本的にあちらの服は大きめ、靴は細めです。例:コンバースやプーマのスニーカー

日本を含む東南アジア向けのユーザーには『アジアンフィット』モデルが販売されます。これは標準でなく、オプションです。

しかしながら、標準的なアジア人向けのアジアンフィットモデルは非標準的なアジア人のぼくには合いません。

使用者の身体情報

ぼくの脚のステータスです。

性別男性
体系中肉中背
素足サイズ25.5cm
スニーカーサイズ26.0-26.5cm
素足幅11cm
スニーカー幅4E
JISの適正幅F
土踏まず足囲26cm
母指球足囲27cm
足型エジプト・ギリシャ型

※数値は夜に計測したもの

JIS=日本産業規格の計測方式では適正な靴幅はFとなります。EEEEEです。

他方、標準のサイクリングシューズはだいたいワンサイズのD~E、アジアンフィットはE~2Eです。

自転車シューズというマイナーな商品に充実の展開はありません。4EやF幅のスポーツ用シューズがすでにレアです。

あ、少し前にクラウドファンディングで4Eのビンディングシューズのプロジェクトがありました。でも、デザインが微妙で、価格が2万越えです。

このような事情からぼくは自転車用のシューズには久しく近づきませんが、CHROMEからDMを貰って、このKURSK AWをゲットしました。

やはり、注目は日本の自転車タイヤ屋が作るはじめてのアウトソールです。自転車好き、シューズ好きはそそられます。

CHROME KURSK AWの特徴

今回のCHROMEの新作は現行品のフルモデルチェンジと過去作の復刻です。

  • スニーカータイプのKURSK AW
  • ビンディングのKURSK AW PRO
  • スリッポンのDIMA 3.0
  • ミッドライズのSOUTHSIDE 3.0とLOW

この中からうちに届いたのはベーシックなKURSK AWでした。

CHROME KURSK AW
CHROME KURSK AW

見た目は普通のおしゃれなスニーカーないしキャンパスシューズです。

カタログスペックを公式より引用します。

モデル名CHROME KURSK AW
サイズ展開7~11 ※USサイズ 日本換算25~29cm
価格¥12,100(税込)
カラーNIGHT,OLIVE LEAF,WOODLAND CAMO
補足1サイズ小さ目が推奨
生産国中国

CHROME KURSK AWの自転車的要素です。

  • ヒールにリフレクター
  • 靴紐ポケット
  • 高グリップ、高耐久ソール
  • 防水ナイロンアッパー

旧型の無印KURSKからの相違点はパナレーサー製のソールです。デザインや機能は大きく変わりません。

アッパーのサイズはゆったり目

カタログにわざわざ太字の注意書きがあるようにCHROME KURSK AWのサイズは大きめです。

DIMA 3.0も同様にゆったり目です。SOUTHSIDEはジャストサイズです。

ぼくは先方に足の特徴を伝えて、26.5cmを要求しました。結果、US8=26.0cmが届きました。え、在庫がなかった?!

しかし、シューレースを取っ払って、アッパー全開モードで履いて、邪推を反省しました。このシューズはかなりゆったり目です。

CHROME KURSK サイズ感
CHROME KURSK サイズ感

実際、US8の26.0cmサイズで爪先と踵がややルーズです。単純な縦サイズのジャストはUS7.5でしょう。

しかし、靴幅、ワイズ、Widthは典型的なワンサイズのスニーカー幅です。E~1.5Eくらいか。

靴の幅

手持ちのシューズの靴幅の比較です。※親指-小指間の最大幅をノギスで測定

  • NIKE AIR ZOOM PEGASUS 4E 26.5cm=11.5cm
  • CHROME KURSK AW US8=10.3cm
  • GIRO RUMBLE VR US9.5=10.3cm

ランニングシューズのNIKE PEGASUS 4Eの26.5cmのワイズが11.5cmです。これはスーパーワイドないしエクストラワイドです。

CHROME KURSK AWのUS8は10.3cmです。これはGIRO RUMBLE VRのUS9.5と同等です。

つまり、CHROME KURSKは大きめ、GIRO RUMBLE VRは小さめです。そして、どちらも4Eのフットサルシューズより幅広です。

で、どちらの実測も10.3cmですから、ぼくの素足の横幅の11.0mmにはやや窮屈です。

とくにGIROのアッパーのシューホール部分はそんなにがばっと開きません。小指がやや内側に圧迫されて、明らかにストレスを感じます。

一方、CHROMEのアッパーのシューホール部分はかなり大きく開きます。シューレースをゆるゆるにして、結びを軽くすれば、多少のゆとりを確保できます。

もちろん、シューズをサイズアップすれば、横幅を広げられます。しかし、縦のサイズはすでにルーズです。これより上のUS8.5やUS9はガバガバでしょう。

幅広甲高のぼく的にはこのCHROME KURSK AW US8のサイズは〇、幅は△というお決まりのパターンでした。靴下は無理だな・・・

アッパーはナイロンで疎水タイプ

このKURSKのアッパーの生地はコットンのキャンパス地に見えますが、素材は1000デニールのナイロンです。

カタログには『1,000デニール 疎水性ナイロンアッパー』とあります。ちなみに疎水=雨を膜状に逃がすコーティングのことです。

試しにペットボトルの蓋1杯分の水を掛けました。

疎水アッパー
疎水アッパー

と、このように水滴が左右にするする逃げて、生地には全く浸透しません。

CHROMEが提唱するシューズの用途は広義の意味の『普段使い』です。これにはサイクリング、街乗り、通勤通学、メッセンジャー、Uber Eats みたいなシーンが含まれます。

で、通勤通学やお仕事の自転車には悪天候が付き物です。雨対策は必須です。

逆にスポーツタイプ、レーサータイプのサイクリングシューズ、とくにロードバイク用は全天候型ではありません。防水機能は二の次です。

むしろ、通気性や軽さの優先順位が高くなって、メッシュや軽量なハイテク生地が多く使われます。

結果、サイクリングシューズは夏場には快適で、冬場には地獄です。長い下りでは爪先が凍ります、マジで。

対照的に防水系のアッパーは夏場には不快で、冬場には快適です。通気性の悪さは保温性の良さの裏返しです。

真夏に素足はデンジャラスです。

蒸れるアッパー
蒸れるアッパー

まあ、踵のルーズさのせいで良い感じに空気が抜けます。結果オーライ?!

ヒールの工夫と特徴

ところで、アッパーは今回のモデルチェンジの目玉ではありません。注目はシューズの真ん中から下の部分のソール系パーツです。

アウトソールの見た目は平凡なフラットソールです。アーチやヒールの形状に特徴はありません。

ヒールのアウトソールに細かい工夫があります。白い楕円の部分がリフレクターです。

CHROME ヒールのリフレクター
CHROME ヒールのリフレクター

このKURSK AWはスニーカータイプです。ロープロなヒールのサポートは浅めです。

で、この踵の浅さがサイズのゆったり感+重量と相まって、ランやジョグではスポスポします。

また、この懸念はKURSK AW PROに通じます。浅い踵の掛かりが靴の重さとビンディングの固定に負けると、ペダリングの度にスポスポしかねません。

サイズ感や踵の浅さからビンディング派にはミッドカットタイプのSOUTHSIDE 3.0 PROがベターでしょう。

パナレーサーのインソール

本命の部分です。パナレーサーの名前と技術がついにお目見えします。

パナレーサーのインソール
パナレーサーのインソール

パナのタイヤのロゴの地味さと対照的な一面のデカロゴです。CHROMEより目立つし。

このインソールはウレタンのようでもあり、ゴムのようでもあります。モチモチ、グニグニ系の面白い手応えです。

アウトソールのクッション性はそれほどですが、このインソールのおかげで履き心地がかなり向上します。

インソールの裏のヒール部分には増しパッドがあります。”CRASH PAD”の表記があります。

ヒール部分の増しパッド
ヒール部分の増しパッド

ところで、自転車のペダリングの動作にはヒールの部分は関与しません。クリートのスイートスポットの定説は母指球付近です。現にヒールに金具を付ける人はいない。

そもそも踵をべたっと付けるシチュエーションは運動動作の中ではレアです。ランやジョグの踵着地は現代の陸上界ではうさぎ跳び並みのタブーですし。

踵がべたっと接地するのは歩き、早歩き、ジャンプの着地くらいです。

CHROMEのユーザーの片輪はアーバン系のサイクリストやギグワーク系の職業的な自転車乗りで、もう片輪がストリート系やパーク系のプレイヤーです。

これらのメインストリームのスケボー、BMX、ダートジャンプ、トライアルなどには縦の三次元的な動きが加わります。

本格BMXのダートコース
本格BMXのダートコース

ジャンプミス→着地失敗→踵ドーンが日常的にありえます。インソールの裏のCRASH PADはその予防策でしょう。

歩き用のクッションに”CRASH”という大仰なネーミングは付きませんよねえ?

真骨頂のアウトソール

欧米のゴムメーカーは乗り物の足回りに留まりません。

  • ミシュラン
  • コンチネンタル
  • Hutchinson

これらのロゴ入りのアウトソールはスポーツ、アウトドアシューズでちょくちょく出て来ます。イタリアの靴底専門メーカーのVibramほどではありませんが。

とくにHutchinsonはAIGLEです。で、AIGLEのシンボルはゴム長靴です。

そんな訳で大手のゴムメーカーが自転車のタイヤからシューズのソールまで幅広く手掛けるのは珍しいことではありません。

しかし、純然な自転車タイヤメーカーのパナレーサーがシューズの分野に進出するのは一種の事件です。

早速、街乗りクロスバイクでお出かけしまして、ソールの実力を試しました。

パナレーサー製のアウトソール
パナレーサー製のアウトソール

ソールのデザインパターンは旧モデルのKURSKと変わりません。フラットペダル向けのブロックパターンです。

ただし、うちのペダルの滑り止めのギザギザが肉厚で、このソールの溝にうまくハマりません。結果、ペダルへの食いつきはイマイチです。

解決策です。

  • もう少し細いエッジのペダルに交換する
  • ピン付きペダルを使う

で、ピン付きフラペのMTBに乗り換えて、トレイルへ出かけました。

パナクローム アウトソール
パナクローム アウトソール

ピンがソールの溝にがっちりハマります。ペダルへの食いつきは上々です。

この『パナクローム』のアウトソールはパナレーサーの靴底デビュー作ですが、一作目からいきなり好感触です。

グリップの良さは歩きで分かります。ソールの接地感は「むぎゅむぎゅ」です。コンパウンドの粘りが足裏に伝わります。

パナレーサーのアウトソールのグリップ
パナレーサーのアウトソールのグリップ

逆に同じおしゃれ系サイクリングシューズのGIROのRUMBLEのビブラムソールはブーツみたいにかっちかちです。ソールがこんなに反らない。

グリップの良さを活かせば、乾いたトレイルの上り下りやハイキングに使えます。

ドライなトレイルに
ドライなトレイルに

ただし、ソールがスタッドなしのフラットなデッキシューズ風の形状ですから、濡れた岩や木の根っこの上では普通に滑ります。

もう一つの売りの耐久度はまだ分かりません。普段使いで経過を見ましょう。

重量はヘビー級

サイクリング用のおしゃれシューズはたいてい重めです。理由はアウトソールです。

薄い軽量な靴底はピンやエッジですぐに傷みます。これをソールの厚さや硬さで補うと、重量の増加を招きます。

軽量化のためにカーボンソールを使うと、価格の上昇に直面します。ロード用シューズの最上級モデルは4~5万円です。

で、CHROME KURSK AW US8サイズの実測重量です。

CHROME サイクリングシューズの重さ
CHROME サイクリングシューズの重さ

安価なランニングシューズが200g台後半、軽量なものが200g前半、超軽量タイプが100g台後半です。

ムーンスターの幅広防水シューズさえが350gです。おしゃれ系のサイクリングシューズはシューズの中では重めです。フォーマルな革靴とどっこいだ。

しかし、シューズの重さはペダリングには特段のマイナス要素になりません。ペダルという土台がありますから。逆に軽い柔らかいシューズはペダリングに不向きです。

CHROME KURSKの得意と苦手です。

  • サイクリング 〇
  • アウトドア 〇
  • パーク 〇
  • トレイルライド 〇
  • ウォーキング △
  • 濡れた山道 △
  • ラン、ジョグ ×

ペダル、地面、スケボーの板のような土台に靴底が常に付かず離れずの状態であれば、シューズの重さは大きなマイナスになりません。

反対にランやジョグのように足底の全体が連続で地面から離れる=空中に浮くと、踵の浅さと靴の重さがネガティブに作用します。

具体的にはモーションがスポスポ、ギクシャクになる。革靴やブーツで走るのは難儀でしょう?

CHROME KURSK AWのまとめ

CHROME KURSK AWはゆったり目のハイグリップなおしゃれ自転車シューズです。

点数です。

  • 価格:3
  • ブランド:3.5
  • デザイン:5
  • 性能:4.5
  • 機能:4
  • 幅広甲高:3
  • サイズ感:4
  • トータル:4.5

パナレーサーのアウトソールの完成度は予想より上でした。FIVETENやRIDECONCEPTSに負けませんよ。

個人的にはフラットペダル用のKURSK AWがおすすめです。サイクリング、トレイル、スケボー、街履き、アウトドア、デートに大活躍します。

ジーパンとの組み合わせは最強です。