自転車店は地元密着型の商売です。店頭訪問、対面販売が古来よりの伝統と格式です。
ただし、ネットの発展でショッピングの基本形が変わってしまいました。マウスでぽちぽち、スマホでぴたぴたがふつうです。
自転車も例外ではありません。ツールフランスの出場するような有名自転車ブランドの高級モデルがフリスビーのようにぽんぽん行き交います。
挙句に通販専用ブランドのCANYONとかが生まれて、スポーツ自転車の全ジャンルでトップクラスの実績を獲得します。
ぼくもネット通販の普及のあとから自転車にはまりました。最初の本格自転車の購入は2015年です。
店舗は安心と信頼のアマゾン先生です。最寄りの実店舗のチャリ屋は学生時代の同級生のお父さんのお店です。おっちゃんの強面がトレードマークです、ははは。
国内自転車通販サイマ
通販商材用の自転車てのはそこそこあります。
- アウトドアのドッペルギャンガーの折り畳み
- 輸入代理のオオトモのPB自転車グループ
- 関連のGICの外車ロゴのルック車グループ
- 中華工場直販のいろんなやつ
- GIANT ESCAPEの代替のGIOS MISTRAL
などなど。これらの主戦場は実店舗ではありません。アマゾン、楽天、ヤフーです。ハマーやJEEPはホムセンやドンキの花形ですね。
自転車通販事情
このご時世、大半の自転車小売店は自前のウェブストアを構えて、ネットショッピングに対応します。
サイクルベースあさひ、ダイワサイクル、イオンバイクみたいな大手販売店は別ですが、中小規模の地元型チェーン店や個人営業店は大規模なPBをやれません。
大半のショップは自転車を問屋から仕入れて、それを店舗やネットで売ります。そして、通販の是非は国内代理店やメーカーの方針で決まります。
- GIANT
- TREK
- SPECIALIZED
- CANNONDALE
- COLNAGO
- PINARELLO
- DEROSA
こういうメジャーどころの自転車の新車とフレームはネットには流通しません。一部のブランドはショップのセール価格の公示にすら消極的です。
「型落ちのカーボンロードが大特価です! 値段はASKで!」
ワイズロードの特価情報のテンプレ文です。情報発信の意味が半減します、ははは。
店舗はインスタとか鍵垢とかで涙ぐましい工面をしますが、基本的に国内自転車界の商習慣は保守的です。問屋と代理店の力が大だ。主力商品が海外ブランドばかりですし。
ネット専用本格自転車の台頭
逆にネットでしか買えない本格自転車も多くあります。くだんのCANYON、英国大手のWiggle=CRCのVITUSやNUKEPROOFなどなど。
うちのMTBはそのVITUSのSOMMETです。
レーシングモデルのフレームがセールで12万です。代理店の儲け、ブランド代、販促費がかかりません。
もちろん、コスパだけが自転車の魅力じゃありません。有名ブランドの高級自転車はプレミアムな価値やスペシャルなステータスを持ちます。
まあ、100万クラスのハイエンドモデルはときに嫉妬ややっかみの対象になりますけど、ははは。
サイマの主力は一般自転車
で、今回の主役のサイマです。これは新興のネット通販専門の自転車ショップです。主力はスポーツバイクでなく、軽快車やママチャリです。
サイマの運営元は名古屋のエイチームて上場企業です。本業はスマホゲーム屋さんです。代表作はヴァルキリーコネクトです。ヴァルキリープロファイルではありません。
その名古屋のゲーム屋さんが自転車通販に名乗りを上げました。なぜに自動車通販でない?
ネットショップの設計はお手のもの
サイマには店舗がありません。またサイマ印の自転車もそこらの町の自転車にはありません。ごりごりのネットビジネスです。
唯一の例外がワイズロード神楽坂店 アーバンe-コミューターのサイマコーナーです。またサイマにワイズのコーナーがあります。
サイマの公式ストアへアクセスすると、販売商品や会社概要を見られます。ホームページのデザインは非常にイマドキスマートです。UI設計はお手の物でしょう。
このあとで大阪の有名な自転車ショップのカンザキバイクのホームページを訪れると、タイムトラベラーの気分を味わえます。
最大の売りは自転車全品送料無料
ところで、自転車通販の最大のネックは何でしょう? それは送料です。
一万円のママチャリ、五万円のクロスバイク、うん十万円のマウンテンバイクやロードバイク・・・送料はおおむね5000円~です。
自転車小売り最大手のサイクルベースあさひは最寄りの店舗への配送料無料サービスを展開します。が、これも数年前に始まったサービスです。
地方展開の小規模チェーン店は「半径5km以内のお客様には無料で配送いたします!」みたいなことをやります。
その距離で最も効率的な自転車の配送手段は自走です。しかし、店の人はユーザーの商品に乗って走れません。それはもう新品ではない、中古です。
てことで、自転車の配送はトラックやバンになります。遠方の配送はクロネコヤマトの家財便・・・でなく、佐川急便や西濃運輸の得意分野です。
そんなわけで配送のコストはライトな自転車利用者には割高に見えます。2万のチャリに5000円の送料は高く思える。
サイマはこのユーザー心理をうまくとらえて、まっさきにこのフレーズを打ち出します、「自転車全品送料無料」て。「ガチャ無料」みたいなもんでしょうか、ははは。
5000円を高く感じる人はこれに飛びつきます。しかし、自転車の配送は高コストです。無料にはなにがしかの理由がある。
そして、完全無料エリアは限られます。本州の東海道沿いですね。東北、山陰、四国、九州は有料です。でも、なぜか熊本だけは無料エリアです。
北海道、沖縄は例のごとく特別価格です。
パーツの送料は756円からです。こっちはとくにスペシャルさを打ち出しません。つまり、こっちの金額が正常値です。
自社工場組み立て、アフターサポート、保険付き
切り札的な『送料無料』のつぎのカードが自社工場組み立て・チェック、ロードサービスや盗難補償みたいなアフターサポート、そして、自転車保険です。
これはなにかスマホの契約に通じます。なぞの安心安全補償系コンテンツの全部乗っけてところですか。
もちろん、ロードサービスや自転車保険はサイマの自前の事業じゃありません。保険はau損保ですね。
実際のところ、自転車事故の賠償はクレカの付帯とか自動車保険によく含まれます。二重契約や契約自動更新は日常茶飯事です。
庶民は一括5000円には敏感ですが、月々500円の簡易保険には鈍感です。まあ、往々に後者の継続的な小さな出費の方が最終的に高くつきますが。
組み立てとチェックは自転車屋の通常業務です。これをしないところはまともなショップではありません。
ホームセンターの自転車コーナーにすら自転車整備士はいますしね。ネットの求人に募集がちょくちょくあります。
以上のことからサイマの特典はとくに魅力的なサービスではありません。ふつうのふつうです。
文字の色を変えて、フォントサイズを大きくすれば、良さげにアピールできる、それだけのことです。
しかし、世には一定数の情弱とめんどくさがり屋がいますから、このような手法がたやすく成立します。
サイマの自転車の価格設定
サイマの売れ筋商品は自社ブランドのオリジナルの一般自転車です。シティサイクルの価格帯は2万~4万です。
ママチャリ型の売れ筋は電動アシストモデルです。電動アシストの設計は気軽ではありません。ややこしいアシスト規制がありますし。
電動アシストのオリジナルモデルは一介の通販ショップには不可能です。てことで、ママチャリの人気ランキングにはパナ、ヤマハ、ブリヂストンの御三家がならびます。
このメーカー物の通販は一考の価値です。でも、大半はほかのサイトや実店舗より安くなりません。それはおいしい商材ではない。
クロスバイクはクロスバイク風のなにか
サイマのオリジナルモデルをすこし拝見しましょうか。クロスバイクタイプの”cyma primer”です。読みは『サイマプリメール』だあ?
- モデル名:cyma primer
- 価格:26980~31,980 (税別)
- 重量:12.7kg
- 変速:1×7速
- サイズ:700c 1サイズ
- カラー:めっちゃいっぱい
自転車メーカーもの入門用クロスバイクの価格が5万円~です。
サイマのこいつはそれに届きません。クロスバイク風の一般自転車です。
とくにサイズ展開が1サイズしかありません。これをスポーツやフィットネスで使うのはびみょうです。街乗り、通勤、お買い物がぴったりだ。
この価格帯のクロスバイク風自転車はネットにどっさりあふれます。アマゾンか楽天をちょろっと探せば、より軽いやつ、より安いやつをかんたんに発見できます。
「でも、送料が・・・安全が・・・」
はい、ホームセンターに行きましょう。そして、めあての自転車を自分の目でじっくり見て、じっくり触って、傷や不具合をチェックしましょう。
サイマの売りは送料無料と自社組み立てですから、そこは抜かりなしでしょうが、人間は疲れますし、大型商品の配送にはストレスが掛かります。
BAAの罠
自転車ショップのオリジナルモデルは基本的に冴えません。
海外の自転車ブランドの名前を借りた日本企画商品にはヒットや良品がありますけど、完全オリジナルモデルはぜんぜん冴えません。
サイマのオリジナルモデルもおなじ轍を踏みます。シティサイクルはなおさらです。品質はホムセン自転車とイーブンで、価格は割高です。
ホームセンターのママチャリの相場は1万~ですが、サイマのママチャリは2万を軽く越えます。
送料無料分のコストを考慮しても、割安の太鼓判を押せません。高さの理由はなんでしょう?
商品ページのアピールの一番手には『新安全基準のBAAマーク』て一文が来ます。BBA=Bicycle Association Approvedです。意味は『自転車協会認証』です。
自転車をBAAに通すと、BAAのおすみつきとシールをもらえます。しかし、検査費用はただではありません。手間賃とシール台が売値に上乗せされます。
でも、BAAは安全安心を確約するものじゃありません。防犯登録が盗難を防止するものではないようにBAAは自転車の安全を保障するものではない。シールだから。
100万の高級自転車にさえリコールや初期不良は毎年のようにあります。シールはおまもりくらいの意味しか持ちません。
もちろん、BAAなしの自転車はBAAありの自転車より安心です。しかし、劇的な性能差やクオリティの違いはありません。
サイマの二万のママチャリはホムセンの一万のママチャリ+BAAシールのようなものです。
抱き合わせのアクセサリ
差額の最後の帳尻合わせは小物類です。カゴ、ライト、スタンド、リフレクターなんかですね。
これらのアクセサリはお値打ち感の演出を非常に助けます。庶民はもりだくさんのボリュームにころとやられる。
しかし、こういうアクセサリ類は本質的には自転車とは別商品です。スポーツバイクの完成車にはペダルさえが付属しない。
完成車の抱き合わせアクセサリーは全般的によろしくありません。数十万のロードバイクのホイールさえがいまいちですし。パッケージ品の功罪だ。
「ふつうの人はママチャリの細部にそんなにこだわらんわw」
はい、そうです。一般人はこんなマニアックな自転車乗り的観点で通販のママチャリを突き詰めません。
てか、比較能力のスタミナが最後まで続きません。庶民は見せかけのお得感ですっかりまんぞくして、賢者モードに突入します。
ゆえにサイマのような新興企業は急速に成長します。消費者よりむこうのが上手です。自転車のプロてよりネット通販のプロて感じが強くします。
楽天にサイマのブースがあります。上記の理由でサイマのオリジナル完成車は微妙ですから、手堅いパナソニックかブリヂストンが狙い目です。→サイマ 楽天市場店